デート・ア・ライブ パラレルIF   作:猫犬

64 / 144
あけおめです。(2回目)
前回のはギリギリ去年ですし。

と言うわけで今年ものんびり投稿していきます。



6話 姫と亀

私のこの世界での最初の記憶は、破壊された町に一人立っていたところだった。まるで、そこにあった空間がえぐられたかのような荒れ果てた場所で、数分もしないうちにメカメカしたものを纏った人間たちに囲まれた。

人間たちは、私のことを認識するや否や纏っていたメカから砲撃やら、手にした剣で攻撃してきた。訳が分からず回避し、人間たちの会話から、私はどうやら敵と認識をされているようだった。

私は何故敵と思われているのか理由も分からず、私はなんとかしようと思うと脳裏に剣が浮かび、その名前を言うと目の前に現れた。剣を握ると、扱い方を理解し、身体にもしっくり来た。死なせるのには何か抵抗があったから、メカを壊し、剣の腹で殴打して気絶させることでその場は終わらせた。思っていた以上に簡単に終わり、増援が来たら嫌だったのでその場を後にしようとした瞬間視界がゆがんだ。後から聞いたが、隣界に引っ張られたらしい。

それから数度この世界にクレーターを伴い現れ、その度に人間(メカを装備しているからメカメカ団と呼ぶことにした)が襲ってきた。

 

 

 

次に世界に現れると、いつもとは違った。なぜかメカメカ団は全滅していた。一人の少女の手によって。

 

「これは、これは。わたくしは時崎狂三ですわ。以後、よろしく」

 

狂三さんは言いながらスカートの裾に手をかけ一礼した。この人が精霊だということを直感で理解し、私も挨拶をしようと声を出す。

 

「私は……十香。夜刀神十香だ。よろしくだ、狂三さん」

 

名前を名乗ろうとして、名前が分からなかったが、なんとなく浮かんだのがこの名前だった。誰かに付けられた大切な気がする名前。

狂三さんは口元に手を当て苦笑する。

 

「くふっ、さんは付けなくていいですわよ。十香さん」

「そうか。では、狂三よ。お主は精霊でいいんだよな?」

「ええ、わたくしも精霊ですわ。十香さんは色々知らないようですし、少し話してみたいと思っていましたので」

 

これが狂三との出会いだった。メカメカ団もといASTがすでに全滅していた理由は私と話すにあたって邪魔されるのが嫌だったとのこと。何故、私が現れる場所を事前に知っているのかとか気になることはあったが後に回した。

 

 

 

それから数か月が経った。私は隣界に引っ張られることはたびたびあったが、静粛現界というものを扱えるようになったことで空間震を起こすことも無くこの世界に来られるようになった。

私としても、むやみに壊したいとは思わないし、襲われるのも嫌だから都合がいい。

狂三とはよく会い、色々なことを教えてもらった。その中には精霊の力を利用しようとする人間がいることや私たち精霊を救おうとしている組織があることも聞いた。割と興味は無かったので聞き流していたのだが。

 

 

 

そして、十月に入り狂三がいい場所を知っていると言い、狂三は少し用事があると言って別行動して大坂にやってきた。そして、狂三を待っている間にスリを目撃したから捕まえようとしたら、スリに気づいたのかもう一人も犯人に声を掛けた。あっさりと捕まえることができ、暇だから話して狂三が来るのを待っていた。

そこで、狂三が言っていた精霊の霊力を封印できる存在なのだと知った。しかし、この世界には悪しき人間が多いことは分かっているから、士道も悪しき人間ではないのかと邪推してしまった。まぁ、仕方のないことだろう。士道自身もいくつか問題があったのだし。言いたいことを言い終えると、士道の探し人が来たようだし、チラッと狂三の姿も見かけたから士道と別れた。狂三に問い詰めたいこともあったから。

 

 

 

士道と別れた後、士道に会わせるのが目的だったのではないかと問うと、狂三は頷いた。急に京都に来たこと、用事と言って私から離れたこと。そして、タイミングが合い過ぎていることから、私はそんな予測を立てた。

 

「ええ、確かにそうですわね。十香さんといるのも悪くないのですけど、戦いを好まない十香さん的には霊力を封印するのがいいかと思いましてね。まぁ、どうするかは十香さん次第ですけど」

「確かに戦いは好まないが、自分を護る力を失うのもな……」

 

狂三はあっさりと白状し、何故士道に合わせたのかも告げた。私のことを考えているのは分かっているが、信用できないものを信用できない訳で……。

そんな感じで一応士道についての情報を聞きながら、とりあえず大阪を回って行った。天使を使える人間か。というか、狂三は何を考えているのやら?

