デート・ア・ライブ パラレルIF   作:猫犬

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3話 四糸乃の心

よしのんが菜園でヒャッハーし、四糸乃と再会した後、菜園の修繕が行われた。

被害は栽培していた人参一本と多少荒れた足場。

修繕(何故か十分もかからなかった)が終わると、リビングに集まった。精霊達が集まれるように、かなりのスペースがあったため、皆入ることが出来た。

琴里は<フラクシナス>、折紙は自宅にいるのでこの場にはいない。

 

『いやー、ごめんねー。四糸乃の居場所が分かんなくて、お腹もすいたから、つい人参の気配を察知して来ちゃった!』

「ごめんなさい。よしのんが、菜園を、荒らして、しまって……それに、私が危なくなった時に、助けてもらったのに……」

 

全く反省していないよしのんとビクビクしながら謝る四糸乃。

千花はたいして怒ってなく何故か笑顔、耶倶矢はなるほどなぁみたいな感じ、夕弦はキッチンで飲み物を注いでいた。

(なんだこのカオスな空間?なんで千花は笑顔なんだろ?)

 

「うん、うん。私はあまり気にしてないよぉ。菜園もすぐ直ったしぃ。それに、四糸乃ちゃんはちゃんと謝ってくれたからねぇ」

『おー、千花ちゃん、やっさしー』

「で、よしのんはどうしよっかぁ?四糸乃ちゃんはすぐ謝ったのによしのんは謝ってないよねぇ」

 

千花はニヤニヤしながらそう言い、じわじわと近づいて行く。おそらく、次にやる行動は……。

 

『んと、千花ちゃん……なんでジリジリ近づいて来るのかな~?』

「それは、モフるためだよぉ!」

 

そして、四糸乃の前に座っていたよしのんが千花に確保されモフられた。四糸乃は、心配そうな顔をしているが、千花を信用しているのか、仕方ないと割り切ったのか、さして慌てなかった。

 

「うぅ、やっぱり、モフモフだねぇ」

 

そして、千花によってモフられよしのんは暴れていた。

(たしかに、よしのんは毛並みがきれいだし、触ってて気持ちよさそうだよなぁ)

他のメンバーはそんなことを思いながら見ていた。

で、

 

『うがぁー――』

 

よしのんの叫びがこだました瞬間。

 

「あ、消失(ロスト)した」

 

四糸乃とよしのんが突如消失(ロスト)して、その場から消えた。

その為、千花は少し寂しそうな顔をしていた。

 

 

 

~☆~

 

 

 

翌日の昼過ぎ、天宮市に空間震が起きた。

といっても、かなり上空だったこともあって、被害はほぼ無かった。あった被害も空間震で起きた突風で、木や看板が転倒だとかの比較的軽いモノだけ。ここ最近天宮市では全く起きていなかったが、問題なく皆避難していた。

空間震を伴って四糸乃がこっちに現界すると、そこにはASTの部隊が展開していた。ASTは四糸乃たちを確認すると、何のためらいもなく銃の引き金を引き発砲した。

その為、四糸乃は<氷結傀儡>に乗って、銃弾に当たらないように回避していった。といっても、回避し続けるだけでは終わらない気がしたので、建物に隠れてやり過ごそうと、デパートに入った。

そして、<氷結傀儡>から降りて、四糸乃は近くの椅子に腰かけた。

 

「ねぇ、よしのんこれから、どうすればいいと思う?」

『そうだねぇ、千花さんはもう精霊じゃないみたいだったし、頼れないよねー』

「じゃぁ……」

『それで、四糸乃はどうしたいの?僕は四糸乃が決めてほしいかなー』

「……私は、危ないことはしたくない」

『じゃぁ、ここで、諦めてくれるのを待ってよっか。……とも、言ってらんないの、かなッ!?』

 

四糸乃とよしのんが話していると、よしのんは何かの気配を感じて、気配のした方に氷柱を飛ばす。

すると、

 

「うおッ!なんだいきなり?びっくりした。あっ、でもこの状況なら仕方ないか……」

 

氷柱が飛んで行った方向から、そんな声が響いた。どうやら、氷柱は当たらなかったようで、そんなことを言いながら近づいてきて、四糸乃たちはその姿を見た。

 

「よう、四糸乃に、……よしのん?」

「士道さん?」

『あー、まさか士道君だったとは。あ、四糸乃のヒーロー、よしのんだよー』

 

四糸乃たちに近づいてきていたのは、無事デパートの近くに<フラクシナス>から転送されてきた士道で、周囲に展開して警戒していたASTに見つかることもなく簡単にデパートに入ることが出来た。

ちなみに、千花たちは来禅のシェルターにいて、その場には士道しか来ていなかった。

で、士道がよしのんに“?”を付けたのは、昨日会った時は普通サイズのウサギだったのだが、今は完全に<氷結傀儡>の姿を取っていたからだった。また、士道の記憶が確かなら、<氷結傀儡>時もよしのんの人格を持つのだが、この世界でもそうなのか確証が無かったのもある。

