デート・ア・ライブ パラレルIF   作:猫犬

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評価が赤くなったからか、読む人が増えた気がする。
と言うわけで、第7話。


7話 <封解主>

魔力処理を失くした真那と霊力をあまり使いたくない狂三対アルテミシアの戦いは何故か拮抗していた。

 

「ねー、なんでそんなに二人の息がぴったりなの?」

「知らねーですよ。あれですよ。戦い過ぎてなんとなくわかる感じですよ、きっと」

「そんなところですわ。何度も追いかけまわされたせいですわ」

「そんなに仲悪いのに、なんで息合ってるのやら?」

 

アルテミシアは真那のブレイドを右手のクローでガードし、左手のクローで攻撃しようとするとクローに向けて銃弾が放たれて随意領域で弾きながら首を傾げる。先ほどから、特に打ち合わせをしている素振りも無いのに、真那の動きに合わせて的確な位置に銃弾が飛んできたり、真那が少し首をずらしたその隙間に銃弾を通してきたりしたため、そんな疑問を口にしたわけだった。二人から返ってきた返答は仲が悪い感じだが……。

そして、アルテミシアにはもう一つ疑問があった。

 

「それとさ、真那。魔力処理本当に無くしたの?動きがDEMにいた時以上に良くなってるけど……魔力処理さらに加えてない?」

 

いくら二人の息が合っていても、真那の動きは魔力処理を失くした人間の動きでは無かった。アルテミシアの動きについていけていることが何よりの証拠だった。そう言われて狂三もそう言えばみたいな顔をするが、さもどうでもいいので銃を撃っていく。それをクローで弾くのでダメージは0だった。

 

「ちゃんと魔力処理は無くしましたよ。そうじゃなかったら今頃はもう活動限界を迎えてますし、こんなところで特訓しねーですよ」

「そりゃ、そっか」

 

真那と狂三の攻撃を捌きながら、会話をしていくと、アルテミシアはそうだよなー、と納得をする。魔力処理されたことに怒っていた真那がさらなる魔力処理を施すとは思えず、まだ二回しか会ったことのない真那の兄の士道も魔力処理することを許すとは思えなかった。

(魔力処理を強要するような人間に精霊が心を開く訳もないしね)

 

「なんでなのかは気になるけど、それは真那をDEMに連れて行けば分かるからもう聞かないよ」

「真那は行かねーってさっきも言ったはずですよ」

「真那さんは連れて行かせませんわよ。そんなことになれば士道さんと千花さんに怒られますので」

 

狂三の言葉を最後に三人の会話は終わり、真那は今まで以上に速度を上げ、常人ではとらえきれない速度を出して、アルテミシアの周囲のいたる方向からブレイドによる攻撃を加える。アルテミシアは慌てること無く的確に両手のクローでさばき、合間を縫って飛んでくる銃弾は随意領域で弾いてガードをする。一分ほどすると、真那はこの攻撃ではいくらやっても意味が無いと判断し、距離を取って左手の砲門からでかいのを一発放つ。流石にこれをガードするのは危なそうだと判断するとアルテミシアは回避をし、

 

「じゃぁ、次はこっちの番かな?」

 

そう言いながら、真那に接近をしてクローを振るう。真那は右手のブレイドと随意領域でうまく攻撃をいなしていくが、随意領域を酷使しすぎるとすぐにへばるため長時間繰り返すわけにはいかなかった。そして、随意領域が一瞬ゆるみ、クローが真那に触れそうになった直後、アルテミシアの横からレイピアによる一撃が放たれ、アルテミシアは慌てて腕の向きをレイピアに合わせることでギリギリいなすことに成功し、真那はその隙に距離を取る。

 

「今のは助かりましたけど、なんであなたがそれを持ってんですか?」

「十香さんの時にお借りしたものを返し忘れていましたわ」

「ほんとに返す気あったんですか?【一の弾(アレフ)】との組み合わせなら相当な脅威になると思いますから、元から返す気ないんじゃねーんですか?」

「あらあら、信用が無いのですね。まぁ、それだけのことをしているから文句は言えませんけど」

 

真那は一応お礼を言うと狂三に問い、狂三は霊力剣をくるくるさせながら、会話をすると、アルテミシアは面倒なことが増えたことで頭に手を当てる。

 

「はー、それがエレンの言ってた霊力で形作る剣か……また面倒なものが出てきたね。銃しかない<ナイトメア>に近接武器とか。もう手加減しなくていいよね?」

「あーあ。狂三さんのせいで本気になっちゃったじゃねーですか。どうするんですか?エレンにも匹敵しますし、二人がかりでも危ねーですよ」

「では、あなたも本気を出せばいいじゃないですか。まだ出力の七十パーセント程度ではないのですの?」

「はぁ、その言葉そっくりそのまま返しますよ。精霊のくせして天使を使いやがってください。あと、残念ながら八十パーセントです。まぁ、これくらいの相手じゃねーとあれを使う必要も無いですし、ちょいとやってみますか――」

 

