デート・ア・ライブ パラレルIF   作:猫犬

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今週というか先週にお気に入りが5人も増えた謎。
新年だからかな?減らないことを祈りたいなぁ~。
増えないのより減る方がテンション下がるし・・・

そんな感じで、第7話です。



7話 幻覚

(なんで十香が玄武の味方をするんだ?それに士道はやらせん、ってどういう意味なんだ?)

士道の攻撃を十香が止めたことで、何故そんなことをしたのか、そして十香の言っている意味が分からず士道は困惑し、十香から距離を取った。

 

「十香、なんで玄武の味方をしてるんだ!?」

「急に騒ぎ出したな、この機械が!」

 

十香に声を掛けるも、十香は聞く耳を持たず士道に切りかかる。もし玄武も攻撃に加わったらと思うとまずいのだが、玄武はその場を動こうとはしなかった。

十香に攻撃したくないから、<灼爛殲鬼>を消して風を周囲に起こして攻撃を回避していく。

 

『士道、十香に何が起きたのか分かりました。まず、あの機械は幻覚、幻影を使うタイプのようで、名前は『幻武』のようです』

「そうなのか?幻覚を使うってことは……」

『はい、どうやら、幻武の光によって十香の視覚の一部を誤認させているようで、士道が幻武に、幻武が士道に見えているようです』

 

十香の攻撃を回避しながら鞠亜の説明を聞いたことで、十香の身に起きたことは分かった。十香の戦い方は極力幻武から距離を取るような感じだった。しかし、一つ疑問があった。

 

「それで、俺が幻覚にかかっていない理由はなんなんだ?まさか、一人にしかかけられないって訳じゃなさそうだし」

『それに関しては、千花に感謝ですね。コンタクトのおかげでなんかかかっていないみたいです。まぁ、士道の場合は単純に十香たちよりも所持している霊力が多いからかもですけどね』

「つまり、幻武を叩けば十香は直るのか?って言っても十香の攻撃を避けながら攻撃するのは至難の業だけど……」

 

今の状況を覆す方法が分かったのはいいが、状況が悪すぎる。十香を相手にしながら、幻武に攻撃は困難であり、尚且つ幻武は固いから簡単に壊せるとは思えなかった。

(せめて、誰かいてくれれば二対一に持ち込めるので可能性は上がるよな……)

 

『ちなみに、この辺り一帯に幻影を張っているので誰も気付いていないようです。折紙たちも含めてです』

 

鞠亜に告げられた情報は最悪の一言だった。これで、誰かの助力も見込めず、<フラクシナス>に連絡しても時間がかかり過ぎそうだった。

(やっぱり、俺一人でなんとかするしかないのか。となると……)

 

『士道、真那なら呼べますよ。いつかの装置を使えば一瞬でここに呼べますし』

「ん?でも、真那は魔力処理を除去したから戦えないんだろ?」

『一応、ASTで使うような汎用ユニットなら使えますよ。まぁ、いつものASTの結果になるから私的にはやりたくないですけど』

「一つ聞くけど、来た瞬間操られる展開は無いよな?」

『あ……』

 

こうして、希望も虚しく助力は期待できなくなった。

(まっ、操られる可能性があるのなら呼ぶわけにはいかないし、真那を戦わせる気はもとから無いけども……)

士道は気を取り直して、十香を見る。今の状況の打破ならば

十香をなんらかの方法で戦意を消すしかなかった。どうやればいいのかは謎だが。

 

「何故回避ばかりこやつはするんだ?甲羅でガードをすればいいだろうに」

「俺そんな硬くないから、回避するんだよなー」

「まぁ、いい。面倒だからもう斬られろ!」

 

十香はぶつくさ文句を言いながら、攻撃を続ける。時には斬撃も飛ぶが寸での所で回避を成功させなんとかなっているものだった。

そして、何度繰り返したか分からなくなった頃、遂に士道自身に限界が来た。慣れない風の長時間の使用に、だいぶ士道自身の精神が疲労していたようで、足を滑らせ転倒してしまった。

十香はそんなチャンスを逃すことも無く、士道に斬り裂くべく<鏖殺公>を振るった。

士道はなんとか首や頭を護ろうとした。琴里の炎でどこまで癒せるかはわからないが、致命傷だけは避けたかった。

そして、すぐくる攻撃に備えたが、

 

「なっ!」

 

士道が斬られることは無く、十香は狼狽の声を上げた。

そして、士道が十香の方を見ると、十香と士道の間に一人の少女がいた。

 

「ふぅ、ギリギリ危機一髪だったねぇ。士道君、大丈夫ぅ?それにしても何したのぉ?十香ちゃんに襲われるってぇ。こっちの十香ちゃんは病んでるのぉ?」

 

<死之果樹園>で十香の攻撃を弾いた千花は士道の安否を確認するのだった。そんで、十香を見ながらそんなことを言った。

 

「あぁ、おかげさまでな。十香は病んでないよ。それで、どうやって来たんだ?」

「うん、士道君のピンチを感じて大急ぎできたんだよぉ」

「そうなのか?まぁ、助かったよ、ありがとな」

「はぁー、千花さん嘘は言わないでくださいまし」

 

