前の話『ラタトスクの真実?』を読んでいない方はまず、そちらからなのでお願いします。
初めて私がこの世界に現れた時、周囲は粉々になっており、私は人間に襲われた。私は訳が分からずただ逃げた。
なんでこんなことになったのか分からなかったし、それ以前の記憶もなかった。
それからは自分がなんなのか、この世界のことを調べるために情報を得ようとした。
しかし、適当な人間に話しかけても相手にされなかった。
だから<贋造魔女>を使って、大人の女性になり、別の場所で同じ人間に話しかけてみた。
そしたら、簡単に話してくれた。
空間震などは海外の研究室にこもっていて知らないということにしたら、丁寧に教えてくれた。
しかし、私は人間に怒りを覚えた。
姿が違うだけでここまで態度が変わったことに。
その人間と別れて、他の人間にも話しかけると、同じように丁寧に教えてくれた。
この時分かった。
人間は最低だということに。
その後も社会に溶け込み、生活を送っていった。人間には極力話しかけず、本やテレビなどから情報を得ていった。
それから何度目かの空間震を起こしてこの世界に現れると、そこには三人の少年少女がいた。
最初に士道君と真那を見た時、何処かであったことがあるような気がした。しかし、思い出すことが出来なかった。だから、気のせいと思いながらその場を逃げた。
その後は士道君と出かけたり、危なくなったところを助けられたりした。
私を可愛くしてくれた時には驚いたが、それと同時にうれしかった。
でも、何か裏があると思うと怖くなり、その日の夜に脱出してしまった。その後すぐばれると思ったが、追手はこなかった。
とりあえず、士道君たちの目的が気になったので、すぐに調べた。
<ラタトスク>という機関にいること、精霊の霊力を封印できることなどのことが分かった時は驚いた。
特に精霊の霊力を封印できる人間がいるのには驚いた。
それと同時に、士道君が私に接触してきたことにも納得がいった。
士道君の狙いは、ただ私の霊力を封印したかっただけ。
ただ、それだけ。
私は私の心にそう言い聞かせた。
でも、士道君と遊んでいた時には霊力の封印なんてことを考えているようには見えなかった。もしかしたら、士道君がポーカーフェイスを得意としているかもとも思ったが、表情がころころ変わっていたからそんなことは無いようだった。それに、あの時は士道君と一緒に居て、私自身楽しかったし、褒めてくれてうれしかった。
千花さんや真那に関しても、裏が無いようで、思ったことをそのまま言っているようだった。
そして、私を一人の女の子として扱ってくれ、この本来の私の姿も肯定してくれた。
でも、人間はひどい生き物だと言うことも私は知っていた。
だから、私は今本来の姿に戻って、<贋造魔女>に乗って士道君たちのもとに戻っていた。
おそらく士道君たちももう逃げたことだろう。
私が逃げ切るまで相手をすると言っていたが、どうせ見えなくなったらすぐに逃げたと思った。
なんだかんだ言っても、人間は皆、結局自分が大切なんだから。だから、私は誰もいなくなった場所を見ることで、この気持ちは偽りのものだと確信したかった。
優しい人間がいるという希望は持ちたくなかった。いつか裏切られた時、悲しい思いをするのは私だけだから……。
そんなことを考えていたら、近くで大きな音が聞こえ、士道君たちと別れた場所に着いた。
そこに広がる光景は、別れた時とは全く違っていた。
何も無かった場所には、無数の先端がとがった木や植物、木の人形があり、その近くには少女がいた。
木野千花。私と同じ精霊で、士道君に霊力を封印されたらしいが、これは彼女がやったのだろう。
そして、先ほどの音は士道君の腕にある砲のような武器から出たもので、白虎とかいうやつを攻撃したのだろう。
だが、それ以上に逃げることなく戦い続けていたことに私は驚いた。
二人とも、私が行った方を時々見ていたことからも、どうやら、私のことを気にしてくれているらしい。
「なん……で?」
だから、私は涙を流していた。
うれしかった。こんな私でも気にしてくれるなんて。
きっと、あの二人なら私と一緒に居てくれるかもと思った。
しかし、そんな時間も長くは続かなかった。
士道君の攻撃を耐えた白虎は、士道君に向けてたくさんのミサイルを放ったからだ。
士道君は疲労しているからなのか、その場から動けそうにない。
彼女も距離が離れている為助けられないだろう。
そう。今士道君を助けられるのは、私だけだった。
だから、私は自然と身体が動いていた。
士道君を助けるために。
涙を拭うと、士道君の元に飛び出し、<贋造魔女>をミサイルに向けて、ミサイルをぬいぐるみに変化させる。
