デート・ア・ライブ パラレルIF   作:猫犬

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8話 戦いと襲撃

「前回のデート・ア・ライブ

封印されし士道の霊力が暴走した。立ち向かうは我ら精霊。

お腹を空かせていた十香は士道をファミレスに連れていき、何故かポッキーゲームが始まってしまった。あー、うらやましい。ハッ!まぁ、十香なら昔に強要していたからリベンジな訳だな。

続いて、六喰の番になり書店で・・・その、あの・・・そういう本を見つけて士道を困らせていたな。さらにはそういう行為の及ぼうとしたりとすごかったな。

まぁ、結果的にこれで全員完了したわけだし・・・と思ったのもつかの間、DEMが強襲してきたぞ!

 

あれ?そういえば千花は?」

 

 

 

~~~~~

 

 

 

精霊たちが士道とてんやわんやしている頃、真那と狂三の戦いは天宮スクエア上空に移動していた。

真那は空間を蹴って狂三の銃弾を回避しながら接近し、手にしていた<ヴァナルガンド>のブレイドを振るう。狂三は攻撃の直前に銃を消して懐に手を伸ばす。

 

「なっ!あの人まだ返してもらってなかったんですかー!」

 

そして、狂三は懐から出した剣の柄によって、大剣の刃を形成させて真那の攻撃を防ぐ。

それは京都での十香の時に千花が渡し、六喰の時にも使って、バタバタしていて返却されていなかった霊力剣だった。

千花が返され忘れていたせいで面倒なことになったので、真那はそう文句を言い、狂三は笑みを浮かべると刃の形状をレイピアに変える。

 

「ふふっ、わたくしは運がいいですわね。千花さんが忘れていたおかげでこんな武器があるのですから」

「てか、精霊なら精霊らしく天使を使えって話ですよ!」

「でしたら、あなたはもっと魔術師らしい恰好で来てくださいな。なんですか、普段着って?」

「べつにいいじゃねーですか。前回ので<ヴァナルガンド>はぶっ壊れてるんですからッ」

 

二人はそんな会話をしながら、互いの剣が交錯していく。

何度も打ちあっていると、真那は埒があかないと判断し、一度態勢を整えるために距離を取る。

狂三の弱点であった天使の燃費の悪さによる無駄な消費を避ける戦い方も、霊力剣があればだいぶ改善されてしまうので真那は困っていた。

しかし、戦いには想定外なんてことよくあるので、仕方ないと割り切る。

士道の状態も心配だからと真那はポケットから魔力剣を出して二刀流になる。

 

「あらあら、二刀流ですか。ではわたくしも本腰を入れるとしましょうか。<刻々帝(ザフキエル)>――【一の弾(アレフ)】」

 

狂三は背後に<刻々帝>を顕現させ、短銃を左手に持ち、周囲の影から狂三の分身体が現れる。

そして、短銃に【一の弾】を装填し自らの頭に撃った直後、狂三は地を蹴り、真那の背後から斬りかかる。真那は左手を後ろに回してガードすると、そのまま体を回転させて右手のブレイドで斬りかかろうとする。

しかし、直前様々な方向から狂三の分身が銃弾を撃ち、真那は攻撃を中断して随意領域で銃弾を止める。

その間に狂三は移動して、真那の横から斬りかかる。

真那は周囲に張った薄い随意領域によって目に見えない速度で動く狂三の位置を補足し続け、攻撃してくる位置にブレイドを合わせてガードしつつ、もう一方の剣で攻撃していく。

狂三は真那の攻撃を高速で移動して回避し、分身体が銃を撃つ戦法で来ているので、どちらも致命的なダメージを与えることが出来ない状況が続いていた。

 

「てか、そもそも、なんでここの人たちの寿命を奪うんですか?あなたならもっと遠くで邪魔されないようにひっそりと行うんじゃねーんですか?」

 

そんなわけで、真那は狂三に話しかけて揺さぶる材料を探すことにした。といっても、狂三が取りあわなければ意味が無いが……。

 

「そんなの精霊から霊力を巻き上げた方が手っ取り早いじゃないですか。それに、士道さんにも話しましたけど、封印状態の精霊も体が重くなって邪魔されないと思いましたので」

 

