デート・ア・ライブ パラレルIF   作:猫犬

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今回は、原作の折紙とのデートに千花がいると考えてもらえれば・・・


3話 おでかけ

五月十四日、土曜日。

士道と千花は天宮駅に向かって歩いていた。

空は快晴で、絶好のお出かけ日和だった。

 

『――にしても、早くない?約束の時間は十一時半でしょ?』

 

右耳に付けているインカムからは琴里の声が聞こえてくる。

今、<フラクシナス>は天宮市の上空を航行しており、非常時にはすぐに回収できるようにもしている。

ちなみに、今の時刻は十時五十分。

 

「と言っても、折紙はきっちりしているタイプだから、待ち合わせよりも早くに来ると思うからな」

『随分詳しいのね。ただのクラスメートのはずなのに』

「ふわぁ、もう少し寝てたかったなぁ」

 

隣の千花は口を手で覆って欠伸をする。

琴里たちに話した内容とはいえ、さすがに精霊攻略の練習に告白させられたり、やたらと積極的にアプローチされたりしていた事は伝えず、ただのクラスメイトということにしてある。そのため、折紙の性格を熟知しているかのような発言に疑っているような反応があるのも仕方なし。

あくびをしている千花の今日の服装は、水色のT‐シャツの上に紺のパーカー、黒のロングスカートといった格好だった。

 

「いや、もっと早くに寝れば良かっただろ?なんで、前日に機械づくりするんだよ?」

「いやいや、早急に必要になる可能性もあったからぁ。今は設計図渡してあるから、真那ちゃんと七罪ちゃんの二人でやってくれてるけどねぇ」

 

千花はそう言って、また小さく伸びをする。

千花が作っている途中の機械は真那と七罪が今、代わりに作っているらしい。なんでそんなことになっているか、何を作っているのかは士道には聞かされていない。

すると、待ち合わせの場所に着いたわけだが、折紙はまだいなかった。

 

「早すぎたか?」

「そうだねぇ。というか、二人でいたら、はたから見てカップルに見えてるのかなぁ?」

「そうだな、そう見えてるかもな。……そう考えると、なんだか恥ずかしいんだが」

「じゃぁ、折紙ちゃん来たら、修羅場だねぇ。はたから見たら可愛い子二人と一緒になるからぁ」

『そうなるわね。これは修羅場になるわね。今からでも七罪も送って、さらにグチャグチャにする?』

 

琴里も暇なのか、茶化してくる。

 

「勘弁してくれ。三人もいたら周りの視線で俺が死ぬ」

『はいはい、噂をすれば、彼女が来たわよ。とりあえず、今日は仲を深めるぐらいでいいわ。友達とのお出かけだしね』

「おう。とりあえず、そうしておく」

「ある意味、ダブルデート?」

 

すると、駅から折紙が出てくる。

千花が何かつぶやいたが、小さくて士道の耳には届かなかった。

折紙は士道たちに気付くと走ってきて、士道たちの前で止まる。

折紙の服装は、白のブラウスに水色のカーディガン、真っ白なスカートという、今までの折紙ならしなさそうな格好だった。

 

「おはよう、木野さん、五河君。早いですね」

「おはよう、鳶一さん。それはお互い様じゃないか?」

「おはよぉ。私たちも今さっき着いたばかりだよぉ」

 

折紙は広場にある時計を一瞬見ると、恥ずかしそうに肩をすぼませる。

 

「いや、待たせるのも悪いと思って……」

「まぁ、こっちもそう思って早めに出たんだけどな」

「そうだったんだ。今日は誘ってくれてありがとうございます。あまり友達と遊びに行くこともなかったから、至らぬ点があると思いますけど」

「いや、俺もそんなに経験ないから」

 

折紙の言葉に首を振ると、インカムから琴里の声が響く。

 

『この世界で二人、一周目でも何人か落としておいてよく言うわね』

「……とりあえず、俺たちクラスメートなんだから、敬語やめないか?」

 

琴里が何か言っていたが無視して、話を進める。

 

「でも……」

「せっかくだしねぇ。楽しむならそんなに固くなっちゃだめだよぉ」

 

士道の提案に折紙が困った風になるが、千花の言葉で決心をしたようだった。

 

「わかりまし……分かった」

「はは。やっぱり、折紙はそうじゃないとな」

「へっ?」

 

慣れない感じで折紙がそう言ったことで、士道の言葉に折紙は首を傾げる。

そこで、士道がいつもの調子で折紙の名前を呼んでしまったことに気付いた。

 

「あ……ごめん。綺麗な名前だから、つい呼んじゃった」

 

士道は誤魔化すように言う。やはり、前の世界での折紙呼びが定着していたからだろう。

折紙はどこか落ち着かない感じだが、悪い気がしていなかったのか、口元をほころばせた。

 

