ってことで、完結と連載を繰り返しているパラレルIF。
第三幕(たぶんこれで本当に最終章?)『アフターIF』開始です!
時系列は第二幕が終わった後かつ『終わった世界と続く世界』の世界線です。
【1話】気付いた時には始まっていた話
「士道君、遂に完成したよぉ」
「ごめん、なんの話だ?」
来禅高校に入学してから一年と八か月が経った十二月二十四日。
精霊荘でクリスマスパーティーの準備をしているところだった士道は地下で何か作業していた千花がやって来るなりそう言ったことで、意味が分からず首を傾げた。
「この一月かけてのんびりと作っていた機械がやっと完成したんだよぉ」
「ふーん。で、何を作ったんだ?」
「トナカイとそりに乗る赤服のおじさんを捕縛する機械だよぉ」
「……」
「冗談だよぉ。本当は天然雪みたいなふわふわな雪を作る機械だよぉ。ホワイトクリスマスにしたかったからねぇ」
千花の反応に困る発言に困惑すると、千花は苦笑いを浮かべて今まで作っていた物を口にした。一個目の方は本当に作ったのか分からないが、千花ならやりかねなさそうではあった。
「ちなみにきれいな水を使えば、雪を食べても問題ないねぇ」
「天然の雪を人工で作るって……」
千花は呑気な調子で言うが、人工で作った雪だと水分量が多くてべちゃるのにそれをふわふわな物にした時点でそうとうなものだった。といっても、千花はそれを誇る気が無く、平然としているのだが。
「と言う訳で、外で雪蒔いて来るねぇ」
「パーティーの料理作りを手伝えー」
「買い物に行った凜祢ちゃんたちが帰ってきたらねぇ」
千花はそう言って、士道の叫びを他所に雪を作る機械を外に運び出すために地下に行ってしまい、結果として士道は一人で料理を作ることになってしまった。
「はぁ、千花は相変わらず自由だな。まっ、今に始まったことじゃないし、色々なことがあったからな」
千花が何か作って、気ままに何かするのはいつものことなので、千花の手伝いが来ることを諦め、士道は調理を再開する。と言っても、下ごしらえとかだけだが。
そうして終わらせると、家で洗濯物を干しているからそれを取り込もうとキッチンを離れる。その途中で、共有スペースで飾りつけの作業をしている中学生’s+凜緒のもとに行く。
共有スペースはすでに半分以上が飾り付けられており、一時間もあれば終わりそうな量になっていた。
「だいぶ進んだんだな」
「あっ、うん。士道さんの方は?」
「まぁ、ぼちぼちな。買い出しに行ってる凜祢たちが戻ってこないことにはこれ以上は進まないけど」
「なるほどなのじゃ。だったら手伝って欲しいのじゃ」
「悪いな。家に戻って洗濯物を取り込まないとだから、その後でなら平気だな」
「じゃっ、早く終わらしてねー」
「じゃぁ、それでお願いします」
「りお、がんばるねー」
紙を切っては輪を作っていた七罪と六喰と琴里は手を動かしながらそう言い、四糸乃と凜緒は手を止めて顔を上げるとそう言った。その近くでは四糸乃のペットのウサギの“よしのん”が飾りを咥えてピョンピョン跳んでいた。
中学生の五人は同じクラスで、こんな感じで一緒に居ることが多い。だから、士道と顔を会わせることもけっこうあった。
すると、椅子に乗って完成した飾りをどんどん付けていた真那が士道に声をかける。
「兄様。家に戻るんならリビングの机の上に置いてある箱を持ってきてくれると……」
「ん、了解。ちなみに箱には何が?」
「二亜さんが持ち込んだよくわかんねーもんですけど、今日使うとからしーんで」
「あの人が持ち込んだものって……」
「二亜おねーさんだと何があるの?」
箱を持ち込んだのが二亜と聞き、士道は嫌な予感がして苦い顔をすると、椅子に乗って飾りつけをしていた琴里が首を傾げた。ちなみに二亜は一回崇宮家に寄って荷物を置くなり担当さんのところに行ってしまいこの場にはいない。悪戯好きな二亜が普通の物を持ち込むとは思えない士道に対して、あまり会わない琴里には士道の困った顔の訳が分からないようだった。
「まぁ、危険物じゃないだろうから、持ってくるよ」
「お願いしまーす」
そう言って士道は共有スペースを後にすると、精霊荘の外に出る。しかし、すぐには敷地外に出ず、裏庭に生っている木にイルミネーションを付けているメンバーの状況も見に行く。
