創造王の遊び場   作:金乃宮

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皆様こんにちは。

今回は、今年の3/15のにじファン規制強化にて削除したネギまの二次連載作品をリメイク(と言うほどでもありませんが)しての投稿です。

当時の未熟な文章がほとんどそのまま残ってますので、そう言うのが苦手な方は戻っていただくか、問題点を明記の上、感想、あるいはメッセージへお願いします。
では、行ってみましょう。


プロローグ

   ●

 

  

 ……どこだここは?

 

 

 なんだかわからないが、今自分は和室にいる。

 それも茶室のような狭いながらも趣のあるような所ではなく、大奥などの時代劇に出てきそうなとても広い畳敷きの部屋だ。

部屋の真ん中に寝転がっていた体を起こし周りを見てみるが、見えるのは木目のきれいな天井と、自分を取り囲む穴などどこにも空いていないまっさらな障子と、床に敷かれた新品同様の畳だけだ。

 畳二百畳分ぐらいありそうな広い部屋には和室にありがちな掛け軸や壺などの飾りは一切なく、それどころか障子以外の壁は全くない。

 障子を開けて外に出ようとするが、そもそも開けられるようになっていないようだ。

 何しろ同じレールの上にすべての障子がぴっちりはまっているため、取り外すために障子を持つための隙間すら作れない。

 仕方なくぶち破ろうとして体当たりや蹴りなどを放つも、ぶち破るどころか穴をあけることもできなかった。

 触る分には普通の木と紙の感触しかしないし、紙の部分を少し押してみても普通の障子紙のように向こう側にへこむが、そこからはいくら力を入れてもびくともしない。

 同じ場所で五分ほど障子と格闘した後、障子に沿って歩きながら観察し、一周してみたがどこも同じようで脱出は不可能だった。

 体力的にはともかく精神的には参ってきていたので、さっきまで自分が寝ていた部屋の中心まで戻りドカッとすわり腕を組んで考える。

 

 ……落ち着け。まずはどうしてこんなところにいるのか考えるんだ。

   まずここに来るまで私は何をしていた?

 

 そう考え思い出すのは、朝、大学に向かう途中の道の風景だ。

 

 

   ●

 

 

 今日の講義の教室の場所はどこだったかなと考えながら校舎に向かっているとき、ふと視界の隅に何かが走った。

 何かと思い見てみると、小学校低学年ぐらいの子どもが自分の横を走り抜けていったようだ。

 自分にはもうない元気な無邪気さに微笑ましい気持ちになっていると、子どもはランドセルを揺らしながらそのまま元気に走っていき、かなり急いでいたのであろう、十字路を渡ろうと車道へと飛び出していった。

 

 

 ……すぐ近くに来ているトラックに気が付く様子もなく。

 

 

 その道は以前からドライバーからの見通しが悪く、飛び出してくるまで誰がいるかわからず、信号も設置されていないため事故が多発し、人が何人も亡くなっている危険地帯であり、地元住人の嘆願により、鏡や信号設置の計画が立てられていると聞いたことがあった。

 現に自分も、道の端にひっそりと置かれている花束を何度か目にしたことがある。

 目の前で道路を駆け抜け始めている子どもと、迫りくるトラックを見て、そして以前見た花束が大型車の通った風圧で揺らされている光景を思い出し、

 

 

 気が付くと全速力で走っていた。

 

 

   ●

 

 

 トラックが子どもにどんどん近付いていくのを見ながら私は走り続けた。

 インドア派で体もあまり鍛えていなかったために動きが鈍い自身の体を恨めしく思いながら、それでも体を前へ押し進めていく。

 それぞれの位置関係から、このままだと子どものもとへたどり着いたすぐ後にトラックにぶつかるだろうと計算し、それでも走らないことを選択肢から除外し、駆けてゆく。

 そして大きな二車線道路の手前側、ちょうどその真ん中で子どもに追いつき、右から迫るトラックの姿を感じながら子どもの背負ったランドセルの上部にある持ち手をつかみ、思い切り引っ張るようにして後ろに放り投げる。

