デート・ア・ライブ パラレルIF   作:猫犬

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という訳で、2話目投稿です。今回も約一万字です。


2話 三界の世界

「うおっと」

「よっと」

 

士道と鞠亜は光に包まれて、光が収まると荒廃した世界にいた。結局、琴里が投資したことで完了。美九が一度寝て夢を見た後起きたから完了。十香が鬼を倒したから完了。

そして、四糸乃に関しては

 

「というか、あの犬が狼で十香が黍団子で仲間にしたからって、それで危機が去ったというのは雑じゃないか?」

 

そんな理由で完了してしまった。その結果として、士道と鞠亜は次の世界に転移させられ、十香たち四人は、あそこの世界で別れだった。

 

「まぁ、文字数も危険域でしたから、仕方ないですね」

「鞠亜、メタ発言はよせ。いくらいつも平均を五千から六千にしているからって、一万が近づいてぶった切るとは思わないだろ?」

「士道。その発言こそ、メタ発言だと思いますよ。あと、そろそろ現実に目を向けましょう」

「それもそうだな。いつまでも過去のことをうだうだ言ってても何も変わらないし」

 

そう言って、士道はこの世界に目を向ける。木々は枯れており、とてもじゃないが人が住むのは困難な感じだった。そして、空には黒い鳥のようなものが飛んでいたり、豚みたいなのが二足歩行で歩いたりしていた。

 

「それで、この世界では何をするんだ?」

「えーと。この世界は悪魔、天使、人間の三つの種族がいる世界で、はっきり言って、悪魔が世界のほとんどを掌握してしまった世界ですね。そして、この世界では悪魔のボス――ルシファーを倒すのが条件です」

「なんか、殺伐とした世界だな。とりあえず、例にならって情報収集からだな」

 

二人はこうして、悪魔がほとんど掌握してしまった世界をめぐることとなった。さしあたって、鞠亜の先導で、生き残っている人間たちのもとへ向かう。天使は種族違いで相手にされない可能性があり、場合によっては敵と思われる可能性もあり危険があるからとのことだった。

しかし、歩いても歩いても一向に人間がいるという場所にはたどり着かなかった。鞠亜がこっちと言って、枯れてはいないが葉が真っ黒な森を突き進んだり、色がくすんだ川を越えたりしていた。

 

「なぁ、鞠亜。もしかしてだけど……」

「いえ。迷ってなんていませんよ」

「まだ、迷ってないかと聞いてないんだが?」

「あっ……」

 

士道は嫌な予感がして鞠亜に聞いた結果、鞠亜は墓穴を掘り、結果として迷っていることが判明してしまった。さらに不幸は続き、

 

『グルル』

 

狼のような悪魔数体に包囲されてしまう。天使を顕現させられない士道は対抗策が無く、鞠亜も同様な為、どうしたものかと困る。そうして、一体が士道に襲い掛かり、士道は寸での所で回避する。

対抗策が無い為、士道は鞠亜の手を握ると悪魔から逃げる。しかしながら、狼型な為か距離は離れるどころかすぐに追いつかれてしまう。

 

「士道、私を置いて士道だけでも逃げてください。このままでは共倒れです」

「ダメだ。鞠亜を置いてくなんてできない」

「でも、それじゃ士道が……私はデータの存在。死んでもきっとバックアップとかで大丈夫なはずです。でも、士道はここで死んだらそれで終わりなんです」

「それでもだ。それに、鞠亜が無事復活できる保証もないんだろ?」

 

士道はそう言って鞠亜の前に立って、悪魔に対峙する。武器が無くても手足があるからそれで何とかして見せると心に決めて。そして、悪魔が地を蹴り士道に襲いかかり、

 

パーンッ

 

