デート・ア・ライブ パラレルIF   作:猫犬

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9話 氷と炎

時は少し戻って、四糸乃と琴里の戦闘はより一層激しくなっていた。

琴里が斧を振るえば四糸乃は回避して隙間を縫って接近し、クローで攻撃する。しかし、攻撃をくらってもすぐに回復してカウンター気味に攻撃をしていた。そして、四糸乃が距離を取って、氷を飛ばせば斧による炎の斬撃によって撃ち落とされる。

士道も割り込もうとしたが、あまりにも激しい戦闘に、不用意に近づいて四糸乃の負担を増やしかねないので近づくことが出来ずにいた。琴里の霊力は全部琴里に持っていかれて、いつもの回復力も無い為、無茶できないのも近づけない理由だった。

 

「……」

「あー、もう。無言で攻撃し続けてくるのって怖いんだけどー」

 

四糸乃は無言でずっと攻撃を続ける琴里に対してぼやきながら、回避又は受け流す。その間にも、なにか突破口は無いかと模索するもいい案は浮かばない。仕方がないので、ガンガン攻撃をして弱らせることに集中する。何度か攻撃していて四糸乃は、琴里が回復時に霊力を消費していることに気付いた。本当は傷つけずに消費させられればいいのだが、斧による攻撃では斬撃を飛ばす以外は霊力を消費している感じがあまり無かった。故に回復による消費を狙うしかなかった。正直、四糸乃は前日の騒動で霊力をだいぶ消費している状態なので、長期戦は身体が持たないので好ましくない。

 

「……、四糸乃?」

「琴里さん!」

 

四糸乃がどんどん攻撃を加えていると、琴里の瞳に光が戻り、四糸乃の名前を口にすると攻撃の手を止め四糸乃も攻撃を止める。四糸乃は琴里の意識が戻ったと安堵するが、唐突に琴里が額を抑える。琴里はうずくまり苦しそうにすると、四糸乃が駆け寄る。しかし、四糸乃が琴里のそばに着くと、いきなり琴里が手にしていた<灼爛殲鬼>を振るい、四糸乃はギリギリ体の前で手を交差させてガードする。なんとかガードには成功するが、いきなりだったこともあって、耐えきれず吹っ飛ばされる。

四糸乃はなんとか地面に着地すると、琴里の方を見る。琴里はうつむいたまま立ち上がり、顔を上げる。琴里の目はまた光を失っていた。

 

「そんな……せっかく意識が戻ったと思ったのに、また戦うんですかー」

「……<灼爛殲鬼(カマエル)>――【(メギド)】」

 

四糸乃は再び琴里との戦闘に戻りそうなので落胆すると、琴里は小さく呟いた。すると、斧の棍が琴里の右手に装備され、右手にできた砲門に霊力が集まっていく。

 

「どうやら、一気に終わりにするつもりですか。でも、そんな攻撃私には当たりませんよ。それに隙だらけです」

 

琴里が必殺技?を使おうとしているが、わざわざチャージが終わるのを待つ義理も無いので、四糸乃は地を蹴って接近し、攻撃で霊力のチャージを邪魔する。しかし、一切ガードしようともせず、受けた攻撃も炎が舐めて全く意味をなさない。そして、砲門の霊力チャージが完了してしまう。

四糸乃は、狙いを定めさせないように素早い動きで移動し続け、隙を見て氷を飛ばすが、琴里の周囲に炎が渦巻き、ガードされる。さらに、四糸乃の目の前に炎が現れ、四糸乃は急旋回して回避しようとすると、さらに進路上に炎が現れ、急ブレーキをかけて地面に止まると、四糸乃の周囲を囲むように炎が地面からあふれる。琴里は何度も飛ばしていた炎の斬撃によって空気中に霊力が残ったことで、それを操って今の状況を作っていた。

そして、四糸乃の動きが止まったことで、琴里は狙いを定める。

四糸乃は周囲の炎を突っ切ろうとも考えるが、下手に突っ切るのは危険だと判断し、回避を諦めると地面に鉤爪を刺し、両手を前に出して合わせる。

 

「<氷結傀儡(ザドキエル)>――【雪砲(ブラスト)】」

 