 振り向くようにしてみた子どもの顔は驚き一色で、空中にいることも相まってとても滑稽に見えた。

 そして、自分の顔に微笑みを浮かべながら、しりもちをつくように安全なところへと落ちていく子どもの、

 

 

 着地の直前にトラックのぶつかる衝撃を感じ、私は意識を失った。

 

   

   ●

 

   

 あらかたのことを思い出し、

 

 ……よく生きていたものだね、私は。

 

 とか考えながら、自分の体を確かめるがどこにも傷はなく、先ほどまで動き回ったり障子相手に格闘していたことを今更ながらに思い出し、疑問を強くする。

 

 ……いくらなんでも無傷はないな。まさか夢落ちか?

 

 ここは見た感じ病院ではないし、ではどこなのだろうと考えながら、ふと、ここに来てから一言も発していないことに気が付き、のどの調子を確かめようと少しの茶目っ気とともに声を発した。

 

「ここはだれ? 私はどこ?」

 

 

 

「逆じゃろ、それは」

 

 

 

 いきなり聞こえてきたしわがれ声に驚き、振り返りながら立ち上がり身構えると、そこには禿げ頭でもじゃもじゃの白いひげを生やし、藍色の着古したような甚平を着た爺さんが立っていた。

 驚きながらも、疑問に思ったことを尋ねる。

 

「あなたは誰だ? というかいつからそこにいた? それ以前にどうやってここに入ってきた?」

「ずいぶん質問が多いのぅ。質問は一度に一つずつと教わらなかったのかの?」

「それは失礼した。では、今のこの状況を説明していただけるとありがたい。いきなりこんなところに連れてこられ、少々混乱している」

「先ほどからの行動とここにきての第一声から鑑みるに、あまり混乱しておるようには思えんのじゃがの……。儂ゃ、おぬしが何か話したら出てこようと思っとったんじゃが、案外のんきじゃのう、おぬし」

「そんなことはない、混乱した時こそ冷静に行動しないと痛い目を見ると経験から学んでいるのでね。それに、緊迫しているときほど先ほどのような冗句が冷静さを生み、解決策を与えてくれるものだとも思っている」

「一歩間違えれば何も考えて無いばかじゃな。どうでも良いが、その無駄に偉そうな話し方どうにかならんのか? わし一応おぬしより長生きしとるんじゃが」

「それはできない。私は相手が目上だろうが目下だろうが万人に対して同じ姿勢を貫く事にしている。個性として受け止めたまえ」

「下手をしなくても周りが敵だらけになると思うんじゃが」

「そんなことよりご老体、まだ私の質問に答えていないぞ。早く私の現状を説明したまえ」

「おお、そうじゃったの。はっきりいうがの、おぬし、死んだぞ」

 

 

   ●

 

 

 ……は?

 

 

「……すまないご老体、今少々聞き取りづらくてね。もう一度言ってはくれないか?」

「じゃから死んだんじゃて、おぬし」

「……ご老体」

「何じゃ?」

「自覚は無いと思うので控えめに言わせてもらうが、あんた頭おかしいぞ、ボケが始まったのではないか? よければ良い医者を紹介するぞ?」

「控えめという言葉を考えた人に土下座してこい。ともあれぼけとらんわ!」

「ご老体、ボケた人間は皆そう言うんだ。狂人が自分の事をまともだと思っているようにな」

「それおぬしにもぶーめらんするぞ? ともあれわしの話を最後まで聞けい。話はそれからじゃ」

「良いだろう、話を聞こう」

「本当に偉そうじゃのう。怒りや呆れを通り越して感心してきたわい。まあともかく説明を始めようかの」

 

 

   ●

 

 

「……ここは死後の世界じゃ。それで儂は神じゃ。

 

「ああ、突っ込みは後にせい。今は儂のたーんじゃ。

 

「なに? 慣れない横文字は使うな? いいじゃろ別に、儂の勝手じゃ。

 

「ともあれ話を戻すぞ。

 

「まず大前提として、おぬしは死んだ。とらっくにはねられての。覚えておらんか?