 

 

翌日、狂三が京都に行こうと言い出し、京都に着くと狂三は偶然見つけた猫カフェに行ってしまった。私もついて行こうとしたら、猫に怯えられ渋々断念した。無理に行くのは猫達にとって可哀想だし、私の精神にもダメージが来たから。

そして、一人でぶらつくことにして、京都の情報を調べていたら、士道に会ってしまった。

この時点で、狂三の掌の上なのだと感じた。別に士道と行動しなくてもよかったのだが、昨日と違い瞳には確かな覚悟と決意があるのが見て取れた。

話を聞くと、士道の中で全てはっきりさせたようで、まぁ及第点の回答だった。だから、士道にチャンスを与えることにした。もしかしたらの可能性を感じて。

士道と出かけると、何故か士道は辺りを見回して警戒していて、理由を聞くと同級生に見つかると邪魔されるかもしれないということを聞いた。では士道だとばれないならいいと思い、変装を提案した。変身できる天使が存在することは聞いていたからちょうどいいしな。

士道は変身するのを拒否したが、勝負を負けということにすると言ったら諦めた。そんなに変身するのが嫌なのか?

で、士道は変身した。何故か女の姿に。別に士道だと分からなければいいのだから男のままでもいいのでは?と思うが、面白いからいいか。というか、やたらと可愛いな。はっ!今のは単純な感想で、深い意味は無い。うん。

一応狂三にも伝えておこうと思い、メールをしたら、

 

“そうですのね。ではわたくしはしばらくゆっくりしていますわね。では、士道さんとのデートをお楽しみくださいまし”

 

と返信が来た。何故私の今の状況を知っているのか謎で、ため息が出た。

それから、士道改め士織と共に何か所観光できる場所を回り、最後に京都タワーに行った。そこで、精霊の霊力を封印する方法を聞かされ困った。正直キスをするのには抵抗があったから。本で得たが、なんとなくキスは好きな人とでするものだと思う訳で、昨日今日会った相手にはしたくないとも思う。しかし、よくよく考えれば私は別にそういうのには疎いわけで、いいかとも思った。今まで見て来た人間の中では士道は一番いい感じな人間ではあった。それに、士道自体には悪意というか、迷いは感じない訳で、信用はできるのだろう。だから、約束は守ることにする。

が、数分前から周囲の感覚が変わっていたようで、今更ながら気づいた。士道も気付いたようで、周囲を警戒する。士道は私といる時にたびたび連絡を取っていた鞠亜とやらと会話を始めたので、切り出したら驚かれた。別に会話の内容もやましいような内容では無かったから気にしなかったし、どうやら士道は隠していたつもりだったようだが、正直バレバレだった。

で、一発目の攻撃が放たれ、私は即座に伏せることで攻撃を回避するが、士道は反応が遅れたのか、撃たれた勢いに押されてそのまま外に放り出されてしまった。

士道を助けようとするが、士道は落下していき、敵の攻撃も続いた。攻撃をいちいち弾いていたら面倒なので、圧で攻撃を無力化させ下を見たらだいぶ下に士道はおり、今から行っても間に合わない距離だった。

だから、せめて士道の為に敵を取ることにした。

 

士道なら私を本当の意味で私を救ってくれると思っていたのにな……。

 

 

 

~☆~

 

 

 

十香は数発飛んできた弾の位置からなんとなく、狙撃手の位置を割り出し、たどり着いたわけなのだが……。

 

「これが狙撃手の正体なのか……?」

 

そこには人間はおらず、一体の大きさが四、五メートルほどの機械がいた。見た目は亀のようなのだが、顔が二つある。十香はこの姿を形容するものを一つだけ知っていた。世界を知るために色々な本を読んでいた時に見た。

 

「確か玄武とかいう奴に似ているな。巨人という説も聞いたことがあるが」

 

十香は勝手に名付け、自称玄武を観察していた。攻撃を<鏖殺公>で全て弾きながら。

敵の情報が少なすぎるためにまずは様子見をして、戦闘をしていく。

(正直なところは、怒りに任せて壊してしまいたいところだが、もしこれに爆弾とかの物が付いていたら周囲に被害が及ぶからな。面倒だが慎重に行こう)

十香は自身の精神を安定させたまま戦い、怒りに任せる戦闘はしないように心がける。

玄武自体の攻撃手段は、二つの口についている砲門からの銃撃だけなのだが、十香が攻撃しようとすると甲羅に首を引っ込めて身を護り、甲羅はやたらと硬く<鏖殺公>でも壊れる気配は無かった。

 

「【最後の剣(ハルヴァンヘレヴ)】を使えば壊せそうだが、この辺一帯ごと切ってしまいかねないからな」

 

十香は一人愚痴り、何度も攻撃をしていく。甲羅を破壊しないことには爆発物があるのかもわからないから確認したいところだった。

すると、玄武は甲羅に籠った状態で、甲羅からまばゆい光が放たれる。ただの光なのだが眩しすぎ目を手で覆い、光が収まったところで目を開くと、

 

「……え?」

 

