デート・ア・ライブ パラレルIF   作:猫犬

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2話から連日投稿中。
それ故、話数注意です。


7話 天使と魔王

斬撃に呑まれた七罪と二亜、炎に包まれた八舞と六喰、光線に包まれた琴里と四糸乃と折紙、空気の放流に巻き込まれた十香と美九と狂三は気が付くと、真っ白な空間にいた。

精霊たちは辺りを見回すが、真っ白い空間なだけで何も無く、別の場所にいたはずのメンバーがいることに驚く。

 

七「なんでみんなここにいる訳?というか、ここ何処?」

二「うーん、確かすんごい量の斬撃が飛んで来て……あれ?その後どうなったんだろ?」

九「分かりませんねー。というか、私腹貫かれて倒れた気が……」

八「思案。我も炎に包まれたのは覚えておるが」

四「あの……あなた誰ですか?」

六「むん、二人が合体した姿なのじゃ!」

五「えっ?そんなことできたの?」

三「まぁ、精霊なんてなんでもありですからね」

一「それよりここは?たしか私も致命傷レベルの攻撃を受けた気がするけど」

十「私もだな。……と言うことは、私たちは死んだのか?で、ここはあの世とやらなのか?」

 

状況が分からず、各々口を開くと、十香のあの世説が一番ありそうな気がしてしまう精霊達だった。こうして、精霊達は士道救出に失敗し、人類が滅ぶのを待つだけに……

 

「いや、ここはあの世じゃないからねぇ!」

 

精霊たちがそんなことを思っていると、唐突に真っ白な世界に声が響き、声がした方を向くとそこには霊装を纏った千花が腕をぶんぶん振っていた。普段の霊装は紺と白なのに、今纏っているのは黒と白の配色のメイド服だったが、どちらかといえば千花がいること、ここが何処なのかが気になっているため、誰もそれについては気にしなかった。

そして、死者と聞いていた千花がこの場にいることで、やはりここは死後の世界なのだと思う精霊たちだった。

 

「いや、だからここは死後の世界じゃないからねぇ!」

「じゃあ、ここはどこなのだ?」

「うん、精神世界?というか士道君と皆のパスを無理やり繋いで作った空間?」

 

千花は十香の問いに曖昧な返答をすると、千花の真後ろの空間がゆがむ。千花は頬を掻いて困った顔をする。

 

「説明したいけどこの空間そんなに長く持たないからねぇ。てことで始めるよぉ。来て、<死之龍(サマエル)>」

 

そして、歪みが消えると一体の黒い蛇龍が出現する。体長は二、三メートルなのだが、龍の中から膨大な霊力を感じ、突然の龍の出現に困惑と警戒すると、龍は千花の隣に移動し、千花は龍の頭を撫でる。

 

「えーと、千花。その龍は?」

「ん?この子は私の魔王だよぉ」

「魔王って……ちーちゃんって反転してるんですか?反転した時の天使的立ち位置ですよね?」

「うん。この子は魔王だけど、私はなんと反転してないよぉ。まぁ、反転時の霊装ではあるけどねぇ。それともいつもの方がいいかなぁ?」

 

千花は首を傾げると、パンッと手を叩くといつもの紺と白のメイド服の霊装に戻り、龍もスコップに姿を変える。千花は<死之果樹園>を担ぐと、「これでいいのかなぁ」と呟く。

しかし、千花の呟きも目の前の光景により誰も答えることは無かった。

 

「……あなた何者なの?」

 

琴里はハッとすると、千花を見てそう呟く。反転しているはずなのにいつもと性格も変わらず、天使と魔王を自由に顕現できることに疑問を持つ。千花は琴里にそう聞かれたことで「あぁ」と納得してポンと手を打つ。

 

「精霊ですぅ!(ドヤァ)」

「いや、こんな天使と魔王を自由に扱える精霊なんて私知らないわよ」

「でも精霊だもん。それ以外の答えは私も知らないよ。それでも知りたかったら澪ちゃんにでも聞いてよぉ」

「なんでそこで、あやつの名前が出てくるのだ?」

「ん?だってずっと私の中にいたんだもん。というか言わなかったっけぇ?」

「えぇ、初耳だわ。つまり、ずっと澪の存在を隠していたって訳ね」

「ん?聞かれなかったからねぇ。それに本当は澪ちゃんもこんなに大胆に動く気は無かったんだよぉ。皆は澪ちゃんが人類殲滅したがる理由知っているのぉ?」

 