すると、士道の後ろからそんな声が響いた。声を聴いて振り向くと、そこには霊装を纏った狂三が呆れた表情をしながら立っていた。

 

「本当は十香さんに同行させていたわたくしから連絡を受けただけですわよ。それで、千花さんが付いてきただけですわよ」

「ん?てことは十香の連れって狂三だったのか?」

「ええ、そうですわよ。十香さんから聞いていなかったのですね。まぁ、長話は後にしましょう。来ますわよ」

 

話を切り上げると、十香は跳躍して士道をぶった切ろうとしたが、狂三に襟首を掴まれ、難を得た。

そして、今まで動こうとしなかった玄武が動き出した。目の光が若干強くなり、一気に輝いた。

 

「わぁー、目がぁー」

 

四人は二度目の幻覚作用の光を浴びてしまった。士道は幻覚が効かないからいいが、これで千花と狂三も幻覚に侵されてしまい、状況が悪化しようとしていた。

光が止むと、狂三は辺りを見回し、千花はかがんだ状態で目を抑えていた。

 

「来なさい、<刻々帝(ザフキエル)>――【四の弾(ダレット)】」

 

狂三は天使を顕現させ手に短銃を握ると、Ⅳに合わせて弾を装填する。そして、自身の頭に銃口を向け、そのまま撃ち抜いた。

 

「ふぅ、幻覚だと分かっているのですから、時間を巻き戻してしまえば済む話ですわね。それで――」

 

狂三は自身で幻覚を破り、さもつまらなそうにそう言うと、千花の方に目を向ける。

 

「いつまで、目を抑えていますの?手早く終わらせますわよ」

「えぇー、眩しかったんだから、もう少し待ってよぉ」

 

千花は立ち上がり、覆っていた手を目から放すと文句を言った。狂三とは普通に会話が出来ていることで、まるで幻覚にかかっていないような感じだった。

 

「んと、千花は幻覚にかかっていないってことでいいのか?」

「うん、そもそも私はそういうの効かない体質っぽいんだよねぇ。あっ、理由は知らないよぉ」

 

あっけらかんとした様子で千花は頷くと、最悪の事態にはならずに済んだようだった。

(そういえば美九の洗脳も千花効いてなかったからな……どうしてなんだか?霊力量は十香の方が多いはずだから、そのあたりは関係ないだろうし……)

 

「士道君、考え事してないで十香ちゃんを元に戻すよぉ」

「では、お二人は十香さんの相手をお願いしますわ。わたくしたちと十香さんでは相性が悪いので。さぁ、始めますわよ、わたくしたち」

 

狂三がそう言った直後、周囲から狂三達が影から現れた。そして、幻武に向かって行く。

玄武の方を狂三に任せると、二人は十香の方を向く。

 

「まさか、機械が三体になるとはな。一体は士道に頑張ってもらうとしよう」

「ありゃ?私たち玄武に見えてるのぉ。あっ、士道君は休んでてねぇ。そんなフラフラ状態じゃ危ないしぃ」

「でも……」

「いいからぁ。それに、士道君には後でやってもらうことがあるからある程度回復しておいてくれなきゃ困るのぉ」

 

千花にはすでに勝利のビジョンでも見えているのかそんなことを言いながら、十香に向かって一歩踏み出した。士道は立ち上がろうとしたが、相当ひどいようでうまく立てなかった。

そうしているうちに、千花と十香の戦闘が始まった。

士道は見ていることしかできず、すぐにでも動けるようにと自身の回復に努めた。

千花と十香の戦闘は高速戦闘だった。千花もさすがに十香を相手に出し惜しみはできないので最初から九割出力(フル解放の仕方を知らないから)でいく。

<鏖殺公>と<死之果樹園>が何度もぶつかり合い、互いに一歩も引かない。

狂三の方は数にものをいわせたというような戦法で、銃による攻撃は幻武に対しては意外と合っていた。幻武は重量があり過ぎるのか移動速度はたいしたことはなく、顔を入れても穴は残るのでそこに銃弾は入って行く。一応銃撃で応戦はしているが、数に差があり過ぎるためか、幻武に弾は当たっていた。しかし、本体もやたら硬くただの銃弾ではそこまでダメージが無いようだった。狂三の攻撃では幻武は倒せないと士道が思うと、今まで士道のコンタクトを通して玄武の情報を分析していた鞠亜が分析を終えその結果を伝えた。士道は静かに聞き、そして、情報を要約すると、

 

「狂三、幻武の目を壊せ!四つとも壊せば十香の幻覚が解けるっぽい」

「分かりましたわ。しかし、わたくしの攻撃では壊せませんよ?」

「じゃぁ、狂三ちゃんパース」

 

千花は十香と戦いながらポケットに左手を突っ込み何かを取り出すと、ノールックで狂三に投げた。十香は何か危険な物と判断したのか、千花から離れて投擲物を撃ち落とそうとする。しかし、十香の移動に合わせて千花も動いたことで十香の邪魔をして、無事狂三の手に渡った。

キャッチした狂三は手にしたもの――剣の柄を見て首を傾げた。

 