宙を飛んでいた狼は何処からか響いた銃声と共に放たれた銃撃をまともに喰らい、空中で黒い粒子になって消えた。それと同時に、空から一人の仮面を付けた左右不均等なツインテールの少女が降ってくると、立て続けに右手の歩兵銃と左手の短銃を発砲し、次々と悪魔を撃破していく。それだけでなく、一発目と同様、何処からか狙撃されているのか、悪魔は撃たれて瞬く間に全滅したのだった。

少女は銃を腰と背のホルスターにしまうと仮面を外し、

 

「士道さん、鞠亜さん、ご無事ですね?」

 

黒いドレスを見に纏った狂三は二人の身体に怪我がないか確認の意味を込めてそう問うた。まさか、狂三が助けてくれたことに驚いていると、近くの木からもう一人降りてくる。

降りてきたのは、黒のロングコートを羽織り、その手にはライフルを握った二亜だった。

 

「やっほー、少年、鞠亜ちゃん。助けに来たよ」

「助かったよ、二人とも」

「助かりました。あのままでは士道が怪我をしていましたから」

 

お礼を言うと、二亜は二人の無事に笑みを浮かべ、狂三も安堵していた。

 

「それで、二人は一体?」

「ああ、うん。話はここを離れながらね。また悪魔が来るかもだから」

「それもそうだな。ここは危なそうだし」

「では、行きましょう。この先にこの世界に残った人間の住む集落の一つがありますわ」

 

狂三がそう言って先導し、二亜は安全のために最後尾に付いて歩き出す。

歩きながら、この世界のことを聞くと、鞠亜の説明の通り悪魔がほとんど掌握しているらしいが、悪魔が強い以外にも、半数の天使が堕天して悪魔側になったこともあるらしい。狂三と二亜は人間としてこの世界に来たようで、他のメンバーは知らないとのことだった。一応、天使サイドに誰かしらいるというのが二人の見立てだった。

 

「天使の堕天か。その堕天使の中にいなければいいけど」

「あっ、ちなみに天使サイドにはオリリンが居ることは確認したよ。白髪でいつも無表情の少女の天使が一人いるって噂があるから」

「そうなのか?でも、他人の空似って可能性も」

「でも、一応行ってみる価値はありますね。折紙がいなくても他の誰かがいる可能性もありますし」

「まぁ、それでも一度集落には寄ってもらいますわよ。武器もなしに歩くのは危ないですし」

 

なんだかんだで今後の方針を決めると、無事人間が住む集落の一つにたどり着く。そこは悪魔に見つからないようにするためか、洞窟の中にあり、数百人の人がいた。

狂三はその中をすたすたと歩くと、一つの建物の前で止まる。

 

「銃を用意してくださいまし」

「いいだろう。で、何を求める?」

「では、ハンドガン二丁とライフルを一つ」

「分かった。用意しておく。あとで来てくれ」

「ええ。頼みますわ」

 

狂三は武器屋みたいなところで銃を用意するように頼むと、二人の元に戻ってくる。戻って来てそうそう、狂三が武器を注文してあっさりと了承されたことで、狂三はこの集落でも割と顔が広いようだった。

 

「とりあえず、天使のもとに行くに際して自衛手段は必要ですからね。とりあえず、わたくしたちが寝る時に使っている家に来てくださいまし」

「あぁ、分かった。あれ?そう言えば二亜は?いつの間にか消えてるけど」

 

今更ながら、いつの間にか二亜が消えていることに気付いてそう言うと、狂三は肩を竦める。

 

「今更ですわね。二亜さんなら、別件でこの集落内の別の場所に行っていますわ。ですが、今から行く場所に来ると思いますわ」

「そうなのか?でも、なんで唐突に何も言わずに二亜は行ったんだ?」

「あっ、私にはちゃんと別件で離れると言ってましたよ」

 

二亜が何も言わずに何処かに行ったことを疑問に思うと、鞠亜はさも気にした様子もなく、そう言った。なんで、俺には言わなかったんだ?と思うも、誰か一人に伝えておけばいいと思ったのだと判断することにした。

