デート・ア・ライブ パラレルIF   作:猫犬

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お気に入りが200いった~\(>O<)/(デジャヴ)


2話 動き出した計画

「三人の居場所はまだ分からないの!?」

「はい。町中にカメラを飛ばしていますがどこへ行ったのかは……」

「そう……このまま捜索を続けてちょうだい」

 

士道と千花がいなくなったことが判明してかれこれ一時間ほど、二人の捜索が始まって三時間が経ち、未だに見つかっておらず琴里はそう指示を飛ばす。

一応精霊全員の封印ができたので<フラクシナス>はこの日、メンテの為に本拠地に停泊しており、士道と千花の身に何かあっても二人ならうまく対処できるだろうと考えていた。また、もし二人の手に負えない事があれば連絡してくるだろうと考えていた。

しかし、夕飯の時間になっても戻って来ることが無く、二人にも、士道のスマホの中に居た鞠亜とも連絡が付かなくなっていた。

夕飯も二人で食べてくるようなら事前に連絡をするはずなので、琴里は異常事態と判断し、停泊していた<フラクシナス>を動かそうとした。しかし、未だメンテ中の為動かすのを諦め、<ラタトスク>が所有する地下施設で現状確認が行われていた。

まだ、二人が連絡し忘れている可能性を考えて、精霊たちには言わずにいたが、何人か勘が鋭いメンバーがいるためそろそろ勘付き始めるだろうと琴里は思う。

 

「それで、DEMに拉致られた可能性は?」

「おそらくないかと。生成魔力反応は一切無いので。それに、もしそうなら戦闘になっているはずです」

「……そうよね。一体どこに?」

 

琴里は腕を組んで考える。

(千花がふざけてる?いや、流石にここまではやらないからないか。じゃぁ、事故に遭って病院?それだったら最悪、鞠亜が連絡するはず。じゃぁ……)

 

「司令!この基地に侵入者です!」

「え?それで侵入者は?」

 

考えを巡らせていると、椎崎がそう言い、琴里は考えるのをやめて確認する。中津川が操作パネルを叩きながら侵入者の画像をモニターに表示する。

そこに移っているのは外套を纏った人影で、数は十人だった。そして、体格はバラバラだった。施設のドアを一人がピッキングで開くと、十人が中に入り、丁寧にドアを閉めていた。そして移動を始め、監視カメラで追うと、侵入者はこの施設を理解しているのか、まっすぐに司令室に向かうルートを走ってくる。そして、その中でも二人はやたら速く、他のメンバーより先行していた。

 

「まさか、士道たちが行方を眩ました原因?そっちから来るなんて……」

「いや、これは……」

 

操作パットを叩いていた令音が何かに気付いたのか、言葉を口にしようとすると、琴里達がいる部屋のドアが開き、

 

「琴里!シドーと千花が消えたとは本当か!?」

「士道はどこ?」

 

そんな声が部屋に響いた。そして、二人が急ブレーキしたことで、外套のフードが外れて、その顔が見える。

 

「十香に折紙?」

 

そこにいたのは十香と折紙で、琴里が首を傾げると、遅れてトタトタと走ってきて部屋に入るとフードを外す。

そこには、何処かに消えた二人と真那を除いた精霊全員が集まっていた。

 

「……あなたたちどうしてここに?」

 

琴里は十人に視線を向け、そう問うと、

 

「んと。士道が帰って来てないって聞いてとりあえず精霊荘に戻って――」

「で、なんだかんだで全員集まったら琴里がいないから、何かあったのかと思って――」

「それで、あたしが<囁告篇帙(ラジエル)>で検索して少年が消えたって知って――」

「だから、琴里なら知ってるかと思って来た」

 

上から七罪、耶倶矢、二亜、折紙の順にそう言った。

(はぁー、やっぱり気づいたのね。まぁわかってたけど……)

 

