デート・ア・ライブ パラレルIF   作:猫犬

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20000UAいったぁ~ \(>o<)/


5話 二重奏

士道は空を飛んでいた。隣には千花もいる。

 

「もうすぐ着くがどうするのだ?一階から()くか?それとも屋上から()くか?」

「屋上からだと目立ちそうだし、一階からで頼む。それに、上からだと地上から脱出されそうだし」

「了解。では着き次第二人は突入を。私たちは囮になって魔術師を引き付けますね」

「ごめんねぇ。二人に危険なことさせちゃってぇ」

 

<フラクシナス>から降りた地点から目的地のDEMの日本支社まで一キロ近くあったので八舞姉妹の風に乗って一気に向かいながら四人は確認を取る。

士道と千花は社屋に突入して美九を連れ帰る役割で、屋外戦闘向きの八舞姉妹は外での攪乱及び陽動の役割を担う予定。折紙たちは別の場所で騒ぎを起こし、多くの魔術師を集める役割を担っている。

 

「気にするな、千花よ。我らには我らの役割がある。それに、我らがただの魔術師に遅れは取らぬよ。それよりもお主たちの方が危険かもしれぬぞ」

「指摘。エレンが出張っているなら、おそらくは社屋の中にも強力な魔術師がいる可能性があります」

「そうだな。じゃ、お互いの無事を祈って」

「行って来るねぇ」

 

社屋の百メートルほど手前まで来ると、士道と千花は風の外に出て、そのまま自由落下をする。あまり近すぎると、魔術師たちに気付かれて、八舞姉妹の陽動が意味をなさなくなるので。

士道の隣で自由落下する千花は限定霊装を纏うと、士道の腕を掴みふわりと着地をする。

 

「さて、ここからは二人でか」

「だねぇ。と言っても士道君はすぐばてるからみーちゃんに会うまでは天使出しちゃだめだよぉ」

「こんな場所でその制限は無しだ。スピード勝負だから俺も全力で行く。それに、だいぶ体力もついてきたからなんとかなるさ」

 

敷地内に入ると、作戦通り魔術師の多くは折紙たちの方に行っているのか静かだった。

その為特に出くわすこと無く社屋の中に入ることが出来た。

 

「んー、ここまで静かだと何かありそうで心配になってくるな」

「それフラグだからやめてよねぇ。それっ」

 

士道が心配そうにそう言い、千花は否定すると、ポケットから種を出し上に投げて、いきなり何もない空間に向かって<死之果樹園>で打った。種は高速で飛び、何も無いはずの場所にぶつかり、インビジブルを掛けていたバンダースナッチを穿つ。

 

「インビジブルのバンダースナッチか。だから魔術師はいないのか」

「うん、みたいだねぇ。まぁいいんじゃない?魔術師なら加減をしないとだけど、機械なら加減の必要も無いしぃ」

「だな。来い、<颶風騎士(ラファエル)>――【縛める者(エル・ナハシュ)】」

 

千花の背後に迫ったバンダースナッチを士道は【縛める者】で破壊する。士道の顕現できる天使だと、<颶風騎士>が一番霊力の使用量が抑えられることが分かっていた。理由は天使の半分だけ顕現できるから。

二人は襲い掛かるバンダースナッチを一蹴しながらどんどん階を上がって行く。偶に魔術師が現れるが、随意領域を張られる前に千花が沈めてしまうため、比較的安全に進めていた。

 

「来てくれ<囁告篇帙(ラジエル)>」

 

しかし、一向に美九が見つかる気配が無かった。士道はあまりやりたくなかったが<囁告篇帙>を顕現させる。どうも限定霊装の出力だとあまり情報が得られない為、進んで使うつもりは無かったが、このままだと悪戯に時間と霊力を消費しそうだったから使うことにした。

 

「どう、士道君?なにかわかったぁ?」

「あー、分かったような、分かんないような感じだな」

 

士道は千花に検索結果を表示した<囁告篇帙>を見せる。

 

誘宵美_の居場_はD_Mインダ_トリー日本_部本館_究棟___一階_号室

 

「うわぁ、虫食い状態だねぇ。いまからこれの解読するぅ?」

「まぁ、解読しないとだけど。と言っても、これって……」

 