担当しているのは士道と同じクラスの十香、折紙と隣のクラスの耶倶矢、夕弦、狂三なのだが……。
「なんだこれ?」
そこに広がっているモノは想像を超えていた。木のイルミネーション付けはすでに終わったようで完成していたのだが、どうやらイルミネーションが余ったようで、木の下周辺にはいろんなものがあった。
「来たか、士道よ」
「何が起きればこんなことになるんだ?」
「説明。暇でしたので勝負をしていました」
「もちろん私たちも参戦してな」
「今はその製作途中よ」
「何故か、一時間で作品を作ることになりましたわ」
そこに広がっていたのは、木の棒を切ったり曲げたりして作った物にイルミネーションを付けた物だった。そして、どれも途中ではあるがやたらとレベルが高そうだった。
サンタのようなものやトナカイのようなものなどなど。
「外に行ったきりだからクリスマスツリー作りにてこずっているのかと思ったらこんなことしてたのか」
士道は呆れ半分、途中の作品に対する驚きでそう言うと、巻き込まれたっぽい狂三が肩を窄める。そして、こうなった経緯を説明した。
その話を纏めると、あっさりと終わったことで暇になり、木の下が寂しいこととイルミネーションが残っていたからこうなったらしかった。しかし、ただ作るのは面白くないから個々で作って勝負ということになったとのこと。
「そうだ!士道もやっていかぬか?」
「悪いな。家に一回戻んないとだからさ」
「なるほどな。じゃぁ、その後になら」
「いや、やめとくよ。正直今から作って皆のに対抗できるのが作れる気がしないから」
「そう……なら、仕方ないね」
士道は五人が作ったものに対抗できる気がしないから断ると、十香たちはそう言って製作に戻る。
士道はようやく家に戻るとさっさか洗濯物を取り込む。
取り込み終えて、タンスに全部しまうと真那に言われていた二亜の置いていった箱を取りに行く。リビングには言われた通り置いてあり、一抱えほどの大きさと意外と大きかった。
「なにが入ってるんだよ?」
一人呟くと、考えても仕方ないので持ち上げる。見た目と違って中身はぎっしりではないようで、意外と軽くて余計に中身が謎で、中を見ようにも丁寧にガムテープで閉じられている為開ける訳にはいかなさそうだった。
そうして、家を出て精霊荘に戻ろうとドアに鍵を閉めると、ちょうど買い出しに行っていた凜祢たちと遭遇する。
「あっ、士道……って、その箱なに?」
「さぁ?二亜が担当さんのとこに行く前に持ち込んだらしくて真那に頼まれてな」
「あー、何か危険物かもね」
「鞠奈、二亜さんに失礼ですよ。流石に危険物な訳……」
「否定はしないんだ」
凜祢が士道の持っている箱に興味を示したからそう返すと、鞠奈がそんなことを言った。鞠亜が否定しようとしたけど否定しきれず、万由里は呆れる。
「まぁ、大丈夫でしょ?流石に一緒に住んでる七罪ちゃんか四糸乃ちゃんが知っているでしょ」
「だといいんだけど」
「と、いつまでも外で喋ってても寒いし、中行こ?」
外が寒いからと士道たちは早足に精霊荘に行くと中に入る。すると、共有スペースのドアから真那が顔だけ覗かせる。
「おかえりなさーい」
「これでいいんだよな?」
「はい。それですよ」
「で、この中身ってなんなの?」
「ただ単に漫画の資料で買ってきた物よ。サンタ帽だのトナカイの角だの、まぁパーティーグッズになりそうなもの一式を」
共有スペースに行って、箱を降ろすと鞠奈が箱を見ながら聞き、それに対して七罪がそう言った。中身の正体が分かりひとまず安心するが、色々入っているとのことで、危険物が紛れている可能性を士道は拭いきれなかった。そして、それは士道だけでは無く凜祢たちもそんなことを思っていそうな表情をしていた。
「みんな、完成したぞ!」
「はぁ、なんかすごいことになりましたわね」
「夕弦よ。今回は我の勝ちよのう」
「否定。そんなわけありません。勝つのは夕弦です」
「なかなかの出来だった」
外で対決していた五人は無事完成したようで中に戻って来た。耶倶矢と夕弦はあいかわらず張り合っていた
「ん?完成したのか」
「ああ、なんとかな。しかし、満足のいくものができたぞ」
「あっ、ツリーの飾りつけ終わったんだ。じゃぁ、ここから見えるかな?」