「これは?」

「それに霊力を込めてみてぇ。そうすれば霊力の刃が形成されるからぁ」

「そうですか。では、ありがたく使わせてもらうとしましょうか」

 

千花は言うだけ言うと、十香を引き付けて距離を取る。そして、狂三は柄を握り、霊力を込めると闇色の刃を形成する。同時に幻武が銃撃するが、狂三は焦ることなく難なく回避し、何発かは斬った。

 

「ほう、切れ味は抜群のようですわね。では、手早く済ませることにしましょう。<刻々帝(ザフキエル)>――【一の弾(アレフ)】」

 

再び短銃に弾を込め自身に放つ。その瞬間狂三は一瞬で消え、幻武のすぐそばまで接近した。そして切り上げで一つ目の顔の右目を斬る。そのまま左目も切ろうとするが剣を口で受け止めて、もう片方の顔を狂三に向けると銃撃をし、狂三は刃の形成を一度解いて回避する。

 

「右目の光が消えたということはこれでいいみたいですわね。しかし、どうも扱いづらいですわね。わたくしとしては……こちらの方がいいですわね」

 

もう一度刃を形成させると、形状が先ほどとは変わっていた。片刃の剣だったのが、レイピアのような形状に。狂三は数度振ると手に馴染んだようだった。

狂三は地を蹴ると、【一の弾】が継続中なので一瞬で玄武のそばに移動してそのまま左目を貫いた。

 

「士道君、ちょっとだけ十香ちゃんの相手してぇ」

「え?……わかった」

 

すると、唐突に千花が士道のもとに来てそう言った。急すぎたが、だいぶ回復してきたから了承したのだが、

 

「て、いきなりかよ!」

 

その直後には十香の攻撃が千花を狙っていた。千花はその場に止まり、幻武の方に霊力剣の柄を向けていた。

士道は千花に言われた通りに<破軍歌姫>を顕現させて音で拘束した。しかし、限定霊装程度の出力なので十数秒程度しか持たなかった。

 

「士道君、ナイスだよぉ」

 

だが、結果的に千花の目的は済んだようだった。ちらっと狂三の方を見ると、もう片方の顔を狙っていて、幻武が対抗しようとしていたのだが、直後幻武の顔が消し飛んだ。

千花の霊力剣から飛び出した大出力の霊力によって形成された刃、というよりも砲撃によって。

 

「って、うおっ!」

「なっ!」

 

目を離した瞬間に十香がジャンプ斬りをしていて、士道は声を出しながらも身体を逸らした。十香の方も幻覚が途中で解けたようで、士道に気付き慌てて攻撃の向きを逸らしたことで士道はなんとか斬られずに済んだのだった。

 

「……まさか、また幻覚をくらってしまったのか?」

「ああ、その通りだ。で、二人が来てくれたおかげで無事幻覚が解けたわけだ」

「ふむ、助かったぞ」

 

十香は周囲を見渡して、なんとなく状況を理解したのか士道に問い、士道はそれに頷いた。

千花と狂三は十香が元に戻ったのを確認すると、士道たちのもとに戻って来る。

 

「さて、無事十香ちゃんも戻ったことだし、あれを倒しちゃぉ」

「そんな簡単にできるのか?甲羅やたらと硬いから壊すのは難しいんじゃないのか?」

「ええ、確かにそうですわね。なので、ここは全員で一気に畳みかけましょう。と言っても十香さんに特に頑張っていただきますが」

 

狂三がそう言うと、作戦を伝える。その間の時間を狂三達が稼いでいて、説明も数十秒もかからなかった。それぞれの役割を確認すると、それぞれ持ち場に着く。といっても士道と千花が幻武に接近し、狂三は中距離から援護、十香はその場にとどまり、

 

「<鏖殺公(サンダルフォン)――【最後の剣(ハルヴァンヘレヴ)】>」

「<刻々帝(ザフキエル)――【七の弾(ザイン)】>

 

十香は【最後の剣】を発動させ、狂三は【七の弾】を幻武に放ち幻武の時間を止めた。その間に士道と千花は幻武のそばに着き、

 

「じゃ、士道君行くよぉ」

「ああ、<氷結傀儡(ザドキエル)><颶風騎士(ラファエル)>!」

「<死之果樹園(サマエル)>――【剣木(ソードツリー)】、たっくさーん」

 

士道は初めてやる天使の能力の同時発動をさせ、千花はポケットから大量に出した種を幻武の下にまいて<死之果樹園>を地面に突き刺す。

幻武の下にまかれた種が一気に発芽し、【剣木】と氷の柱と上に向かって吹く強風で幻武の身体を上に上昇させた。数十メートルほど上昇させると、士道の霊力が限界に達し能力が解除され、【剣木】も成長限界に達した。

 

「十香、今だ!」

「いっけぇ」

「今ですわ」

「ああ、後は任せろ!」

 

幻武と同じ高度にまで移動した十香は、凛とした声でそう言い、【最後の剣】を横薙ぎして幻武を斬る。威力が十分だったようで、玄武はきれいに二つに斬られた。

こうして今回の騒動は収束したのだった。


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