狂三は真那の質問にそう答え、真那はまさか返答があるとは思っていなかった。しかし、狂三の話を聞いて真那はある疑問を持つ。

 

「てか、あなたは精霊を救うのが目的なのに、<時喰みの城>で苦しめた点についてはどうなんですか?やってることがおかしくねーですか?」

「それは一時の物ですわ。ただ単に虚脱感に襲われるだけですから」

「その割り切り方はどうかと思うんですけど……」

 

真那は呆れた表情を高速移動して攻撃してくる狂三に向ける(ただし速くて狂三の姿は見えていない)。

そんな真那の表情を見て、狂三はムッとする(ただし速すぎて真那からは見えていない)。

そんな状態で狂三が真那に向かって霊力剣を振るい真那がガードした直後、背後から殺気がして真那はもう一本のブレイドでガードする。そこには何故か霊力剣を持った狂三がおり、目の前にも霊力剣を持った狂三がいるので、どちらかは分身体のようだが、なぜ霊力剣を持った狂三が二人いるということになる。

真那はブレイドに力を込めて、二人とも押し返すと、周囲にいた狂三達が銃弾を放つが、真那は随意領域で止めると運動の向きを逆にしてそのまま銃弾を返す。銃弾は狂三達の腕に当たり銃を使えなくした。押し返された二人の狂三は真那から数メートル離れた位置で止まる。なんで、分身体まで霊力剣を持っているのかとか疑問があったが、これ以上面倒が増える前に終わらせたいので、疑問についてはおいおい考えることにする。

真那は一方の狂三に近づいて振るうと狂三は霊力剣で防ぐが、もう一本のブレイドで霊装の上から斬る。斬られた箇所の霊装は裂け、そこから血が流れる。

 

「はッ!」

「くっ」

 

真那はそこから追撃をしようとするも、もう一人の狂三(オリジナル)が霊力剣を振るい、その間に狂三(分身体)は真那から距離を取る。しかし、高速での移動では無かったので【一の弾】の効果は切れたようだった。

 

「はぁ、まさか躊躇いなくわたくしの霊装を斬るとは、<ラタトスク>は精霊愛護団体では無かったのですの?」

「真那は別にあそこに所属してねーですよ。それと、斬ったのはあなたの分身だからですし、あなたがしたことのけじめ的に多少の怪我は割り切ってもらいますよ」

「そうですか……では、あなたも多少の怪我は割り切ってくださいまし。わたくしたちは戻ってください。あなたたちにはまだまだ仕事がありますから」

「了解ですわ、わたくし」

 

狂三達(分身)が影に入って消えると、狂三は再び【一の弾】を装填して自身に再び撃つ。そして、周囲の影から何十人もの狂三が現れ、そのうちの三人の狂三の分身の手には霊力剣が握られていた。

(え?他にも持ってんですか……って、まさか)

 

「気づきましたか。霊力剣を受け取った後のわたくしたちは霊力剣も一緒に再現されますから」

「うわ、貸したのが二か月前だからストックは十分ってとこですか……面倒ですね」

 

霊力剣の増量の理由が分かり、真那は面倒そうな顔をしてため息をつくと、魔力剣を随意領域で中に置いて、ポケットからビー玉サイズの鉄球を五つ取り出す。

狂三は鉄球でどうする気なのかと真那の考えが読めず、先手必勝と分身体たちの射撃を起点に狂三(オリジナル)が高速で飛び出し、遅れて三人の狂三も動く。

真那は鉄球を空に適当に放ると、地面に落下するはずの鉄球は真那の周囲で止まり、真那の周囲をグルグル回って銃弾を全て弾く。直後に高速で来た狂三にも当てようとするも、合間を縫って真那に斬りかかる。それを真那はブレイドで受け止めて、左手で魔力剣を取ってそのまま振るうと、遅れてきた狂三の一人が霊力剣で受け止め、残りの二人が真那に斬りかかる。鉄球を操作して二人の腹に当てるとのけぞり、つばぜり合っている二人にも鉄球を当てようとすると、二人は距離を取って回避する。

 

「随意領域で鉄球をビットの要領で操作しているのですのね。そうなると、こちらもそろそろ対策を取りましょうか。士道さんたちの霊力もいただきたいのですし」

「はっ、簡単に行かせる訳ねーでしょう?それともまだ何かあるんですか?」