狂三について行くこと数分で、目的の家に着くと、狂三は鍵を開けて中に入る。中は机に椅子、ベッドと簡素な部屋で、ほぼ休憩と就寝の時しか使っていなさそうな部屋だった。

 

「適当に座ってくださいまし。どうせ、動くのは夜になりますので」

「夜?なんでまた?もしかして銃が夜に手に入るのか?」

 

狂三が夜まではこの場にいるという意味合いのことを言ったため、士道がそう問うと、狂三は首を横に振る。鞠亜は部屋をキョロキョロして少しでも情報を集めようとしていた。

 

「銃自体は夕方には手に入る手はずですわ。夜に動くのは、闇に紛れて天使のもとに行くからですわ」

「ん?夜の方が都合のいい理由を聞いていいか?」

「ええ。夜になると天使が弱体化しますので、容易に天使を倒して(しもべ)に出来ますわ」

「ちょっ、なんでそんな物騒な」

 

狂三の発言にツッコんでから士道は気づいた。来海の口元が笑っていることに。つまるところ。

 

「ふふっ。冗談ですわ」

 

狂三に遊ばれたようだった。士道はこんな時に冗談を言う狂三にジト目を向けると、狂三は笑みを止める。

 

「すいません。少し冗談を言って空気を和ませようとしただけですわ」

「発言が和ませる気が無かった気がするけど?」

「まぁ、そうですわね。しかし、天使が弱体化するのはほんとですわ。まぁ、それが理由で昼間はほとんどの天使が悪魔狩りをしていて留守にしていますので」

「なるほど。だから、夜なのですね。ちなみに、編成はどうするのですか?この集落の人たちも?」

 

夜に出る本当の理由を聞いて納得すると、鞠亜も納得したようだった。それから、四人で行くのか、もっと行くのかという意味の質問をすると、狂三は困った顔をする。まるで、どう言ったものかと。しかし、その質問に答えたのは狂三ではなかった。

 

「うにゃ。残念ながらあたしたち四人だね」

「二亜?今までどこに?それにその荷物」

 

何処かに行っていた二亜がドアを開けて戻って来るなりそう言った。その手には大き目の紙袋があった。二亜は机の上に荷物を置くと、ベッドに腰を下ろす。

 

「あぁ。これは食料ね」

「食料を買いに行ってたのか。それで、こんなに人がいるのに誰も出ないのか?」

「うん。ここにいる人たちはここに引きこもってずっと暮らしていくつもりみたいだからね」

「だからこそ、わたくしが銃を頼んだらすぐに了承されたのですわ。使う人がいませんから」

「はぁ。じゃぁ道中は大変そうだな」

「ん?なんで?」

 

四人で行くということは、結構慎重に行く必要があるから、道中の心配をすると、二亜は首を傾げる。狂三もなんでそんな心配をするのかわからなそうな顔をしていた。

 

「いや、この四人じゃ、いちいち悪魔と会うたびに戦ってすぐに消耗するんじゃないかと思って。違うのか?」

「ああ。そう言うこと。その心配はいらないよ。どうせ、ここから天使のいる場所までは一時間ぐらいだし。今頃は天使のいる近くの悪魔は殲滅されてるだろうしね」

「殲滅って。じゃぁ、なんでほとんど悪魔に掌握されてるんだ?」

 

天使によって周囲の悪魔が殲滅されるのならこの現状の理由が分からないでいると、理解したような鞠亜が説明する。

 

「それは、おそらく夜の弱体化が原因でしょうね。あとは天使の堕天使化やそもそもの種族の個体数の差なども考えられますね」

「うん。鞠亜ちゃんの言った通りだね。だからこうなってる感じ。ちなみに、ルシファーの魔法でこの世界は今三分の一の時間しか昼間が無いからね。それも原因かな?」

 

二亜が鞠亜の説明に補足してそう言うと、士道は新たな昼の時間の現象を知り、だからこそこうなっているのだと理解した。

(昼が短くなって気がめいったからこの集落の人たちもあきらめムードになってるのか)