そう言った瞬間、四糸乃の両手の前に氷の霊力と空気中の水分が集まりだす。

そして、琴里が砲門から火焔が放たれ、四糸乃も一点に集めた高密度の吹雪を放ち、火焔と吹雪がぶつかる。

火焔が吹雪を焼き尽くそうとするが、吹雪も火焔を凍らせようとし、その場で拮抗し合う。

しかし、火焔の威力が吹雪より高いこと、周囲が乾燥して水分が不足していることで押され始め、四糸乃の目の前まで火焔が到達する。四糸乃の視界を赤く染め上げ、四糸乃は恐怖で目を閉じてしまう。

すると、四糸乃の真横から風が吹いて周囲にあった炎が吹き飛び、四糸乃の身体を持ち上げられる感覚があった。

そして、瞼を開くと四糸乃は士道に抱きかかえられていた。

 

「え?」

「よっと!」

 

士道は四糸乃をお姫様抱っこで抱えると周囲に風を起こして跳躍し、火焔の範囲から脱出する。四糸乃がいた場所に火焔が当たると、当った部分の地面が焦げごっそり削られる。

士道は四糸乃が火焔に包まれそうになった瞬間、助けたいと願い地を蹴った。しかし、ただ走っただけでは間に合わなかったが、八舞姉妹のように風を巻き起こすことで速度が増し、なんとか火焔に包まれる前に四糸乃のもとにたどり着くことが出来た。

地面に着地すると、驚いている四糸乃を地面に降ろす。

 

「四糸乃、火傷とかは無いよな?」

「あ、はい。何処も火傷は無いですよ。それより、助かりました。ありがとうございます」

「ふー、よかった。どういたしましてだ。それよか今は琴里の方か」

「そうですね。でも、今のでだいぶ私も霊力を使っちゃったんですよね。また、あの火焔が来たら、もう私じゃ対処できませんよー」

 

そう言って、二人は琴里の方を見ると、琴里の方もだいぶ霊力を消費したようで攻撃をする気配が無く、右手に纏っていた<灼爛殲鬼>も消えていた。

 

「士道、四糸乃?」

 

そんで、琴里はまた意識を取り戻したようだった。

 

「琴里、意識が戻ったのか」

「えぇ、どうやら、そうみたい。ありがとうね、四糸乃」

「いえ、元に戻ってよかったです」

「う、うぅ」

 

どうやら、今度はちゃんと意識が戻ったと思ったが、まだ終わったわけではなく、琴里が頭を抑える。

 

「士道さん、行ってあげてください。そして、琴里さんの意識を」

「あぁ、分かった」

 

それを見た四糸乃は士道に声をかけ、士道は琴里のもとに駆ける。琴里の周囲から炎があふれ、近づくに近づけなくなる。しかし、士道は炎を無視して琴里のそばに寄って、頭を押さえて破壊衝動と戦っている琴里の肩に手を置く。その際に服の所々が焦げる。

 

「琴里、破壊衝動なんかに負けるな」

「……うぅ、おにいちゃん。私から離れて!お兄ちゃんに炎が!」

「琴里、おまえは強くて優しい俺の自慢の妹だ。だから、俺は信じてる。琴里が破壊衝動に打ち勝って、いつもみたいに笑顔を見せてくれるって」

 

士道は琴里に呼び掛けて、意識を引っ張り出そうとし、琴里も破壊衝動に負けないように頑張る。

しかし、徐々に意識を持っていかれていき、突然琴里は士道に飛びついた。士道はなんとか琴里を受け止めるが、そのまま後ろに倒され琴里が士道の上に乗っかる。

 

「琴里、大丈夫なの――」

 

士道は倒された状態のまま、琴里の心配をして声をかけるが、途中で言葉が止められる。

士道が言っている途中で、琴里は士道の口を自分の口で塞いだ。

士道は突然のことに目を白黒させて驚き、琴里は士道の口から自分の口を離す。

すると、琴里の霊装が光りになって消え、周囲の炎も消滅すると、琴里の格好がいつもの赤い軍服に戻る。

 

「ふー、やっと破壊衝動が引いたわね。士道、色々と迷惑をかけたわね」

「いや、妹が困ってたら助けるのは兄として当然だろ?元に戻ってよかったよ。おかえり、琴里」

 

琴里は士道に謝ると、士道は当然のことをしただけと、琴里の頭を撫でる。

 

「うん、ただいま。そして、ありがと」

「あぁ、と言ってもほとんど四糸乃のおかげだよ」

 

