デート・ア・ライブ パラレルIF   作:猫犬

59 / 144
今回から第八章ですね。



八章:十香トラベル
1話 旅する精霊


「来週から修学旅行ですよー。なので、今日は部屋割りを決めてもらいまーす。と言う訳で実行委員にここからは進めてもらいますねー」

 

十月某日、火曜日五限。

その時間は修学旅行の計画に当てられていた。行き先は京都で二泊三日とのことで、生徒たちのテンションも高かった。

すると、千花はすっと立ち上がり、教壇の前まで行きその場に立ち止まる。

 

「実行委員に半ば強制的にされた木野だよぉ。ということで面倒だから三分待ってやるぅ。その間に四、五人班を作れぇー」

 

千花は面倒そうだから、すぐに終わらそうとそう言うと、すぐに教壇から離れ、

 

「と言うことで、オリちゃん一緒の部屋でいい?」

「うん、問題ない。あとは誰にする?」

「じゃぁ、私もいれてー」

「あ、私も頼む」

「わたしもー。というか決めるの早い。まじひくわー」

「あ、なにげに初登場の一人称ズだぁ。もちいいよぉ」

 

速攻で折紙、亜衣、麻衣、美衣と班を作っていた。

周りもすでに班を作り始めていて、士道は忙しないなーとか思いながら、殿町に声を掛ける。

 

「殿町ー、一緒の班組むか?」

「あぁ、いいけど、腐女子の影響はないか?」

 

しかし、殿町は腐女子を警戒しているようで、周りに目を向けていた。士道的には、班を作るだけなんだから平気だろと思っていて、そんなに心配はしていなかった。

 

「ないだろ。ただの班決めなんだし」

「では、僕も入れてもらっていいかな?」

「お、お主はリア充、岸和田!」

「ん、リア充?僕は別に誰とも付き合っていないよ。だからリア充ではないよ」

「はぁー」

 

士道と殿町が他のメンバーをどうするか悩んでいると、文系メガネ男子の岸和田が現れそう言った。殿町の言葉もそう言って否定し、殿町はため息をつく。山吹と岸和田が両想いなのだが、二人ともそれを知らず絶賛片想いなう。ちなみにこのクラスの皆は両想いなのを知っている為、温かい目でそれを見守っている。

 

「では私も参戦させてもらおう」

「おまえは、購買四天王の一人、烏丸!毎回購買で異臭を漂わせたせいでよく購買への立ち入りを禁じられたやつ」

「ふ、そんな過去のことは忘れてくれ。最近は弁当を持ってきているのだよ」

「四天王、やめたのかよ!あ、この四人でいいか」

 

四天王だったこと、最近は購買に行っていないことが判明し、ツッコむ士道。こうして士道たちの班は無事?完成した。

 

「おまえらぁ、三分経ったぞぉ!」

 

千花は教壇に戻って来るなりそう言った。ちなみにまだ一分も経っていない。

 

「まだ一分も経ってないぞー」

「そんなの関係ないよぉ。本当に三分待ったら、その間にバ○スされちゃうぞぉ!彼は三分待ったばかりにやられたんだぁ」

「木野さん、話が逸れてますよー。あと彼は仕方なかったんですよー」

 

話が脱線し始めたので、タマちゃんは千花にそう言う。なんで、千花に後半同意したのか、皆気になったが誰も口にしない。気にしたら負け。士道はその間に見回すと、どうやら皆もう組み終わってたようで、だから千花は締め切ったようだった。

 

「じゃぁ、次のを決めるよぉ」

 

そう言って、新幹線の座席決めやら、しおりの配布やらをしてその日の授業は終わったのだった。

 

 

 

~☆~

 

 

 

「そう……まぁ、八舞姉妹の霊力も封印してあるし、向こうで誰かに会うことは無いと思うから、楽しんでいらっしゃい」

「ああ、そうするよ。誰とも会わないと思うから楽しんでくるよ」

「なんでしょうかねー、この向こうで誰かに会うフラグは」

 

