デート・ア・ライブ パラレルIF   作:猫犬

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4話 変曲

美九たちと出かけた翌日の夜。

士道はいつも通り家に居てテレビを見ながらゆっくりしていた。

すると、唐突に番組が変わり真っ暗い空間が映し出される。士道は疑問に思い、他のチャンネルに変えてみるが、どのチャンネルも同じだった。

 

「なんだこれ?一体何が……ん?」

 

士道が真っ黒の画面を見ていたら、うっすらと人影が映っていた。

そして、画面が明るくなると、そこには一人の少女がいた。

 

「……美九だよな?」

 

それは美九で、何故か霊装を纏い、顔は伏せているのでよく見えない。

その為、何を考えているのかは全く分からなかった。

美九は顔を上げると、周囲に<破軍歌姫(ガブリエル)>を顕現させ、勢いよく腕を上げ、

 

ヴォォォォォォォォォォォォォォォォ

 

躊躇うこと無く、鍵盤を叩いて能力を使った。

美九の能力はスピーカといった機械を通しても効果があるので、テレビを見ていた人間は洗脳されてしまったと考えられた。士道は皆の霊力を保有しているので洗脳されるということは無かったが。

そして、テレビ局の人も洗脳されたのか番組は終わり、画面は真っ暗になったのだった。

 

「なんでこんなことを!?」

 

士道は美九の行動に困惑する。

(まさか、美九は何か大きなことを起こす気なのか?あっ、皆も洗脳されてるんじゃ?)

そして、最悪の事態を考えていた。

士道は慌ててソファーから立ち上がると、状況の確認の為にドアを開けて外に出ようとする。

 

「うおっと。兄様どうかしたんですか?そんなに慌てて……お風呂ならもう入れますよ」

 

ドアを開けると、ちょうどお風呂から上がってT-シャツにショートパンツ姿の真那がおり、なんで士道が慌てているのか分からず首を傾げる。真那はちょうどお風呂に入っていた為、テレビを見ていないので影響は無かったようだった。

 

「あっ、真那は無事だったのか」

「はて?何があったのか真那にはさっぱりなんですけど……何かあったんですね」

「あぁ、テレビに美九が出てきたと思ったら能力を使ってな。だから、皆の所に」

「うーん、よくわかんねーですけど真那も行きますね」

 

真那はさっぱりな感じでそう言って、二人で外を出ると、人が一方向に向かって歩いており、その眼には光が無く操られているようだった。

 

「これはすごいことになっていやがりますね。もしかしたら、みなさんも……」

「確かにすごいことになってるな。でも、何か平気そうな気もするよな」

 

二人は美九の能力の影響を目の当たりにして、多少は困惑するがとりあえず精霊荘に行く。

 

ピンポーンッ

ガチャッ

 

インターホンを押すと、すぐに扉が開いた。インターホンのカメラを確認したようだった。

ドアから出てきたのは千花なのだが、何故か顔は下を向いていて、足取りもおかしかった。

 

「千花、無事なんだよな?」

「……」

「ふむ、反応がねーですね」

「……」

 

二人は千花に声を掛けるが反応は無く、千花はそのまま士道に襲い掛かる。

士道は襲いかかられると思った瞬間、いきなり千花の動きの向きが逆方向になった。

 

「憤慨。こんな時に何をしているのですか!プンスカです」

 

同時に、千花の後ろから夕弦がそう言いながら千花の服の襟を掴んで止めていた。

 

「うぅ、ギブギブぅ。首閉まるぅ」

 

首が地味にしまった千花はそんな声を上げてジタバタする。夕弦が襟を放すと、千花は空気を一気に吸い込む。

 

「ふぅ、危なかったぁ」

「いや、襲われかけた俺の方が危なかっただろ」

「まぁ、洗脳されてねーようで安心しました。で、なんで兄様を襲ったんですか?」

「なんとなくだよぉ」

「……なんとなくで襲わないでくれ。とりあえず中に入らないか?」

 

精霊荘の中に入り共有スペースに行くと、精霊荘に住んでいるみんなが集まっていた。

見た感じ洗脳されていないようで士道は安堵する。

 

「士道さんに真那さん、無事だったんですね!」

「あぁ、みんなも被害受けなかったみたいだし、とりあえず一安心だな。と言っても、まだ琴里たちの方は分からないけど……」

「あら、私なら無事よ」

 

士道が心配していると、後ろから琴里の声が聞こえ、振り返るとそこには琴里が立っていた。

話を聞くと、一周目での経験を活かして、<フラクシナス>を改造して、その辺の影響を受けないようにしてあったらしかった。

精霊荘でもそんな感じの対策がとられていた為、洗脳される事態にはならなかった。

 

