デート・ア・ライブ パラレルIF   作:猫犬

78 / 144
3話 暴走と作戦

「前回のデート・ア・ライブ

体調が悪かった少年は完全に体調を崩して二日目は休んだねー。なっつんたちはそんな中少年の心配をしながらも天宮祭を回った。その割にエンジョイしてるよねー。

くるみんはなんか決心を固めて、<時喰みの城>を発動させたね。あたしはまだ作業が残ってたから影響を受けずに済んだし、ここはあたしがズバッと解決する感じかな?ヒーローは遅れて登場するものだしね?

えっ?そっちに行かないで、こっち来いって?仕方ないなー」

 

 

 

~~~~~

 

 

 

『五河司令、これはどういうことだ』

『五河士道が暴走する可能性は低いのではなかったのかね?』

『君のミスのせいで我々まで被害を被りたくないのだがね』

 

上からネズミ、犬、猫のぬいぐるみの順に備えられたスピーカからそんな声が響く。

天宮祭二日目の午前中、琴里は<フラクシナス>で昨日から霊力が不安定になり始めた士道の様子をモニタリングし、午後からは通信室から会議を行っているのだが、士道のことで三人は言いたい放題だった。

 

「ええ、確かに暴走する可能性は低かったのですが、ゼロと言う訳ではないのは承知の上だったと思います」

『それをゼロにするのが君の役目だったと思うのだが?このまま彼が暴走すればどれだけの被害が出ると思っているのか分かっているのかね?』

『それは過ぎたことだ。今はこれからどうするかを考えるべきだと思うのだが?』

 

琴里に対して、全ての責任を押し付けようとしているのに対し、今まで静観していたリスのぬいぐるみ(ウッドマン)は静かにそう言った。もしも、ここでウッドマンが何も言わなかったら琴里がぶちぎれててんやわんやするところだったので危なかった。

 

『そうですね。こういう時の為に<ダインスレイフ>を用意していたのですからね』

「……っ」

『しかし、五河士道は精霊達にとって特別の存在な訳で、今死なせれば、暴走、或いは反転するのでは?』

『それに、せっかく集めた精霊の力を全て失うことになるのでは?』

『それでも最悪の結末になるよりはマシなはずだ』

 

猫が言った言葉に琴里は苦い顔をすると、犬とネズミも最初は心配するも、続けて言った猫の言葉に二人は口をつぐんだ。

 

『と言う訳だ、五河司令。万一の時は彼の処理を頼むよ』

「……ッ!」

 

琴里はさも他人事のように話す猫に怒りが爆発し、今から本人のもとに殴りに行こうと思った瞬間、再びウッドマンが口を開いた。

 

『五河司令、勘違いしてはならないよ』

「え……?」

『君の仕事は彼が完全な暴走になる前に止めることだ。そうならないように努めるんだ。頼んだよ、五河司令』

「……はっ!」

 

琴里はウッドマンの言葉で、我に返り姿勢を正しくして敬礼をすると、通信を切った。

おそらく三人は何か言ってそうだが、聞くだけ時間の無駄だった。

 

『すまないね、嫌な役目を押し付けてしまって』

「いえ、<ダインスレイフ>の権限をあの三人に渡さないでもらえただけで十分です」

『そうかい。……最後に一つ伝えておく。一人でことに当たらず、時には頼るのだよ』

「?……はい。わかりました」

 

琴里はウッドマンが何故そんなことを急に言ったのか分からなかったが、そう返事をして、ウッドマンとの通信も切られると、

 

ウゥーン、ウゥーン

 

突然、<フラクシナス>のアラームが鳴り響いたのだった。

 

 

 

~☆~

 

 

 

「ふぅ、狂三のやつこんなところであんなもの発動するなよ……」

 

士道は頬を掻き、自身の周囲に風を起こして、一気に屋上まで跳躍する。まるで、昨日までの体調不良も霊力が不安定になったことも、もう無いかのように……。

 

