デート・ア・ライブ パラレルIF   作:猫犬

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今回は二話同時更新です。
なので、前回の話を見てない方はそちらからお願いします。




5話 鳶一折紙

「助かったよ。けど、どうしてここに?」

 

助かったことに感謝しながらも、疑問を口にする。

士道の疑問を七罪が聞く。そもそも、突然現れたのも謎だった。

 

「ん?家である物の開発していたのは千花から聞いて知ってるでしょ?で、完成して少し経ったら、<フラクシナス>でサイレンが鳴り響いているって、鞠亜が言ってて、大急ぎで来たの」

「そうなのか?でも、いきなり現れたような……」

「まぁ、説明は後。来るわ、よっ!」

 

七罪が話を切り上げると、折紙が再び士道に向けて『羽』から光線を放とうとする。

それに対して、七罪は落ちていた石を拾い、『羽』に向かって投げると<贋造魔女>を振るい、石を鉄の塊にしてぶつける。

ただの鉄の塊だから、『羽』は破壊できないが、ぶつかった衝撃で照準がぶれる。

 

「さて、折紙を助けるのには私たちは賛成だけど、この人数じゃ厳しいわね。真那は<フラクシナス>を守りながらだし、私は戦闘向きじゃないしね……」

「実質千花一人、か。俺も<灼爛殲鬼>を顕現させるべきか?」

『士道は、彼女を元に戻すことに集中しなさい。前の世界で別の精霊を救った時のようにね。神無月、<フラクシナス>を任せたわよ』

『了解しました。全力で守り抜きます!』

 

インカムから二人の声が響くと、<フラクシナス>から空に向かって赤い炎の塊が飛び出す。

士道の目の前に来ると、炎が消え、限定霊装を纏った琴里が姿を現す。

<フラクシナス>の制服のスカートの一部が霊装になっており、頭には小さな角があった。

 

「少しの間、力を返してもらうわ。千花と私で相手をするから、士道は付いてきて。それで、七罪は私たちを援護して!」

「琴里!限定霊装纏って大丈夫なのか?破壊衝動があるって」

「でも、今はこれしか選択肢はないわ。私の身体を心配するなら、さっさか自分の殻に籠った姫を連れ出しなさい!」

「あぁ、わかった」

「とっ。戦闘は二人に任せて、私は私の仕事をするかな?……四糸乃、よしのん。力を借りるね。<贋造魔女(ハニエル)>――【千変万化鏡(カリドスクーペ)】」

 

琴里の意思は固いようで、だからこそ止めるのではなく信じることにする。

琴里がそれぞれに指示を出すと、七罪がその名を呼ぶ。

すると、その手に握られた箒が変化し、大きな白いウサギーー四糸乃の天使<氷結傀儡>の形を作る。

 

「え?何それ……?」

 

目の前で起きた初めて見る光景に、琴里は少し驚く。

なんだかんだで、琴里がこの技を見るのは初めてだったからだろう。

 

「二人とも、行って!私は折紙の攻撃を制限させるから」

 

四糸乃の<氷結傀儡>より、少し小さいがその背に七罪は乗ると、周囲の温度が一気に下がり、折紙の周囲に氷の棘ができ、折紙の視界と羽の動きを制限させる。

 

「うぅ、寒い……でも、私も頑張るよぉ。<死之果樹園(サマエル)>――【成長(グロウ)】、【木人形(ツリードール)】、【剣木(ソードツリー)】」

 

千花も張り切り種を撒くと、【剣木】を装備した【木人形】を二体生成する。

そして、【木人形】が折紙に向かって行く。

 

「じゃぁ、行くわよ」

「あぁ、行くか」

 

それに合わせて、二人も折紙に向かって駆ける。

『羽』がそれぞれに向かって、攻撃を始め、

 

「来なさい!<灼爛殲鬼(カマエル)>!」

 

琴里は天使を顕現させると『羽』に攻撃をして、光線の軌道を逸らす。

千花や【木人形】達も攻撃をして軌道を逸らす。

 

「士道君はとにかく近づくことに集中してぇ。『羽』は私がなんとかするからぁ」

 

千花はそう言うと、顕現している『羽』に攻撃をする。

 

「そういうこと。と言っても、この霊力障壁はどうしたものかしら?」

 

琴里は霊力障壁に戦斧をぶつけるが、弾かれてしまう。

続けて何度か攻撃するが、壊れる気配がない。

どうやら限定霊装の天使じゃ、壊すのは無理なようだった。

 