「で、なんでそんな恰好で来たわけ?あなたたちなら普通に入れるのに」

「説明。士道たちが拉致られていた場合私たちも標的になると考えました」

「だから、こうやって姿を隠しました」

「まぁ、私の場合は目立ちますからねー」

 

琴里の質問に夕弦、四糸乃、美九がそう返答すると、琴里はそんな理由なのだと納得した。用心に越したことは無いのでいいのだが。

 

「それで、士道さんと千花さんの方はどうなんですの?」

「えぇ、こっちは全く分かってないわ。見た感じ皆の方にも連絡は行ってないのね」

「うむ、むくたちにも無いのじゃ」

 

琴里はもしかしたらと思い確認するが、望む結果は返ってこなかった。と言っても、なんとなくそんな気がしていたから、そこまで動揺は無かった。

(仮に来てたら、ここに精霊達が集まる訳無いしね……みんなの所にも連絡が無いとなるとどうしたものかしら……ところで)

 

「ねぇ、真那は?」

 

琴里はなんで真那がいないのかに疑問を持った。いつもなら真那も二人がいないことに悪態をついていそうなところだった。すると、二亜は「あぁ」と口にし、

 

「マッチなら用事があるとかで何処か行ったよ。今日はアシスタントしてもらう日だったんだけど、申し訳なさそうにしてたし」

「そう……」

 

琴里は二亜の話を聞くと、真那に連絡を取ろうとする。もしかしたら真那に連絡をして、真那がこっちに連絡してないかもしれないし、或いは何か知っているかもしれないから。

しかし、いくらコールしても応答は無かった。

 

「たく、二人ともホントどこ行ったのよ。それに真那もこんな時に連絡付かないなんて」

 

だから、琴里はそう悪態をついたのだった。

 

 

 

それからさらに数時間が経ち、日をまたいでいた。しかし、依然士道たちは見つからず、真那からの連絡も無かった。

琴里たち<フラクシナス>のメンバーはずっと本部で士道たちの捜索を行っていた。精霊達も士道捜索をしようとしたが、何が起きているのか分からない為それは控えさせ待機させていた。一応、二亜が<囁告篇帙>で士道たちの居場所を検索したが、限定霊装の出力では発見できなかった。多少のヒントぐらいならあるかと思われたが、それすらも得られなかった。

そして、精霊達は各々施設内の休憩スペースで眠っていた。

 

「琴里、少しは仮眠を取ったらどうだい?」

「……えぇ、士道たちが見つかったら、そうするわ」

 

令音が琴里にそう問うと、琴里はそう返す。二人の無事が確認できないと、安心することが出来ないから休憩する気は無かったが。

令音はやれやれと肩を窄める。

 

「それでも、少しは休んでくれ。もしもの時に動けなくなってしまうよ」

「でも……わかったわ」

 

琴里は反論しようと思うが、若干視界が歪み、逡巡すると令音の指摘も、もっともなのでそうすることにする。琴里が椅子から立ち上がり、休憩室に行こうとすると、出がけに令音が声をかけた。

 

「シンたちが見つかったら、連絡するよ」

「ええ、お願いね」

 

琴里はそう言って部屋を後にした。

琴里を見送ると令音はモニターを見る。

(さて、シンたちの方は……)

 

 

 

~☆~

 

 

 

翌日、正午。

士道たちは依然見つからず、真那との連絡も途絶えていたのだが……

 

『ただいま戻りましたよ。琴里、みなさん』

 

鞠亜が唐突にモニターに現れていた。精霊達も集まり、なんで今まで連絡が付かなかったかとか、このタイミングで戻って来たのかとか、謎が多かった。

 

「それで、今までどこに行ってたわけ?あと、士道と千花と真那は?」

『……そこからですね。二人の方は知ってますけど、真那に関しては私もどこにいるかなんて知りませんよ。それと、私が戻ってこられたのはある言伝……というか……』

 

鞠亜がどう話したら一番いいのか悩み、言葉を詰まらせる。鞠亜が言葉を詰まらせるのは珍しく、どんなことなのかと、静かにして続く言葉を待つ。

 