琴里が士道の上から離れ、士道も体を起こすと、二人のもとに来た四糸乃の方を見る。

四糸乃はもう問題ないと判断したのか【獣装】を解いていつもの霊装に戻っており、その隣にはウサギ状態のよしのんもいた。

 

「無事終わったみたいですね。それと、琴里さんごめんなさい。私のせいでこんなことになっちゃって」

「いや、これは私が勝手にやったことだから気にしないで。それに、四糸乃は私を助けてくれたし、謝ってくれた。だから、私は四糸乃をどうこうしようとは思わないわ」

「そうですか、ありがとうございます」

『ありがとうね、琴里ちゃん』

「それで、士道。今の状況を教えてちょうだい。皆がいないってことは何かあったんでしょ?」

 

四糸乃とよしのんがお礼を言うと、琴里はむず痒そうにそっぽを向き、今気づいたのか辺りを見回して、士道にそう問うた。

 

「あぁ、カクカクシカジカなんだ」

「ふむ、なるほどねー……ってわかるかー」

『おー、ノリツッコミだね』

「さて、今の状況はDEMの奴らと皆が戦ってて、真那がエレンの相手をしてるはずだ」

「ちょっ、それを早く言いなさいよ(怒)」

「琴里さん、落ち着いてください。身体がボロボロなんですから」

 

士道が重大なことをさっさか言わなかったことで琴里は怒り、四糸乃は落ち着かせようとする。

琴里もそんなことはわかっているが、それでも皆が心配なので怒らずにはいられなかった。

 

「悪かったって。でもみんな無事だと思うぞ。勘だけど」

「まぁ、何かあれば令音たちも動いてくれてると思うけど……」

「とりあえず、ここで話していても意味ないので行きません?」

「あぁ、そうだな。琴里はどうする?このまま一緒に行くか?それとも<フラクシナス>に行くのか?」

「このまま一緒に行くわ。皆も心配だし。さぁ、さっさか行くわよ」

『琴里、シン、四糸乃聞こえるかい?琴里が元に戻ったのを確認して連絡を入れたのだが』

 

三人で話して、琴里が足早に歩きだし士道たちが後ろからついて行く形で千花たちのもとに歩き出すと、唐突に令音から連絡が入る。三人は歩いたまま、インカムのチャンネルを変えて、マイクをオンにする。

 

「ん、令音。えぇ、聞こえているわ。<フラクシナス>の皆にも心配させたわね。それでどうしたの?」

『展開していたDEMの魔術師たちが撤退したから、もう戦闘の心配もないよ』

「そう……それでみんなは無事なのよね?」

『皆無事だ。今は<フラクシナス>に回収してそれぞれ休んでいるよ』

「そうですか。でも、真那だけでエレンを退けられましたね」

『いや、確かに真那が戦っていたが、ユニットの活動限界で途中から九割ほど霊力を戻した千花が戦っていたよ』

「分かったわ。それじゃぁ、私たちも転送しちゃってくれる。ここ暑いし、少し休みたいわ」

『あぁ、分かったよ』

 

令音がそう言うと、三人は転送される際の浮遊感に包まれる。

琴里は大きな疲労感で眠気に襲われながら、この後のことを考えていた。

 

 

 

~☆~

 

 

 

「それで、どうしますか?任務を失敗したわけですけど」

「えぇ、それについてはどうにもなりませんが、まぁいいでしょう。真那の様子からいって、今後戦闘はできないでしょうし。それにしても助かりました。まさか、これが完成していたとは」

 

モニターを見ながらカタカタとキーボードを打っているミリィがエレンに話しかけると、エレンは仕方ないと割り切り、艦橋を見る。

千花に敗れたエレンは、最後の攻撃をくらう瞬間、空中に来ていた<ゲーティア>に回収され難を逃れた。精霊たちと戦って倒された魔術師と壊されたバンダースナッチもすでに回収されていた。

 

「もちですよ。でなきゃ、こっちに来てませんよ。それにしても、こっぴどくやられましたね」

「えぇ、話に聞いていた<ガーデン>が予想以上でした。植物以外にも、なにか秘密がありそうですね。まさか、随意領域を簡単に切り裂けるとは」

「なるほど、まぁ彼女はCRユニットにも精通しているみたいな感じが先月のでしましたからね。そのうち<ナイトメア>並みの危険度に跳ね上がりますかね?仮に、随意領域も使えたとしたらですけどね」

 

ミリィはキーボードをカタカタと打ちながらそう呟いた。

そのモニターにはある図面が記されていた。

 