そうして、さらに情報共有をして時間が過ぎていった。

 

 

 

~☆~

 

 

 

「場所は変わって、準備が完了したアタシたちは、なんだかんだで天使の住む山にやってきました」

「二亜、誰に説明しているんだ?」

「士道、静かに。悪魔に気付かれてしまいます」

「それにしても、どうやって侵入しましょうか?」

 

士道たちは天使が住むという山のふもとまで来ていたが、山の周りは看守の天使が常に飛んでいる為どうやって入ったものかと困っていた。普通に入ればいいのだが、いかんせん悪魔によっては人間に似ている物がいて、尚且つ人間のほとんどが集落に引きこもっている為あまり現れないという理由で、悪魔と思われて攻撃されてしまうらしかった。

士道は腰に二丁のハンドガンを下げており、鞠亜はライフルを背負っている。狂三は先ほどと同様で二つの銃を装備しており、二亜は……

 

「ところで、なんで二亜は銃を三つも持ってるんだ?しかも、全部違うタイプって」

「うーん。これでバイクでもあれば完ぺきだったんだけどね」

 

背中にライフル、腰にハンドガンタイプとサブマシンガンタイプの銃を下げていた。しかし、士道の問いとは裏腹に二亜は妙なことを言う。

 

「はて?喋るバイクなんてこの世界にあるんですか?」

「いえ、喋るウサギもいますからもしかしたら」

 

その発言に対して鞠亜は首を傾げるが、狂三はよしのんでも浮かべているのかそんなことを言う。なんで、狂三は二亜の発言を擁護するのか分からないでいると、

 

「しかし、ウサギは生物なのに対して、バイクは生物ではないから普通に考えればあり得ない。しかし、鞠亜のように電子の姿がとれるのなら可能性はある」

「うーん。そんなものか……って、折紙?」

 

唐突に折紙が現れて自然と話しに混ざっていた。四人とも折紙の接近に全く気付かなかった為驚きの色を示す。対して、折紙はそこにいることがさも当然のような様子でいた。

ちなみに士道たちは木の下に隠れていたので、普通は見つからないはずだった。その為、どうして見つかったのか分からなかった。

 

「えーと。一応俺たち隠れてるんだが?」

「私なら、士道の気配だけで居場所はわかる」

「……」

 

士道は言葉を失った。気配でばれたようだから。後ろで二亜が「少年、愛されてるねー」と茶化したり、狂三と鞠亜が呆れた視線を折紙に向けていたりした。

 

「冗談はこの位にして」

「冗談かよ」

「残念ながら、あそこには私以外は来ていないわ」

「ん?そうなのか?」

「ええ。ここに来てすぐに、誰かいないか確認したけどいなかったから」

 

折紙に言われて結局、これ以上先に行く必要がなくなる。天使の住む場所にいないのなら、時間の浪費と危険しかないから。

 

「それと、私は自由に動き回る権限を持っているからこのまま士道たちと共に行く」

「そう言えば、他の天使の力は借りれないのですか?数はあった方が有利に運べると思うのですが」

「残念ながらそれは無理。これから夜になるから、動くとしても明日になってしまう」

 

折紙はそう言って、鞠亜の質問に答えると、士道はある疑問が浮かんだ。他の天使は来れないのに、折紙は来る気満々なことから。

 

「折紙も弱体化するんじゃ?」

「士道素があれば私は弱体化しない」

「えーと。士道素ってなんだ?」

「士道から発生される原子。摂取すればたちまち体力が回復する」

「なにそれ。アタシも興味あるんだけど」

 

折紙のよくわからない発言で士道が頭を抱えると、二亜がそれに乗っかる。それ故か、さらに士道は頭が痛くなる。狂三も鞠亜も別にツッコミではないから、この状況にツッコんでくれる人がいない。

 

