デート・ア・ライブ パラレルIF   作:猫犬

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今回から章タイトルを増やしました。士道の霊力暴走を止めるために精霊が頑張るので。
単純に士道の危機だからクライシスです。


4話 七罪と折紙

「前回のデート・ア・ライブ~

<ラタトスク>で不穏な話し合いがなされている中、狂三ちゃんとだーりんが会っちゃいましたね~。だーりん、治りかけは一番危ないんですよっ!これは後でだーりんにお説教をしないとですね~。

そんなだーりんと狂三ちゃんが戦おうとしたら真那ちゃんが介入して、だーりんは耶倶矢ちゃんと夕弦ちゃんに連れてかれましたよぉ。

そして、場所は変わって、だーりんの身に起こっていることの説明がされて私たちはだーりんをデレさせることになりましたよ!

色々謎があった気がしますけど、そのうちわかるものですよね?あっ、ちーちゃんそっぽ向かないでくださいよ~」

 

 

 

~~~~~

 

 

 

「士道は私となにしたい?」

 

ショッピングモールの通路を二人で歩いていると、七罪は首を傾けながらそう問うた。

このショッピングモールはクリスマス頃にオープンする予定で<ラタトスク>が経営すると聞いていた。その為、まだ客はおらず貸し切り状態だった。

そもそも、士道と七罪の二人っきりなのには理由があった。

 

琴里に言われた“これからみんなと何かしてもらってデレてもらうわ”の意味がよくわからず、その後にちゃんと説明された。

士道の方の霊力のパスが弱まったことで、今キスをしてもちゃんとパスが戻る訳でないらしく、精霊達のパスが士道の中でごちゃごちゃになっているとのこと。その為、デレる、或いはドキッとさせることで一人一人の霊力のパスの経路を確保し、その上でキスをすることで士道の霊力暴走が収まるとのことだった。

本当にそれでいけるのかは謎だったが、琴里は確証があるようだったので士道はそれを信じて、やることにした。

そして、順番はこの世界での霊力を封印した順になった。琴里は四糸乃の時に封印し直したので、そのタイミングになり、まずは千花から、となりそうだったが、まだ三人が戻って来ていなかったので、七罪からになった。

士道がドキッとしたら、耳に付けているインカムからなんらかの音がなると士道は聞いていた。どんな音かは聞いていなかったが……。

で、今に至る。

 

「そうだな……どっちかと言えば七罪がしたいことをしてくれた方がいいんじゃないのか?」

「あっ、それもそっか……でも、そもそもこの状態の私で士道はドキッとできるの?どうせなら、私が変身して……」

 

七罪に行き先を決めてもらうことにすると、七罪は行き先についてから士道を本当にドキッとさせられるのかについて考え始め、しまいには変身して大人バージョンになろうとしていた。霊力が不安定なら天使を出すのも危険なのでは?と思う士道は、

 

「ストップ、七罪。変身しなくていいから、ただでさえ霊力が不安定なんだから危ないことはしないでくれ。それに、七罪自身わかってるだろ?」

「うん……士道はこのままの私でいいって肯定してくれたもんね」

 

慌てて止めると、七罪は頬を掻いて苦笑いをする。すると、何かを見つけたのか、七罪は士道の手を握って引っ張る。

 

「行きたい場所あったや、こっちこっちー」

「ちゃんとついていくし、慌てなくていいから」

「いいの、ただでさえもう半日切ってるんだから」

 

士道は七罪に手を引かれながら歩いて行き、すぐそばにあったクレーンゲームコーナー入った。なんでクレーンゲームなのかはわからないが、七罪も何か考えがあるのだろうと思うと、七罪は店頭にあったクレーンゲームの前で止まる。そして、中に入っていた景品を見て、士道は思い出した。

 