 

「夢ではないぞ、すべて本当にあった事じゃ。全身を強く打ってほぼ即死じゃ。その時の様子を見てみるか? かなりむごいぞ?

 

「……まあそのほうがよかろう。あまり見たいものでもないしな。

 

「……ああ、あの子どもなら無事じゃよ。投げられたときに尻を打ったぐらいでの。 

 

「……まあ目の前で人がはねられたのを見てしまって、少々精神的に参っているようじゃがの。

 

「……まあ、今のかうんせりんぐ技術はなかなかのものじゃからの、何とかなるじゃろう。

 

「……まあその子の話は置いといてじゃ、今はおぬしの話をするぞ。

 

「本来の運命なら、あの子どもはあの場でとらっくにはねられ、死んでおるはずじゃった。

 

「……そう、じゃが生きておる。運命が変わってしまったのじゃ。おぬしの影響での。

 

「……ああ、別に怒っておるわけではない、驚いてはいるがの。

 

「本来運命は人間にはそうそう変えられぬものなのじゃ。たとえ命を懸けたとしてもの。

 

「これは絶対の法則じゃった。……おぬしの事例を除いての。

 

「確かに運命は不変のものではない。

 

「じゃが、もし運命を変えようとすれば、とても大きなえねるぎーが必要となる。

 

「そのえねるぎーは人間一人の命程度ではとても賄いきれるものではない。

 

「極々まれに大きなえねるぎーの魂をを持って生まれる者もおる。

 

「歴史に名を残す英雄たちじゃの。

 

「運命を変えるならば、そのようなある種の先天的な能力を持つ者が、多くの人々を率い、立ち向かってゆく必要がある。そこまでしてやっと可能性が見えてくる程度じゃがの。

 

「無論おぬしにはそんな才能はない。確かじゃ。何度も調べたからの。

 

「もともとそうほいほい出てくるような能力ではないからのう。次に出てくるのは何十年、何百年先じゃろうかの。

 

「じゃがおぬしは、その法則を覆しおった。

 

「死ぬはずじゃった命を、自分の命一つですくいおった。

 

「これは英雄でもなかなかできることではない。それほどのことじゃ。

 

「それ故に、儂はおぬしにとても興味を持った。

 

「じゃからの、おぬし、……転生してみんか?」

 

 

   ●

 

 

「転生?」

「そうじゃ、転生、生まれ変わりともいうかの」

 

 いきなりあらわれて変なことを言い続けた爺さん(自称神)が、さらにわけのわからんことを言い出した。

 

「なんでそんなことをしなければならない? さっさと天国なり地獄なりに送ればいいだろう?」

「まあそれでもいいんじゃが、おぬしのような存在に前例がなくての、下手に運ぶと何が起こるかわからんのじゃよ。それに個人的におぬしに興味を持っておる者もおっての、まあ儂もその一人じゃが。ともあれ、何が起こるかわからんのならば、もっと観察しようということになっての、じゃからおぬしをどこか別の世界へ転生という形で送り込もうと思ったんじゃ」

「……突拍子がなさ過ぎて訳が分からないが、まあご老体の言いたいことは分かった。要するに私という存在が世界にどのような影響を与えるのか実験してみよう、ということか」

「うむ、そんな感じじゃ」

「……ところで、ここは私たちの世界で言うあの世、というものなのだね? それにしてはらしくないな。どう見ても少し殺風景な和室でしかない」

「ふむ、もともとこの場所には決まった形というものがないのでな、とりあえずおぬしが落ち着きそうな形にしてみたのじゃが、違和感があるならもっとわかりやすくしようかの? ……ほれ!」

 

 そういいながら爺さんがいきなり手をたたいた。

 するといきなり座っていた畳が水に浮かぶ大きな蓮の葉になり、辺りは見渡す限りの蓮の花だらけになり、空には天女が天使と踊っており、少し離れた蓮の葉の上ではキリストと釈迦らしき人物が朗らかに談笑していて、そこに天照大御神らしき女性も加わりさらににぎやかになっていって――

