デート・ア・ライブ パラレルIF   作:猫犬

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6話 襲来

「【木人形(ツリードール)】、【速樹(プラント)】」

 

陸自の無人兵器『白虎』の攻撃を受けたサマエルは、空中で自身の能力を使い、【木人形】と【速樹】を白虎にぶつけた。

 

「もう、何あれ。邪魔だなー」

「なんで、あれを使用していやがるんですか?まだ、プログラムが完全じゃないはずですが。しかも、中途半端に暴走していやがりますし……兄様、ちょっと止めに行ってきます」

 

真那はサマエルに背を向けて、【木人形】たちと応戦していた白虎に向けて一気に飛び出す。白虎は【木人形】を一蹴すると、真那を危険と判断したのか背中からミサイルを発射する。

真那は自身に当たりそうなミサイルをレーザーブレードで切り裂きながら、白虎に接近するが、発射されたミサイルの一発が士道に向かって飛んでいくのに気づけなかった。

士道はなんとか避けようとするが、ミサイルが木に直撃し、その爆風で身体が中に飛ばされ、木から落ちかける。

 

「しまったッ」

 

真那は急いで方向転換しようとするが、士道の元に飛ぶ影があった。

空中でダッシュしたサマエルは、士道の元に着くと空中でキャッチする。

 

「助かったよ。ありがとな」

「いやいいよ。士道君がいないと計画が成就しないからー」

 

士道の無事を確認して、安堵した真那は白虎に再接近し、レーザーブレードで装甲を切り裂く。

しかし、装甲が硬く弾かれ、直後に白虎の装甲が開き、そこからレーザーが放たれる。即座に随意領域でガードするが、二人の近くまで押し戻される。

 

「ちっ、厄介ですね」

「真那ちゃん、パース」

「うわぁー」

 

いきなり響いた声に反応すると、悲鳴を上げている士道が真那に向かって飛んで来た。

 

「さてと、世界中に対する準備は終わったし、あれ邪魔だなー。ねぇ、真那ちゃん。士道君を連れて下に降りててくれない。守りながらじゃやりにくいし、これ片付けたら下に行くよ。あとは下でやることだし」

「なんで真那が?従う理由はねーですよ」

「別にいいよ。でも私が連れて行ったら、そのまま霊力貰っちゃうかもよ?」

 

 

真那は空中で士道をキャッチすると、サマエルの言葉を聞き逡巡する。

しかし、本当にやりかねない気がした。

 

「やはり、兄様に霊力があるんですね……はぁ、仕方ねーです。すぐに戻ってきやがりますからね。いきますよ、兄様」

「え?」

 

仕方がないので、真那はポカーンとしている士道を連れて下に降りる。

 

「さてと、これを倒して千花を救うかな?」

 

同時にサマエルはスコップを構え直し、白虎に攻撃していった。

 

 

 

~☆~

 

 

 

(千花たちは大丈夫かな?)

地面に向かって降りながら、千花たちの心配をしていたら真那は口を開く。

 

「心配しなくても、彼女は平気でいやがりますよ。それよりも兄様は彼女を止める方法を見つけたんですよね?」

「え、なんでそれを?確かに止められるかもしれない可能性を見つけた。その為に、真那に聞きたいことがある」

「なんでいやがりますか?」

「お前は彼女と戦っている時にどんな気持ちで戦っていたんだ?」

 

もし、士道の考えが正しければ、おそらくは、

 

「気持ちですか?たしか、彼女を気絶させたいと。そうすればもしかしたら悪意の吸収が止まって元に戻るかと思いまして」

「つまり、救いたいっていう気持ちだった。その中には悪意はなかったと」

「はい!全くねーですよ。たしかに、彼女は精霊ですが、ここ数ヶ月……いえ、最初に現れて以降は空間震を起こしてもねーですし。それに、困っている人を助けていて普通に生活を送っているとなると、殲滅の必要もねーと真那は思っています。まぁ、上の人たちにとっては関係ねーようですが……。だから、彼女に対しては怒りとか憎しみはねーですね。そういうのは他にいますし。で、それがどうしたのですか?着地しますよ」

 

会話をしていたら地面にだいぶ近づき、二人は地面に足を付ける。

士道は少し考えると、真那に今までに考えていたことを伝える。

 

「さっき二人が戦っている時、だんだんサマエルの動きがよくなっていて、もしかしたら真那の善意によって悪意が弱まって、抑え込む力を戦闘に回せたんじゃないのかと思ってな」

「なるほど、悪意を吸収するなら善意も吸収するわけですか。つまり、悪意を超える善意をぶつけて、悪意を打ち消そうと……。しかし、ほとんどの人が眠っている今ではそれを超えるのは厳しいかと」

