デート・ア・ライブ パラレルIF   作:猫犬

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7話 救い

真那に千花を元に戻す方法を伝えた士道は真那たちのいる方に向かっていた。

 

「真那一人じゃさすがにきついよな。安全な場所にいるように言われたが、やっぱり心配だし」

 

繋ぎっぱなしのインカムから状況を聞きながら、考えをまとめて走っていると、遠くの方で大きな光が見えた。

何だ?と思っていたら、インカムから真那の独り言が聞こえてくる。

 

『マジですか。あと一発。絶対に当てないと……』

(何らかの手があるが、あと一回きりなのか)

「つまり、動きを止められればいいんだな」

 

突然声を出したら、真那が驚いたようだがすぐ切り替えて返答があった。

 

『兄様?』

「蛇龍の気をこっちに引き付ける。だからその隙をついてくれ!」

『兄様、それは危険すぎます』

「平気だ。俺は真那を信じている!」

 

(俺だってやれることはしたい!)

そんな気持ちを込めて言うと、真那は一瞬考え、

 

『わかりました。真那も兄様を信じます!』

「じゃぁ、十秒後に」

 

そう言って、通信を切る。

移動しながら会話をしていたので、すぐに真那たちが見える位置まで来た。

今までの会話から、もしかしたら動きを止めるまでいかなくても、鈍らせることはできるかもしれない方法があったが、通信を切っておかないとならないことだった。

だからうまくいくことを信じて、士道はありったけの気持ちを込めて叫ぶ。

 

「千花ぁぁぁー」

 

もしかしたら、自分を呼ぶ声で少しは正気に戻るかもしれない。

元に戻ってくれ、と言う気持ちを込めて。

士道の声を聴いた蛇龍は動きが鈍くなる。真那は何か言いながら手に持った銃で蛇龍を撃ち、放たれた弾が一直線に腹についていたクリスタルに当たると粉々に砕き、蛇龍が光になるのが見えた。

その後、光の中から千花が現れそのまま地面に向かって落下する。

それに気づいた真那はブースターで一気に千花の元に行き、ギリギリでキャッチすると着地する。

 

「これで終わったんだよな。千花、サマエル」

 

士道は安堵をして、真那たちに近付こうとして気づいた。

光になったはずの蛇龍が地面に倒れている白虎の中に入り、白虎が動き出したことに。

 

「まずい、二人とも力を使い切って動けないはず……」

 

士道は真那たちの元に走り、白虎は口に魔力を溜め始める。もう少しで、二人の元にたどり着けるという位置まで来ていた。

しかし、士道はただの人間だから何もできない。

だから願った。

 

二人を守ることが出来る力があれば、と。

 

その瞬間、士道の頭の中に一つの言葉がよぎった。

 

「……<灼爛殲鬼(カマエル)>」

 

頭によぎったその言葉を口にすると、右手から炎が出てきて一つの戦斧が現れる。

 

「これは?……いや、それよりも」

 

突然現れた戦斧に驚くが、すぐに切り替え二人の前に行く。

足場は悪いが二人の前で踏みとどまり、<灼爛殲鬼>を飛んできた魔力弾にぶつけて、そのまま魔力弾を切り裂く。

魔力弾の余波が周りに飛ぶが、なんとか二人を護りきる。

 

「ぎりぎり間に合ったか。無事でよかった、二人とも」

 

そして、戦斧を下ろすと後ろにいる二人に声をかけた。

 

「兄様?」

「士道君!?」

 

真那は士道に驚き、千花は助かったことに安堵していた。

二人が無事でよかったが、今はやるべきことがあった。

 

「それよりも、まずはあいつを倒さないといけないか。ちょっと行ってくる」

 

未だに立っている白虎を見ながら士道はそう言う。

 

「兄様、その武器は?……それよりも奴は硬くて、動きも早いです。その武器では当てるのは困難でいやがります」

「いや、たぶん平気だ。ガタが来ているから動きが鈍くなっているだろうし、高出力の一撃で終わらせる」

「士道君……」

 

二人が心配してくれるのはうれしいが、まだ危険なことに変わりない。

そんな感じで、白虎と対峙しようとすると、

 