千花の解読の提案に同意するが、士道としてはなんとなくわかったような気がしたのでそんな返事になっていた。

(とりあえず、美九がここに居るって予想はあってるみたいだけど……)

 

 

 

~☆~

 

 

 

「<世界樹の葉(ユグド・フォリウム)>敵艦に被弾。しかし、随意領域(テリトリー)に阻まれた模様」

「そう。じゃ、さっさか終らせて皆の援護に行くわよ!」

 

士道たちを転送させた後、<フラクシナス>は<ゲーティア>との交戦に入っていた。

<ゲーティア>の放つ攻撃をガードしつつ反撃に転じるも随意領域に阻まれどちらもこれといったダメージは無い状態だった。

 

「<世界樹の葉(ユグド・フォリウム)>で進路を阻害させて、一気に<ミストルティン>で叩く!」

「了解!<世界樹の葉(ユグド・フォリウム)>をポイントに移動」

 

琴里の指示にクルーは<世界樹の葉>を移動させる。すると、<ゲーティア>の砲門に光が集まりだす。

 

「司令、敵艦の魔力収束を確認。向こうも砲撃を放つと思われます」

「分かってるわよ。神無月!」

「はい、<ミストルティン>のチャージは今できました。いつでも行けます!」

「上出来よ。<ミストルティン>――撃てッ!」

 

琴里の号令で、<ミストルティン>が砲門から放たれる。それと同時に<ゲーティア>からも砲撃が放たれる。

両者の砲撃が空中でぶつかり合うと、しばしの拮抗の後、爆発する。

 

「くッ、互角か。こうなると決定的チャンスを狙うしかなさそうね」

 

琴里は口元をゆがめて<ゲーティア>を睨みつける。

すると、いきなりけたたましいアラームが艦内になり響く。

 

「司令、敵艦から<フラクシナス>に通信です」

「通信ねー……繋いでちょうだい」

「はっ」

 

琴里は逡巡すると、そう言い通信を繋げる。

繋げると同時に、モニターにエレンが映る。

 

『初めましてでしょうか、通信に応じていただき感謝です。五河琴里』

「えぇ、初めましてでしょうね。エレン・M・メイザース」

「……ッ」

 

予想していたとはいえ、最も強いと思われる魔術師のエレンが相手だと分かり艦内に緊張が走る。

 

「それで、なんの用かしら?お茶のお誘いっていうのならまたの機会にでもしてくれるかしら?私たち急がしいから」

 

琴里は物怖じせず、皮肉たっぷりに言うと、エレンは表情を一切変えること無く用件を伝える。

 

『いえ、お茶の誘いではないですよ。こちらの要件は、今すぐにでも命が惜しいものは退艦をお勧めしようかと。こちらとしても無用な人死には本望ではないので。退艦するぐらいの時間は待ってあげましょう』

「ふーん、あなたは<フラクシナス>を落とすつもりなのね。それは少し傲慢じゃないかしら?」

『いえ、私だからこそ可能なのですよ。私と戦って勝てると思っているあなたたちこそ傲慢だと返しましょう』

「だって、さ。私としては皆に無理強いはしないわ。退艦したかったら、退艦しても文句は言わないわ」

 

エレンとの問答を一区切りに、琴里はクルーにそう声を掛けた。しかし、クルーたちは無駄な質問だと思う。

 

「司令何を言っているのですか!私はもとより司令と共にいる所存ですよ」

「そうです。ここで逃げようものなら初めから司令のもとにいません」

「司令に救われた命。この命司令の為に」

「はい、私も司令について行きます!」

「私もです!それにここで朽ちるつもりなど司令も無いはずです」

 

誰一人として、退艦する気は無いようでそう口にする。琴里は横と後ろに居る二人に目を向ける。

 

「私はもとより、降りるつもりはないよ」

「えぇ、私もです。ここで降りて司令のお仕置きも捨てがたいですが……」

「だ、そうよ」

 

神無月は変なことを言っていたが無視して、エレンに向き直る。神無月は、放置もいい!とか言っていた。

エレンはため息をつくと、

 

「そうですか。……では、さよならですね」

 

