デート・ア・ライブ パラレルIF   作:猫犬

98 / 144
2話から連日投稿中。
それ故、話数注意です。


6話 <複合天使>

「へぇ、自力で元に戻る方法見つけちゃったんだ。まぁ、それは君たちの本来の姿じゃないんだけどね」

「確認。我が過去をお主は知っているのか?」

「ううん、知らないよ。今の君の過去はね」

「むくを置いてきぼりにするなじゃ」

 

澪が八舞の姿を見て感心すると、八舞の過去を知っているような口調に疑問を持つが、六喰は自身がのけ者にされている気がして<封解主>をぶんぶん振り回して抗議をしていた。

澪は話す気が無いので、周囲に<氷結傀儡>と<灼爛殲鬼>と<絶滅天使>を顕現させる。

 

「じゃぁ、そっちが本気みたいだし、私も見せてあげるよ。複合天使をね」

「複合天使……じゃと?」

「<氷結傀儡(ザドキエル)>――<灼爛殲鬼(カマエル)>――<絶滅天使(メタトロン)>――【複合(コネクト)】」

 

そう言って、三体の天使を重ね合わせるとそこには、四肢に<灼爛殲鬼>の刃のクローを、背に<絶滅天使>を纏った<氷結傀儡>がいた。

今までにない天使を見て二人は困惑していると、天使が動き出す。天使は一歩踏み出すと、一瞬で光速移動した。

 

「なッ!」

「ぬッ!」

 

二人は狼狽すると、即座に八舞が六喰の服を掴んで光速で突っ込んでくる天使を避けようとする。しかし、光と風では差が圧倒的で光速で移動したことによる余波で二人は吹っ飛んだ。

空中でグルグル回ってなんとか体勢を整えると、再び天使が方向転換して突進を行おうとする。六喰はこのままだと回避は困難なので、<封解主>を空に刺し、

 

「<封解主(ミカエル)>――【乱雑孔(エグゼス)】」

 

そのまま横に一閃する。すると、周囲一帯に穴がたくさん開く。六喰は八舞の手を引いて手短な場所に適当に入る。そして、真逆の方の孔から出てくると、天使は止まれず二人が入った孔に突っ込み、二人が出てきた孔とは別の孔から出て来て地面に突っ込んだ。

 

「あれ?同じ孔に入ったのに出てくる場所が変わった?」

「むん、これが孔の繋がりが常に変化し続ける【乱雑孔(エクゼス)】なのじゃ」

「疑問。あんま使う用途があんまり分からないんだけど?」

 

六喰が言って、八舞は首を傾げると、六喰は真の使い方を見せる。六喰が一閃すると澪の周囲に孔がいくつも展開され、六喰は適当に石を投げ込む。すると、石は澪の後ろの孔から飛び出し、澪が回避すると、石はそのまま向かい側の孔に入り、別の孔から飛び出して澪に向かって飛んで行く。澪はその度に回避するが、その度に孔に入って無限ループしていた。

 

「もう!」

 

澪は無限ループにムッとすると、飛んできた石をキャッチしてループを止める。

 

「こんな感じなのじゃ!」

「あっ、うん」

 

六喰はドヤ顔すると、八舞は頬を掻いて乾いた返事を返す。【乱雑孔】の使い方が分かった訳なのだが……

 

「「地味」」

「こういう地味なのが一番えぐいのじゃー」

 

八舞と澪が口をそろえてそう言うと、六喰は<封解主>をぶんぶん振り回してそう言った。そして、<封解主>を振り回したことで、いたる場所に孔が展開される。そして、怒った六喰は空間に穴を開けて、隕石を出し、

 

「これなら地味じゃないのじゃー!」

「「何処から出したの?」」

 

【乱雑孔】で作った孔にぶっこんだ。その結果どこから隕石が飛んで来るかもわからず、尚且つ石みたいにキャッチできるものでもなく、澪は頭を掻くと、

 

「ならばこちらも!」

 

澪は天使に指示して複合天使が【乱雑孔】に突進し、こうして二つの危険物がランダムに三人を襲うという事態になったのだった。

 

「動揺。結局何がしたい訳!?」

「ほらほら、あの質量に轢かれたらただじゃすまないよ」

「今なのじゃ!」

 