 

「……いろいろ突っ込みどころはあるが、とりあえず混ざりすぎだ。今すぐさっきの場所に戻してくれ。こんな混沌とした場所では落ち着けない」

「そうかの、あいわかった。では――」

 

 また爺さんが手をたたくと、周囲の風景は先ほどの和室に戻った。

 

「さて、これで儂が神だと信じてもらえたかの?」

「……なぜ私が疑っていると?」

「そんなもん、おぬしの心を読んだからに決まっておろうに」

「……なるほど。確かに今ので疑いはだいぶ薄まった。あなたを神だと認めてもいい」

「ほっ、そうかの。それはよかった」

「それで、私はこれから何をすればいい?」

「転生してくれるのかの?」

「別にかまわない。なかなかできん体験ではあるからな」

「そうか、ありがたいの。では、今回の実験について話して行こうかの」

 

 

   ●

 

 

「ではとりあえず、転生するに当たりいくつか説明することと決めておくことがある。

 まず一つ、転生先はおぬしの世界にあったある物語の世界をべーすにした世界になること。

 二つ目に、その世界では何をやってもよいものとする。基本的に今回の話はおぬしが世界にどのような影響を及ぼすか確かめるためのものじゃからの。たとえ本来の物語から大きく外れてもいいように世界を作ったので、世界そのものを壊さない限り、何をしてもおーけーじゃ。

 三つ目に、今回の実験に期間はない。おぬしには不老不死に傷の自動修復機能も付けられることになる。じゃから好きなだけ新しい世界を楽しんできて良いぞ。本来おぬしにはする必要のない事をさせているわけじゃしの。これくらいはさーびすじゃ。やめたくなったらそう願えばいい。そうすれば実験は終了し、おぬしを普通の魂と同じように扱うことを約束しよう。

 四つ目に、これから行く世界には、今までの体と名前は持っては行けぬのでな。新しい姿と名前を決めてもらいたいんじゃ。 

 そしてこれが最後じゃが、おぬしには転生するに当たり、願いを三つかなえてもらえる権利を持つ。新しい世界に備えるため、いろいろ必要なものをそろえるためのものじゃ。よく考えて決めなさい。

 さて、説明はざっとこんなもんじゃが、何か質問はあるかの?」

 

「私が行くことになる世界とは何の物語をベースにしているんだ?」

「まあ、儂らも何でもよかったのでな、とりあえずおぬしが生前読んでおったものの中から適当に選んでおいたぞ。えーと、……魔法先生ネギまという物語をべーすにした世界じゃ」

「ほう、あの物語かね。それはまた興味深い……。では次の質問だ。三つ願いをかなえるといったが、どんな願いでもいいのか?」

「ああ、構わんぞ。さすがに『転生したくない』とか、『自分も神にしろ』とか言うのは無理じゃがな。きちんと転生してくれるなら、たいていの願いは叶えてやれるぞ」

「……転生と言うと、新しい命として赤ん坊からやり直すことになるのかね?」

「いや、その世界にいきなりあらわれた、という形を取ってもらう。おぬしはその世界の構成物ではなく、あくまでいれぎゅらーとして動いてもらうことになるからの、おぬしの意図に反したつながりは極力避けねばららんのじゃ」

「……なるほど。では転生する時間と場所は指定できるのか?」

「できる。その指定がなければ原作開始時に放り出すつもりじゃったからの。希望があるなら叶えよう。無論原作より未来、というのは遠慮してほしいがの。ああ、この指定は三つの願いとは別に扱われるからの、願いの数が減ることはないから安心せい」

「……ふむ、大体分かった。質問はそのくらいだ」

「そうか。では早速、準備に入ろうかの。ではまず姿の設定じゃ。なりたい姿を想像せい」

「わかった。…………こんな感じでどうだ?」

「ふむ、これでよいのか? では変えるぞ」

 

 神がそういった瞬間、私の体は大きく揺れた。 

 だがその揺れもすぐに終わり、その時にはもう私は私ではなくなっていた。

 神はどこからか出してきた姿見をこちらに向け、

 