「ありがとう。お父さんとお母さんが、二人でつけてくれた名前なの」

「そっか……」

「うん。だから、五河君がもしそう呼びたいなら、そう呼んでくれても……いいよ?」

「え?」

「その……折紙って」

 

頬を微かに染めながら折紙がそう言う。その、仕草に士道はどきっとした。

 

『士道、黙ってないで何か言いなさい。せっかく相手が歩み寄ってくれているのよ?』

「あ……」

 

士道は慌てて言葉をつなげる。

 

「あ、ありがとう……折紙」

 

いざ正式に許可が出されて呼ぶと、なんだか少し恥ずかしかった

 

「うん」

「あ、俺のことも士道でいいよ。じゃないと、不公平だしな」

「え?」

 

士道がそう言うと、折紙は驚き、もじもじしながら声を発する。

 

「士ど――、……」

 

しかし、落ち着かない様子で頬を掻いて止めてしまった。

 

「慣れてからでいいよ」

「うん、そうするね」

 

すると、二人の間に沈黙が訪れる。

直後、士道のインカムからアラームが鳴り響く。

 

『ちょっ、どうなっているの!?今の折紙は好感度が上下しているけど鳴るほどじゃないわよ』

『司令、これは千花ちゃんの方です。彼女を放置して二人で話していたせいかと……』

『しまった。千花は比較的、常に安定しているから平気だと思ったけど、士道のことを好いてるんだから、放置されたらこうなるか……。士道なんとかしなさい』

「え?すまん、もう無理だ……」

 

士道は他の人に聞こえない声の大きさでそう言いながら、千花を見る。

そこには、満面な笑みの千花がいた。

 

「ふふふぅ。もう士道君と折紙ちゃん二人で遊びに行った方がよさそうだねぇ。じゃぁねぇ」

 

そう言って、家の方に向かって歩き出してしまう。

 

「待ってくれ、千花!」

「え?待って、木野さん」

 

二人は帰ろうとする千花を止める。

千花は振り返ると、

 

「ん?別にいいでしょぉ?私がいなくても、楽しそうだしぃ」

「私、男の人と遊びに行くのは初めてで、木野さんが一緒じゃないと心配なんだけど」

「そうだぞ、千花。今日は三人で遊ぶんだろ?」

「ん?いいのぉ?でもねぇ、目の前でイチャイチャされるとねぇ。まぁ、今日の費用を士道君持ちなら考えてあげるけどぉ……」

 

千花は暗い顔をし、妥協しながらそう言う。

 

「あぁ、分かったよ。だから、一緒に行こう」

 

士道は頭を掻くと、そう言う。

 

「よしぃ!今日の費用、士道君持ちだぁ!」

 

その言葉を待っていたとばかりに、表情が明るくなる千花。そして、警報もなりやむ。まるで、自身で好感度をコントロールしたかのように。

 

「ちょっ、はめたな」

「いやいや、イチャイチャしてたのは本当でしょぉ?」

『まさか、<フラクシナス>の警報を逆手に取るとはね』

 

琴里が感心しながらそう呟くと、折紙が疑問を持った顔をする。

 

「……あの……五河君と木野さんって付き合ってるの?」

 

そして、その疑問を口にした。

 

「いや、付き合ってはいないけど……家が近所だからな」

「うん、家が近所でよく会ってるだけだよぉ」

「そっか、良かった。もし、そうだったら私お邪魔かなと思って」

 

二人でその疑問を解消させると、折紙は安堵していた。

 

「とりあえずどこかの店に行かないか?いつまでも、ここにいるのもなんだし」

「うん、そうだね」

「じゃぁ、行こぉ」

 

三人はそう言って、駅前のデパートに入ったのだった。

 

 

 

~☆~

 

 

 

「折紙ちゃん、これはどうかなぁ」

「確かにいいけど、私はこっちの方が好きかな?」

「えー、こっちの方がいいよぉ。士道君はどう思う?」

「ん?それより、俺はここを出たいんだが……。外で待ってていいか?」

 

士道たちは今、デパートを見て回り、一軒の雑貨店の中にいた。

千花と折紙はアクセサリー類の所でどれがいいかを話しており、士道は肩身を狭くしていた。

店の中にいる人は女性で、男性は一人もいない。

正直士道は浮いていた。

 

「もう。そんなこと言ってないでちゃんと見てよぉ」

「そうだよ」

 

千花は外に出ようとした士道の腕を掴む。

 

「いや、だってな。周りの視線が……」

「気のせいだよぉ、周りの人はそんなにこっち見てないよぉ」

「……あぁ、分かったよ」

 

士道が諦めると、千花は折紙とアクセサリーを見るのに戻った。

そのあと数件店に行くと、上の階にあるレストランに行き、昼食になった。

 