三人は各々回避し、八舞がツッコミを入れると、ちょうど隕石も複合天使も穴に入り、六喰がそう言うと一斉に【乱雑孔】で作られた孔が閉じられた。結果、隕石も複合天使もこの場とは違う何処かに生じた孔から飛び出し、この場から消えた。

 

「これで、お主の天使は消えたのじゃ!」

「来なよ」

 

六喰は複合天使をこの場から消せたことに喜ぶが、澪は全く焦らず、そう呟くと、澪の前に複合天使が現れた。

 

「なぬ!」

「光速で動くんだから、一瞬で帰ってこられるよ」

「思案。なるほど、確かに光の速度なら、地球上であればすぐだな」

「……むん」

 

六喰が作戦失敗したことに落ち込んでいると、八舞は何故か納得していた。

 

「まぁ、ぼちぼち他のところも終わりそうだし、終幕としようか」

 

澪は他の分身体の状況が分かるのかそう言うと、手を上げて、すっと振り下ろした。ただそれだけの動作で、複合天使は背についている羽から炎、氷、光線が放たれ、二人は回避すると、六喰の回避した先に複合天使が先回りしており、クローのついた前足で六喰を叩き、六喰は<封解主>でガードすると、勢いがあり過ぎて地面に叩き落された。

 

「六喰!」

「があぁー」

 

八舞が六喰に気が向いて視線を逸らした刹那、複合天使は八舞の前に移動しており、

 

「しまった!」

 

八舞にも複合天使は前足を振り上げて、地面に叩き落とすと、複合天使は口に炎を集めて一気に地面に向かって放ち、空間震跡は見る間に炎に包まれた。

 

 

 

~☆~

 

 

 

「ほらほら、どうしたの?防戦一方だよー」

 

澪は二振りの<灼爛殲鬼>を振るって、琴里と【獣装】を纏った四糸乃と渡り合い、合間を縫って<絶滅天使>の光線を撃つ。光線は折紙が<絶滅天使>で無力化していたが、澪の出す<絶滅天使>の数が折紙の<絶滅天使>の倍の量あるため全てを無力化することはできず、光線が二人にも飛んで行くため防戦一方になっていた。

琴里は炎の斬撃を、四糸乃は氷の棘を飛ばして澪がガードした隙に距離を取る。

 

「正直厄介ね」

「ですね。手数が多いですし……」

「何か手を打たないと」

「考える時間はあげないよ」

 

澪は即座に琴里、四糸乃のもとに移動し<灼爛殲鬼>を振るう。二人は天使でガードすると、上空が輝き、

 

「<絶滅天使(メタトロン)>――【砲冠(アーテイリフ)】」

 

三人の真上に移動した折紙は<絶滅天使>を澪に向け、【砲冠】を放つ。二人は<灼爛殲鬼>に蹴りを入れるなりして距離を取り、澪を【砲冠】の光線が包む。数秒して【砲冠】が解かれ、三人は一か所に集まる。そして、澪がいた場所に目を向けると、

 

「いやー、びっくりしたぁ。死角からの攻撃は確かにありだけど、たくさんの天使を使える私の場合はいくらでも対処法があるよ」

 

澪は<灼爛殲鬼>と<絶滅天使>を消して腕を上にあげて、風と霊力の障壁で護りきっていた。三人は今のでもノーダメージなことに呆気にとられると、澪はパンッと手を叩く。

 

「うーん、向こうもあれ使ったことだし、私も使おうかな?」

「まだ何かあるっていうの?」

「まぁね。じゃぁ、見せてあげる」

 

澪は周囲に手をかざすと、<破軍歌姫>、<囁告篇帙>、<贋造魔女>を顕現させる。

(何をする気?いきなり三体も天使を顕現させて……)

 

「<破軍歌姫(ガブリエル)>――<囁告篇帙(ラジエル)>――<贋造魔女(ハニエル)>――【複合(コネクト)】」

 

澪は顕現させた天使を一点に収束させ、複合天使を生み出す。

 

「なに……これ」

 

そして、現れた複合天使はこの空間のいたる場所に銀筒として現れた。琴里は見たことのない天使に言葉を溢す。四糸乃と折紙も困惑の色でそれらを見ていた。

 

「見ての通り、天使を合わせた複合天使。私のとっておきだよ。ってことで」

 

澪は再び手をパンッと叩くと、銀筒に霊力が収束し音として周囲に放たれる。三人は各々天使でガードか回避をして何とかしのぐが、数が多い為無傷では済まなかった。

その為途中から四糸乃が周囲に氷の壁を張って攻撃を弾いていく。

 