「ではこれでどうでしょうか?」

 

狂三がそう言うと、霊力剣を持った狂三三人が真那に近づき、他の狂三達も銃を撃ちまくる。

真那は鉄球と随意領域で銃弾を防ぎ、二本の剣で狂三三人の攻撃を捌いていく。

そして、数十秒繰り返していると、真那が張っていた随意領域が突然消滅し、魔力剣の刃の形成も維持できなくなり、真那は空中に留まれず落下する。なんとか随意領域を張ろうとするが、うんともすんともいわない。

(まさか、ここで故障ですか?……いや、故障ではなさそうですね。一体何が?)

真那はCRユニットの故障かと思い確認するが、電源自体は点いていて故障したようではないので困惑する。

そして、そんな真那を追撃すべく、狂三四人が真那に接近し、狂三(オリジナル)の左手に小さな機械が握られていた。

(まさか、あの機械は!?)

 

「さよならですわ、真那さん」

 

真那は随意領域が張れなくなった理由を理解するも、狂三はこの因縁の終わりをつげ、霊力剣を振るい、他の狂三達も銃弾を放った。

 

キーンッ

 

そして、振るわれた四本の霊力の刃は同時に何かにぶつかった音と共に消滅し、真那に向かって飛んできた銃弾も真那の目の前で停止していて、そのまま自由落下していった。

 

「はぁー、なんであなたが魔力遮断装置を持ってんですかね?それのせいで、真那は想定外ですよ」

 

真那は空中で態勢を整えると、その場に滞空して左手で頬を掻いて文句を言うのだった。いつの間にか漆黒の外套を纏い、透明な結晶が持ち手に付いた大きな大鎌を持って。

 

 

 

~☆~

 

 

 

「あれDEMの魔術師だよな?」

「ええ、残念ながら嗅ぎ付けられたようね。それにしても天井を吹っ飛ばすってどんな神経してるのかしら?」

 

ショッピングモールの天井にできた穴から見える魔術師たちを見ながらそう呟くと、琴里は呆れながらそう返答する。精霊達も困惑の表情を浮かべており、どうするつもりなのかと視線が琴理に集中する。

琴里は皆の視線を受け、はぁー、とため息をつくと、

 

「まぁ、みんなも限定霊装が纏えない状態だからあれだけど、一応こういう事態は想定内よ」

「んと?千花たちが設置したとか言う迎撃システム使うのか?」

「ええ、そうなるわね。流石に魔術師だけ相手に<フラクシナス>使うのは効率悪いし、なにかあったら大変だろうしね。で、千花はどこ行ったわけ?使い方知らないんだけど?」

 

琴里の言葉を聞いて皆辺りを見回すが、やはり千花は見当たらず、どうしたものかと困る。

そうこうしているうちにDEMの魔術師たちがショッピングモール内に入ってくる。

 

「こんな場所に集まって何をしているのでしょうか?」

「アンタに言う必要は無いと思うけど?」

「まぁ、そうでしょうね。我々の目的は捕縛なので、どうでもいいことですね」

 

エレンと琴里が数言言葉を交わすと、エレンは手を上げる。

 

「総員、各個精霊の捕縛を。抵抗する場合は死なない程度なら交戦も許可します」

 

そして、魔術師とバンダースナッチが動き始める。

いろいろと問題だが、とりあえずと皆を護ろうと士道は動こうとする。

しかし、その前に状況が動いた。

何処からか、銃弾が飛び、バンダースナッチの一機が爆散した。

 

「何ですか一体!?」

 

エレンは突然の事態にそう言うと、士道たちと魔術師たちの間に七機の微妙に見た目が違うバンダースナッチが飛んできて、士道たちを護るような位置取りを取る。

 

「なんだあれ?DEMのがバグったのか?」

「バンダースナッチが七機も制御不能にでもなったのですか?」

「ああ、あれはバンダー君だな。どうやらちゃんと起動したみたいだな」

 

士道とエレンが疑問を口にすると、十香はあまり驚いておらず、そんなことを言った。

(んと、あれが千花の言ってた防衛システムなのか……てか、敵のやつパクるなよ)

 

「なるほど、敵ならば破壊してしまいましょう」

 