千花は首を傾げてそう聞く。琴里たちは千花の問いに対して、地下施設で澪の口から聞いた言葉を思い出す。

 

「たしか、士道を<ラタトスク>が殺そうとしたからだったかしら?」

「あぁ、ちゃんと聞いてたんだねぇ。澪ちゃんの事言わなかったのはそういう約束だしぃ。幻滅したぁ?」

「そう……で、千花はそっち側なの?」

「ううん。私は精霊の味方だよぉ。だからどっちの味方な感じぃ?」

「ふむん。それでむくたちをこの空間に呼んだ理由は何なのじゃ?」

 

六喰は周りを見回して疑問を口にすることで、やっと本題に入ることになった。

 

「あぁ、そうだねぇ。この空間もあと数分だからねぇ。このままだと皆、澪ちゃんに殺される訳なんだよぉ」

「ズバッというわね。確かに危機的状況に陥っているけど……」

「と言う訳で、皆にこの危機的状況を覆す力を上げようかなと思ってねぇ。というか、その為にこの空間に皆を呼んだんだよぉ」

「そうなの?というか、そんな力って……」

 

千花の言う覆す力とはなんなのかわからず七罪が首を傾げると、辺りの空間がゆがみだす。そろそろこの空間の維持が困難になったようだった。

千花は辺りの空間が崩壊し始めたことに肩を竦めると、地面をタンッと蹴り、千花の霊装が輝き出す。輝きはすぐに収まり、千花の霊装が黒と紺と白を基調としたものとなり、その手に<死之果樹園>、千花の真後ろに<死之龍>が浮いていた。

 

「うーん。やっぱり、即興で作った空間だからこんなもんだよねぇ。じゃぁ、簡単に説明するねぇ。まぁ簡単だよぉ。準備はすでに終わってるしねぇ」

 

そして、千花は手短に説明すると、精霊達は千花の話を聞きながらそんなことが可能なのかと首を傾げたりしていた。話が終わり、千花が腕を動かすと<死之龍>が何も無い空間に向かって黒い光線を放つ。

 

「じゃぁ、そんな感じでぇ。私はそっち行けないから後は任せたよぉ」

 

龍の光線が着弾した空間には、この真っ白な空間から外に出る穴が出現する。千花は伝えることは伝えたので、後のことを精霊たちに任せる。精霊たちはまだ聞きたいことがあったが、この空間の崩落もすぐだと察して質問を呑み込む。

 

「千花、聞きたいことはあるけど、今は士道救出を優先するわ」

「うん、いってらしゃーい。ここでみんなの無事を祈っておくねぇ」

 

千花は最後までいつもの調子で言い、各々出口から出て現実世界に戻っていく。そして、最後に七罪が出ようとすると、何かを思い出したかのように足を止めて振り返る。

 

「そう言えば、真那知らない?昨日から見てないんだけど……と言っても千花が知る訳無いわね――」

「真那ちゃんなら私が澪ちゃんに身体を渡す前に頼み事してその頼み事をしに行ってもらってるよぉ」

「えっ?なんで……」

「ん?なんで七罪ちゃんが聞いたのに驚いてるのぉ?」

「いや、知ってると思わなかったから。それで、真那は何やってるの?士道が大変な時に。もしかして、真那は澪サイドなの?」

 

千花が真那のことを知っていたことに驚き、千花は七罪が驚いていることに首を傾げると、七罪はハッとして問う。

 

「真那ちゃんも私と同じで精霊を救うサイドだよぉ。士道君の方に行けない理由があるんだけど、それは言えないよぉ」

「なんで言えないの?」

「言えないものは言えないのぉ。ほらほら、そろそろ行かないと戻れないよぉ」

「ちょっ、千花!じゃぁ、澪の本当の目的は何なの!?」

「へ?」

 

七罪は自棄になってそう言うと、千花は呆気にとられポカーンとした。七罪は千花がポカーンとしていることに驚くと、千花はハッとして口を開く。

 

「何のことぉ!?澪ちゃんの目的は人類殲滅って言ってたでしょぉ!なんでそう思うの?」

「その割に私たちをなかなか倒さなかったし、ASTもユニットを壊しただけで死なせてないし。それに、空間震で誰も被害に遭ってなかったから。だから、本当は人類殲滅する気ないんじゃないのかと思って」

「なるほどねぇ。まぁ、澪ちゃんの目的が何なのかに関しては知っていても教えられないよぉ。そして、チャンスぅ!」

 