「おやおや、音じゃ弾かれちゃうか。じゃぁ、攻撃方法を変更しようかな?」

 

四糸乃が張った氷を見て、澪は手に本を出してさっと何かを書き込む。そして、そばの銀筒にそのページを千切って入れると、音を出していた銀筒から炎が放射される。

結果、氷は解けていき、瞬く間に消滅して三人に炎が襲い、

 

「はあっ!」

 

琴里が周囲に炎を出して澪の放った炎を打ち消して何とかする。直後、折紙は銀筒に<絶滅天使>の光線を撃つ。着弾した銀筒は簡単に壊れ、三人は銀筒から放たれる攻撃を回避しながら澪に接近する。澪は複合天使を操ってはいるが、それ以外は特にないので懐に飛び込めれれば勝機はあった。

 

「まぁ、私の複合天使はこんなもんじゃないんだよね」

 

澪は三人が接近して来ても全く焦ること無く、三人の進路上に銀筒を配置し、なにか書いて放り込む。すると、炎から切り替わり光線が放たれる。

光線すらも回避して、澪の目の前に来ると琴里は<灼爛殲鬼>を振るう。

しかし、攻撃が澪に届くことはなかった。

澪の前に銀筒が出現し、琴里は構わず銀筒ごと澪を斬り裂こうとしたが、澪の前に出現した銀筒は他の物とは段違いに硬く、<灼爛殲鬼>を弾いた。

 

「なら避けて行くだけです!」

 

四糸乃は銀筒を回避して澪の背後から攻撃を仕掛けると、澪の真後ろに銀筒が現れ光線を放つ。四糸乃は左手のクローで光線を弾き、そのまま突き進むと右手のクローを振るう。澪は銀筒を右手のそばに出し、

 

「えっ?」

 

手に持って四糸乃のクローに合わせて振るった。まさかの反撃に四糸乃は目を丸くして驚いた。そこから銀筒を振るわれ四糸乃は両手のクローを振るって対抗していく。そして、たちが悪いことに振るっているとランダムに光線が撃たれていた。何発か撃たれると四糸乃は銀筒の砲門を凍らせて光線を撃てなくする。

折紙は<絶滅天使>で周囲の複合天使を破壊しまくっているが、いくら壊しても結局その分顕現されるので意味が無かった。

 

「そんなことをしても無駄だよ。てことで、そろそろ終わらせようかな」

 

澪は一向に致命傷を与えることも与えられることもないことで飽き、そう言って、巨大な銀筒を顕現させるとそれを横振りし、四糸乃と琴理はガードするが質量差があり、折紙のいる地点まで吹っ飛んだ。

そして、二人は態勢を整えると、三人は澪の方を見て次の攻撃の手を考える。

しかし、三人の周囲には銀筒が四方八方に展開され、その全てが三人の方を向いていた。銀筒と銀筒との隙間も人が出れるような大きさでもない為、回避はできそうになく、

 

「じゃぁね」

 

澪がそう言った直後、全ての複合天使の砲門が輝き、三人は光線の光に包まれた。

 

 

 

~☆~

 

 

 

十香、狂三、美九たちはわんさかいる分身体の澪の分身体に囲まれていた。といっても、狂三も分身体を出したことで、割となんとかなっている。さらに、美九の<破軍歌姫>によって分身体たちも強化されているので危な気は無かった。

澪はそんな状態で、このままでは停滞することが目に見えているので、早速とばかりに展開を動かすことにする。さしあたって、<颶風騎士>と<封解主>を顕現させる。

三人は澪が何かする気なのだと察し、何かされる前にと十香が澪に向かって飛びだすが、分身体が何体も進路上に集まり、十香の侵攻の阻害をする。

そして、澪が顕現させた天使が光り輝き、三人はハッとして天使を見た。

 

「見せてあげるね。私のとっておき。<颶風騎士(ラファエル)>――<封解主(ミカエル)>――【複合(コネクト)】」

 

そう言い、二つの天使を収束させると、そこには一回り大きな<封解主>の鉾のような【穿つ者】の槍のような武器が握られ、柄からは【縛める者】のような鎖が繋がっていた。そして、澪の背には<颶風騎士>の翼が付いていた。

 