「これって、こっちで七罪と初めてデートした時に見た黒猫のぬいぐるみだよな?」

「うん、あの後行ったら何故か売り切れてて、入荷することもなくて諦めてたんだけど、こんなところでまた見かけるなんて……」

 

中に入っていたのは、いつしかの黒猫のぬいぐるみで、前見た時と違い何故か首輪が付いていた。

七罪はそう言って返事をしながらすでに硬貨を投入して、クレーンゲームを始める。

(あれ?俺をデレさせるんじゃ?これも作戦のうちなのかな?)

七罪が操作したクレーンは猫の身体のほぼ真ん中に移動し、もしかしたら一発で取れるか?と二人は思った。しかし、頭の方に重心がかかり、一回転して位置が動いただけで取ることはできなかった。

ならばと、もう一度硬貨を入れると、次は頭の位置にクレーンを持って行き、そのまま掴もうとする。クレーンが猫の頭を挟むと、

 

「「えっ?」」

 

ぬいぐるみの反発でクレーンが弾かれ、がっちりホールドすることが出来ず、スポッと抜けてしまった。どうやらこのクレーンはそこまで強いわけではなさそうで、おそらくは持ち上げたとしても途中で落下してしまい取れそうになかった。

しかし、七罪はどうしても欲しいようでもう一回硬貨を投入する。

 

「七罪、ちょっと俺の言う通りに動かしてみてくれないか?」

「え……うん。わかった」

 

士道としても、七罪が頑張っているのなら何かできることをしたいと思いそう言うと、士道が助けようとしてくれるのが意外だったのか、少し間があったが七罪は了承した。

 

「まず、猫の首のあたりまで前に移動させてくれ」

「うん、わかった」

「そしたら、猫の首まで横に移動させて」

「うん、こうやって。でもこれじゃ結局一回転しちゃうんじゃ……」

 

結果的に士道が指示したのは一回目のような感じで、七罪は一回目の二の舞にならないか心配する。そう言ってる間にクレーンは猫の首の辺りに降りて来て、

 

「え?」

 

クレーンが猫と首輪の間に突き刺さり、そのまま持ち上がった。無理やり刺したせいか簡単には外れず、そのまま排出口まで移動し、クレーンが元の位置に戻った衝撃でガコンッと揺れ、その結果刺さっていた部分が緩み、すとんと排出口にぬいぐるみが入って行くのだった。

七罪はまさか本当に取れるとは思わず、しばらく呆気に取られるとふと我に返り、猫のぬいぐるみを取り出す。

そして、ぬいぐるみを抱くようにして持つと振り返る。

 

「ありがとね、士道」

「ん?俺はアドバイスをしただけで、取ったのは七罪だよ」

「でも、士道のおかげだし。……あっ、そう言えば、士道をドキッとさせるのが目的だったのに、忘れてた……」

「え?忘れてたのか?」

 

そして、七罪は無事取れたことに安堵すると、唐突にそんなことを言い、恥ずかしそうにぬいぐるみに顔をうずめる。そして、その状態で目元だけ士道に向けて、

 

「士道が大変な時なのに……ごめんね、士道」

 

身長差で上目遣いになり、士道への申し訳なさで目元が潤んでいる状態で士道に謝った。

(猫が欲しくて、それ以外のことを忘れてたり、今の七罪の姿がなんというか妖艶な感じというか、なんというか……)

 

「……可愛い」

「ふぇ!?」

ニャン、ニャニャ、ニャーンッ

 

士道はそんな七罪にドキッとして、思ったことを口にしていた。突然可愛いと言われた七罪もびっくりして、そんな声を漏らすと、士道がドキッとしたことを示す音が二人のインカムに響くのだった。何故か猫っぽい音が。

 

『七罪とのパスが戻ったのを確認しました。ではキスをしちゃいましょう!』

 

そして、インカムから二人に向けて鞠亜がそう言うのだった。何故あの音にしたとか、いきなりキスするのかとか言いたいことがあり、

 

「ちょっと待ってくれ、今すぐキスをするのはなんというか……」