千花はそう言って、七罪の気が逸れた一瞬で押して、七罪は穴に突っ込まれた。

 

「じゃぁ、そう言うことで。また後でぇ」

「えっ?」

 

穴に入っている状態で千花はそう言い、七罪は千花の言葉を聞いて疑問を持ち、聞き返そうとしたが、穴が閉じてそれ以上聞くことはできなかった。

誰もいなくなった空間に残った千花は、大きく伸びをすると、

 

「さて、じゃぁ私も準備を進めるかなぁ。    <死之果樹園(サマエル)>――【成長(グロウ)】」

 

<死之果樹園>を地面に突き刺した。そして、真っ白な空間――士道と精霊達とのパスは大きく揺らぎ、千花の能力が精霊たちに発動されたのだった。

 

 

 

~☆~

 

 

 

真っ白な空間から戻った直後、七罪と二亜の視界には相当な量の斬撃が迫ってきていた。しかし、斬撃が二人に届くことは無かった。

 

「があぁー」

 

澪によって倒されたドラゴンが迫りくる斬撃に向かって光線を放ち、全て消滅させていたことで。澪が七罪に放った斬撃を七罪が回避した際に、倒れていたドラゴンに斬撃が当たり、倒される前まで時間が戻ったことで復活していた。澪は首を傾げたがすぐにその結論に至り納得する。

そして、二人にかかっていた【七の弾】の効果が切れて身動きが取れるようになる。

 

「まさか、私の攻撃を利用するなんてね」

「……偶然なんだけどね」

「まぁ、伏線は張ってたからね」

 

二人はそんな調子で澪に言うと、澪は「はぁー」と息を吐く。澪としてはそろそろ計画を次に移したいのだが、二人にこれ以上期待ができないので、どうしたものかと考える。

 

「というかさ、なんで二人は人類殲滅を止めたいわけ?七罪ちゃんは士道に会う前まで人間に嫌悪感抱いてたじゃん。二亜ちゃんだってDEMに捕まって実験の日々で人間嫌いになって、だから二次元に恋したわけでしょ?」

 

澪は二人に向かってどこか挑発じみた、或いは戦意の喪失を狙ったような言葉をかける。何故急にそのようなことをしようとしているのか?と疑問に思う二人は返答に困る。澪の言っていることは確かに事実ではあるから。

 

七罪(確かに私は今の姿じゃ誰にも相手にされず、<贋造魔女(ハニエル)>で変身したら態度が一変したことには腹が立った。はっきり言って人に対して嫌悪感があったし。でも……)

二亜(うーん。DEMに実験されたし、あの頃は本当に人間嫌いだったよねー。<囁告篇帙(ラジエル)>もあったから考えていることも知れたし。だから二次元のキャラという絶対に私を裏切らない物に逃げちゃったわけだし。でも……)

 

「確かにそうだけど、士道に会ったからかな?今はそんなに嫌悪してないわ。だから、人類殲滅はさせるわけにはいかないの」

「まぁ、少年に会ったからかな?今はそんなに悪いモノとは思ってないよ。それに、少年もこうすると思うしね」

 

二人は気持ちの整理が付いているから、澪の言葉を聞いても特に気持ちは変わらなかった。そして、二人が自分の意思を口にしたことで、二人の身体の中から霊力が溢れ出す。澪はちょっと予想外の返答だったので、「ふーん」と言って、二人の中から霊力が溢れ出したことで複合天使を構える。

そして、澪の複合天使に対する対抗手段が二人には無いので、澪は何かされる前にケリを付けようと、再び斬撃を飛ばそうと複合天使を振りかぶる。

 

「おや?まだ何かあったんだ。まぁ、何かされる前に終らすけど」

「これって、千花の言ってた合図かな?」

「たぶんね。てことでなっつん、とりあえず始めるよー」

「うん」

 

千花の言っていた澪の複合天使に対抗する手段が行けるのを感じ、二人は言葉を交わす。澪はそんな二人の邪魔をしようと斬撃を飛ばすと、ドラゴンが飛び出して二人の前に出て、爪で斬撃をかき消す。澪はドラゴンに邪魔されたことで嫌な顔をしていた。

その間に、二人は集中し、霊力を一点に集める。

何をすればいいのか二人とも分かっており、頭に浮かんだ名前を口にする。

 

「行くよ!<神蝕篇帙(ベルゼバブ)>」

「来て!<変刻魔女(バアル)>」

 