「俺もやるしかないか」

『ちょっと<フラクシナス>から離れますよ。いいですか?』

「えぇ、こちらでなんとかしてみます。どうぞ行ってください」

 

二人が困り、士道が天使を顕現させようとすると、真那がインカムを通して神無月と会話をして、士道たちのもとに来る。

 

「要するに、これを壊せばいいんですよね?」

 

二人のもとに来ると、左手の武器に魔力をチャージしているのか光っており、二人に確認をとる。

 

「えぇ、でもこれ相当硬いわよ?」

「問題ねーですよ。さすがにあのクリスタル程ではねーと思いたいですし」

「じゃぁさっさか、やっちゃって!」

 

三人に向かって、『羽』が攻撃しようとするが、七罪がその真下から氷の柱を出してぶつけ、光線の照準をずらす。

そして、魔力のチャージが終わると、武器を霊力障壁に向けると魔力弾を放つ。

放たれた魔力弾は、ドリルのように回転をしながら、霊力障壁に衝突する。

どうやら、いつかの銃の機能を取り入れていたらしかった。

しかし、霊力障壁は想像以上に硬いのか、なかなか貫けず、小さな穴を作ると魔力弾が消える。

 

「ちッ、想像以上ですね……」

「いや、十分よッ」

 

真那が悔しそうな顔をするが、琴里はそのチャンスを無駄にしなかった。

真那の攻撃によってできた小さな穴に、琴里は戦斧を勢いよくぶつける。

すると、穴を支点に一気に障壁が崩壊する。

 

「士道、今よ!」

 

琴里が言うと、士道もその瞬間を見逃さず、霊力障壁の中に入る。

士道が入ると障壁が元に戻ってしまう。

 

「折紙ッ!」

 

士道は声を張り上げ、折紙の名を呼ぶ。

だが、折紙は全く反応せず、目は虚ろなままだった。

 

「く……」

 

士道は奥歯を噛みしめ、折紙を見た。

 

 

 

~☆~

 

 

 

私はごくごく普通の家庭に生まれ、平穏な生活を送っていた。

しかし、五年前、天宮市を覆った大火事により命の危機にさらされた。

その日は、友達の家に出かけた帰りで、大火事になるや二人が心配で大急ぎで両親の元に戻った。

そして、家に着いて両親が私に気付いて、私のもとに来ようとしたら、空から光が降って来た。その光が両親に当たりそうになった直後、どこからか現れた男の人が両親を光の外に突き飛ばした。

そして、その人が光に包まれる瞬間、私の顔を見て安堵しているようだった。

光が消えると、その人の姿が無く私は混乱した。

結局あの人が何者なのかわからないまま生活をして、その二年後に両親が交通事故に遭ってしまった。

私は一人ぼっちになり、遠くに住んでいた叔母に引き取られた。

それからは再び普通な生活に戻ったが、時々夢の中で両親も救ってくれたあの人が出てくることがあった。

 

私が高校二年になると、私の通っていた高校が空間震で吹き飛んだ。私のいた場所は田舎だったこともあって、通っている生徒が少なく、廃校になってしまった。

その頃に叔母の仕事が忙しくなり、叔母が帰ってこない日もあり、叔母から一人暮らしをしないかという話をされた。なんでも、叔母の仕事の都合で叔母は離れることが出来ないらしく、その周囲には学校が無かった。だから私は、両親と住んでいた天宮市に戻って来た。

 

来禅高校に転入したその日、両親を救ってくれた人に似た男子が私の席の近くにいて驚いてしまい、その男子も驚いていた。

クラスメートに質問攻めに遭い、なかなか話すことが出来なかったけど、チャイムが鳴って先生が来るまでの間に話すことが出来た。その後、昼休みには屋上で一緒にお昼を誘われ、そこでいろいろな話をした。

まさか、五河君のお兄さんが両親を助けてくれたと知った時は、五河君に謝罪とお礼を言った。

その後は平穏な学園生活を送り、週末に木野さんたちが街を案内してくれるとのことで、私はご厚意に甘えてお願いした。

その前日にはどんな服装で行くべきか悩み、あまり眠れなかった。

 