『それもそうですね。ここでキスをして、士道の精神状態が変な方向になったら困るので、後にしましょう』

「うん、私もそう思う」

「では、士道。折紙からの伝言を伝えておきます。バーで待ってる、とのことです」

「ん、分か……今なんて言った?」

『バーで待ってるそうです』

「あ、うんわかった」

『では、私はこれで』

 

鞠亜はそう言って通信を切ると、士道はバーの場所を確認する。

(というか未成年でバーって?)

士道のそばに七罪は近づくと、

 

「じゃ、折紙のところに行ってらしゃーい。私は適当にやってるから」

「ん?でも、結局ぬいぐるみ取っただけだけどいいのか?」

「うん、いいの。遊びに行くのはまた次の機会にすればいいんだから、士道はさっさか体調を治すの!」

「ああ、そうだな。じゃ、また後でな」

 

七罪にそう言うと、士道は折紙の待つバーに行くのだった。

そんな士道を七罪は目で追いながら、

 

「うぅ、やっぱり恥ずかしい。士道の体調のこと忘れてたのに、怒らないなんて優しすぎるよぉー」

 

思い出してその場にうずくまるのだった。

 

 

 

~☆~

 

 

 

「士道、来たわね」

「ああ、来たけど……なんでバーなんだ?」

 

バーに着くと、折紙は椅子に座っていた。で、カウンターには何故かバーテンダーの恰好をした神無月がおり、カクテル?のようなものを振っていた。

 

「それは・・・気分?いいでしょ?」

「折紙がいいならいいけど。それじゃ、なにか頼むか。折紙は何がいい?」

「ドン・ペリニヨン」

「それって、お酒だよなっ!?」

 

折紙が全く表情を変えること無くそう言うと、士道はツッコミを入れる。すると、神無月も表情を変えずに返す。

 

「すみません、お客様。ちょうど切らしております」

「なら、ウォッカを」

「すみません、お客様。ちょうど切らしております」

「なら――」

「いや、もうお酒頼むの止めろよ。あと神無月さんもお酒頼まないように言ってくださいよ」

 

折紙が懲りずに何度もお酒を頼もうとするのにツッコミ、それに何度も返答する神無月に文句を言う。神無月はカクテル?を振る(ずっと振っていた)のを止めると、二つのワイングラスに注ぎ、そこに黒っぽい液体を加えて二人の間の空間に並べて出す。

 

「どうぞ、おすすめです」

「あ、どうも……じゃなくて、これはなんなんですか?」

 

差し出されたのにお礼を言うと、すぐにハッとして聞く。

折紙はなんなのか知っているようで、すました顔をしていた。

 

「平気ですよ。お酒ではありません。さぁ、グビっといっちゃってください」

「グビって、ビールじゃないんですから。まぁ、お酒じゃないならいいですけど……」

「では、私は少し裏に居るのでごゆっくり」

 

問答していてもらちがあかなそうなので諦めると、神無月は奥に引っ込んでいった。

すると、折紙は士道の後ろの方を指さし、

 

「士道、あれなに?」

 

唐突にそう言い、士道は指した方に向くと、その間に折紙はポケットに左手を入れてある薬を取り出す。そして、封を切って、薬を士道のワイングラスに入れようとする。しかし、まるで拒むかのように何故か右手に力が入らず、折紙の頭の中に二人の折紙(天使と悪魔)が現れる。

 

(琴里には士道に変なことをするなと言われたけど、これさえ入れれば、士道は私にメロメロになる。だから私は……)

(ダメです!そんなことをしたら。琴里ちゃんにも変なことをしないでと言われてたでしょ。これは完全に変なことだよ!)

 

しかし、天使の方が強要し、悪魔の方がそれを止めようとするという、何かおかしい感じになっていた。この間僅か0.1秒、故にまだ士道のワイングラスに入れる時間はあった。

 

(それこそNP。この薬は服用すると、身体が気持ちよくなって、私にメロメロになるだけ)