士道君はぬいぐるみに当たるが、柔らかいので怪我などは負わない。
そして、士道君は私の方を見ていた。
だから、私は皮肉たっぷりに士道君に言ってやった。
「なに?もっと早くに来いって思ってた?」
~☆~
士道の視界にたくさんのミサイルが広がっていた。
琴里の炎で耐えきれるか気になったが、琴里の炎に賭けるしかなかった。
士道はこれから来る衝撃に備えた。
そして、視界の中に一人の少女が飛び込んできた。
飛び込んできた少女は、魔女のような霊装を纏った七罪だった。
七罪は<贋造魔女>をミサイルに向けて、ミサイルをぬいぐるみに変化させる。
飛んできたぬいぐるみが士道に当たるが、柔らかいので怪我などは負わず、痛くなかった。
そして、七罪は士道の方を見て言った。
「なに?もっと早くに来いって思ってた?」
なんで、七罪がそんなことを言ったのか士道には分からなかったが、とりあえず聞く。
「なんで、七罪がここに?逃げたんじゃ?いや、助かったけど……」
「……まぁ、そんなことはいいわ。……早くしなさいよ。あれ壊すんでしょ?」
七罪は皮肉を言ってことを、今更恥ずかしくなったのか、帽子のつばで顔を隠しながら言った。
士道は七罪が手伝ってくれるのがうれしかった。
しかし、問題が一つ。
「あれを壊すには火力が足りないんだ。随意領域でガードされて威力が減衰してしまうんだ」
「ふーん。なら火力を上げればいいのね?」
「そうだねぇ。じゃぁ、私はあれの動きを抑えておくねぇ」
七罪の提案に、いつの間にかそばに来ていた千花が言った。
白虎の攻撃が来ないと思ったら、【木人形】をさらに生成して、白虎の相手をさせていた。
「わかった!」
「じゃぁ、いくよぉ。<
「うん。<
千花は<死之果樹園>を地面に刺し、七罪は<贋造魔女>を変化させる。
<贋造魔女>は磨き上げられた鏡面のような不思議な色に覆われていき、粘土のようにそのシルエットを変貌させていった。
そして、数瞬のあと、七罪の右手に装備された。
「それは……!?」
士道は目を丸くした。
七罪に装備されたものは、銃形態の<灼爛殲鬼>だった。
「さっさか、やるわよ」
「……あぁ、そうだな」
士道と七罪は<灼爛殲鬼>のチャージを始め、千花の【剣木】と【速樹】が再び白虎を襲うが、白虎は横に一気に飛んで回避する。
その際、白虎が砲撃のチャージをしており、着地と同時に放った。
「いっけぇー」
「士道君に悪戯していいのは、私たちだけよぉー」
士道と七罪は一気に放って向かい撃つ。
最初は拮抗していたが、二つの<灼爛殲鬼>の火焔は白虎の砲撃を押し返し、そのまま白虎を焼いた。
白虎は完全には消滅しなかったが、戦闘はできないぐらいにボロボロになっていた。
「ふぅ、やったか」
「そうね」
士道たちは白虎を倒し、感傷に浸っていた。
そんな中、使えそうな部品が無いかいじっていた千花が慌てて二人のもとに走って来る。
「二人とも退避ぃ」
なんのことだろう?と思っていたら、白虎の装甲が膨張していた。
「まさか……」
千花が士道たちのもとに着くと、白虎が大爆発した。
そこで士道たちは爆発に巻き込まれた。
と思ったら、何故か宙に浮いていた。
「ふぅ、なんとか間に合いましたか。三人とも無事でよかったです」
士道たちのそばには、真那が飛んでいてそう言った。どうやら、随意領域で上空に飛ばして助けてくれたらしかった。
「真那、助かったよ」
「はい!兄様。皆さんもご無事で何よりです」
そう言いながら、地面に降ろされたのだった。
~☆~
「で、裏切られたことを確認したかったから、ここに来たと……」
白虎を倒した士道たちは、近くの地面に座って話していた。
「うん。……そうよね、そんな心がねじ曲がった私なんて、気持ち悪いよね……」
だんだん、暗くなっていく七罪の表情。
士道は、ふぅと息を吐くと言った。
「別にそうは思わないぞ。それに、七罪は俺たちを助けてくれた。だから、ありがとうだ」
「え……?」
士道がそう言うと、七罪は表情が元に戻り、目を丸くしていた。
「なに……言ってるのよ?元はと言えば、私がここに、連れてきたせいで……」
七罪はたどたどしく言いながら、身体を小さく震わせる。
「だから、そんなに、傷を負って……」
だんだん嗚咽も交じり始める。
「それなのに、ありがとうって。なんで、そんなことが、言えるのよ。私のせいって、文句を、言いなさいよー」
七罪は途中から泣いていた。
「うわぁぁぁん」
「お、おい。七罪……」
まさか、泣き出すとは思わず、士道はたじろぐ。そんな泣いている七罪に千花は抱きついて、七罪の頭を撫で始める。
「よしよし。七罪ちゃん泣き止んでぇ」
「う、ううう」
だんだん、泣き止んでいく七罪。