当日になると、待たせるのも悪いと思って早くに家を出た。

待ち合わせの駅に着くと、二人はもう着いていて、考えていることが一緒のようだった。

はたから見たら、二人はカップルのように見えたけど、本人に聞いたら違うらしかった。

デパートの雑貨店でアクセサリーを買うと、木野さん一押しのレストランで昼食になった。

途中で木野さんが、用事が出来たと言って帰ってしまい、五河君と一緒に回ることになった。

恥ずかしかったけど、せっかくだしね。

でも、この後に事件が起きてしまった。

五河君が席を外すと、私は水を飲もうと思ったけど、空になっていて、五河君のコップが目に入った。

そして、気づいたら五河君のコップに手を伸ばしており、抗ったけどなんだか頭の中がぐちゃぐちゃになり、コップを掴んで飲もうとしていた。

このままじゃ間接キスになりそうになった時に、五河君が戻ってきて困惑していた。私は慌ててコップを戻そうとして、コップを倒してしまい、五河君の服を濡らしてしまった。

五河君は服を乾かそうとして、ハンカチで服を数度叩くと、五河君のへそが見え、私の手が勝手に動いて携帯のカメラで撮っていた。

私の意思とは関係なく動いていた。

その後気付いたんだけど、なんで五河君のだったんだろ?木野さんのも残っていたはずなのに……。

その後も、色々なことがあり私は疲弊していた。

五河君は困惑しながらも、お出かけをやめることもなく進んでいった。

 

そして、最後に見せたいものがあると言うと高台公園で綺麗な夕陽を見た。とても綺麗で私は見とれていた。

すると、五河君も柵に近づいた。

私は気温が下がってきたこともあって、手を擦りながら呟くと、五河君が私の手に重ねたので驚いて目を丸くしてしまった。

五河君も恥ずかしいのか無言になり、私は沈黙に耐え切れず、話題を出そうと思って声を出すと、五河君も声を出したので驚いてしまった。

その拍子に柵に体重をかけていたせいか、老朽化していた柵が壊れ、私は宙に放り出された。

五河君の手を握っていたおかげでなんとか落下せずに済み、公園に引き上げられて助かった。

その際に、五河君の上に乗る形になり、五河君にお礼を言うと、すぐに立ち上がった。

心臓の鼓動が早くなっちゃたけど、聞こえてないことを願いたいなー。

すると、五河君の右腕に傷が出来ており、その傷を見ていたら、そこから炎があふれた。

そして、私の意識が飛んだ。

 

 

 

次に気が付いた時には真っ暗な空間にいて、真上に一点の光があり、そばには私と同じ髪の色の短い髪の少女が身をうずめるように悲しそうな表情で座っていた

その子が私だと気づくのには、そう時間はかからなかった

そして、私の中に膨大な量の記憶が流れ込んできた。

それは、こことは違う世界での私が生きた記憶だった。

五年前にあの光を放ったのは成長して精霊になった私だと知り、そして、両親を死なせてしまっていた。

その光景を見た過去の私は絶望したが、五河君のおかげで精神を壊す一歩手前で踏みとどまることが出来た。

それらの記憶を受け取ると、私は困惑した。

そして、私がもう一人の私の記憶を得たように、もう一人の私にも私の記憶が流れ込んでいるようだった。

そして、二人の私の記憶が共有化したことで、私は一つになり知った。

この世界で両親を救ったのは五河君の兄ではなく、過去に飛んで来ていた五河君本人だったことを。

私は二つの記憶に混乱し、もう一つの記憶による絶望に押しつぶされそうになる。

炎が揺らめく街、世界に降り注ぐ黒い光、空を見上げる幼い折紙()

あまりにも絶望的な記憶に、私の意識が遠のいていく。

同時に足元が崩壊し始め、真上の光からどんどん離れていく。

光に向かって手を伸ばしても届く気配がなく、どんどん離れていく。

もう私一人の力では、手を届かすこともできなかった。

もう無理と諦めかけた時、

 

「――折紙……!」

 

不意に私を呼ぶ声が響き、私の遠のいていた意識が呼び戻される。

 

「五河……君?」

 

何もないはずの世界に響く声に呟く。

その声は真上に光っている光から響いているようだった。

 

「一人で抱え込むな!五年前、言ったよな?お前は一人じゃないって……!」

 

光から折紙を呼びかけるように、声を張り上げ続ける。

その言葉に、五年前の記憶が呼び起こされる。

五年前、目の前で両親を失った私に五河君がかけた言葉を。

 

「あ、あぁ」

「だから、絶望だけは――しないでくれ!」

 

記憶の中の士道の言葉と、耳に伝わる言葉が重なる。

すると、光が一層強く輝く。

 

「何度世界を壊しても……何度絶望したとしても……俺が必ず助けてみせる!」

「私、は……」

「だから、手を伸ばしてくれ!」

 