十香が胸を張ってそう言うと、共有スペースの外からどたどたと走って来る音が響き、皆音のした方に視線を向けると、千花と澪と二亜と美九が入って来た。
「なんで、クリスマス前日も講義があるんだろ?」
「夏と春休みが長いんだから冬は短いでしょ?高校だって夏と比べたら短かったんだからさ」
「うーん。ニーみたいに大学行かずに仕事すればよかったのかな?」
「いやいや、仕事しててもたぶん今日も仕事あると思いますよ?」
「高校生はもう冬休みだよぉ」
澪の講義があった愚痴を適当にあしらっている三人。
そんな訳で今日のクリスマスパーティーのメンバーがそろったのだった。
~☆~
『『『メリークリスマース!』』』
なんだかんだで部屋の飾り付けと調理が終わり、いい感じの時間になったことでクリスマスパーティーが始まった。
しかし、人数が人数なだけに料理の量は多く、いつも使っているテーブルに置いたらほぼ埋まり、なおかつ椅子が足りなかったため立食状態になってしまった。と言っても、ソファーに座って食べたり、そもそも気にしなかったりと問題は無くみんな食べ始める。
「そう言えば士道の両親は戻ってこれそうなの?」
「いや、忙しくて無理っぽいってさ。毎年のことだから慣れたけど」
料理を食べていると、凜祢は今更ながらそんな疑問を口にする。零音と真哉は仕事の都合上やはり戻ってこられず、しかし士道も真那も澪も仕方のないことだと割り切っていた。忙しいのは今に始まったことではないから。
「そっか。それは残念だね」
「凜祢の方はどうなんだ?」
「ん?私の方?私の方はお正月前後には一回あっちに行く感じかな?お母さんたちに顔見せないとだしね」
「そっか。まぁ、会える時に会っとかないとな」
「うん、そうだね。って、あんまり喋るのに夢中になってたら料理無くなっちゃうよ」
凜祢がハッとしてそう言うと、士道も料理の方を見る。
ちょっと料理から目を離した間に、たくさんあった料理の半分以上が無くなっていた。
そして、その原因はすぐに発覚した。
まず、山盛りにお皿によそってはペロッと食べる十香。十香がよく食べるのはいつものことなので想定内。
次に、大食い勝負を始めた耶倶矢と夕弦。これも想定内?
そして……
「もぐもぐぅ」
静かにではあるがお皿によそった料理が無くなるとすぐによそって食べる千花。普段から普通の量を普通に食べている為、今日はやたらと食べている点に疑問を持つ。
「千花。なんで今日はそんなにいっぱい食べてるんだ?」
「ん?……あぁ、あれ作ってたからお昼食べてなくてねぇ。だからいっぱい食べれるんだよぉ」
「機械作りに熱中するのはいいけど、ちゃんとお昼も食べてくれ」
「うん、そうだねぇ(もぐもぐ)」
そう返答しながら食べ続ける千花。士道は呆れた目で千花を見ると料理をとり、凜祢も苦笑いを浮かべていた。
そして、千花の発言からすっかり忘れていたことを思い出す。
「そう言えば、雪を作る機械って使わないのか?昼間には外で撒いて来るとか言ってたけど」
「あっ、太陽が出てたらすぐ溶けちゃうからできなかったんだよねぇ。でも、もう陽も落ちたし使えるかなぁ?」
千花自身も後でと思っているうちに忘れていたようで、のんびりとそう言うと懐からリモコンを取り出す。
軽いノリでリモコンのボタンをぽちっと押す。次いでリモコンの別のボタンも何故か押す。
「千花、二回目のは何をしたんだ?」
「んとぉ、外のイルミネーションも点けてなかったから点けたんだよぉ。外見よぉ」
「そう言えば、十香ちゃんたちツリーの下に何か作ってたんだっけ?」
千花に促されて窓の方によって外を見ると、ツリーに付いたイルミネーションが点灯しており、その下には十香たちが作った物も一緒に点灯していた。空からは千花が屋根に設置したとおぼしき機械から裏庭にはらはらと雪が舞い散っていた。
雪はイルミネーションの光によって反射して様々な色に輝いていた。
「わー、綺麗……というか、十香ちゃんたちだけで一からあれ作ったのですか~?」
「うむ。なかなかの出来だろ」
「なかなかというか、その手の職にでもついてたの?市販の物レベルだけど」
「いや、私たちはごくごく普通の女子高生よ」
外の光景はとても綺麗であり、そんな中でも十香たちの作ったものが話題となった。