「冗談は置いといて、本当に平気なんですか?」

「ええ。私は昼夜関係なく動ける天使らしいから」

「って、さっきのも冗談かよ」

「当たり前ですわ。士道さんにそんなモノはありませんわよ。それよりも、善は急げですわ」

 

士道が折紙に半眼を向けるが、折紙は知らん顔をすると、狂三はそろそろ行こうというのだった。その結果、この五人でルシファーを倒すことになったのだった。

 

 

 

~☆~

 

 

 

「誠に残念ながら、敵に囲まれました」

「展開端折るな!」

 

士道たちはルシファーのいる城を目指して進んだ結果、道中で大量の悪魔とエンカウントしてしまった。その数はゆうに百を超えており、厳しい戦いになりそうだった。

折紙は手に持った弓矢で、折紙を除く四人は銃を手に持って確実に一体ずつ撃破していく。しかし、数が多いのとリロードの隙があるせいで時間がかかり、尚且つ他の場所からわらわらと悪魔が現れて一向に数が減らなかった。そして、折紙は遠距離では埒があかないと判断したのか弓を引くのを止め、

 

「これより、近接戦闘に移る」

 

と言うなり、地を蹴って悪魔に接近すると弓が二つに分かれて双剣のような形態になって、バッサ、バッサと悪魔を斬り裂いていく。すると、二亜は一度銃を一丁しまうとポケットから何かを取り出し、折紙がいない方に投げつけ、

 

「たーまーやー」

 

投げた物――手榴弾が爆発してその周囲の悪魔が爆発に巻き込まれて吹き飛んだ。二亜はそれを数度やると、数がだいぶ減る。士道、鞠亜、狂三は戦術を変えずに銃で撃破していったことでだいぶ数が減る。

しかし、敵は悪魔だけでは無く、空から複数体の堕天使が舞い降りる。堕天使はハンドガンで撃ってもその手に持つ棒によって弾いてしまいダメージが与えられなかった。

 

「やばいな。これじゃ、倒せないな」

 

士道がポツリ呟く隣で、二亜はハンドガンとサブマシンガンを仕舞って背中に背負っていたライフルを手に取り、堕天使に向かって発砲する。ハンドガンより速度があるため棒による対処が間に合わず、着弾した堕天使には効いているようだが、数発当てないと倒せなさそうだった。鞠亜も同様にライフル数発でやっと一体狩っているのが現状で、狂三は堕天使の懐に入ってからのゼロ距離射撃で無理やり攻撃をしていた。

(このままじゃまずいな。どんどん増援が来るからきりがないし、弾には限りが……)

 

「士道、棒さえなんとかできれば勝てなくはないですね」

「それって棒をなんとかしないと効かないってことじゃないか?」

 

鞠亜が冷静な分析で判断するが、棒をなんとかする術が無い為、この状況の打開にはならなそうだった。この状況でまともに狩れているのは天使になっている折紙だけだった。

 

「うーん。これは持ってくる武器をミスったな。対物ライフルとかRPGとか威力高めなのを持ってくればよかった。とりあえず、堕天使はオリリンに任せてアタシたちはどんどん増えてくる悪魔を狩っちゃおうか」

「しかし、それでは弾数が足りませんわよ。それに、折紙さんの負担も」

「だよな。そうなると、折紙の剣みたいなのが欲しい所だな」

「士道。無い物ねだりはしない方がいい」

 

士道がぼやくと敵をガンガン来ている折紙が冷静にそう言う。しかし、状況が状況な為ぼやかずにはやっていられなかった。

 

「せめて、もう一人折紙と同じ天使になってる誰かがいれば」

「あ……」

「ついに少年が……」

「言っちゃいましたわね」

 

士道がなんとなしにそう言うと、何故か三人が言っちゃったみたいな顔をし、少女は空から降って来た。

振ってきた直後その周囲の悪魔と堕天使が斬り裂かれて一瞬で消えていき、直後にそれは別の場所に移動してはその手に持つ獲物――大鎌によって斬り裂いていった。

そして、瞬く間に折紙と件の少女によってあらかた片付き、残りも銃撃の掃射で片付いたのだった。

 