(これ、なんの薬なのぉー)

 

そうこうしているうちに、士道が折紙の方に向き直ろうとしていた。

折紙(天使)は折紙(悪魔)が叫んだ一瞬のスキをついて、ポコッと殴り折紙(悪魔)を気絶させる。そうして自由になった折紙(天使)は慌てて薬の封を切ると、急いで二つ並んでいるワイングラスの一つに入れ、封を切った袋をポケットに戻す。

 

「結局なんだったんだ?何も無かったけど?」

「あ、うん。見間違いだったみたい」

「そっか。じゃ、とりあえず飲むか」

 

二人はワイングラスを手に取って、

 

「「乾杯」」

 

グラス同士で綺麗な音を鳴らす。そして、二人は同時に飲んだ。

(ん、これってコーラか?あと、オレンジっぽい味もするな)

(よし!飲んだ。これで、士道はわたひにめろめろに……)

 

しかし、士道は特に様子が変わること無く、普通に飲んでおり、折紙の方がなんか変な感じになった。一瞬これはお酒だったのか、と思うが、神無月にはコーラ+オレンジの物を頼んでいたので酔う要素は無いのですぐに排除する。そして、折紙はもう一度ワイングラスを見て気付く。

(しまった!まさか、慌ててろくにグラスを確認せずに入れたから、私の方に入れてしまった?)

折紙は身体がフラッとして、士道にもたれかかる。

 

「ん?どうしたんだ、折紙」

「……ちょっと、酔ったみたひ……」

「え?でも、コーラだよな?コーラじゃ酔わないんじゃ?」

「……しどうく~ん」

 

士道は折紙の突然のキャラの変化に困惑し、自身の霊力の不安定化が折紙に影響したのかと焦る。

しかし、士道のそんな予想は間違っている訳で、

 

「士道君は、なんでそんなにかっこいいのぉ」

「折紙大丈夫か?もしかして、霊力の不安定化が影響してるのか?」

「うぅ、士道君がわたひのことを心配してくれてる~。士道君やさしい~」

 

折紙は自身の気持ちを吐露し続ける。目元は潤み、頬も赤く染まって、

 

「士道君、好き~。大好き~」

パンパカ、パーン

 

そんな状態で士道に抱きついた。士道はこんな折紙抱きつかれたことで、ドキッとして、その耳に折紙とのパスが確保された音が鳴り響いたのだった。

 

 

 

~☆~

 

 

 

「まさか、空を蹴って高速移動するなんて……」

「安心してください。あなたには生きていてもらって、本人の居場所を吐いてもらうので」

 

来禅高校の屋上で対峙した真那と狂三の戦いは真那による一手で片が付いていた。真那がしたのは、空中で自らの足元に随意領域を張って跳躍し、それを狂三の周囲で繰り返して翻弄して、死角に入った直後に方向転換して狂三の首筋に一撃くらわせて、狂三の身体を随意領域で縛った。

結果、狂三は動けなくなったが、この狂三は分身体だったので、真那は本人のいる場所を問う。

 

「黙秘しますわ。わたくしが見つからないのなら、まだ悲願の成就はできますので」

「そうですか。じゃぁ、あなたに用はねーですね」

 

狂三の居場所をこれ以上聴いていても時間の無駄と判断すると、随意領域を強めて意識を奪う。

 

「さて、じゃぁ、真那はできる手をすべて使って、本人のとこに行きますかね。それにしてもこれの性能は十分なようで良かったです。それにしてもあっちは大丈夫でしょうか?」

 

真那はその場で大きく伸びをすると、そんなことを言って、士道たちがいる方に目を向けるのだった。




七罪と折紙のターンだからこのタイトル。
ちなみに七罪がデレさせた効果音は猫のぬいぐるみをとったから鞠亜がふざけてやった感じです。ニャン、ニャン、ニャーンのほうがよかったかな?でも、ファンファーレのリズムに合わせたかったし・・・
では、また土曜と日曜の狭間に

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