真那は頭を掻くと、一気に<ヴァナルガンド>の出力を完全に解放させる。それを見て、アルテミシアもCRユニットの出力を引き上げる。

 

「<ヴァナルガンド>――フルバースト」

「<フェンリル>――フルリンク」

 

 

 

~☆~

 

 

 

場所は戻って士道たちサイド。

千花が宇宙の何処かまで吹っ飛ばされたことで、士道と六喰の二人で青龍の相手をすることになり、大変な感じだった。

(白虎の時は七罪と千花の三人だったし、朱雀の時も八舞姉妹と三人で、幻武の時も……いや、あの時は十香が幻覚にくらってたからあれだけど最終的には四人だった訳で、今回は二人とかきついな)

 

「主様、こうなればむくが本気を出しちゃうのじゃ!」

「……今まではなんだったんだ?」

「あれじゃ、封印されし力を解放するのじゃ。ちなみに主様はそんなむくを嫌わぬか?」

「六喰は六喰だろ?だから嫌わないよ」

「うむ、主様は優しいのじゃ。<封解主(ミカエル)>――【(シフルール)】」

 

六喰は士道と会話をしている途中に、自らの胸に<封解主>の先端を当ててそう言った。すると六喰の霊装の形状が変わり、<封解主>の形状も錫杖から(ほこ)へと。

突然行われた六喰の行動に士道は驚いていると、六喰は士道の反応に首を傾げ、すぐに暗い顔をする。士道が驚いたのはいきなり胸に<封解主>を当てたからだったのだが、六喰は士道に変に思われ、嫌われたと勘違いして暗い顔をしたが、互いにそれを知らない。

そして、二人は会話をしようとするが、青龍は待ってはくれず、襲いかかる。二人は左右に回避をして、それぞれ攻撃を行う。

 

「六喰。一つ言っとくけど、さっき驚いたのは六喰がいきなり天使を自分に突き立てたからで、六喰を嫌ったりはしてないからな」

『ふむん♪やる気が出たのじゃ!』

 

インカムを使って六喰に伝えると、六喰は喜び、攻撃が強くなっていた。

 

『士道が精霊の些細な気持ちの変化に気付くなんて……』

「鞠亜、ちょっとひどくないか?」

 

そして、鞠亜はそんなことを言い、士道がツッコむ。

青龍は何故か突進しかせず、二人は回避し、六喰は鉾になった<封解主>で、士道は<鏖殺公>による攻撃をするが、随意領域によってこれといった外傷を負わせることが出来ず、ただ霊力を消耗するだけだった。

すると、

 

「むん!面倒なのじゃ。<封解主(ミカエル)>――【(ヘレス)】」

 

六喰は青龍の装甲を切り裂くと同時に新たな技を発動させる。すると切られた箇所が粒子レベルに分解され、切り裂かれた跡が残るのだった。

六喰の技の威力に士道はまた驚いていると、六喰はやり過ぎたかと首を傾げる。

 

『六喰、その調子でどんどんやっちゃってください。士道は強い女の子も大好きです!』

 

そして、六喰がまた士道に嫌われるのでは?と思いかけた所でちょうど鞠亜がそんなことを言ってしまう。士道としては別に強さで判断はしない訳であながち間違っていないので特に言わないでおく。

六喰は鞠亜の言葉でさらにやる気を出し、青龍の装甲を切り裂きまくる。士道も士道で<鏖殺公>を振るタイミングで<颶風騎士>の風を起こして加速させて斬り裂く。すると、装甲の耐久値を上回ったようで装甲に傷ができる。

二人は青龍に確かなダメージが与えられる(すべ)を確認すると、その調子で青龍の突進を回避しながら着実に攻撃をし、何度目か攻撃をすると自身の装甲に傷が出来過ぎたことで、青龍は二人から距離を取る。

今まではただ突進するだけだったので警戒をすると、

 

『今やっとわかったのですが、どうやらダメージを与え過ぎたことで暴走が収まってしまったみたいです。だから、ここからは突進以外の攻撃も来ると思いますから気を付けてください』

 

士道の周囲の随意領域制御を行いながら、青龍の情報を集めていた鞠亜がそう言うと、青龍はその場に停止しながら、口にエネルギーを溜め始める。

どこからどう見ても光線とかブレスを撃つようにしか見えず、二人は照準を定められないようにしながら青龍の懐に飛び込む。ブレス系攻撃なら距離を取らず懐にいた方が安全な為の行動だった。

しかし、懐に入った瞬間、青龍の装甲の一部が開き、魔力で作られた風が放出され、予想していなかったために二人は吹き飛ばされて距離を離される。さらに無重力なせいで体勢を崩し、立て直す間に照準が定められてブレスを放たれてしまう。

六喰は空間に穴を開けようとも考えるが、穴を開けている時間も無い為、士道をかばうように前に出て鉾を構える。

 

「なにしてるんだ、六喰。逃げろ!」

「主様、むくの後ろから出ちゃダメじゃぞ」

 