そう言って通信が切れると、<ゲーティア>の砲門から砲撃が放たれる。チャージしている素振りが無かったのにいきなり放たれたことに、琴里は動揺する。というか、向こうは退艦させる気も無かったのでは?と琴里は思った。

すると、モニターを操作していた令音が解析結果を口にする。

 

「どうやら、随意領域で砲撃のチャージを隠していたようだね」

「なんで、令音は冷静なのよ!回避しなさい!」

「しかし、今からだと間に合いません!」

 

砲撃を回避しようとするも、今からでは間に合わない為、琴里は口元を歪めた。

直後、いきなり<フラクシナス>の砲門から<ミストルティン>が放たれた。

ギリギリのタイミングで放たれて、空中で爆発するとその余波で<フラクシナス>が揺れたがなんとか助かった。

 

「神無月、今のはよかったけど、チャージしていたのならちゃんと言いなさいよ」

「司令、私は何もしていません」

「え?じゃぁ、今のは?」

 

周りを見ても、クルーたちも困惑を隠せない様子だった。

 

『はぁー、私の存在を完全に忘れ去られていたことに対して激おこです!というか、戦闘中に油断はダメですよ、琴里』

 

メインモニターに現れた鞠亜はため息を溢しながら、文句を言った。鞠亜は向こうと同様に<ミストルティン>をチャージさせていたため、このような結果となった。

 

「悪かったわね。そして、助かったわ、鞠亜。でも、てっきり士道について行ったんだと思っていたから」

『確かにそうしたかったですけど、相手が相手なだけに残ることにしました。結果的に正解だったようで今はほっとしています。さぁ、早急に決着を付けてしまいましょう』

「えぇ、サポートよろしく!」

 

そう言って、再び<ゲーティア>を見据えると、<世界樹の葉>を周囲に展開させつつ、策を練る。

 

『<フラクシナス>の残存魔力的に<ミストルティン>は撃てて二発ですね。しかし二発撃てば、おそらく<フラクシナス>は航行を維持できなくなる可能性が高いです』

「つまり、あと一発で決めないとダメか。確実に当てるためには……」

「司令、<ゲーティア>から魔力を検知、砲撃きます!」

「インターバルなさすぎね。<世界樹の葉(ユグド・フォリウム)>で牽制しつつ回避しなさい」

 

何度目かの砲撃に対し、指示を飛ばす。このままではじり貧なため、なにか打開策を探したいところだった。

 

『琴里、策があります。神無月に無茶させますが』

「いい手があるのなら言ってください!多少の無茶なら問題ないので」

「鞠亜、言ってちょうだい」

『わかりました――』

 

鞠亜は考えた案を伝える。

 

「なるほど、やってみないと分かりませんが、今の状態だとそれがいいでしょうね」

「そうね、鞠亜の案で行きましょう。うまくいけば落とせるかもしれないし、ダメでも何かしらの突破口が開けるかもしれないわ」

「司令、砲撃放たれます」

「回避して、その後鞠亜の案を決行」

「はっ!」

 

<ゲーティア>から砲撃が放たれると、<フラクシナス>は回避行動を取る。多少装甲に被弾するが、誤差の範囲内で直撃を避ける。すると、飛んで行った砲撃が随意領域によってねじ曲がり、<ゲーティア>に向かって飛んで行く。

これが鞠亜の出した案であり、向こう想定外だったのか回避することはできなかった。

 

「敵艦、随意領域(テリトリー)でガードした模様。しかし、威力を殺しきれず損傷したようです」

 

結果、多少のダメージはあったようで、そして、敵艦の後方で爆発し煙が上がった。

そこには<世界樹の葉>が飛んでおり、機雷のように動いて攻撃をしていた。

 

「ふぅ、どうやら成功のようね。片を付けましょう。<ミストルティン>よ――」

「……ッ!司令、<ゲーティア>が特攻してきます!」

「え?まさか、相打ち狙いとでも!?」

 

そうして、モニターに<フラクシナス>に急接近しながら魔力を砲門に溜めている<ゲーティア>が映ったのだった。




士道サイドと琴里サイドの二ヶ所だから、そんなかんじのタイトル。

さて、空中艦対決は十巻を見ながら書いてましたけど、ある疑問が。
令音さん原作のあの時どこ行った?

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