「なんだ、あの天使は!?」

「複合天使。複数の天使を扱える私だけが使える力だよ」

「複合天使ですか。これは名前からして」

「はい、面倒そうですね~」

「てことで、早速終わってね」

 

澪は翼を羽ばたかせ、一気に十香の前に飛ぶと、天使を振るう。十香は<鏖殺公>で攻撃をいなし、身体を回転させて回転切りをすると、澪の背の羽が澪の身体を護るように折られ、十香の攻撃を弾く。狂三は翼の隙間に狙いを定めて銃を撃つが、翼を羽ばたかせることによる風で弾かれる。

澪は力を込めて十香を押し返すと、何も無い空を一閃する。すると、一閃された空にいくつもの孔が発生する。そこから大きな岩が射出され、狂三と美九は十香の後ろに下がり、十香は岩を<鏖殺公>で斬り裂いて、二つになった岩をさらに一閃して四つにすると、順次澪に向かって蹴り飛ばす。澪はそれを天使で弾くと、一瞬で岩が砂レベルに分解され風に流されていった。

 

「今のは……それに触れると、分解されるようだな」

「そうだよ。六喰ちゃんの【解】と同じだよ。だから、ここからは天使でガードしたら天使分解しちゃうかもね」

 

澪は言って、羽を羽ばたかせて接近すると、十香は霊力障壁で護ろうとするが、天使に一閃させると、紙のように簡単に裂かれてしまう。三人は即座に散開して回避すると、狂三は【七の弾】を澪に向かって撃つ。澪はそれを天使で斬ると、効果が発動する前に消滅させた。

狂三は歯噛みをすると、ならばと自身に【一の弾】を撃って、高速移動で澪に接近し霊力剣を振るうと、澪は天使を狂三に向かって振るい、霊力剣と触れると触れた箇所から霊力剣の刃が消滅し、直後狂三のはらに衝撃が走る。狂三の腹には柄についている鎖が直撃しており、立て続けに蹴りを加えて狂三を地面に吹っ飛ばす。

澪は狂三の方を一瞥せずに美九の方を見ると、空を天使で刺し、

 

「……え?」

 

いつの間にか、美九の腹に天使の槍が刺さっていた。空間を繋ぐことで、離れた位置から攻撃した澪はさっと引き抜くと、美九は腹を抑え、

 

「……【独奏(ソロ)】」

「【最後の剣(ハルヴァンヘレブ)】」

 

薄れ始める意識の中、一矢報いようと澪の身体を縛る。十香は二人が心配だが、美九の行動に報いるために、澪に向かって【最後の剣】状態にした<鏖殺公>を振るう。そして、【最後の剣】が地面に突き刺さり、十香は驚愕した。

 

「ちゃんと言ったのにね。天使に触れたら消滅するってさ」

 

【最後の剣】は澪に触れた部分から先が消滅していた。澪は美九の拘束を無理やり引きちぎり、手にしていた天使でガードしただけ。ただそれだけで、十香の最大の攻撃は失敗に終わった。美九も今の攻撃が不発に終わり、薄れていた意識が途絶え地面に倒れる。

 

「美九!」

「はいはい、人の心配してる場合じゃないでしょ」

 

十香は美九に向かって叫ぶが、澪は十香のそばに飛んで来てそう言って、天使を振るい、十香は半ば折れた【最後の剣】でガードするが触れた箇所から霊子に分解されていく。ならばと、十香は澪の胴に蹴りを入れると、澪は左手で掴み、そのまま地面に叩き付ける。

 

「かはっ!」

 

十香は地面に叩き付けられたことで、苦悶を漏らすと、澪はさらにと空に複合天使を向けて回転させると空気が収縮していく。

 

「これで終わりかな?」

 

澪は生成した空気の塊を地面に向かって落とし、地面に倒れた三人はそのまま空気の放流に巻き込まれた。

 

 

 

 

 

「ありゃ?皆こっちに来ちゃダメだよぉ。て言っても今の私じゃ、皆のもとに行って助けられないんだよねぇ。じゃぁ、始めようかなぁ。<死之龍(サマエル)>」

 

 

 

~~~~~

 

「じゃあ、ここはどこなのだ?」

「精霊ですぅ!(ドヤァ)」

「なんで言えないの?」

「へ?」

「たぶんね。てことでなっつん、とりあえず始めるよー」

「人類滅ぼそうとしてる人が何やってんのよ!」

 

次回 “天使と魔王”


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。