「兄様、みなさん。ご無事ですか?それと、なんでこんなところに?」

 

降って来て瞬く間に悪魔と堕天使を殲滅して見せた少女もとい、天使になっていた真那は大鎌を肩に乗せてそう問うた。

 

「助かったよ。真那。でも、よくわかったな。俺たちがここに居るって」

「いえ。真那がこの世界に来た瞬間、悪魔と堕天使に包囲されてまして、この鎌でスパッと片付けて、天使がいるという山まで戻ろうと思ったのですが、面倒になってそのままルシファーを倒そうと思いまして」

「それで、道中でアタシたちを発見したと」

「はい!」

 

真那は頷くと、手にしていた鎌が光りになって消え、大きく伸びをする。

 

「それで、皆さんもルシファーを倒しに?」

「ええ。そうですわ。倒さないと話が進みませんし」

「なるほど。じゃぁ、真那も一緒に行きますかね」

 

こうして真那が仲間に加わり、六人で魔王城に行くのだった。

 

 

 

~☆~

 

 

 

「誠に残念ながら、敵に囲まれました(パート2)」

「邪魔」

「邪魔です」

 

士道たちはまた悪魔と堕天使に囲まれたのだが、折紙と真那が一蹴して瞬く間に殲滅した。二人の強さを実感するが、ここで今更な疑問が浮かんだ。

 

「ところで、なんで真那は弱体化してないんだ?それとも、弱体化してその強さなのか?」

「はて?……あぁ、真那は弱体化してねーですよ。折紙さんは大天使の一人なため弱体化せず、真那は堕天使寄りの天使な為問題ねーみたいです」

「堕天使寄り?」

「はい。真那の天使名はサリエルなので」

「ちなみに私はメタトロン」

 

二人が弱体化しない理由が分かったのはいいが、それだと他の大天使も弱体化しないのでは?という疑問が生じ、それに先駆け折紙が補足する。

 

「他の大天使は死んだかしっぽを巻いて逃げたわ」

「マジか……」

「マジよ」

「つまり、真那たちしか世界を救えねーわけですね」

 

他の大天使の助けは借りれそうにないことに士道は肩を落とす。

(といっても、このメンバーで本当に倒せるのか?)

 

「士道、心配ですか?」

「あぁ。結局悪魔と優位に戦えるのは折紙と真那だけで俺たちはこの銃でしか戦えないからな」

「でも、私たちも倒せてはいますよ。それに、今までは士道が頑張ってきたのですから、次は私たちが頑張る番なんですよ。適材適所です」

「……そんなものなのか?」

 

鞠亜はさも当然のようにそう言うが、士道は皆にただ任せるのはどうかと思う。ただでさえ、自分以外の誰かが傷付くのを見るのが嫌だから。しかし、鞠亜はそんな士道の考えを分かっていても、士道だけが無茶をするのが嫌だからと士道一人にやらせる気は無かった。

 

「さて、ここら辺も片付いたので城に行きますか」

「だねー。雑魚の相手も面倒だしー」

「随分軽いノリで言いますわね。お客さんはまだまだ来るようですわよ」

 

狂三が魔王の城があるとおぼしき方に視線を向けると、その方向からわらわらと悪魔と堕天使がやって来る。限りを知らない敵の数に各々面倒そうな顔をすると、真那は大鎌を肩に乗せる。

 

「仕方ねーです。奥の手を」

「奥の手?何をやるんだ?」

「あぁ。なるほど。この世界でならの奥の手だね」

 

真那が何か言うと、二亜はそれで真那の考えていることを理解したのか、そんなことを言い、ポケットからメモ帳を出して何か書きこむ。そして、そのページを破ると、士道に手渡す。

 