「どうじゃ? 希望通りになっておるか?」

 

 そこに映るのは、背丈は大学生ほど、サイドに白髪の一筋入ったオールバックの鋭い視線を持つ顔だった。

 

「うむ。想像通りだ。素晴らしい」

「ほっほっほ、それはよかった。では次に、名前を決めてもらおうかの。その姿で、おぬしはなんと名乗る?」

「ふむ、ではこの姿の持ち主から名前も頂こうか。いいゲン担ぎになるだろう。私はこれから、『ミコト』と名乗ることにする。苗字はないほうが楽だし、漢字は理解できない者もいるだろうからな。カタカナ三文字で『ミコト』だ」

「……よし。登録完了じゃ。ではミコトよ、願いを三つ言うがよい」

「まず一つ、私の気と魔力を、これから行く世界においての最高クラスにしてほしい」

「ほっほっほ、構わんよ。その願い、聞き届けよう。」

「二つ目は、私に、能力を作る能力を与えてくれ」

「ほっ! ずいぶんちーとな能力じゃのう。何でもできてしまうではないか。……まあ良い、その願い、聞き届けよう。」

「では最後に、……私が今までいた世界において、私の存在のみを消してくれ」

「ほ……? どういうことじゃ?」

「私が死んだことで悲しむものや困るものがいるのは忍びない。私がしてきたことの結果だけは残し、私の存在を完璧に消してくれ。それができなければ、あの世界にいる誰かにかたがわりしてもらってもいい。とにかく私の存在をなかったことにしてくれ」

「……本当にいいかの? 辛くはないか?」

「私はあの世界ではもう死んでいる。今更戻れないなら、いなかったことにしたほうがあの世界の私の関係者はもちろん、私自身も気が楽だ。彼らの悲しむ顔を想像しなくてもよくなるのだからね」

「……そうか、わかった。その願い、聞き届けよう。では最後に、行きたい場所と時間を指定しなさい」

「場所は誰も入ってこれない森の奥深く。時間は原作開始の七百年前で頼む。不老不死だというのならば百年位はゆっくり修行して、力をつけてからゆっくり世界を回るのもいいだろう」

「そうか、わかった。おぬしの希望を聞き届けよう。ついでに、向こうできるろーぶもくれてやろう。おぬしが想像した姿はすーつを着ておったが、おぬしが希望していた時代にすーつはないからの。……さて、これで前準備は終了じゃ。あとはもう、新たな世界へ旅立つだけじゃな。何か聞きたいことは有るかの?」

「……いや、もうない。これで十分だ」

「そうか。では……。ふん!!」

 

 神はいきなり、足元の畳を平手でたたく。 

 すると、あんなにぴっちりはまっていた畳が一枚起き上がりその下を見せる。

 そこを覗き込んでみると、ちょうど畳一畳分の穴が開いており、下に降りるための階段が暗闇の奥底まで続いているのが見えた。

 

「ここをずっと降りていけば、おぬしが希望した誰も人が寄り付かぬ森に出られるぞ。中は暗いからな、これを持って行け」

 

 神はそういって、松明を手渡してきた。

 

「ああ、わかった。何から何まで世話になったな、神よ」

「結局おぬしは最初から最後までそのしゃべり方か。少しは儂を尊敬したらどうじゃ?」

「何を言う。尊敬しているとも。私のわがままをすべて聞いてくれた者だぞ、尊敬しないはずがないではないか。私はそれが表に出づらいだけだよ」

「左様か。……まあ、気を付けてな」

「ああ。次に合うのは私が生きるのに飽きた時になるのか。では、もう二度とあなたに合わないことを祈ろう、ご老体」

「ああ、せいぜい楽しんでくるとよい」

「では、さらばだ、おせっかい焼きの神よ」

「二度と来るな、意地っ張りの不思議人間」

 

 そういって笑った神を見て、私は階段を下りて行った。

 

 

 これからの世界が楽しいものであることを期待しながら……。

 

 

   ●


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