狼少女の夢日記 〜ぼくらはあの時同じ月を見ていたんだ〜   作:三月時雨

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第17話

 電車が止まりわたしはノロノロとホームに降り立つ。そのまま重い足取りで改札口へと向かった。意識している物はよく目につくというのは本当のようで、歩いている最中に学制服を着た女の子達、それも誰かと一緒にいる子ばかりが目に入った。

 話しながら歩いているあの子達は何の話題を話しているんだろう。どんな想いを今共有しているんだろう。

 改札を出てわたしは近くの柱にもたれかかる。待ち合わせをしている人はわたし以外にもいた。みんな携帯をいじって時間を潰していた。どれくらい待っているのかは当人しか知らない。ただ、待っている人が現れるとみんな途端に笑顔になってこれ以上ないくらい楽しそうに話し出し、そのまま改札口前を去っていくのだ。

 

 携帯を見てもしよりからの新たな着信はない。はしゃいでいるその人達を見ているとわたしは何だか寂しく、切なく感じた。

 

 

 しよりが姿を現したのはそれから10分後のことであった。

 

「ごめん、ごめん。遅れちゃって」

 しよりがわたしの元へ駆け寄って来る。

 

「おはよう、夕佳」

「う、うん、おはよう」

 さっきまでブルーになっていたことがバレないようにわたしは笑顔を浮かべてごまかす。しよりに合わせて今日は目一杯楽しまないと…………。

 

「じゃあ、どこ行こうか? 夕佳はどこ行きたい?」

 しよりはわたしの顏を覗き込むようにして言う。実は、今日は珍しく計画が全く立っていなかった。いつもなら1つくらいは『ここ行こう』と決まっているのだが、今日に限って真っ白だった。

 

「昨日の夜もうやむやになって終わっちゃったからね。う〜ん、どこがいいかなぁ………」

 わたしは腕を組んで考える仕草をする。とはいってもわたしは一緒にどこか行ったり、お買い物をしたりする気にはあまりなれなかった。学校や行きの車内のことが頭に残っていて楽しむ気分になれていないのだ。

 

「………思いつかないかな。しよりは?」

「あたしも」

「どうしようか?」

「…なら、中間テストの点数、アーンド日頃のうっぷん晴らしにとことん歌っちゃう?」

「カラオケか……………いいかも」

「よし、行こーう!」

 わたし達は駅を離れる。街中に響き渡る喧噪が学校の中と似ているような気がした。

 

「ちゃんと沙菜にはメールなりなんなりしたんだよね?」

「昨日電話したよ」

 昨夜、わたしはしよりに勧められたように沙菜に連絡することにした。手段はいろいろあったが、わたしは声を聞きたくて電話を使ったのだ。繋がるか不安だったが、一発で繋がり、真っ先に沙菜の驚いた声が耳に入ってきた。沙菜はわたしに嬉しそうな口調で自分の高校生活の近況を話してくれた。部活のこと、勉強のこと、それに好きな人ができたことを楽しそうに語り、それからわたしとしよりはどんな感じかと尋ねてきた。わたしが相変わらずだよと言ってわたしがいろんなことを話している間、沙菜は嬉しそうに聞いてくれた。電話越しとはいえもう1年以上会っていない沙菜の声はとても懐かしかく、まだあの中学校時代に戻れるような気さえした。

 

「それでそれで?」

「電話してくれたことに喜んでくれたよ」

「そりゃそうでしょ。あ〜あ、沙菜も来れれば良かったのに」


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