その言葉が響いた瞬間。

折紙は光に向かってもう一度手を伸ばした。

さっきまでは、遠すぎて届かないはずだった光が手の届く位置まで来ていた。

そして、光の中から士道の手が伸びてくると、二人の手が重なった。

 

 

 

~☆~

 

 

 

士道は虚ろな目をしていた折紙に声をかけ続けた。

折紙に届くと信じて。

何度も呼び続けると、

 

「士道……君?」

 

折紙が小さくそう呟く。

しかし、まだ意識が完全に戻っていないのか、目は虚ろなままだった。

士道は声が届いたことに安堵しながら、折紙の意識が戻ってくるように声を張り上げる。

 

「一人で抱え込むな!五年前、言ったよな?お前は一人じゃないって……!」

「あ、あぁ」

「だから、絶望だけは――しないでくれ!」

 

そして、士道は伝えたいことを伝える。

 

「何度世界を壊しても……何度絶望したとしても……俺が必ず助けてみせる!」

「私、は……」

 

折紙の目にだんだん光が灯っていく。

 

「だから、手を伸ばしてくれ!」

 

士道がそう言うと、折紙の目に完全に光が灯る。そして、伸ばされた士道の、手を掴む。掴まれた士道は一気に折紙を引っ張り、気づけば真っ暗な空間から高台公園に景色が戻っていた。

 

「士……道……。私は?」

 

折紙の意識が戻ると、微かに口を動かす。

 

「ありがとう、士道。私を呼んでくれて」

「折紙――」

「士道がいなかったら私は……私がしてしまったことは『なかった』ことになっても消えない。だから、私は――」

「それは――」

 

士道が折紙の言おうとしたことを否定しようとするが、途中で止める。

簡単に否定してはいけなかったから……。

 

「確かに、折紙がしてしまったことは消せないし、背負い続けるしかない」

「……うん。私は……私の罪を、背負い続けて……生きていく」

 

折紙は士道の言葉を、涙を流しながらも受け止める。

折紙の涙が止まると、

 

「私は、士道に依存しているだけだった……。自分の弱さを隠すために。だから、私は士道に謝罪したい」

「そっか。でも、それで折紙を護れていたのなら良かったよ。それに、頼られていたのなら、うれしいし……」

「士道……」

 

折紙の目に再び涙が浮かぶ。

 

「そうだ、おまえから預かっていたモノを返さないとな」

「預かっていた、モノ?……あっ」

 

折紙が首をかしげると、何かを思い出す。

 

「そうだね」

 

折紙はそう言って、ぎこちないが、確かな笑みを作ると、

 

「ありがと、士道」

 

士道にお礼を言う。

そして、折紙の真っ黒な霊装が真っ白な霊装に戻り、周囲の『羽』も消失する。

そして、もう一度笑みを浮かべる。

士道は折紙の肩に手を置き、折紙を引き寄せる。

 

「え?」

 

折紙は驚き、声を出す。

そして、二人はキスをした。

その瞬間、折紙の纏っていた霊装が光になって消え、元々着ていた服に戻る。

 

「これは……?」

 

唇を離すと、目を丸くする折紙。

 

「ふぅ、無事終わったねぇ」

「はい、そうですね」

「うん、ちゃんと救えたね」

「そうね。これで、折紙を救えたのね」

 

『羽』と戦っていた四人も士道たちのもとに来ると、口々にそう言う。

 

「皆も、ありがとう。私の為に」

「え?折紙がデレた!」

「うん、どういたしましてぇ」

「いえ、無事戻ってきてよかったです」

「まさか、あの堅物の折紙が……」

 

折紙が笑顔で皆にお礼を言うと、それぞれがそんな反応を示す。

 

「ん?琴里、思い出したのか?」

「え?あぁ、七罪の場合は繋ぎ直したから思い出したとしたら、たぶん士道が折紙とパスを繋いだから折紙の霊力を通して私も思い出したってとこじゃないかしら?おかげで、色々思い出したわ」

 

とりあえず、琴里の記憶も戻ったからよかったのだろう。

士道は折紙の方を見ると、今更ながらキスをしたことが恥ずかしくなっていた。

 

「まぁ、その……おかえり、折紙。これからもよろしくな」

「うん、ただいま。これからもよろしく」

 

こうして、長かった一日が終わったのだった。




これで、第三章は終わりです。
今回の章も原作とほとんど同じ流れ(違いはあるけど)になっちゃいました。
折紙の性格を悪魔にするか天使にするか。

次の章は原作とは違う展開で進みます。なんか、回転を加えるから書くのが大変・・・

では、ノシ

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