涙が止まると、千花は七罪を放し、七罪は涙を拭って言った。
「本当に、ごめんなさい。私のこと可愛いって言ってくれてうれしかった。あの時のお出かけ楽しかったよ。それに私のこと護ってくれてうれしかった。だから……」
七罪は一度、言葉を止め、一拍おいて、
「……ありが……とう」
顔を赤らめて、たどたどしくそう言った。
「あぁ、でも、七罪に俺たちも助けられた」
「うん、そうだよぉ」
「はい、七罪さんがいなかったら、私も間に合えませんでした」
「でも、私が引き起こしたことだから」
「そっか」
士道はそう言いながら、七罪に右手を差し出す。
「その、あれだ。七罪は俺たちのことを好きではないと思うがさ、もしよかったら……」
一拍おいて、七罪の目を見て言った。
「俺たち、友達に……なれないかな?」
「……ッ?」
七罪は驚きながら、恐る恐る、士道の手を取り聞いた。
「本当に、友達になってくれるの?」
「あぁ、俺は七罪と友達になりたい」
七罪の目を見て、はっきりと言った。
すると、七罪の目から再び涙が出る。
士道は突然のことにまた驚く。
「うわぁ、士道君。また七罪ちゃん泣かせたぁ」
「兄様はもっと女の子のことを理解するべきですね」
二人はそう言いながら、七罪に近づき、
「では、七罪さん、私とも友達になってください。私、同い年の友達ほとんどいないんで……」
「私もぉ、七罪ちゃんと友達になるぅ」
二人は笑顔で七罪にそう言った。
「うん!」
そして、七罪も笑顔で応じた。
すると、七罪が何かを思い出したかのように、ハッとする。
「そうだ、千花さん。言わなかったもう一つの理由って何?」
七罪の質問が一瞬分からなかったが、そう言えば琴里に化けている七罪を気づいていて言わなかった理由がもう一つあるのだった。
「それは、私は精霊の味方だからだよぉ。というか、琴里ちゃんのまねをする七罪ちゃんがかわいかったからぁ?あと、千花でいいよぉ」
あ、納得。千花ならそんな理由でやるか。と士道と真那は思った。
「なるほど?そうだ、士道君にも聞きたいことがあったんだった」
七罪は納得したのか分からない状態で、士道に質問した。
「ん?なんだ?」
「私……本当に、可愛い?」
士道がそう返すと、七罪は改めて、首を少し傾けながら聞いた。
「あぁ、可愛いよ」
「そう……」
七罪は士道の言葉を聞くと、そう言って手を離し、士道に飛びついた。
士道は疲労がたまっていたこともあったこと、突然だったことで受け止めきれずに地面に倒された。
士道は驚いたが、声を出すことが出来なかった。
飛びついた七罪は士道の唇に自分の唇を重ねて塞いでいたから。
七罪が士道から唇を離すと、士道に乗っかった状態で聞いた。
「ふふ、驚いた?でも、一度したことあるからいいでしょ?士道。それとも、私とキスをするのは嫌?」
七罪は最初笑いながらそう言い、途中から暗くなっていった。
「嫌ではないぞ。うん」
「七罪ちゃん大胆だねぇ」
「もしかして、私たち今後もこれを見ることになるのでしょうか?」
士道が七罪に弁明しているよそで、千花と真那はそんなことを言う。
すると、七罪の霊力が封印されたことで、七罪の魔女のような霊装が消えていき、その装いが今日会った時の服装になる。
真那もCRユニットから普通の私服に戻っていて、呆れながら言った。
「とりあえず、七罪さんは兄様から離れませんか?いつまでも乗っているのもあれなんで……」
「あ、そっか。いつまでも乗っていたら、士道に悪いからね」
七罪が今更気づいたのか、士道の上から立ち上がり、士道もそれに合わせて体を起こす。
「ところで、七罪。さっきのって何のことだ?一度キスしたことがあるって?あと、なんで急に呼び捨てになったんだ?」
「だって、私、いつも士道のことそう呼んでいたし……まぁ、正確には前の世界だけど……いいでしょ?」
七罪はそう言って今更ながら恥ずかしくなったのか、顔を逸らす。
どうやら、霊力のパスをつないだことで、一周目の記憶が共有され、思い出したらしい。
「そうか。あぁ、いいよ。とりあえず、帰るか」
「だねぇ」
「そうですね」
「うん」
そう言って、四人は戦場と化した空間を跡にして帰ったのだった。
これで、第二章は終わりです。
結局、気づいたら原作に似たり寄ったりしている部分が。
なんでだろう?という感じで四章執筆中(もうすぐ書き終わるはず)な今です。
やっぱり、ある程度はプロットを書いた方がいいのでしょうか?という自問自答な日々。
一ヶ月で一章ペースか~。
ここからは、報告です。
一応、次回は日常回を挟んで第三章を予定しています。
ちなみに、次の精霊は途中から精霊になったあの人です。
では、ノシ