 

『おや?士道君。まさか、僕のことが分からなかったのかな?まぁ、いいや。それで士道君はなんで、こんなところにいるのかな?』

「んと、迷ってたまたまここに避難してきた。なんか安全そうだったから」

「そうなんですか?」

「あぁ、それで四糸乃たちはこんなところでどうしたんだ?」

「それは、ここにいれば攻撃されないので……」

『で、士道君は何者なのかな?もしかしてASTとかいうとこの関係者なのかな?』

 

すると唐突によしのんが疑いのような目を向ける。

まぁ、こんなところにいれば疑われるのも仕方ないのだが、ここで<ラタトスク>のことなどの説明をすることもできない。すれば、間違いなく逃げる行為に出てしまうだろう。

(というか、霊力の封印が出来なくなる気がする)

 

「いや、俺はASTの関係者ではないよ」

『へぇー、そうなんだー。じゃぁ、どこの人?』

 

どうやら、よしのんは士道が何らかの目的をもって接触してきたと確信しているようだった。だが、士道は先ほど決めた通り、言う訳にはいかない。

 

「……それは……」

『えー、何々言えないようなことなの~』

「いや、その……」

『あー、もう埒があかない!四糸乃、今こそあれをやる時だぁ!』

 

士道が言葉をなかなか言わないことで、よしのんは何らかの手に出るようで、四糸乃にそう言った。

 

「……え?でも、あれは」

『いや、今こそ使う時だよ!』

「でも……」

 

しかし、四糸乃は拒否しているらしく、なかなか話が進まない。

(一体、何をするつもりなんだ?)

士道は士道で、何をする気なのかわからないので気が気でない。

 

『四糸乃、これは僕たち二人が助かるための道なんだよ!』

「う、うぅ。わかったよ、よしのん」

『四糸乃、信じていたよー』

 

どうやら、話が付いたようで、四糸乃は士道に少し近づいた。何故か頬を赤らめて。

 

「うぅ」

『四糸乃、ファイトだよ!』

「あの、士道さん。教えて、ください」

 

士道との身長差で上目遣いになり、恥ずかしいのか頬を赤らめているせいで、士道はドキッとしたが何とか平常を装う。

 

『なに!四糸乃の上目遣いが効いていない?ならば、次はあれをやるんだ!』

「よしのん、あれやるの?」

『いくんだー四糸乃』

「一体何する気ー?」

 

二人が何の話をしているのか分からないが、嫌な予感がしていた。

そして、四糸乃は何かを決心すると、再び士道の方を向き、両手を胸の前に持ってくると、目元を潤ませる。

 

「……お願い、します」

「ぐはっ」

 

あまりの可愛さに、士道は身体をくの字に折ったが、なんとか倒れること無く耐えきった。

(よしのん、なんて技を四糸乃に教えているんだ)

 

『おぉ、効いてるー。さぁ、士道君いい加減言っちゃいなよー』

「士道さん、お願いします」

「……あぁ、そうだな。よくよく考えたら、隠すこともないよな」

 

そして士道は、空間震を平和的になくす、そんな考えで動いている機関があるということ、士道はそこに属しているということを簡単に伝えた

(え、<ラタトスク>の話をしないんじゃなかったかって?知るかー、四糸乃にあんなことされたら隠し事なんてできるか?いやできない!)

で、四糸乃とよしのんは普通に聞いてくれた。ちなみに霊力の封印については伝えていない。変に警戒されかねないので。

 

「――て感じなんだけど」

「なるほど?そうだったんですか」

『なるほどねー。だから千花さんも精霊じゃなくなっていたのかー』

「ん?千花とはあの時以前にも会ったことあったのか?」

「あ、はい。何度か助けてもらいました」

「そっか、千花は昔から相変わらずなんだな。それよか、二人はこの後どうするんだ?」

「とりあえずは、諦めて帰ってくれるのを待っている感じです」

『まぁ、そんな感じだねー』

 

そんな感じに話をしていくと、<氷結傀儡>状態から元のウサギの姿に戻るよしのん。おそらくは戦闘はもうないと判断したのと、あのサイズだと狭くて動きづらいからだろう。

(とりあえず、ASTが諦めて帰るの待ちか。ここで下手に外に出るわけにもいかないからな。まぁ、あいにくここはデパートだし・・・)

 

「なぁ、四糸乃、よしのん。とりあえずこの辺ぶらつかないか?多少は動いておかないと、狙撃とかがあるかもしれないし」

「あ、そうですね。それに、あまりこういうところ見たこと無いですし」

『だねー。じゃぁ、レッツゴー。あ、これってもしかしてデートかな~』

 

四糸乃たちを少し歩こうと誘うと、肯定する四糸乃と茶化してくるよしのん。とりあえず、二人と一匹は歩き出した。

 

 

 

 

 

そして、ASTの強行攻撃によりデパートは倒壊し、士道たちは生き埋めになりました。

 

 

 

~☆~

 

 

 

ズポッ!