「だよな、どうしたものか――」

 

ドンッ

 

策を練っていると、空から何かが降って来た。

砂煙が晴れると、そこには装甲がボロボロになり、動かなくなった白虎がいた。

直後、空から何かが降りて来る。

それは、五メートルほどの血のような色の赤の蛇龍だった。

 

「一体、上で何があったんだ?あれは……」

「やはり、彼女なのでしょうか?もしや」

 

士道たちは蛇龍を見て一つの考えに至った。

 

「まさか、サマエルの拘束を放れて千花に溜まっていた悪意が暴走したのか?」

「おそらく、白虎のAIによる『精霊の殲滅』という思考プログラムを悪意と判断し吸収した。そして、サマエルの抑えを破ってしまったってとこでしょうか」

「真那!」

「兄様!」

 

二人は同時に言った。

 

「止めやがります」

「止めるぞ」

「私は蛇龍の相手をします。兄様は近づき過ぎねーようにしながら、この巨木を調べてください。この巨木も蛇龍攻略のヒントだと思います。あとこれを」

「ん、インカムか。わかった。真那も気を付けろよ」

 

インカムを受け取った士道は耳につけると木の近くに走りだし、真那は蛇龍に接近する。

木のそばに着くと、木には人がぎりぎり入れるぐらいの大きさの穴があり、とりあえず入ってみる。

少し進むと、やたらと大きい空洞があり、中心には祭壇があった。

 

「ここが最後の計画の場所か……。ん?これは」

 

祭壇の中心に行くと、そこには、一枚の紙があった。

 

 

――これを読んでいる士道君と真那ちゃんへ

これを読んでいるということは、私は失敗しちゃったのかな?

もしそうなら、暴走して蛇龍になった私たちを止められるかもしれない方法を書いておきます。

おそらく暴走した蛇龍の何処かに黒く染まったモノがあるはずです。

それを破壊できれば、元の姿に戻れると思います。

初めてのことなのでその後どうなるかは分からないですが……。

危険に巻き込んでしまいますが、後のことは頼みます。

サマエルより――

 

 

そこにはもしもの際のことが書いてあった。

 

「準備がいいな、確かに頼まれたからな。そして、二人とも救ってやる。……真那、無事か?元に戻す方法が分かった」

 

サマエルからの紙を読んだ士道は決心して、インカムで真那に連絡をした。

 

 

 

~☆~

 

 

 

士道と別れた真那は、とりあえず銃とレーザーブレードで蛇龍を牽制しながら情報を集めていた。

 

「ふむ、硬さはそれほどねーようですが、銃によるダメージはあまりねーようですね。特に腹にあるクリスタルはダメージが通らねーようですし。ならばッ」

 

冷静に分析をしながら、対策を練る。

銃をしまうと二刀流になって、蛇龍の柔らかい部分を切り裂いていく。傷口からは血の類は出ないが、霊力のようなものが出ていた。

真那の攻撃に対して、しっぽや翼からの風を駆使して反撃をする蛇龍。何重もの傷を負った蛇龍はだいぶ動きが遅くなったが、真那もだいぶ摩耗していた。

 

「これは、厄介ですね。このままじゃジリ貧ですし。早く手を打たねーと――」

『真那、無事か?元に戻す方法が分かった』

 

困っていたところに士道から連絡が来る。

 

「えぇ、無事です。それで方法とは?」

『良かった。あ、方法は――』

 

元に戻す方法を聞きながら、蛇龍の攻撃の回避にも集中する。

 

『――と言う訳だ』

「了解しました。では兄様は安全なところにいてください。では」

『おい、ちょっと――』

 

士道が何か言っていたが、片手間に戦える相手ではない為無視して、蛇龍に集中する。

 

「さて、どうしましょうか。普通の武器では壊せませんし」

 

方法が分かっても今の装備では壊すだけの威力が足りない。考えを巡らしていると、倒れている白虎が視界に入った。

 

「たしか、あれには……よし、何とかなりそうですね」

 

真那は蛇龍を白虎の反対側に引き付け、一気にブースターを加速させ、蛇龍の視界から消える。蛇龍は真那を探し辺りを見渡す。

真那は白虎の陰に隠れてあるものを取り出す。白虎にはASTの支援物資搬入の目的もあり、いくつかの武器が入っている。

 

「よし、ありました」

 

そう言ってその中から小さくまとめられたボックス上の兵器を取り出す。それの形態を変化させると一メートルを超える大きい銃になる。

『ドリルカノン』――魔力を一点に収束し、ドリルのような回転をした弾丸を放つ銃。理論上は精霊の霊装を貫くとのこと。

ドリルカノンを持つと、魔力を収束させる。

この銃は燃費がとても悪く、真那でも数発が限界だと聞いていた。

 