そこには二体になった玄武がいた。

十香は目を瞑った間に何が起きたのか分からず困惑するが、すぐに目を瞑っていた間に新しいのが現れた可能性を考えた。

そう考えるのが、一番可能性があったから。

両方に警戒しながら、片方に攻撃をすると何故かすり抜け、そこで気づいた。増えたのではなく、幻覚に掛けられたのだと。もう一体の方にも即座に攻撃を仕掛けると、そちらも幻覚で、何もない所から玄武が現れて十香に突進した。霊装があるからダメージ自体はあまりないのだが、重量があった為吹っ飛ばされた。

吹っ飛ばされた先にあった岩に激突して止まると、玄武は追撃とばかりに跳躍して十香を押し潰そうとした。十香は慌てて回避すると、岩は玄武に潰され砕け散った。

 

「今のは危なかった。流石に霊装があっても意味が無さそうだな」

 

砕け散った岩を見て十香はそう溢すと、玄武は顔を少しだけ出して、口から砲撃をする。さっきまでとは違い、二つの砲門から連続して何十発も撃ってくるだけでなく、甲羅の一部が射出されて、ビットの要領で十香を攻撃する。数が数なだけに<鏖殺公>だけではさばききれず、いくつかは防御をかいくぐり、手や足に当たる。そして、だんだん厳しくなり危うくなると、唐突に強風が十香の周囲に吹き荒れ、ビットや銃弾が流されていった。

 

「遅くなって悪いな。大丈夫か?十香」

 

十香の前に空から降りていた士道は着地し、心配そうに十香を見ながら声を掛けた。十香はとりあえず助かったことと士道が無事だったことに安堵する。

 

「ああ、助かった。それと士道も無事でよかった。それで、士道は飛べる人間だったのか?」

「んと、耶倶矢たちの能力で風を起こして飛んだんだが、慣れてないからうまく移動できないんだよな。だから、時間がかかったよ。まぁ、詳しい話は終わった後でな」

「だな、玄武を倒した後にちゃんと話してもらうからな」

 

話したいことは色々あるが、そろそろ時間的に厳しかった。玄武は突如現れた士道に警戒しているのか何もしてこなかったが、士道も殲滅対象にでも認識されたのか動き始める。十香に口約束を交わすと、十香は<鏖殺公>、士道は<灼爛殲鬼>を構える。士道が<灼爛殲鬼>を顕現させた理由は、玄武が硬そうだったからだった。

二人は玄武の銃撃を回避しながら接近し、甲羅に攻撃をする。しかし、二人の攻撃は効かず甲羅に弾かれてしまう。

ならばと、首や足を入れる穴に攻撃をしようとするが、甲羅に頭を入れた状態で口を開いて銃撃をしてきて、うまく当てることが出来なかった。

 

「十香、どうする?このままじゃ埒あかなそうだけど。それと、長時間かけると俺らの霊力をASTが嗅ぎ付けてくるかも……」

「ん?DEMとASTは別の組織なのか?」

「んと、一応精霊の殲滅が目的だけど、DEMは精霊を捕まえて実験しようとしてるな」

「……そうか。では、早急に片を付けたいところだな。ん?」

 

二人は玄武の攻略法に困り、方針を固めようとすると、玄武に動きがあった。甲羅に籠って防御に徹底していた玄武が首と足を出し、何故か目が赤く輝きだした。

二人は玄武が何かしてくると察し、警戒をする。

そして、玄武の目の輝きが一層輝き、二人は目を閉じてしまった。その状態で銃撃でもされたらまずいので、十香は霊力の圧を自身の前に、士道は<灼爛殲鬼>を盾にして身を護る。

しかし、特に攻撃が飛んでくるようなこともなく眩い光は収まった。

士道は目を開くが周囲は特に変わった様子も無く、十香も無事なようで辺りをキョロキョロしていて、玄武が増えたり消えたりということも無かった。

士道は首を傾げると、ただの光だったのかと思いながら玄武に向き直る。そして、未だに赤い光を出し甲羅から顔を出している玄武に攻撃しようと、地を蹴り<灼爛殲鬼>を振るった。

しかし、<灼爛殲鬼>が玄武に届くことは無かった。

何故か玄武を護るように立った十香によって、<鏖殺公>で受け止められた。

 

「急に近接攻撃に切り替えたか。しかし、士道はやらせんぞ!」

 

 

 

~☆~

 

 

 

数時間ほど前、某カフェでは、

 

「狂三ちゃん、十香ちゃんを士道君にわざわざ会わせて何が目的なのぉ」

「とくにこれといった目的は無いですわよ。ただ、十香さんのためを思いましてね」

「まぁ、いいや。十香ちゃんに会えるんだしぃ。でも士道君はあげないからねぇ」

「はぁー、わたくしの目的知っていますよね?」

 

千花と狂三がそんな話をしていた。膝に乗せた猫をモフりながら。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。