その日の夜そんな話をして、真那はなんか不穏なことを言っていたが、二人は気にしなかった。

 

「それで、まだウッドマンさんには会えないのか?」

「えぇ、こっちからは何度も連絡はしてるけど、忙しい身分だから。それにしてもウッドマン卿がそんなことしていたとは思えないけど」

「琴里も知らなかったとなると、やっぱり本人に聞くしかないよな」

「ところで、なんで会えないんでしょうかね?二週間もあれば時間を作ることだってできそうですけど。ま、拒否するなら<ラタトスク>と縁を切るしかねーですね」

 

話は変わり、ウッドマンに会う話もするがそんな感じだった。ウエストコットに会った翌日に琴里に話し、ウッドマンに会えないかと聞いてきたが、未だにいい答えは返ってこない。

そして、真那はそう呟く。

 

「たぶん、面倒ごとが多いから。この半年ぐらいは精霊の出現率上がってるわけだしね。だから、あまり期待はできないわね」

「そんなもんか。じゃぁ、仕方ない」

「えぇ、仕方ないわね」

「そうですね、仕方ねーですね」

 

「「「乗り込む(か)?」」」

 

 

 

~☆~

 

 

 

「京都着いたぁー」

「千花はテンション高いね。あと、ここ大阪ね」

 

士道たちが<ラタトスク>に乗り込むという事態はまだなされていない(修学旅行が終わったらその振り替え休日で乗り込む予定)。修学旅行一日目、新幹線に揺られて無事大阪駅にたどり着くと、千花は両手を上げてそう言った。大声を出すと周囲の迷惑なので、その辺の配慮はなされていた。

予定では一日目は大阪観光をし、二日目以降は京都観光をすることになっている。ちなみに、タイミングが悪いことに、<フラクシナス>は定期メンテナンスらしく、京都にまでは来ていない。

折紙も初めてくる関西方面に辺りを見回しながらそう言い、生徒全員が新幹線を降り終えた。

 

「みなさーん、では駅の中の大広間に行きますよー」

 

タマちゃんがそう言うと、タマちゃん先導のもと構内を出口に向かって歩いて行く。

その後、大広間でいくつか連絡がなされると、班ごとに自由行動となった。

 

「それで、俺らの班は道頓堀方面をぶらつく予定だよな」

「あぁ、その予定だな。海遊館とかが良かったか?」

「いや、海遊館はいいや。男だけで行くのはちょっとな」

「そうだよね。水族館行くなら女子と一緒がいいね」

 

士道たちの班は道頓堀周辺をぶらつくことにしていた。

大阪での自由時間は三時間程度。大阪駅に集合となると、時間的に厳しそうなためこの選択となった。道頓堀以外にも、海遊館、USJ、通天閣などの選択肢もあった。

 

「「彼女ほしーい」」

「うるさいよ、殿町」

「静かにな、殿町」

「なんで俺だけ!?烏丸も言っただろ」

 

殿町と烏丸が同時にそう言ったため、士道と岸和田は殿町に注意した。今はなんば駅に行くために電車を待っていて、殿町にだけ言ったのはなんとなくだったりする。

そんなことをしていたら、電車が到着した。

 

「ん?」

 

いざ電車に乗り込もうとすると、隣の車両に黒髪の何処か十香に似た少女が見えた気がした。

 

「五河、早く乗らないと閉まるぞー」

「あぁ、分かってる」

 

しかし、十香が電車に乗っている訳もないかと思い、深く考えることはせず、殿町に急かされながら電車に乗り込むのだった。

 

 

 

~☆~

 

 

 

「で、はぐれた今日このごろ」

 

なんば駅を降りた所で何故か人がたくさんいて三人とはぐれてしまい、士道は下手に移動せずに構内にとどまっていた。

すると、視界の先で財布を掏る男を発見する。掏られた方は気づいていないようだった。

 

「おい、あんた」

「おい、お主」

 