『さっすが、士道君だねー。じゃぁ、私も最後にもう一働きするかなー』

 

白虎からサマエルの声が響き、白虎の動きが完全に止まる。

 

『私は千花の中に溜め込まれていた悪意を全て、これに持って来た。だから、私ごとこの悪意を消してくれないかな?あー、制御を奪ったのはいいけど、正直これはきついなー。真那ちゃん、千花を助けてくれてありがとね。元気でね』

「いえ……そんな」

『千花、今まで楽しかったよ。できればもう少し一緒に居たかったけどね』

「うん。私だってもっと居たかったよぉ」

 

真那と千花もうつむきながら声を出す。

 

『士道君。こんなことに巻き込んじゃってごめんね。千花のことは任せたよ。これからも仲良くしてあげてね』

「あぁ、わかったよ。千花のことは任せろ!」

『うん、いい返事だね。じゃぁお願いね』

 

サマエルがそう言うと、士道は<灼爛殲鬼>を持ち上げる。

 

「……<灼爛殲鬼(カマエル)>――【(メギド)】」

 

何故か知らないはずなのに、使い方は分かっていた。

【砲】形態になった<灼爛殲鬼>の砲身を白虎に向ける。

しかし、サマエルにはああ言ったがサマエルまで消してしまうことに動揺しているせいか、砲身がぶれる。

 

「ダメだ、このままじゃ。サマエルまで……」

 

そんな言葉を漏らすと、

 

「サマエルの気持ちを無駄にしないでぇ。私たちの為にやってくれているんだからぁ。せめて、私たちが送ってあげよぉ?」

「そうです、兄様。彼女の気持ちに答えてください!」

 

二人は立ち上がり、<灼爛殲鬼>に触れて言った。

すると、砲身のぶれが自然と収まる。

(二人とも、できればサマエルを救いたいと思っているはずなのに。いや。だからこそ、これ以上サマエルを苦しめたくない!)

 

「あぁ、わかった」

 

覚悟は決まった。

そして、放つ。<灼爛殲鬼>から出た火焔の砲撃が白虎を包み無に帰す。

白虎が消滅すると同時に<灼爛殲鬼>は消え、士道は天使の連続使用で気を失い地面に倒れた。

 

「兄様?」

「士道君?」

 

 

 

~☆~

 

 

 

士道は真っ白な空間にいた。辺りを見回すが一面本当に真っ白で士道以外何もなかった。

 

「ヤッホー、士道君」

 

と思ったら、突然声がして声の方に振り向く。そこには黒髪の千花――サマエルがいた。

 

「ここは、一体?」

「ふふ、ここは士道君の意識の中だよ。ちゃんとお別れをしておきたくてね。あと、割と大事な話。と言ってもそんなに時間がないけどね」

「そうなのか。ごめんな、ちゃんと救えなくて」

「いや、いいよ。それよりもね、私が消えたことと近くで戦っていた余波で、私が作ったあの巨木は徐々に崩壊を始めると思う。だから、早めに逃げてね。それにね、士道君は気にしているみたいだけど、ちゃんと私は救われたよ。私も千花も悪意から解放されたわけだし。それに、実は私は千花の天使<死之果樹園>の疑似人格で、悪意の許容量を超えた時に、千花の心を守るために生まれた存在だから、この騒動が終わっても私は消えていたんだよ」

「そんな……」

「だから、私の分まで千花を護ってあげてね。約束だよ」

 

そう言うと、サマエルは士道の頬にキスをした。

士道はいきなりのことに目を白黒させていると、サマエルはニッと笑みを浮かべた。

 

「え?」

「ふふ、士道君の驚いている顔面白いね。これは私からのお礼だよ。あと、私の残った霊力を渡したからね。じゃぁ、そろそろ時間みたい」

 

サマエルが自分の身体を見ると消えかかっていた。

 

「おまえ……分かった。千花はちゃんと護る」

「うん、お願いね。じゃあね。士道君」

「あぁ、じゃぁな。サマエル」

 

そう言った時の、サマエルの顔は笑顔だった。

そして、士道の意識が現実に戻された。

 