士道は結局昼近くまで寝ていたことで、自己診断的にはだいぶ良くなっていたと思い、今からでも何か手伝えることは無いかと、制服に着替えて来禅高校に行った。しかし、タイミング悪く、狂三が発動させた<時喰みの城>の影響をもろに受け、一気に体調不良をぶり返し、頭痛で頭を押さえ、その場にうずくまった。そして数分すると、急に体が軽くなり、気分も高揚し、今ならなんでもできそうな感覚になった。

ここまで士道にあったこと。

 

士道が屋上の床に着地すると、そこには狂三がおり、士道の着地した音で振り向く。

 

「やはり、誰かしらは来てしまいましたか……えっ?」

 

狂三は精霊の誰かが来ると思って、ここで待っていたが、士道が現れたことで驚いた表情を作る。士道は家で寝ていると思ったがために決行したというのに、士道が現れてしまったのは狂三に取って想定外だった。

 

「んと、狂三はこんなところで何してるんだ?」

「ああ、わたくしはそろそろ悲願を成就しようかと思いましてね」

「悲願?」

「ええ、元々わたくしの目的は三十年前に飛び、『最初の精霊』を消すこと。これがわたくしの悲願でしたわ」

 

狂三は今まで誰にも(二亜に聞いたり、千花は何故か知っていたりするが)言わなかったことを口にする。士道はだから狂三が人から寿命を奪ったりしていたのかと納得する。

 

「なるほど、最初の精霊が出て来てからどんどん増えたらしいから、いなくなれば現れない訳か……で、なんで過去形なんだ?」

「残念ながら、わたくしでは倒せないようですので方向性を変えることにしましたの。あの三人を消して、『最初の精霊』が現れないようにするという形に」

 

自身の新たなる悲願を口にすると、士道は少し考える。

(あの三人ってエリオットさんたちのことか……確かに、精霊を倒すよりは人間の方が楽か……その頃はまだ顕現装置の性能も低そうだし)

 

「なるほどな。それで、なんでこのタイミング……ああ、俺が体調不良だったり、みんながこの場に集まっているからか。霊力封印してるから、時喰みで十分能力は低下できて邪魔もできなくなるしな」

「そう言うことですわ。まぁ、士道さんが来てしまったからには、士道さんの霊力もいただいておくとしましょうか」

 

狂三は舌で唇を舐めると、両手に銃を握る。士道は狂三が戦闘態勢になるのを見ると、ふぅ、と息を吐く。

 

「俺としては、狂三と戦う気は無いんだけど?」

「なら、おとなしく霊力をくださいまし」

「それはダメだな。せっかくこの世界じゃ手を染めてないんだから、俺が止める」

 

士道は狂三が引く気ないのと、士道自身がそんなことさせたくないので、狂三を止めようと<鏖殺公>を顕現させる。そして両者が激突する。

 

「よいしょーです!」

 

そして、二人がぶつかる直前に士道の横から飛んできた少女の蹴りによって、士道はフェンスに突っ込み勢いでフェンスがぶっ壊れた。飛んできた少女はその場に着地をすると、パタパタと普段着を叩いて砂埃等を掃う。

 

「よっと。で、なんで真那は俺を蹴ったんだ?」

 

士道はフェンスの残骸から体を起こすと、<贋造魔女>でフェンスを元に戻しながら、飛んで来て蹴りを決めた少女――真那に問う。士道自身、なんで真那は無事なのかとか、蹴りをいれたのかとか疑問がいっぱいだった。

 

「兄様が狂三さんを天使で攻撃しようとしたからですよ」

「ああ、そう言うことか。で、真那はどうしてここに来たんだ?」

「ああ、そうでした。兄様には別の場所に行ってもらわねーと。と言う訳で、レッツゴーです!」

 

そう言うと、真那はポンッと手を打つと、地を蹴って士道の懐に入り、士道の服を掴んでそのまま背負い投げの要領で士道を上空に投げ飛ばした。士道はやはり何故?という疑問を持ち、空中で体勢を整えて真那が何をしようとしているのか聞きに行こうとすると、

 

「かか、士道よ。どこに行こうというのだ?」

「確保。士道には夕弦たちと一緒に来てもらいます」

 