 

 

~☆~

 

 

 

「ふーなんか疲れたな。ん、でも今日俺なんもしてないか」

 

士道は休憩室の机に突っ伏して、一人呟いていた。

<フラクシナス>に戻った後、士道と琴里は検査を受け、士道はすぐに解放され、琴里は重点的に検査を受けている。

士道はどこにいればいいのかよくわからず、適当にぶらついた結果、今に至る。

 

「そうですか?でも、万全じゃなかったんですから仕方ないですよ。でも、最後に琴里さんの意識を引っ張れたのは士道さんだけですから、何もしてなく無いですよ」

「そう言ってもらえると、俺も救われるかな?」

 

で、士道の隣には四糸乃が座っていて、どこから持って来たのかパフェを食べていた。

四糸乃は検査を受けるはずだったが、比較的安定していたので琴里が優先されただけらしい。ちなみに、今は白のワンピース姿である。

そんで、よしのんはこの場にいない。絶賛<フラクシナス>内逃走中、千花から。

(てか、四糸乃を一人にしていいのか?よしのんって四糸乃の天使だよな?それなのに、俺と一緒って信用されてるってことでいいんだよな?)

今更ながらそんな心配をして、パフェを食べている四糸乃を見ていると、

 

「ん?士道さん、少し食べます?」

 

士道が四糸乃を眺めていたのを、パフェ食べたい、と判断したらしく、四糸乃はスプーンに取って、士道の方に向ける。

別に食べたいわけではないのだが、せっかくの厚意だからと士道はスプーンに乗ったのを食べる。若干多めに取っていたことで食べにくかったが、それは口にせず、内に留めておいた。

 

「あっ、士道さん。口元にクリームが付いちゃってますよ」

「ん?」

 

四糸乃に言われて、士道は口元に手をやるが、クリームに触れた感じは無かった。

 

「そこじゃないですよ。取ってあげますから、じっとしていてください」

 

そう言って四糸乃は士道の顔に手を持っていき、そのまま通り過ぎて士道の後頭部に手をやって一気に自分のもとに寄せて、士道の口にキスをした。

士道は本日二度目の目を白黒させて驚き、四糸乃は四糸乃で一周目の記憶が流れ込み、驚いたあまりに士道の口から離す。

霊装でないので、これといった変化はないが、霊力が封印された感覚はあった。

(一周目の記憶が戻ったわけだし、これでアクティブな四糸乃からおとなしい四糸乃に戻るんだろうな。まぁ、どっちも可愛いけど、アクティブだと俺疲れるよな)

十数秒くらい四糸乃は記憶の整理をしていて、士道は四糸乃が落ち着くのを待って声をかける。

 

「あのー、四糸乃?今のは?」

「はい!元からクリームは付いてませんよ。ただのキスするチャンスを探ってただけですから」

「いいのか?霊力封印しちゃて?」

「えぇ、本当は昨日のうちにとも思ったんですけど、今日のことを考えてずらしただけですから。それに、これで私の霊力は観測されないし、隣界にも飛ばないはずですから。記憶の世界ならそうでしたし」

「あぁ、そうだな。それで、記憶戻ったのに、あまり性格は変わんないんだな」

「それですよ!私のことを知っていたなら言ってくれればよかったのに。あ、でもそれだと怖いですね。というか、なんで『よしのん』ウサギになってるんでしょうか?あっ、記憶が戻っただけなので、私自身は変わらないですよ。それとも、おとなしい感じがいいですか?」

「いや、それは四糸乃の好きにしてくれていいよ。どっちもいいと思うから」

「それもそうですね。じゃぁ、このままでいいかな?と言う訳で、これからもよろしくお願いします」

 

四糸乃が自分で考えだしたことに自己完結すると、ぺこりと頭を下げてそう言ったのだった。

どうやら、これからも大変な生活に変わり無さそうだった。そして、士道を振り回すメンバーばかりになってしまうようで、士道は心の中で若干今後の心配しながらも、今後の生活を楽しくなりそうだとも思ったのだった。

 

「あぁ、こちらこそよろしくな、四糸乃」

「はい!こちらこそです!」




これで、五章は終了ですねー。

千花は真那に何をするのか?それは六章で。
まぁ、普通なこと?のはずです。変な期待はしないで~


六章は近々投稿予定です。
この夏はコミケ行きたかったが、結局行けなかった。
最近はサブタイ悩み中。

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