「ごめんね、私たちの趣味の店ばっかり行っちゃって。楽しめてた?」

「あぁ、俺は見てても楽しかったけど……」

「そっかぁ、ならよかった。じゃぁ、この後、士道君の行きたい店に行こぉ」

 

千花がそう言うと、注文していた料理が運ばれて来る。

 

「ここのオムライスがおいしいんだってさぁ」

「じゃぁ、冷めないうちに食べよ?」

「そうだな」

 

そう言って、オムライスを食べ始めた。

それから、時間が経ち、士道のオムライスが残り少しになった頃、千花の携帯が鳴った。

 

「ん?誰だろぉ?ちょっと出てくるねぇ」

 

千花が携帯を持って席を立ち、席を外す。

一分ほど経ち、千花が戻ってくると、

 

「ちょっと、用事が出来ちゃったから私家に戻らないといけなくなっちゃたぁ」

 

千花はそう言い、椅子に置いていた鞄を手に取る。

 

「そうなの?」

「そっか」

「と言う訳で、士道君後は任せたぁ。あ、残りは食べといてぇ。じゃぁねぇ、二人とも」

「じゃぁな」

「さようなら、また学校で」

 

残念ではあるが、用事では仕方ないと二人は千花を見送り、そう言いながら千花は料理の代金を置くと店を出る。

 

「ところでどうする?この後、二人で行くか?」

「うん……五河君がいいなら」

「じゃぁ、次はどこ行くかな?」

 

その後、士道はオムライスを食べ終えると、インカムから琴里の声が響く。

 

『士道、予定を変更するわ。少し席をはずしてくれる?』

「ちょっとすまん。すぐ戻る」

「あ、うん」

 

士道はそう言って席を離れた。

士道が見えなくなると、折紙は小さくため息をついた。

 

「ふぅ、なんで私了承しちゃったんだろ?今更ながら恥ずかしくなってきちゃった。でも、せっかくの厚意だから断ったら失礼だよね?」

 

折紙は、自分に活を入れるように軽く頬を張った。

そして、水を飲んで気分を落ち着かせようとした。

 

「あ――」

 

しかし、折紙の水はもう無くなっており、折紙の目が別のあるものを捉えた。

 

「い、五河君の……飲んでいた水」

 

折紙が目にしたのは、士道の飲んでいた水の入ったコップだった。

折紙はすさまじい勢いで心臓が高鳴っていく感じがした。どうして心臓が高鳴るのかわからないが、高鳴りは収まらない。

 

「そんなに欲しい訳じゃないけど……でも、少しは水を飲みたいし……」

 

そう言って、折紙の右手が士道のコップに近づく。

 

「いやいや、別にそんなに飲みたいわけじゃ……」

 

しかし、自分の左手で右手を抑える。

しかし、右手は制止を振り切ろうとする。

 

「くっ……鎮まって私の右手……」

 

などと言ってみるが、効果は無かった。

次第に頭の中がごちゃごちゃしてきた。何が正しいのか、何が間違いなのか。そもそも、喉か渇いたから水を飲みたいだけ。なんら問題なんてないはず。

そして、折紙の朦朧とする意識の中、左手の力が抜け、右手がコップを掴んだ。

そして、もう少しでコップに口が付きそうになった時、

 

「おう、待たせたな、折紙……?」

 

士道が戻って来て、言葉を止めた。士道が飲んでいた水のコップを手に持つ折紙が何しているのかわからず。

 

「あの……折紙、さん?」

 

言うと、折紙がハッと肩を揺らした。

折紙は途端に焦りだす。

 

「違うの!これは……違うの」

 

焦りながらも弁解をする折紙。

 

「これは、五河君のコップに虫が付きそうで、コップを避難させていたところなの!」

「そ、そうなのか」

 

そう言って、折紙は慌ててコップを戻す。

すると、勢いが付いていたせいか、コップが倒れ士道の着ていたシャツに水が付く。

 

「おっと……」

「ご、ごめんなさい、私慌てちゃって」

「大丈夫だって。すぐ乾くさ」

 

折紙をなだめるように言うと、士道はシャツの裾を掴み、ハンカチで数度叩く。

その際に、ちらりと士道のへそが覗く。

 

「――!」

 

折紙がポケットから携帯を引き抜くと、流れるような動作で、士道のへそに向かってシャッターを切る。

へそを見てからこの間一秒。

 

「え?」

「はっ!」

 

士道が驚いて声を漏らすと、何故か折紙も驚く。

まるで自分の意思ではないかのように。

 

「身体が勝手に……!」

 

折紙は涙目で訴えかける。

その間も、シャッター音が響く。

 

「――なんで?なんでぇぇぇぇっ!?」

 

折紙の声とシャッター音がレストランに響いたのだった。




次回は、千花がどっか行ったことで、士道と折紙のデートになります。
といっても、原作と似た感じですけど


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