「となると、あとは折紙と二亜か」

「あ、二亜さんの連絡は私がするんで、兄様は折紙さんの方を」

「分かった頼む」

 

真那に二亜の方を任せて、士道は折紙に電話をする。

何度か音が鳴って、

 

『もしもし、士道君。こんな時間にどうしたの?ハッ、もしかして……デートの約束?』

「いや、そう言う訳じゃないんだけど。折紙は無事みたいだな?」

『ん?……あぁ、美九さんの件で心配してくれたんだ。こっちはちょうどそのときお風呂に入ってたから無事だよ』

「……そうだったのか、とりあえず無事だと分かって安心だな……」

『……士道君、もしかして私がお風呂入ってるの想像した?』

「な、何言ってるんだ?そんなこと想像してないよ」

「士道、いきなり大声出すんじゃないわよ!」

『なーんだ。てっきりそう思ったのに……まぁ、いいや。また後で。じゃぁね』

 

折紙はそう言うと一方的に切った。

(なんだったんだ?今の?こっちの世界の記憶しかなかった頃の折紙になっていた気が……いや、そんなわけないか。今は混ざって完全に一周目の頃の性格なんだし)

 

いつもと違う折紙の反応に士道が困惑しながらも、とりあえず折紙の無事が確認できると、二亜の方は?と思い真那の方を見る。まだ電話をかけているようで、どうやら繋がらないようだった。

 

「二亜さん、繋がらねーですね。もしかして、能力くらっちゃったのでしょうか?」

「んー、たぶんテレビ見ずに漫画描いてて、電話にも気づいてない気がする」

『『『あー』』』

 

七罪の予想を聞くと、皆なんとなくそんな気がして納得する。

二亜は締め切りが近いと平気で五徹とかもしていたほどなので、無い話では無かった。

 

「じゃ、二亜の方は<フラクシナス>で確認しておくからとりあえず話し合いましょう。状況が分からないことが多すぎるわ」

「そうであるな。如何に男嫌いの美九であろうと、いきなりあんなことをするとは思えん」

「昨日の感じだと、美九そこまで男嫌い発症してなかった気もするぞ。確かに苦手意識はあったけど、男性店員と応対できてたし……」

 

皆、記憶の中の美九の記憶を引き出して会話をしていく。結果として全く分からなかった。なので、昨日美九と別れてから今に至るまでの約一日の間に何かあった、という結論に至った。

 

「で、何があったんだろぉ?どうせ、みーちゃんの監視してるんでしょぉ」

「えぇ、一応美九の家にカメラを飛ばしてあったんだけど、なんの躊躇いもなく撃ち落としたわ。ご丁寧に、撃ち落とす前に、監視は止めろという旨を残してね」

「じゃぁ、美九の居場所は?」

「今日は新曲のレコーディングで、朝からレコーディングスタジオに居たはずよ。ばれないようにするのに苦労したけどね」

 

琴里が肩をすくめてそう言うと、

 

ピンポーンッ

 

インターホンが鳴り響いた。誰が来たのか分からず、千花がインターホンのカメラを見ると、そこには折紙が映っていた。

千花は折紙で迎えに玄関に行く。

 

「こんな時間に折紙が来たのか。てか、洗脳された町の人たちに巻き込まれないでよく来れたな」

「指摘。マスター折紙がただの人間に遅れを取るわけがありません。きっと、ひらりとした身のこなしで来るのなどたやすいはずです」

「まぁ、折紙身体能力高いから平気でしょ」

「ん?私の話?」

 

そんなこんなで折紙が入って来る。

 

「おう、無事着くことが出来たんだなって話だ……」

「ほへー、少年はオリリン信じてんだねー」

「それで、なんで二亜までいるんだ?てか、電話でなかったろ」

「あー、マッチから電話来てたね。だから来たぜ!」

 

その後ろには二亜がおり、電話に出なかった理由は漫画を描いていて気付かなかったからだった。

こうして精霊荘に、霊力を封印した精霊がそろったのだった。

 

「で、なんで電話の折り返しもしないで直接来たんだ?」

「ん?だってどうせ集合するんだし、と思ってね。それに電話だとDEMに盗聴される可能性も考慮しなきゃだし」

 

二亜は問いにそう答えると、皆が困惑の表情をした。

そして、そんな反応に二亜もハッとする。

 

「もしかして、今の状況分かってるのってあたしだけ?……みたいだね」

「二亜知ってるのか?てかなんで?」

「<囁告篇帙(ラジエル)>で調べれば一発だぜ!」

 

二亜は唐突に<囁告篇帙>を顕現させて掲げてみせた。

いきなり顕現したことにツッコみそうになるが、ここでツッコめば話が進まないので自嘲する。

なので、気になることを一つ。

 