 

四糸乃は倒壊したデパートの瓦礫の隙間を縫って脱出した。

霊装を纏っていたことによって身を護られたので大きな怪我も無く、多少のかすり傷程度で無事だったのだが、結果的に士道、よしのんとはぐれてしまった。

 

「よしのん、士道さん……」

 

四糸乃は辺りを見渡すが、あるのはデパートの瓦礫と、

 

「精霊発見、ト。やっぱり、建物で生き埋めはできないわよネ。さて、これより殲滅を開始するわヨ」

 

空を滞空しているASTたちだけ。どうやら、この状況はASTが作ったということは確実だった。

そして、この瓦礫の惨状から考えても、士道は無事ではないだろう。よしのんはギリギリ隣界に飛んで助かったかもしれないが、士道には霊装も無く、隣界に飛ぶこともできない。

(この人たちが士道さんを?いや、私と関わったから?そもそも、私がデパートに逃げなかったら……。よしのん私どうすれば……)

 

「たく、これだから<ハーミット>はめんどうなのヨ。逃げ回ってないでさっさとやられなさいヨ」

 

四糸乃はどうすればいいか分からず、攻撃を回避しながらただひたすら逃げていた。

(私が臆病なせいで士道さんはもういない。私が士道さんを殺したようなもの。私は痛いことが嫌い。でも、あの人たちは痛いことを平気でする。なんで私が襲われなきゃいけない?そもそも、空間震だって起こしたくて起こしているわけじゃない。それなのに、私は襲われる。なんで?)

 

「ちまちまと面倒ナ。なんでこいつは反撃をしようとしないのかネ?化け物のくせニッ!」

 

先ほどから、この部隊の隊長と思しき人は、ぶつぶつ文句を言いながら攻撃をし続ける。

(私は化け物じゃない!なんで、私がこんな目に。私はただ普通にしていたいだけなのに。なんで、邪魔をするの)

 

「ジェシカさん、大変です!先ほどのデパートの中に逃げそこなった人がいたことが判明しました!今は瓦礫の隙間に運よく入ったみたいで生存はしているようです」

「はっ?なんでそんなことが分かったのヨ?今は戦闘中でしょ?関係のない事してんじゃないわヨ」

「いえ、分かったのは偶然です。<ハーミット>が天使を顕現させていなかったので、念のために周囲を随意領域で検索した結果分かったわけです。なので、私はその人の救助に向かいます」

 

すると、上空で別のASTがジェシカにそう言い、ジェシカはキレる。

(よかった、士道さんは無事みたい。よしのんも無事だよね?)

とりあえず、士道の無事が分かり、ASTの一人が士道を助けに行ってくれるみたいなので安堵する。

しかし、

 

「はぁ?何言ってんのアンタは?今は精霊が先でしょ。ちゃんと避難しない方が悪いのよ」

「しかし、人がいるとわかっていて放置するわけには……」

「あら、そう。じゃぁ、精霊を放置しといて被害が拡大したらどうする訳?」

「いえ、ですが。<ハーミット>は攻撃しないタイプなので。問題は無いかと」

「あっそう。いいわよ、行ってモ。でも、行ったなら今後あなたはいらないから除隊してもらうわヨ」

「……え?それは困ります」

 

四糸乃は走りながらASTたちの会話を多少聞いていると、ジェシカの最後の言葉を聞き、さっきまで助けに行こうとしていたASTが除隊は嫌なのか士道のもとに行くのを止めてしまう。

(え?士道さんを助けに行ってくれるんじゃ?……そう、結局人なんて……)

四糸乃は走るのを止め、その場に足を止めた。AST達は観念したと勘違いをする。

(私は痛いことは嫌。それに私のせいで誰かが傷つくのが嫌だった。だから、私は今までたとえ襲われても反撃をしなかった。でも、もう限界。士道さんを見殺しにすると言うのなら――)

 

ASTは足を止めた四糸乃に銃を撃った。しかし、放たれた弾丸は空中で凍り、四糸乃に当たる前に砕け散った。ASTは今までに無かった現象に驚く。

 

(――私は、優しさを捨てる!)

 

そして、四糸乃は自身の心に凍結させていたモノを解放した。

 

 

 

~☆~

 

 

 

空間震が起きた後、千花たち高校組は。

 

「あれ?五河君はどこ行きましたかー?」

「士道君はトイレ行きましたよぉ」

「まさか、ここまで天気が変わろうとは」

「驚嘆。確かに、これは驚きですね」

「これは四糸乃が現界したと考えられる」

 

士道がいないことを隠していたり、下手にシェルターから出るとばれるということでとどまっていた。




よしのんはパペットでなく、ウサギという設定でいきます。
ティッピーと同じようによしのんの人格が入っている感じです。

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