「この消耗した状態だと二発が限界。外せませんね」

 

自己分析で判断し、蛇龍に確実に当てるために接近する。

しかし、蛇龍は素早く動いていて狙いが定まらない。

仕方がないので、銃を取り出し連続で発砲して動きを制限させる。

結果、一瞬だが動きが止まる。

確実に蛇龍を殺るチャンスが訪れる。

 

「今です!!」

 

銃を捨て、両手でドリルカノンを構えるとクリスタルに向けて放つ。

放たれた弾がクリスタルに当たると思った直後、蛇龍のしっぽがあり得ない速度で動き、しっぽを使って攻撃を逸らす。

その際に、しっぽがだいぶ削れていた。

外したことに動揺するがすぐに、チャージを始める。

 

「マジですか。あと一発。絶対に当てねーと……」

『つまり、動きを止められればいいんだな?』

 

すると、繋がったままになっていた無線から士道の声が聞こえてくる。

 

「兄様?」

『あいつの気をこっちに引き付ける。だからその隙をついてくれ』

「兄様、それは危険すぎます!」

『平気だ。俺は真那を信じている!』

 

真那は士道の言葉に困惑して、一瞬考えるがすぐに意識を切り替える。

 

「……わかりました。真那も兄様を信じます!」

『じゃぁ、十秒後に』

 

士道がそう言うと、無線が切れる。

 

「ところで、どうする気なんでしょう?あ、チャージ完了と」

 

士道がどうやって気を向けるのかが気になるが、ドリルカノンの魔力チャージが完了する。

同時に蛇龍が真那に向かって動こうとする。

その直後、

 

「千花ぁぁぁー」

 

士道の声が辺りに響いた。

すると、士道の声を聴いた蛇龍は動きが鈍る。まるで、蛇龍の中で葛藤しているかのように。

そこで真那は気づいた。さっき真那はあの蛇龍を倒すことだけ考えていて、それが悪意と判断されて蛇龍の力にされた可能性に。

 

「兄様、わかりましたよ」

 

照準をクリスタルに向け、トリガーに指をかける。

 

「私のありったけの思いを籠めます。元に戻ってください。千花さん!」

 

そう言って、弾を放つ。

一発目よりも大きく速い弾は一直線にクリスタルに向かって飛ぶ。今度は倒すとかではなく頭にあるのは千花が元に戻ってほしいという願いを込めて。

そして、蛇龍のクリスタルを穿ち粉々に砕く。

 

「やりましたよ、兄様」

 

魔力を使い過ぎて真那は地面に座る。

クリスタルが砕けた蛇龍は姿が保てなくなり、赤い光になって消えていく。その後、光の中から茶髪の少女が現れ、気を失っているのか、そのまま地面に向かって落下する。

それに気づいた真那はスラスターを噴かせて一気に千花の元に行き、ギリギリでキャッチすると地面に着地する。

 

「ふー、これで終わりましたか。大丈夫ですか?千花さん?」

 

腕の中にいる千花を地面に横たわらせ、声をかけると、千花が目覚めて身体を起こす。

 

「うっ、頭がぼぉーとするなぁ。……おはよぉ、真那ちゃん」

「どうやら平気みたいでいやがりますね。では、兄様のもとに……え?」

「どうしたの?真那ちゃん……ん?」

 

真那が士道を探して、辺りを見渡していると声を漏らし、真那の見た方を見た千花も声を漏らした。

二人が見た方には、壊れたはずの白虎がおり、口に魔力を溜めていた。

そして、白虎の周囲には赤い光が漂っていた。

 

「まずいですね。もう動くだけの力もねーですよ。千花さんだけでも逃げてください」

「いやぁ。私ももう動けないんだよねぇ。それに、あれは私から出た悪意が動かしているみたい……」

 

しかし、二人とも動けないでいた。

真那が諦めかけると、誰かが覆いかぶさり、視界が暗くなった。

 

「大丈夫。私の霊装で真那ちゃんだけは守り切ってみせるから」

「千花さん………」

 

千花は真那に覆いかぶさり、真那にそう声をかけた。

そして、白虎の口から魔力弾が放たれると二人は来る衝撃に備え目を瞑った。

しかし、いくら待っても何の衝撃も来なかった。

恐る恐る目を開き、白虎の方を見ると二人を避けるように魔力弾が切り裂かれ、周りの地面が焼けていた。

 

「ぎりぎり間に合ったか。無事でよかった、二人とも」

 

目の前には大きな戦斧を持った士道が立っていて、それで飛んできた魔力弾を切り、そのおかげで二人は無事のようだった。

 

「兄様?」

「士道君!?」


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