「あれ?霊力封印してるのに、そんなに天使の能力使えるのか?」

「うん、一応ね。と言っても得られる情報は大まかだから、詳細な情報は得られないんだけどねー」

「それである程度知ってるって訳ね」

「そういうこと。あたしが知ってるのは、美九ちゃんがDEMに今日捕まったこと。私と同じで何かしらされてるっぽいこと。その結果今の状況になったってことかな」

「ん?でも、美九って今日はずっとレコーディングスタジオに居たのではなかったのか?」

 

二亜の話を聞き、琴里の話と二亜の話で違うので耶倶矢は疑問を口にする。

 

「そんなの知るかー」

「なんで逆切れ?」

「<囁告篇帙(ラジエル)>だって万能じゃないしー。それよりもこれからどうするかでしょ?」

「同意。そうですね。今現在洗脳されていることを考えると、何かするつもりでしょうね」

「となると、まずは美九の居場所からでしょうね。そろそろ<フラクシナス>の方でも何か情報が得られたかもしれないし、すぐに動けるようにしておきましょう」

 

琴里がそう言うと、琴里は携帯を出して<フラクシナス>に連絡を取る。すると、

 

『<フラクシナス>で集めた情報をまとめましたよ』

 

鞠亜がそう言いながらテレビの中に現れた。

鞠亜からもたらされた情報をまとめると、美九は午前のうちにレコーディングが済んでいたらしく、スタジオを出てきたところをDEMの魔術師の不意打ちをくらってそのまま捕まったらしかった。なんで気づけなかったかについては、その一帯に幻影を生み出して痕跡を消していた為だった。美九が操られているのか本人の意思なのかは不明とのことだった。

それらのことを含め、今後の方針を練ると、作戦の決行を一時間後の零時にするのだった。

 

 

 

~☆~

 

 

 

士道、琴里、千花、耶倶矢、夕弦、真那は<フラクシナス>の艦橋に集まり、美九がいるとおぼしき場所に向かっていた。七罪、折紙、四糸乃、二亜は別の場所におり、いつでも作戦を開始できる状態だった。

 

「さてと、もうすぐ着くから、着いたらさっき決めた作戦通りに決行するわよ」

「あぁ、うまくいけばいいけど。てか、作戦って程のモノでもないし……」

「だよねぇ。ん?なんか見えるんだけどぉ」

 

千花が外の景色を見ながら士道の言葉に同意すると、そんなことを言った。

その言葉でクルーは確認すると、そこにあった。正体不明の空中艦が。しかもインビジブルを掛けているようで、視認はできず生成魔力から見つけたようなものだった。

 

「司令、おそらくはDEMの空中艦かと思われます」

「えぇ、そうでしょうね。てか、なんでインビジブル掛けてるのを見つけられたのよ、千花?」

「んーとぉ、こう空間がねじ曲がってた的なぁ?そんな感じぃ。で、どうするのぉ?いきなり想定外だけどぉ」

「そうね……あれってたしか<ゲーティア>だったかしらね。あれ動かせるのってエレンだけよね、真那?」

「えぇ、動かすだけなら何人かできますけど、いざ戦闘となると、エレンぐらいでしょうかね。あとはミリィと私も多少ならできるかと思いますけど。あ、もしかしたらもう一人いるかもですね」

「そう……じゃぁ、少し予定外だけど、ここで降りて作戦開始かしらね。<フラクシナス>はあれの相手をするから」

 

琴里は逡巡すると、皆にそう伝える。

 

「では、皆が降りたら我らの風で一気に突撃するのが妥当だな」

「それしかないか。琴里たちも気を付けろよ」

「えぇ、今回は秘密兵器もあるから大丈夫よ。それじゃ、転送し次第、決行ね。向こうも準備は万端なはずだし」

「あぁ、行って来る」

「じゃぁ、行って来るねぇ」

「うむ、我らに任せておれ」

「肯定。私たちが二人を連れて行き、美九の救出を」

 

四人はそう言って、艦橋を出た。

琴里は相手がどう動くかわからないので、各自に指示を飛ばす。真那は、ふぅ、吐息を吐く。

 

「それにしても無茶な作戦ですよね。DEMの日本支社を強襲して美九さんを連れ帰るって」

「それしか手が無いんだから仕方ないでしょ」

 

今回の作戦は、千花が前にミリィに付けた発信器からDEMの支部の場所を特定し、そこを強襲するというモノだった。美九が本当にそこにいるのかは不明だが、一番可能性があると思われたからだった。

 

『琴里、こっちは着いたから転送を始めてくれ』

「分かったわ。じゃ作戦決行ね」

「さてと、じゃぁ、そろそろ私も(ボソッ)」

「さぁ、私たちの戦争(デート)を始めましょう」




展開が変わったから、編曲とかけて変曲です。

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