『鞠亜ちゃん、いいよ。私が話すから。それに、見てもらった方が早いでしょ?』

 

そして、モニターから響いたのは、鞠亜とは別の声だった。誰?という疑問を各々持つと、勝手にモニターに声の主が映る。

そこに移っていたのは、ソファーに座っている髪が青っぽい色の千花だった。後ろに移っているのは背景処理でもしているのか真っ暗で何処かはわからなかった。

 

「千花?」

『ううん、違うよ。私は澪。士道と真那のお姉ちゃんです!』

「「「えっ?」」」

 

そして、澪はそう言って自己紹介をした。何故か後ろでは、ババーンッ!とか鳴っていた。皆、澪の発言に困惑を示すと、澪は「やっぱこんな空気になるのかー」とか言って手を顔に当てていた。琴里はハッとすると、澪に問う。

 

「で、あなたは何者なの?」

『二人のおねーちゃんです!』

ババーンッ!

「……ッ!」

 

澪の返答に琴里はムッとする。そんな琴里を見て、鞠亜は『諦めてください、こういう人なんで』と半ば諦めていた。おそらくこの流れがすでにあったのだろうと鞠亜の表情から察せられる。

 

「そう言うことじゃなくて、なんで千花と同じ姿なのかとか、何の目的があってモニター越しなのだとかのことよ!」

『あっ、そっちのことか。大事なことだから、二回言ったのに……』

「それで、あなたは?」

『うん、私は千花の身体を借りてるだけだよ。訳あって身体無くしちゃってるから。で、モニター越しなのは……気分?』

 

澪がシュンとすると、折紙はそんなことお構いなしに澪に問い、澪はすぐにそう言った。質問をすると謎が増えて返ってきてしまった。

 

「ふーん、千花が戻ってこないのはわかったわ。で、士道は?」

『うん、士道なら今寝てるよ。だから、拉致られたわけじゃないから心配しなくていいよ』

「帰ってこない時点で、あなたに拉致られてる気がするけど?」

『お姉ちゃんと一緒に居るのが拉致になるの?』

「……じゃぁ、あなたはなんなの?身体が無いとか、千花の身体借りてるとか」

『あっ、話逸らした』

 

澪は当然のようにそう返し、琴里は別の質問を返す。

 

『ん?あぁ、千花から何も聞いてないんだね』

「なんのこと?」

『千花の身体が限界に来てたこととか』

「え?千花の身体が?でも、千花はそんなこと……」

 

澪はどこか納得した表情をすると、少し考えるような素振りをし、澪は改めてと口を開く。

 

『……あぁ、そう言うことね。あの子、士道にしか話してなかったのね。しかも、あんなギリギリで』

「なに一人で納得してるのよ」

『あぁ、ごめんね。じゃぁ、私も千花が士道に話したことを話してあげるよ――千花はすでに死んでたんだ。五年前のあの日にね』

 

澪の口から知らされたことに皆驚く。今までの千花は何だったのかとかの疑問が浮かぶと、琴里は呟く。

 

「えっ?でも、今まで一緒に居たじゃない……」

「あぁ、それは霊力を身体に循環させて動いてるだけだよ。もちろん、封印してからは霊力が足りないからパスを通して霊力を貰ってたけど。でも、昨日から色々と身体に異常が出てたんだよね。時々視界がゆがんだり、フラついたり、体温が無くなってる感じで。だから、まともに過ごせるのは昨日までだったんだよ」

「でも、なんで千花の身体がそんなことになってるの?」

「うん、それはね。かれこれ五年前の夏だったよ」

「五年前の夏?」

 

澪は遠い目をして、そう言い、琴里は澪の言葉を反復した。五年前の夏と聞くとあることを思い出した。折紙も思い至ったのか目を見開いていた。

 