士道は掏った男に近づき呼び止める。同時に別方向からも呼び止める声が響く。

声の方を見ると、黒髪の少女――十香がいた。士道は驚いたが、今はこっちが先決なので自重する。

 

「ん?何かな。私は急いでいるんだよ」

 

男はさも掏りなどしていないかのように振る舞って、立ち去ろうとする。

 

「はぁー、では仕方ないな」

 

十香はため息をつくと、犯人に歩み寄り、そのまま通り過ぎた。

そして、騒動を聞いて立ち止まっていた掏られた人の方に行ってしまう。

男は頭に?を浮かべていると、

 

「これはあなたのですよね。掏られてましたよ」

 

十香は持ち主に財布を手渡す。それで、二人はハッとするとポケットに財布がないことに気付き、掏った男は逃走しようとする。

もちろん、士道は逃がす気などなかったので、男の通るコースに入りさりげなく足を出して転ばせて、そのまま取り押さえる。

そうしているうちに、騒ぎを聞きつけた駅員がやって来る。

 

「この人、掏りしたので取り押さえたんですけど」

「えぇ、その様ですね。ご協力感謝します」

 

駅員はそばまでやって来た、持ち主と十香を見て状況を理解したようで、すんなりと犯人を引き渡すことが出来た。

 

「この度はありがとうございました」

「いえいえ、俺は逃げた方を偶々捕まえられただけで、彼女が気付いたおかげですよ」

「いえ、彼が最終的に犯人を取り押さえたので私は……」

「では、お二人ともありがとうございました、ということで」

 

財布の持ち主は、二人にお礼をいうとその場を離れていく。

こうして残された士道と十香。周りに居た野次馬ももう去っていた。

 

「今更思うけど、君もやったこと掏りと同じじゃね?」

「思うのだが、転ばせなくても捕まえられたと思うのだが」

 

二人は思ったことを口にすると、同時に言った。

 

「「まっ、いっか」」

「あっ、俺は五河士道だ」

「うむ、士道か。私は夜刀神十香だ」

 

これが十香とのこの世界での初邂逅だった。

 

 

 

~☆~

 

 

 

場所は少し変わり、駅前の広場。

殿町たちはあの騒ぎでも姿が見えなかったので、もう外に出たのだと判断した。

 

「なるほどな、人を探していたのだな。それにしても修学旅行か」

「まぁな。と言っても、たぶん近くにいるはずだからすぐ見つかると思うけど……そっちはどうなんだ?」

 

十香はベンチに座って建物などを見渡しながらそう言い、士道もそんな感じで返答をする。

十香は誰かと待ち合わせをしているらしく、待っている間話していようということになった。

士道としてもこの世界の十香の状態は知っておきたかったので断る理由もない。

 

「それで、士道はどうして気付けたんだ?あやつの手際の良さからも普通は気づかないはずだが。あ、私は待ち人を探していたから気付いたのだぞ!決してやましいことは無いからな!」

 

十香は士道に問いながら、自分が気付けた理由も話す。

 

「あぁ、そうだろうな。やましいことがあるならすぐに駅を離れるだろうし。俺も探していたから偶然な。一応目はいい方だから」

「なるほどな。てっきり士道も精霊かと思ったぞ。あの男を転ばせるのは困難なはずなのに簡単に転ばせたからな」

 

唐突に十香が“精霊”と言ったことで、士道は眉を少し動かすが、下手に士道が精霊を知っていると不審に思われそうなので、表情には出さないでおく。

 

「意外とうまくはまれば簡単に転ばせることはできるもんだからな」

「……ふむ。士道お主ASTか?それともDEMか?」

 

士道の返答を聞き、十香は顎に手を当てて何か考えると、続く言葉でそう言った。

 

「え?そんなんじゃないけど」

「ふむ、かたぎの人間ではないのだな。普通は、それってなんだとか?知らないと返すはずだし」

「あ……」

 

士道の失言に十香は言及する。士道はそれで気づくがもう後の祭りだった。

 

