デート・ア・ライブ パラレルIF   作:猫犬

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今回は二話同時更新です。


4話 折紙とのデート

「……で、どこに行くの?」

「あ、ああ。そうだな――」

 

レストランを逃げるように出て、二人はデパートの一階にいた。

さっきのことがあってか、折紙は申し訳なさそうに言う。

それに対して、士道がデパート案内板を見て返そうとすると、インカムから、あの音が響いた。

そして、先ほど席を外した時に付けたコンタクトに選択肢が表示される。

 

 

①セレクトショップで折紙をコーディネートしよう。

②ペットショップで動物と戯れて、二人の距離を縮めよう。

③強力な精力剤や媚薬のある隠れた店に行こう。

 

 

『士道、久しぶりに行くわよ!総員選択ッ!』

 

琴里がそう言うと、メインモニターとコンタクトに映った選択肢から、集計結果が表示される。

結果は①が多く、②が次に、③はゼロだった。

 

『①が多いわね。てか、③はなんなの?』

「なぁ、琴里。ここは俺に任せてくれ。もし、一周目の折紙なら、どれを選ぶかわかるんだが……」

『そうなの?まぁ、試してみなさい』

 

琴里からの了承を得ると、士道は折紙の方を見る。

 

「じゃぁ、ちょっと行ってみたい店があるんだけど……」

「そうなの?でも、次は五河君の行きたい店に行くって、さっき言ったからいいよ」

「じゃ、こっちだ」

 

二人はそう言うと歩き出し、デパートの中にある薬局に着く。

 

「ここは?」

 

折紙は疑問を持ちながら、驚いたように目を丸くする。

一瞬一般的な薬局に見えるが、奥の方には怪しさが満点な薬品もある。一周目で折紙に教えられた場所だった。

 

「あぁ、ここの薬よく効くから、時々来るんだ」

「……そうなんだ」

 

折紙は、薬の瓶を見ながらそう呟いた。どうやら、あまりピンと来ていないようだったので士道はミスったか?と心配になる。

やっぱり、今の折紙は違うようだなぁ、と思って色々考えていると、いつの間にか折紙の姿が消えていた。

 

「あれ?……あ、いた」

 

辺りを見回すと、折紙はいつの間にか奥の方にいて、折紙のもとに着くと、士道に気付き折紙が口を開いた。

 

「五河君、私にはよくわからないや」

「あ、ああ、そうだよな――」

 

が、士道は言葉を止めた。

理由は折紙の手には籠があり、その中にいくつか商品が入っていた。それも、英語で書かれたような物ばかり。英語なのでよくわからないが、箱の柄や絵から危険な感じがする。

 

「折紙、それは?」

「え?」

 

士道が籠を指差すと、折紙は今気づいたようにハッとした。

 

「これは……一体?私いつの間に……」

 

折紙は頭を抑えながらそう言う。

すると、インカムからアラームが鳴る。

 

『士道、折紙の感情値が不安定だわ』

「おかしいな。一周目ならここだと思ったんだけどな」

『とりあえずそこを出なさい』

「大丈夫か?とりあえずここを出よう」

 

士道は高速で籠の商品を棚に戻すと、折紙を連れて店を出る。

それから、少し時間が経つと折紙は落ち着いた。

 

「ごめん。私どうしちゃったんだろう?」

「まぁ、気にするな。変なとこに連れて行っちゃってごめんな。次は服でも見に行くか?」

 

士道がそう言うと、折紙も頷く。

そして、二人は洋服店に向かって歩きだす。

 

「ところで、折紙っていつもはどんな店で買うんだ?」

「うんと、大体は近くのお店かな」

 

言って、折紙は恥ずかしげに苦笑する。

 

「もう少し、凝った方がいいのかもしれないけど、あんまり分からないんだよね」

「そうか?今日の服似合ってると思うけど」

「……!」

 

折紙は驚いたような表情を作ると、小さく呟いた。

 

「……ありがとう」

「どういたしまして、なのかな?あ、ここだな」

 

二人が洋服店に着くと、そこは見るからにおしゃれそうな店だった。

折紙は入ると服の物色を始める。

 

『見てるだけじゃなくて、話しかけるなりしなさいよ』

 

すると、琴里が焦れたようでそう言う。

それで、士道もコートを見ている折紙のもとに行く。

 

「せっかくなら、何か一着プレゼントするよ」

「え?いいの?でも、結構値段するよ?」

 

折紙は士道に手に持っていたコートの値段を見せる。

二九八〇〇円。高校生には厳しい値段だった。

しかし、士道には<ラタトスク>のバックアップがあるから問題ない……はず。

 

「任せろ」

「でも」

「代わりに、最初にそれを見せてもらうってことで」

 

士道がそう言うと、折紙は苦笑する。

 