士道と真那の間に限定霊装を纏った八舞姉妹が現れ、士道に向かってそう言う。そして、士道の腕を掴むと士道に反論させず、何処かへ連れて行くのだった。

そんな士道たちを眺めながら、蚊帳の外になっていた狂三は視線をこの場にいる真那に向ける。わざわざ二対一から一対一と不利になるようなことをした理由が分からず、何を考えての行動なのかわからないので警戒する。

 

「そんなに警戒しなくてもいいじゃねーですか。兄様はさっさか元に戻さねーと面倒そーだったからなんで」

「元に戻すとは?それと、あなたが残った理由は?」

 

真那は両足に付けている小さな機械のスイッチを押すと、ピョンピョンその場で跳ねてウォーミングアップをする。真那のしようとしていることは分かったのだが、やはりいくつかの疑問が残っていた。

 

「まぁ、兄様があーなったんで兄様の意思を引き継ごうかと」

「あっちの世界でわたくしの天使に手も足も出なかったのに、どうやって止めるおつもりで?わたくしも悲願があるので手を抜くことはないですよ」

「問題ねーですよ。真那には秘密兵器があるんで。それに、<ヴァナルガンド>と同等の使いやすいやつの準備もやっと整ったんで」

 

やる気満々の真那だが、狂三はそこで気づいた。ここが屋上で、真那は屋上の入り口ではなく、空中から飛んで来て士道に蹴りをいれていたことに。しかもCRユニットを一切纏っている訳でなくただの私服姿で。

 

「まぁ、全ての説明をする必要もねーんで、さっさかあなたを捕まえて、元に戻った兄様の前に連れて行って謝らせますか。<時喰みの城>のせいで兄様の霊力がまた不安定になった訳なんで」

「え?士道さん暴走してましたの?……たしかにテンションはおかしかったですけど」

「……気づいてなかったんですね。まぁいいです。さっさか始めましょうか。<リエサル>起動」

 

真那は両手のブレスレットと首に付けている機械のスイッチも押すと、真那と狂三を中心に随意領域が張られる。

 

「あらあら、それが新しいCRユニットですのね。はなはだCRユニットには見えませんけど」

「まぁ、今回のはCRユニットに見えないのがコンセプトなんで。でも、つえーですよ。とりあえず、本人のとこに行きますかね」

 

そう言ってジャンプすると真那は空を蹴った。

 

 

 

~☆~

 

 

 

「で、俺はどこに連れて行かれるんだ?」

 

士道は八舞姉妹に腕を掴まれたまま何処かに連れて行かれていた。

時間は正確ではないが一分程飛んでおり、士道は暇だから二人にそんなことを聞く。

 

「もうすぐ着くぞ。まぁ、それまではゆっくりいていろといい」

「質問。士道自身の体調はどうですか?よくなければ飛び方を変えたりしてもう少し楽そうな姿勢を探しますけど」

「えと、ちなみにどんな姿勢なんだ?」

「提案。士道は背筋をピンとしてもらい、その状態で腕もピンと伸ばしてもらい、その下から私たちが持ち上げる感じです」

 

夕弦がそう言い、士道はその姿勢を想像した。

(背筋と腕をピンと伸ばして二人が持ち上げる姿……あれ?どこかで見たことがある気が?)

 

「ちなみにその名も、光の戦士飛びだ」

「三分経ったら、霊力尽きるのか?」

「いや、三分経つ前に目的地に着くから問題は無い。それより、もう少し速度を上げるぞ」

 

耶倶矢の命名はギリギリだったので、士道ものっかるとそう返された。正直シュールなので止めておきたかった。そして、二人の飛行速度が増し、一気に空を駆ける。

 

「到着。そんなこんなで目的地ですね」

「かか、どうやら光の戦士飛びはまたの機会だな」

「いや、遠慮しとくよ」

 

さらに一分ほど経つと、八舞姉妹の言う目的地に着いたらしく速度を落として地面に着地する。そこにあったものは……

 

「ショッピングモールだな」

「うむ、どうやら<ラタトスク>が経営しているらしくてな。ここが我らの戦い(デート)の場だ!」

「デート?一体何をする気なんだ?」