エレンがスラスターを噴かせてバンダー君の一機に近づくとブレイドを振るい破壊しにかかる。バンダー君は腕に魔力を集中させて振るうと、ブレイドと拮抗する。

まさかの斬れない事態にエレンは苦い表情をするも、懐からもう一本ブレイドを抜いて振るう。バンダー君はもう片方の手で対抗しようとすると、エレンが随意領域で行動を阻害してそのままバンダー君を真っ二つに斬り裂き、バンダー君は落下していった。

 

「やはりこの程度ですか。この程度では私は止められませんよ」

「そのようね。エレンの相手は私がするから、皆は他をお願い」

「え?限定霊装も纏えないのに、どうする気だ?」

 

バンダー君ではエレンを止められないことが目の前で証明されたことで、折紙は一歩前に出てそう言うと、士道の疑問に答えるように懐からドッグタグのようなものを出す。

それを見て、琴里は心配そうな顔をする。

 

「折紙、確かに一応渡したものだけど、初使用でエレンって平気なの?」

「問題ない。使い方は頭に入ってるから」

「そう……でも危なくなったら引きなさいよ!」

「うん、わかってる。バンダー君が敵を殲滅するか全滅したら絶対に戻るから、それまでエレンを足止めするだけ」

 

折紙はそう言って地を蹴って吹き抜けの柵を超えてジャンプして飛び出すと、

 

「起動――<ブリュンヒルデ>!」

 

西洋の甲冑のような純白のCRユニット<ブリュンヒルデ>を纏う。そしてその手に長柄の槍が握られると、自身の周囲に随意領域を張って宙を浮く。

 

「ほう、そちらにも魔術師がいましたか。私が相手をするので他の精霊の捕縛をしてください」

 

エレンはそう指示すると、折紙と相対する。二人は互いの武器をぶつけ合いながら、上空に戦場を移す。

その間に士道たちはショッピングモールから一応敷地内にあるだだっ広い公園に移動する。ショッピングモールにいたら最悪ショッピングモールを破壊して生き埋めにしかねないので、だったら周囲がだだっ広い方がいいと判断した。

エレン以外の魔術師とバンダースナッチは追いかけて来て、バンダー君は各個撃破してバンダースナッチの数を減らしていく。

しかし、数に差があり過ぎるせいで、バンダー君を無視して魔術師たち数人が士道たちに襲いかかる。

うまく霊力が使えず、精霊達がどうしようと慌てると、魔術師たちは突然吹いた強風によって阻まれて数メートル後退する。

 

「士道、今のは助かったけど、ただでさえ今霊力が不安定なんだから気を付けなさいよ!」

「と言われてもな、皆を護りたいわけだから、使わざるを得なく無いか?」

「まぁ、琴里が言いたいのは無理しないってことでしょ?私もそう思うし」

「まっ、善処するよ」

 

<颶風騎士>による風で魔術師から護った士道に琴里がくぎを刺すと、士道はそう言って<氷結傀儡>による氷結で周囲に氷の壁を作ってあえて正面だけ空間を作って敵の行動範囲(攻撃範囲)を絞る。

士道はそうして、わざと開けた空間に陣取り、<鏖殺公>を顕現させて、突っ込んできたバンダースナッチを斬り伏せていく。

 

「あれ?善処するって割に、少年ガンガン天使使ってない?」

「むくもそう思うのじゃ。主様、めちゃくちゃなのじゃ」

 

そんな士道を見て、精霊達は率直な感想を漏らすと、他の精霊たちも同意を示して首を縦に振るが、<鏖殺公>を振り回している士道には見えていなかった。

そうして数十機ものバンダースナッチをスクラップにして、魔術師たちに意識を向けていると、唐突に背後の氷の壁が音を立てて崩れた。

その音に、精霊達が視線を向けると、そこには大剣のようなレイザーブレイドで氷をぶった切って強行突破してきたアルテミシアがおり、一直線に琴里に接近して、ブレイドを振るう。

 

「恨みは無いけど、狩らせてもらうね」

「琴里!」

「え!?」

 

そして、士道は周囲に強風を起こして相手取っていたバンダースナッチを吹っ飛ばして、そのまま琴里に前に飛び込むと琴里をかばって背をブレイドで切り裂かれたのだった。


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