「五河君って、女泣かせ?」

「ん?なんで?」

「いや、手慣れていると思って」

 

折紙は士道をからかう。

 

「まぁ、お言葉に甘えちゃおうかな?せっかくだしもう少し見て、五河君が喜びそうな服を選ぼうかな」

「あ、あぁ」

 

士道が頷くと、折紙は軽い足で歩き出す。

 

『ふふ、女泣かせですって。見抜かれたわね』

「勘弁してくれ……」

 

士道がそう言うと、琴里が返す。

 

『別に問題ないわよ。いくら手慣れたって、士道なら平気でしょ?』

「そうなのか?まぁ、いいや。折紙はどこ行った?」

 

士道はあたりを見回すが折紙の姿が見えない。琴里とやり取りしているうちに移動したようだった。

 

『シンのいる場所から見て、前方の試着室にいるよ』

「ありがとうございます。分かりました」

 

令音に場所を聞くと、試着室に近づく。

とりあえず、近くで服を見て待つ。

 

「……五河君、いる?」

 

すると、試着室から折紙の声が聞こえてくる。

何故か、声が小さかったが。

 

「いるよ。どうかしたか?」

「ちょっとね……」

 

そう言いながら、折紙がカーテンを恐る恐る開ける。

 

「……へ?」

 

折紙の服装を見てそんな声を漏らした。

それは、メイド服だった。

千花の霊装のような濃紺の色で、完璧に着こなしていた。

 

「まさか、俺が喜びそうな服?」

 

士道が聞いてみると、折紙は首を振った。

 

「ご、誤解しないで、私はこんなつもりじゃ」

「とりあえず落ち着くんだ」

 

混乱している折紙をなだめると、少し落ち着いた。

 

「たしか、服を見ていたら、この服を見つけて……。それで、何故かこの服が一番五河君が喜ぶような気がして……」

 

折紙は再び頭を抑え始める。そして、インカムからアラームが響く。

 

「とりあえず、元の服に戻るんだ。で、他のとこ行こう」

 

そう言って、試着室のカーテンを閉めた。

 

 

 

~☆~

 

 

 

「五河君、今日はありがとうね」

「あぁ、俺も今日は楽しかったよ」

「そう?それでどうする?」

 

あれから二人は何件か店に行き、午後五時になっていた。

それまでの道中でも、時々士道に携帯のカメラが向いたり、何もない所で躓いて士道に倒れかかったりしていた。

すると、折紙の問いに対してコンタクトに選択肢が出る。

 

 

①高台公園に行く。

②ここで別れる。

③大人のホテルにゴー。

 

 

『総員選択ッ!』

 

すぐに集計結果が出た。

全員一致の①だった。

神無月も遊ばなかったようだった。そもそもここでふざける必要などない。神無月の場合はシチュエーションが刺さらなかっただけかもだが。

 

『まぁ、①よね』

「そうなるよな。折紙、最後に行きたいところがあるんだけど、いいか?」

「うん、まだ時間的に平気だよ」

 

そう言って、二人は歩き出した。

 

 

 

「わぁ、きれい。こんな場所があったんだ」

 

高台公園に着くとだいぶ陽が沈んでおり、夕日が街を真っ赤に照らしていた。

そんな光景を折紙は柵に寄りかかるように見ており、

 

「そうだな、こんなきれいな夕焼けは初めて見るかもな」

 

士道も柵に近づくと、そう呟く。

 

「それにしても、昼間は暖かかったのに、今は少し寒いかな?……手袋でも持ってきておけばよかったかも」

 

折紙は手を擦りながら、苦笑する。

 

「そうだな。あそこの自販機で何か――」

『――こら、そこは女の子が、手が冷たいって言ってるのよ?』

 

士道が言おうとすると琴里が注意する。

士道は逡巡すると、折紙の手に自分の手を重ねた。今ある選択肢の中で最善の選択を。

 

「え?」

 

折紙は士道の行動に驚き、目を丸くする。

が、頬を赤らめ少し顔を俯かせた。

 

『いい感じじゃない。好感度も悪くないしあともう少しみたいだから、このまま行きましょう』

『あとは彼女の中にある不安を解消すれば平気だと思うよ』

 

琴里は好感度などを見て士道にそう伝えると、令音がそう補足をする。

 

『まぁ、さっきまでのことがあればそうなるわね。士道、彼女の不安を解消させなさい』

「そうなのか……ってことは俺の気持ちを伝えるわけか……」

 

士道は頭の中でまとめる。

二人の間に少しの間が空くが、士道は口を開く。

 

「なぁ、折紙」

「それにしても、夕日がきれいだね」

 

二人の声が被る。どうやら、折紙は沈黙に耐えきらず何か会話をしようとしていたみたいで、柵に身を乗り出すような形になっていた。すると、折紙は士道も同時に声を出したことに驚いたような顔をする。

 