「先導。それについてはちゃんと説明しますが、とりあえず中に入りましょう」

「ん?ああ、わかった」

 

結局何があるのか分からないまま、士道は二人に促されて中に入って行く。

中に入り、広間的な場所につくと、千花、折紙、十香を除く精霊全員が集まっていた。

三人はどこに行った?と思いながらとりあえず口を開く。

 

「で、来たはいいけど何するんだ?」

「ええ、とりあえず説明するわ。今の士道の状態が暴走気味になっているのは理解しているわよね?」

 

ベンチに座っている琴里は士道の問いにそう答える。精霊の皆は士道の状態を見て、心配そうな顔をしていた。

 

「らしいな。でも、俺は元気だぞ」

「それは見てればわかるんだけど、このまま放っておくと、完全に暴走して空間震規模の被害を起こしかねない訳。だから、士道の霊力を封印し直す。ここまではいい?」

「ああ、霊力を安定させたいんだな。でも、ここに来た理由はわからないんだけど?」

「まぁ、ぶっちゃけ今の士道の状態はいつ暴発するかわからないから、安全な場所に移動したって訳。とりあえず、士道の状態を簡潔に説明するわ――」

 

それから琴里は士道が何で暴走したのかとかいろいろ話した。

士道が体調を崩したのを機に精霊達とのパスが狭まってしまったこと、精霊達はうまく霊力を扱えない状態にあること、このままだと今夜の零時には士道が完全に暴走してしまうということ。

八舞姉妹が飛べていたのは、千花の植物の一つ【霊種】と呼ばれる種によって、一時的に八舞姉妹が飛ぶだけの分の霊力を士道とのパスを通さずに補給していたとのことだった。千花と折紙と十香がこの場にいないのは、この建物のいたる場所に邪魔物が来た時の為の対策を準備しているとのことだった。

 

「そう言うことだったのか……で、どうやったら俺の暴走は収まるんだ?」

「士道が私たちの霊力を封印するのと同じ方法よ」

「てことはキスか……今すぐ、やるのか?」

 

皆と一度しているとはいえ、やはり気恥ずかしい物で士道はそう言う。すると、琴里は少し苦い顔というか、想定外のことがあるかのような顔をする。

 

「それがすぐにはできないのよ。士道とのパスが弱まっているせいで今の状態じゃ意味が無いの」

「はぁ、それでどうするんだ?ちゃんと方法は見つけてるんだろ?だから、ここにみんなを集めたんだろうし」

「ええ、ちゃんと見つけてあるわ」

 

霊力のパスが弱まっていることでまさかこんな事態になるとは思わなかったが、琴里が言ったようにちゃんと方法があるようで安堵する。これで、見つかっていなかったら自分のせいで皆を危険な目に合わせることになりそうだったので、士道自身それは避けたかった。

 

「それで、方法って?」

「ええ、士道。あなたには、これからみんなと何かしてもらってデレてもらうわ」

「ん?」

 

 

 

~☆~

 

 

 

その頃千花たちは……

 

「千花、結局これはなんなんだ?」

「ん?今はむやみに霊力が使えないからぁ、魔術師たちが来た時の対策だよぉ」

「そう、まぁ、来たら私も秘密兵器を使う」

 

大体一メートルほどの立方体の箱を七個、この施設の周りに設置した所だった。しかし、結局この箱がなんなのか二人は聞いていなかった。しかし、千花は使わないに越したことも無いし、ただ言うのは面白くないので秘密にしていた。

 

「さぁ、戻るよぉ。士道君も着いたらしいからぁ」

「そう。じゃぁ戻るかな」

「うむ。正直外は寒いから中に入りたいな」

 

三人はそんなことをしゃべりながら施設の中に入って行くのだった。




士道の霊力が暴走しはじめたのと、それを止める作戦が始まるからこのタイトル。
次回から、当分戦闘は無いですよぉ。いや、少しあるかも?

では、また土曜と日曜の狭間に。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。