「さて、ここで白を切ってもダメだろうから話すよ」

 

士道は仕方なくそう言って話し始める。精霊の霊力が封印できること、何人もの精霊を封印してきたこと、<ラタトスク>という精霊を保護する団体があることを。あと、今回十香に出会ったのは本当に偶然だったこと。

十香は一通りの話を静かに聞いていた。この辺りからもこの世界の十香は落ち着きのあるようだった。

 

「なるほど。嘘を言っている目ではないな。それでお主は私の霊力もできることなら封印したいと」

「あぁ、できるなら、そうなるな」

 

十香自身の今後に関わるため、十香は安易に答えを出さず、じっくりと考える。

 

「たしかに霊力を封印することで、隣界に飛ぶことがなくなるのであれば願ったり叶ったりではあるか。私とてこの世界を壊したいとは思わない……」

「じゃぁ」

「だが断る!」

 

十香が士道の提案に乗ると思った矢先、十香は断った。

今の流れは完全に了承だと思ったがゆえに士道は面食らった。

 

「たしかに本当にそうならいいのかもしれないが、封印した後に襲われないという確証はあるのか?話によると多少は霊力が観測できるのだろう」

「それは確かにそうかもしれない。でも、今よりは襲われることは無い。それに、俺は精霊の皆が悪くも無いのに襲われているのを見過ごせない」

 

精霊の皆が狙われたことは何度かあった。四糸乃の時はエレンが全員捕まえようとしていた訳なので。それでも、そういう有事の際だけで、普通に暮らしてる分には襲われたことは無かったので、士道としても引くことはできなかった。

 

「ふむ、外的要因はとりあえず平気としよう。では、その<ラタトスク>とやらが本当に精霊を保護することだけが目的なのか?私たち精霊を利用しようとは考えておらぬか?私はそっちも心配なのだが」

「そっちは……俺には分からない。確かにいるのかもしれないが、俺はそう言うことは考えてない」

「一概に否定もできない訳だな。なら、やはり私は止めておこう。別に魔術師如きなら私の敵ではない。というか、私自身で自衛できるからな」

 

結局のところそこに行きついてしまった。

今の技術じゃ精霊を倒すことはままならないので、十香はそういう判断だった。

 

「それにな。ここ最近は遂に自由に隣界とこっちを行き来できるからな」

「それでも……」

「士道よ、しつこいぞ」

 

士道は何とか十香の説得をしようとすると、十香は士道の目を見てはっきりとそう言った。

 

「大体、完全に信用していないのにそこに属している時点でおかしいのだが?それで、精霊を救うとかおかしくないか?結局お主も<ラタトスク>とやらと同じで完全には信用できないな」

「そう思われるのかもしれない。でも、それでも俺は精霊を助けたいと思ってるんだ!」

「これだけ言っても分からないと言うならはっきり言おう。士道、お主のはただの偽善だ。ただ、襲われている精霊を助けたって実感に酔いしれているだけだ」

 

十香はこのままだといくら言っても士道が引かないと考えると、最後にそう言った。

 

「違う、俺は……」

「おーい、五河ー」

「どうやらお主の探し人が来たようだな。ではさらばだ。もう会うことも無いだろう」

 

殿町たちがやって来たことで、十香はその場を離れていき、人込みに消えていった。

士道自身<ラタトスク>を完全に信用しているわけではなく、もしみんなに何かしようとすれば、<ラタトスク>とは縁を切ろうとも考えている。

それに、皆を戦いに巻き込んでしまっているので、安全の確率もなされていないのが現状。

だから、十香の言い分は最もであり、それを否定することはできなかった。




さて、今回からは十香の回ですが、やってることは原作の六喰編に近い感じになっています。まぁ、なんとなくです。そもそも、今までこういう展開も無く、精霊達は簡単に受け入れていましたし、趣向を変えた感じです。
十香の待ち人は誰だったのか?

と言う訳で次回はあの人たちが出てきます。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。