 

 

~☆~

 

 

 

意識が戻ると、目の前に二人の顔があった。

 

「いきなり気絶しねーで下さい。驚いたじゃねぇですか」

「そうだよぉ、士道君」

 

どうやら、倒れた士道をギリギリで支えて、地面に横たわらせたらしかった。

士道は体を起こすと、あったことを話す。

 

「あぁ、心配かけたな。それよりもここを離れるぞ。もうすぐあの巨木が倒れるってサマエルが言っていた」

「やっぱりかぁ。でも、もう間に合わないかなぁ。だから……」

 

そう言われて、巨木の方を見ると、木の枝が落下していたり、巨木の幹の一部に亀裂が走ったりしており、だいぶ傾いていた。今から走っても空から降ってくるそれらから逃れられるかはわからない。

 

「今すぐここを……」

 

だから、千花たちの方に向き直りながら言おうとすると、途中で止められた。目の前に千花の顔があり、士道の唇にキスをすると、すぐに唇を離した。

士道と真那は突然のことに驚いた。

 

「え?」

「ん?」

「ふふっ、驚いている士道君かわいいなぁ」

 

千花は微笑みながらそう言うと、千花が纏っていた霊装が消えていく。千花の霊装が消えると、千花はグレーの洋服に白のロングスカートに戻った。

そして、崩壊し始めていた巨木も徐々に光になって、すぐに消えていった。

 

「……一体何が起きたんだ?」

 

士道は今何が起きたのか、何で千花が士道にキスをしたのか分からず混乱した。

 

「士道君には精霊の霊力を封印する力があるんだってさぁ」

「俺にそんな力が?でも、いいのか?千花は精霊を守るために力を使っていたんじゃ」

「確かにそうだけど、士道君が私を、皆を護ってくれるんでしょ?それに……」

 

千花が服のポケットからあるものを出した。

それは霊力を隠す機械だが、よく見たら壊れているのか。電源が付いていなかった。

 

「戦闘やらの衝撃で壊れちゃったみたい。修理にはある程度時間がかかるし、私は士道君のこと好きだからねぇ。それとも嫌だったぁ?」

 

千花は最後に首をかしげながら言った。

 

「嫌ではなかったけど……あ、そうだ。千花に渡したいものがあったんだ」

 

士道は途中で何かを思い出したのか、ずっと肩から下げていたバッグから包装された物を取り出し、千花に渡した。

 

「これはぁ?開けるねぇ」

 

士道から受け取った物を開ける千花。

中から出てきたのは、桜の花のブローチだった。

千花はなんで士道がこんなものを渡すのか分からずアタフタすると、士道の顔を見る。

 

「え?これってぇ。どうしたのぉ?」

「本当はこの前一緒に遊んだ時に渡そうと思ったんだけど、色々あって渡しそびれたからな。今更渡すことになっちゃったな」

「ふふ、士道君。ありがとう。大事にするねぇ」

「えぇ、ごほん」

 

そんな感じで、二人で話していたら、隣で真那が咳払いをした。

 

「お二人とも、一体何が起きているのか説明してください。とぉくぅに、兄様とのキスのあたりを」

 

そう言って、二人に詰め寄る真那。

士道としてもどうゆうことかわからず、千花は千花でニヤニヤしている。

 

「えぇー、そこは秘密だよぉ。もう全部終わったし、二人とも帰ろぉ」

 

千花はそう言って立ち上がると歩いていった。

 

「そうだな、千花」

 

士道も先に歩いて行った千花を追いかける。

真那に事情説明しようにも士道自身まだ気持ちと状況の整理がついていないので。

 

「ちょっ、二人とも、私に説明をー」

 

真那もそう言いながら二人を追いかける。

 

「あ、そうだ。そういえば、ちゃんと自己紹介してなかったねぇ」

 

千花は身体を反転させて士道たちの方を向く。

 

「改めまして、私の名前は木野千花。これからもよろしくねぇ」




これで、一章は終わりです。
今まで、お読みいただきありがとうございました。

次は、いつ投稿するか本当に未定ですので・・・・・・。

詳しいことは、この後に上げる予定の活動報告で。

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