そして、二人は凛とした声でそう言うと、二人のもとに霊力が収束し、魔王が顕現する。二亜のもとには一冊の巨大な本、七罪のもとには小さな手鏡が。

 

「……本当に出てきたし」

「やってみるもんだね。なっつん、ここからは私たちのターンだよ」

 

二人とも魔王を顕現させると、自然と魔王の能力を理解し、二亜は<神蝕篇帙>を開き、周囲に紙吹雪を起こしてページをばら撒く。七罪は右手に<贋造魔女>左手に<変刻魔女>を握ると、足元の石を蹴り上げて<贋造魔女>を振るい石が光に包まれる。石から鉄球に変わり、直後に<変刻魔女>を振るって鉄球を光が包み、鉄球は蹴られた勢いで澪のもとへ飛んで行く。

澪は二人が魔王を顕現させたことに驚くと、即座に意識を切り替えて飛んでくる鉄球を複合天使で斬り裂こうと振るう。ただの鉄球なら斬り裂けるので、澪は斬り裂けると思っていたが、何故か鉄球は斬り裂けず、澪は斬るのを止めていなすことで潰されるのだけはなんとか避けることに成功する。

 

「今のは?」

 

澪は今の不可解な現象に疑問を持つと、<神蝕篇帙>のページが輝き、ページの中からいろんなものが飛び出してきた。

 

「二亜、なんでシルブレの敵キャラ出してるのよ!」

「おお、一部のヴァンパイアと二部のリビングデッドと三部の名伏しがたき方々だー」

「おや?知ってるんだ」

「うん、絶賛私の本体が暇して読んでるよ」

「人類滅ぼそうとしてる人が何やってんのよ!」

 

二亜が召喚したシルブレの敵キャラを理解して、尚且つ今読んでいると聞いて七罪がツッコんだ。しかし、澪はさして気にせず、敵キャラを複合天使で斬り裂き、時に強風で飛ばし無力化していく。

 

「なっつん、ツッコんでないでこのまま押し切るよ!」

「あっ、うん。<贋造魔女(ハニエル)>――【千変万化鏡(カリドスクーペ)】」

 

七罪は本日三度目の【千変万化鏡】を使い<鏖殺公>に形を変える。そして、<変刻魔女>を<鏖殺公>に振るい光に包まれると、<変刻魔女>をズボンのポケットに刺し、両手で持って地を蹴ると澪に向かって<鏖殺公>を振るう。澪は複合天使で<鏖殺公>の攻撃をガードし、直後に【四の弾】の能力で<鏖殺公>の時間を戻して消滅させようとする。

 

「無駄だわ。【四の弾】の能力は効かないわ」

 

七罪がそう言うと、<鏖殺公>は本当に能力が効いていなのか消滅する気配が無かった。七罪はその状態から連撃をして澪に攻撃をし、澪はその攻撃を捌いていく。七罪の攻撃の合間を縫って、二亜の召喚した敵キャラも澪に攻撃を加えていき、澪は無限に続く攻撃を複合天使と強風、炎、氷とありとあらゆる力を使って対処する。召喚している二亜は<囁告篇帙>に何かをかきこんでいた。そして、全ての攻撃を捌くのが面倒になった澪は……

 

爆発した。

 

といっても、自身の周囲に霊力の爆発を起こしたので澪自身は爆発してないが……。

敵キャラたちは爆発に巻き込まれて消えていき、七罪は巻き込まれる直前にバックジャンプし、ポケットから<変刻魔女>を取り出すと足元の地面に向ける。

そして、爆発が晴れると、そこには澪だけが立っていて少し離れた場所に二亜が立っていた。

 

「なっつん、無事~?」

「うん。なんとか」

 

二亜はさして七罪の心配をしていないのか、いつもの調子で七罪の名前を呼ぶと、七罪は爆発の直前に地面を陥没させて地面に潜ったことで爆発から逃れていたので、呼ばれて地面の穴からひょこっと顔を出したのだった。

 

 

 

~~~~~

 

「うう、変な気分ですよー」

「遠慮しておきますわ」

「ところで、私ギター弾いたことないんですよねー」

「ていっ!」

「なるほどね。まぁ、そうなっちゃうよね」

「飛ばしていくのじゃー」

 

「発言。お主に格の違いを見せてやろう」

 

次回 “反撃”




ちなみに魔王の設定等は自分の勝手な想像ですので。二亜の魔王も原作だとわからない点が多いですし。

では、また明日。ノシ

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