六喰はそう言って鉾の先端を向け、放たれた光線を【解】で分解しようと試みる。

六喰の考え通り、ブレスは分解されていくが、量が量なだけにすべてを分解することはできず、ブレスの一部が六喰の霊装を焦がす。

 

「主様、合図をしたら思いっきり下に飛ぶのじゃ!」

「どうする気だ?まさかとは思うけど俺を逃がすために無茶する気じゃ……」

「そのまさかじゃ。このままじゃ主様もろとも焼かれてしまうのじゃ」

 

六喰は苦しげな表情をし、ブレスを防ぎきれないと判断すると、士道に逃げるように言う。

しかし、士道は六喰を置いて逃げるなんてことしたくなく、判断に困る。

 

「むくは主様に生きていてほしいのじゃ。またむくの前から主様が消えるのを見たくないのじゃ」

「でも、俺を逃がしたら六喰の身が……」

「主様は優しいのじゃ。でも、もう時間切れじゃ」

 

そう言って六喰は左手で士道の襟を掴むとそのまま士道を自身の下に投げ飛ばす。そして、士道が飛んで行くコースを重点的に消滅させていく。

そして、士道の身体がブレス上を抜けると、六喰はブレスに包まれた。

 

「六喰ぉー」

 

士道はあらん限りの声で叫んだ。そして、ブレスが止むとそこには何も残っていなかった。

(そんな……俺のせいで六喰が……)

 

「ふぅ、危なかったのじゃ」

 

士道が悲しみに暮れていると、何故か士道の隣で額を拭いながら助かったことに安堵している六喰がいるのだった。

 

「ん?……六喰?」

「むん?なんじゃ?主様?」

 

士道はなんで六喰が無事なのかとか、完全にアウトだったようなとか思うがとりあえず、

 

「無事でよかったよ」

「ふむん……まだあれが残っているから、安心するのは早いのじゃ」

 

指差した方を見ると、青龍がその場に止まっており、再びブレスのチャージをしようとしていた。

 

『六喰が無事なのは、六喰の周囲にも数秒間随意領域(テリトリー)を張って、その間に六喰が素早く穴を開けて脱出したからです。しかし、これはギリギリだったのでもう一回はもう無いですよ』

 

ブレスのチャージが終わる前にチャージの邪魔をする為に二人は接近する。その時に鞠亜が説明をし、士道は納得した。

青龍のそばにつくと、再び青龍の装甲の一部が開こうとする。

 

「<氷結傀儡(ザドキエル)>!」

 

しかし、開き切る前に<氷結傀儡>によって開こうとしていた部分を凍らせ、開かなくさせる。これで青龍の懐から離れずに済むと思うと、青龍は身体を大きくひねらせ、しっぽで二人を叩く。二人は天使でガードするが反動を殺しきれず、再び距離を取られてしまう。今回は吹っ飛びながらも態勢を戻すが、懐に飛び込むのは厳しそうだった。

 

「六喰、数秒ブレスを消すことはできるか?」

「無理じゃ。さっきので霊力を使い過ぎて【(ヘレス)】はもう使えないのじゃ。あれは消耗が激しいのじゃ」

 

六喰がそう言うと【放】を維持するのに使う霊力をカットするために【放】を解いて元の状態に戻る。こうなると頑張って避けるしか無くなったのだが……

 

『後方から急激な熱源反応をキャッチしました。このままでは巻き込まれます!急いで回避を!』

 

タイミングが悪いことに、鞠亜はそんな警告をする。

(まさか、もうエレンが戻って来たのか?)

そんなことを考えているうちに青龍はブレスを放つ。

 

「主様、捕まるのじゃ!【(ラータイブ)】」

 

六喰が士道の腕を掴むと、人一人分ぐらいの穴を開け、士道を放り込んで自身も飛び込み穴を閉じる。すると、ブレスが通り過ぎ、同時に鞠亜が警告した熱源の漆黒の光線も士道たちが元いた場所を通り過ぎ、ブレスとぶつかる。それを数十メートル離れた位置から二人は見ていると、すぐに漆黒の光線がブレスを押し返しそのまま青龍を包む。

 

「鞠亜、この光線はどこから飛んで来てるんだ?もしかしてDEMか?」

『いえ、わかりませんが、たぶん違います。もしそうなら青龍に着弾した説明がつきません』

「主様、今はそんなことよりあれを完全に壊しちゃうのじゃ」

 

光線が止むと、そこには随意領域を張って身を護ったのかまだ形が残っている青龍がいた。しかし、随意領域を突き破られたのか装甲はボロボロになっていた。

 

『そうですね。考えるのは後にして破壊しましょう。最後の力で自爆とかしかねないので……』

「フラグが立ったのじゃ」




果たしてあの光線はなんだったのか?この伏線は回収されるのか?(します)
伏線張りまくってますが、ちゃんと回収はします。どれが伏線かわからなくなりそうですが・・・

狂三編が書き終わったけども、もしかしたら多少変える可能性が。すべては16刊次第かな?というか発売までに書き終えたいなぁ~。まちがいなく二冊すぐ読もうとする気がするし・・・

では、また土曜と日曜の狭間に

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