狼少女の夢日記 〜ぼくらはあの時同じ月を見ていたんだ〜   作:三月時雨

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 プロローグも終わり、本編突入です。何か別のラノベを彷彿とさせる章タイトルですけど。




5月29日夜、桐原正也の憂鬱
第2話


 人は寝ている間、一晩に7つ程の夢を見るのだとどこかで読んだ気がする。

 つまり、夢とは忘れるもの。それを見ている瞬間、それは夢として存在しているけど、過ぎてしまうとすぐに消滅してしまう。または現実とは交わらないもの。つまり、現実には普通干渉してこない。それが夢だと考えることも出来る。

 ただ、夢によっては朝になっても朧げなどとは言えない鮮明であり続ける夢があったりする。夢の中で話した会話や風景が朝になっても頭の中にこびり付いているそれだ。

 

 最近、ぼくは毎晩夢を見ている。というか、夢と言っていいのか当のぼくでさえ疑問を持ってしまうような代物にうなされている。まぁ、とりあえず「夢」としておくことにする。

 その夢でぼくは毎晩同じ森を彷徨っている。ぼくは森を出たいと思いながら、出口を探している。そして、森の中には化け物が住んでいて、出くわす度に自力で退治しないといけないのだ。

 

 え? それくらいなら普通だって? ぼくだってこれくらいなら許容範囲。

 だけど、それだけじゃないんだ。だって……………

 

 

「ちょっと、桐原君……!」

 

 

 ………え?

 

 

 どうしたの、と言おうとした瞬間、ぼくの体が突如後ろに飛ばされ、何かに激突する。痛みを堪えながらゆっくりと正面に視線を向けると、そこにはたった今パンチをきめた姿勢のままぼくをじっと見ている黒い生き物がいた。

 

「いや、だから、ちょっとは前を見た方がいいって………」

 ぼくの惨状をちらりと一瞥して声の主、篠宮さんは言う。篠宮さんもぼくのよりも小振りの剣を握って目の前にいる別の化け物と対峙していた。

 

 正直、ぼくらがどうして一緒に森を彷徨い歩くはめになっているのかさっぱり分からない。しかも、その女の子が夢の中の架空の人物じゃなくて、優しくて周りの人からも好かれている同じクラスの篠宮さんというれっきとした実在している人なのだからもう訳が分からない。というか、自分で夢だと気付いている時点で末期症状のような気が………。

 

「………気付くならもう少し早く気付いて欲しいよ………………」

 ぼくは剣を右手で握ったまま左手で背中をさする。痛い。めちゃくちゃ痛い。頰をつねって痛いと感じたらそれは夢じゃないんだっていうお約束の話があるけど、絶対嘘だ。一生信じてやるもんか。

 

「しょうがないでしょ! わたしはこっちで手一杯なの! というか、前から言ってるけど、自分のことは自分で、他人のことはお互いなるべく干渉しないはずでしょ?」

 視線をこちらに向けもせず篠宮さんは切り捨てる。

 勿論、教室ではこんなんじゃない。いつも誰かと話していて楽しそうに笑っている。それでも、毎日晩を見る度に少しずつではあるが丸くなってはきているんだけど。

 

 ぼくはもう一度剣を構え直す。それを見て化け物はニヤリと笑った。右手を振りかぶりながら突進してくる。ぼくは寸での所で避けて、剣を横に勢い良く振る。剣が何かを切り裂く感覚。急所は外れたようだが、魔物は一瞬よろめく。すかさずぼくは剣を魔物の心臓に突き刺した。




 こんな感じで不定期に投稿する予定です。感想もお待ちしています。どうぞ、よろしくお願いします。

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