「もしかして……」

「うん、琴里ちゃんが精霊になった日だね。と言っても、出火自体は琴里ちゃんのせいなのか不注意なのかは分かんないけど、その時にね」

「それじゃ……」

「まぁ、その時にぽっくりと?まぁ、あの子の場合は焼かれる前に私が外に出したわけ。煙を吸っていて、手遅れだったけど……だけど、あの子の場合は例外があったの。だから、ゾンビみたいな状態になった感じ」

「え?でも、精霊になったのは、士道に会う半年前なんじゃ?」

 

千花の霊力封印をした翌日に、千花の過去の一部を見て、士道から後でそう聞いたことを思い出す。

 

「うん、精霊としての力を自覚したのはそうだよ。それまでは、千花自身も精霊だって知らずに人間と思ってたから」

「はぁ、半ば信じられないけど?」

「まぁ、精霊うんぬんの話は置いといて」

「置いとくの?」

「うん、置いとくの」

 

澪が話をぶった切りそう言うと琴里は頬を掻いて、困惑した。しかし澪は気にせず話す。

 

「で、ここからが本題。私は私の目的のために、千花の身体を借りるわけ」

「目的?」

「うん、人類殲滅」

「え?」

 

澪は今までのほんわかした声音から急にまじめなトーンになり、そう言った。部屋にいたメンバーは皆、各々困惑の表情をしていた。

 

「なんで、そんなことをするのかって疑問顔だね。でも仕方ないよね。人間は空間震を起こすってだけで精霊を消そうとしたんだから。<ラタトスク>の人間は精霊と対話を目的、とか言ってるけど、この前士道を殺そうとしたよね?だから、私は人間に興味を失くしたの」

「でも、それは……」

「うん、士道が霊力爆発を起こして大惨事になりそうだったもんね。でも、士道を殺さずに済む方法があるかもしれないのにそれを怠ったんだから」

 

澪は今思い出しただけで腹が立つのかそう言い、琴里も澪の言い分が分からなくも無かった。

 

「だからって、無関係な人まで対象に入れちゃ……」

「それ言う?精霊を殲滅の対象にしているくせに、捕まえて研究の対象に考えてるのもいるじゃん。それに、狂三ちゃんのことはどうなの?この世界じゃ、静粛現界できて、一切人を殺めていないのに、襲われていたよね?」

「えぇ、そうですわね」

 

狂三に話が振られ、狂三はその発言に頷くと澪は再び口を開く。

 

「まぁ、そう言う訳で、人類殲滅に至った訳。ここで、さっきの質問の答えだけど。君たちのもとに戻らないのは、私の計画に士道の中にある霊力が必要なのと、単純に邪魔されない為にね」

「ふーん。で、なんでそれを私たちに話すわけ?話さずにひっそりと進めればいいじゃない」

 

琴里は澪を見据えてそう問うと、澪はにひひっ、と笑みを浮かべる。琴里はなんでこのタイミングで笑ったのか分からなかった。

 

「まぁ、そうだけど。一応ね。でも、一方的な殲滅じゃ人間と同じだし、これまで士道のことを護ってくれたみんなにもチャンスはあった方がいいかな?と思ってね」

「へぇー。で、そのチャンスって?」

「うん、これから私とあるゲームをするんだよ。そっちが勝ったら人類殲滅をやめてあげる。で、そっちが負けたら私の言うお願いを聞いてもらう」

「お願いって?」

「それは、その時に。それとも、勝てる気がしないから心配?」

 

琴里は自分の一存で決めていいものではないので、考える時間をと思った。しかし、琴里の考えなど澪には分かっているのか澪はさらに口を開く。

 

「ちなみにゲームを受けるか否かは、ここにいるメンバーで決めてね。全員精霊ないしは純粋に精霊を救いたいって考えてる人たちって知ってるからさ。まぁ、私の居場所が分かるんだったらゲームする必要も無いかもね」




前回のあとがきで書いた通り、この章の更新ペースは上げます。理由は、戦闘が多すぎて、いつものペースだとわからなくなりそうだからです。あと、このまま週一ペースだと終わるのが年またぐと思われるからです。
そういうわけで、また明日。ノシ

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