トナカイに、サンタ、雪の結晶、そしてクリスマスツリーの隣に何故か同じサイズのクリスマスツリーのモニュメントが立っていた。
士道はツリーのモニュメントに関してはサイズ的に一人で作るには明らかに時間が足りなさそうだと思った。
「ちなみにあのツリーは私と狂三の共同作品」
「そもそもわたくしたちは巻き込まれただけですので、勝負していませんし」
士道の疑問は二人がそう説明した。勝負していたのはどうやら三人だけのようだった。
その後、三人はこの中でどれが一番すごいかをこの場にいるメンバーに聞き、その結果、戦いには参戦する気が無かった折紙・狂三が作ったツリーとなった。三人は三人の作った物から選ぶべきと反論したが、この中から選べといったと返されたことで無理やり話を打ち切られた。
そうして作った料理もほぼ無くなり、ラストに千花が作ったケーキが運ばれてきた。人数が人数なだけに大きいケーキが来ると思われたのだが……。
「千花!これは……」
「箱が三つ?」
「三種類でしょうか?」
「それか、同じケーキかしら?」
千花が持って来た(キャスターが付いた台に乗せてきた)物は三つの箱であり、中にケーキが入っていそうだが、箱の大きさが普通のケーキよりも明らかに大きく、各々そんな反応をした。
箱を開けるとその予想は正しく、中には大きめのホールケーキが入っていた。ケーキはオーソドックスな苺のショートケーキだった。
「じゃぁ、切り分けてくから受け取ってねぇ。とりあえず、一個当たり八等分にするから、残りは食べたい人が食べるってことでぇ」
「あっ、私もやるよ」
「私も」
千花はそう言いながら台に乗せていたナイフで切り分けてはさらに乗せていく。澪と凜祢も残り二つのケーキを切り分けていき、全員にケーキが行き渡る。
「じゃぁ、食べよぉ」
「というか、さっきあんなに食べてみんな食べれるのか?」
「士道、甘いものは別腹ですよ」
「ケーキの分は空けてある」
「まだまだいけるぞ?」
「さいですか」
士道の疑問は女子たちの前では意味もなく論破?され、こうしてケーキを食べ始めるのだった。
~☆~
「ふぅ」
「士道君、どうしたのぉ?」
パーティーが終わり、士道は精霊荘の木の下にいた。あの後はゲームをしたり、プレゼントを交換したりして過ごし、皆精霊荘に泊まっていく流れになっていた。流石に全員は厳しいから、士道と凜祢の家にも数人ずつ泊まるのだが。
今は何故か対戦ゲームをみんなでしており、士道は外の空気を吸いたい気分だったから、一人外に出ている感じだった。
すると、食器などの片づけを終えたのか玄関の方から千花が現れ士道のそばにやって来た。
「いや、久しぶりにみんなで騒いだなって」
「そう?まあ確かに、みーちゃんとか二亜ちゃんは仕事で忙しそうだしねぇ。それにしても男子が士道君だけってどんなハーレムだろぉ?」
「殿町は街中に出会いを求めに行ったし、岸和田はやっと山吹と付き合い出したりで、俺の男友達はみんな参加してないからな」
何故か男が士道一人という現状に話が変わっていた。士道が言った通りのわけなのだが。
「それもそうだねぇ。どうせなら、こんな日常が続けばいいのにねぇ」
「だな」
「次、士道君の番だよぉ……あれぇ?」
すると、共有スペースの窓から千花が顔を出し、士道の隣にも千花。
結果、この場に千花が二人いるという状況。
「え?千花が二人?」
「ちっ、もう来たか」
士道はこの現状に困惑して二人を数度見る。二人は全く同じなために見分けがつかない。千花がまた何かしたのかとも思うが、千花が驚いていることからもそれは無いと判断する。
そして、士道のそばにいた千花?は悪態をつくと、右手を空にあげ、その手が輝きだす。
「【
千花?はそのまま輝いた腕を振り下ろす。
「うわっ!」
「わっ!」
その結果、千花?を基点に眩い輝きが士道と千花、精霊荘その他諸々を包んだのだった。
2話以降はまだ一文字も書いてません!(←おい)
プロットかきかきなう。
次はたぶんデートVのアニメ終わったくらいに投稿で考えてます。
理由はVの内容も扱おうと思うのと、ある程度書き溜めてから投稿する形にしたいからです。そうしないと2幕みたいに終わるのに何年もかかる?
まあ、もしかしたら書く時間が無くてまた不定期になるとか、そもそも消滅する可能性も?
てことで、また次回〜