「……っ?」

 

そして、折紙が体重を乗せていた部分が、老朽化していたのか崩落し、そのまま折紙も公園の外縁部から放り出されるように落下する。

 

「きゃあっ!?」

「うわっ!」

 

折紙が甲高い悲鳴を上げる。

士道も驚き、折紙の手を握っていたこともあって外縁部に引っ張られる。どうにか力を入れて、踏みとどまると折紙を引き上げる。

その際に右腕に痛みが走るが無視して、折紙の身体ごと後ろに倒れる。

折紙は仰向けの士道に乗っかるように倒れ込む。

 

「ふぅ、大丈夫か?折紙」

「うん。ありがとう、五河君」

 

士道の言葉に声を震わせながら折紙は返すと、士道から離れるように立ち上がる。

士道も立ち上がると、折紙はある一点を見ていた。

折紙の見ているのは士道の右腕で、士道もつられて見る。

士道の右腕には、壊れた柵で引っ掻いたのか、切り傷ができていた。

そして、その傷をなめるように霊力の炎が揺らめく。

 

『士道!逃げなさい!』

 

その瞬間、インカムからサイレンと琴里の声が響く。

そして、折紙の周囲に真っ黒い蜘蛛の巣のようなものが広がり、折紙を覆う。

 

「――精霊……」

 

折紙はそう呟くと、喪服のような漆黒の霊装を纏う。

折紙の目は虚ろで、表情から考えが読み取れない。まるで、さっきまでの折紙から別人に、なったように瞳からも、声からも感情が消える。

 

『霊力値、カテゴリーE!反転しました!』

「くっ、やっぱりこうなったか……」

 

インカムからはそんな声が響き、士道はそれを聞きながら、静かに折紙を見ていた。

士道は折紙に向かって地面を蹴り、折紙のそばに来ると霊力の壁に阻まれる。

 

『何しているのよ、士道。早く逃げなさい!』

「でも……今止めないと!」

 

琴里がそう言うが士道も引くわけにはいかなかった。

折紙が精霊化したのは、士道の治癒の炎を見た為であり、折紙があの『羽』を顕現させていない今しか、近づくチャンスは無い。

士道はどうにか折紙に近づこうと駆け出そうとする。

 

『士道、生身で霊力障壁に突っ込む気?こっちで援護するから少し待ちなさい!』

「え?」

 

直後、折紙にの周りに浮遊する何かが目に留まる。

士道が琴里の言葉に目を見開くと、折紙の周囲に<世界樹の葉(ユグド・フォリウム)>が現れる。

 

『<世界樹の葉(ユグド・フォリウム)>、展開!これは<フラクシナス>の汎用独立ユニットよ』

 

琴里がそう言うと、折紙の身体を拘束する。

そして、<フラクシナス>が姿を現し、主砲のあたりに光が溜まっていく。

 

「琴里、まさか!」

『威力を調整して、霊力障壁を破るわ。その隙に接近して!』

「あぁ、わかった」

『本当はこんなことしたくないけど緊急事態だから。外すんじゃないわよ、神無月!』

『お任せを』

『<ミストルティン>、撃――』

「琴里ッ!逃げろぉぉぉっ!」

 

琴里が<ミストルティン>を放とうとすると、士道は叫んだ。

それは、<フラクシナス>の周囲に魔王の漆黒の『羽』が現れていたから。

そして、<フラクシナス>に向けて黒い光線が放たれる。

<フラクシナス>はその光線に被弾し、

 

『きゃぁっ!』

「琴里!琴里……ッ!」

 

琴里の悲鳴がインカムに響く。

士道が叫ぶが返事は無く、<フラクシナス>は煙をあげながら、徐々に高度を下げる。

その際<世界樹の葉>も明滅し、折紙の拘束が解けてしまう。

自由になった折紙は全方向に『羽』を展開させると、<フラクシナス>と士道に狙いを定める。

今まで見た黒い光線は速く、今から避けようとしても間に合うかわからなかった。

士道は来る衝撃に覚悟して、身を硬くした。

『羽』から黒い光線が放たれる、その瞬間、

 

『座標、合いました!行きます!』

 

士道のインカム、<フラクシナス>の艦内から、鞠亜の声が響いた。

そして、士道に光線を放とうとした『羽』に攻撃が加えられると向きを強引に変えられ、明後日の方向に光線が飛ぶ。

 

「ふぅ、ギリギリ間に合ったねぇ」

『はい!座標も完璧だったようでいやがりますね』

「大丈夫?士道?」

 

『羽』のそばには今さっき<死之果樹園>で攻撃をした千花がおり、士道のそばで七罪が心配そうに呟く。

二人とも限定霊装を纏っていた。

空には<フラクシナス>に放たれた光線を随意領域で

護り、次の攻撃からも護るように随意領域を張った真那が飛んでいた。


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