「少年、ちょいとここに書いてある文字を口にしてみてくんない?」

「ん?えーと、これじゃこっちが消耗しちゃうな。ルシファーが攻めてこないかな?って、なんだこれ?」

 

士道は二亜のメモに書かれた通り口にした。しかし、なんでこんなことを士道自身に読ませたのか分からず、首を傾げる。それと対称に、真那と二亜はよしっみたいな顔をし、折紙と鞠亜はこれでうまくいくのか?みたいな顔をしていた。

そして、

 

『ふっ、反乱分子がいると聞いてわざわざ出てきたが、たかが天使二匹に人間四匹か』

 

空から右側の羽が悪魔のように黒く、左側の羽が白い人間みたいなのが空から降りてきた。腕組みをして、士道たちを見下した感じで。

士道はそれで理解した。あれが、ルシファーなのだと。しかし、なんでルシファーが現れたのか分からないでいると、

 

「いやー。本当に都合よくいったねぇ。できたらいいな的なノリだったのに」

 

二亜はルシファーが本当に現れたこと共に成功したのことに対して驚きのような声を出していた。

(だったら、なんで俺にやらしたんだよ?大体、口に出しただけで本当に来るとか適当だな)

 

『我直々におまえらに引導を渡してくれよう』

「「天使解放(エンジェル・ドライブ)!」」

 

ルシファーは腕を組んだままそう言うと、真那と折紙が同時に技名コールをした。直後、二人の背に巨大な羽が現れ、真那の手には巨大な鎌が、折紙の両手に一回り大きくなった二本の羽型の剣が握られる。

 

「全弾掃射ー!」

「撃ち抜きますわ」

「目標補足、発射。士道も攻撃を」

「あ、あぁ」

 

それと同時に二亜、狂三、鞠亜が銃を握ると鞠亜に言われて士道も銃を持ち、迫りくる悪魔と堕天使を撃っていく。

真那と折紙は跳躍すると、瞬く間にルシファーに迫り、同時に斬り裂く。

 

『ぐっ、まさか、おまえら殺戮天使と斬殺天使か』

 

斬られたルシファーは傷口を抑えながら距離を取ると、そんなことを口にする。

(なにその殺伐とした名前?なんで、二人はそんな呼ばれ方をしているんだ?)

士道は悪魔を撃ちながらそんな疑問を持つ。

 

『ならば、我は早々に全力で行く!くらえ、全悪魔の力よ、今ここに集結せよ。秘儀、暗黒断絶衝――』

「なげーです」

「必殺技を使わせるわけがない」

 

すると、ルシファーは一気に片を付けるために自身の前に力を収束させて、一気に放とうとしたが、チャージに時間がかかるためか、真那と折紙は待たずに何のためらいもなく斬り裂くのだった。

 

「グハッ。まさか、チャージ中を狙うとは……」

「真那は基本的に舐めプはしないことにしてるんで。アルテミシアの時は澪さんのが終わるのを待っていただけですし」

「こういう技は、仲間に時間を稼いでもらっていると時か、自身に結界を張って行うもの。あなたの作戦ミス」

 

斬り裂かれたルシファーは無念みたいな顔をするも、真那と折紙はさもどうでもいいかのように切り捨てると、ルシファーは粒子になって消えていった。

そして、ルシファーが消えたことで、空から闇が消え、瞬く間に青空が広がった。なんともいえない幕切れに士道は言葉を失っていると、ボスを倒したことで祝勝のムードになる。

 

「ふぅ。終わりましたね」

「終わった、終わったー」

「ですわね。大将を失ったことで悪魔たちの統率も崩れて逃げていきましたし」

「終わったわね。後の残存勢力は他の天使が勝手に倒すでしょ」

「あれ?兄様に鞠亜さん、体が輝いてません?」

「あっ、本当だ。そう言えば、この世界でやることは終わったしな」

 

そして、目的のルシファーの撃破が完了したことで、士道と鞠亜は次の世界に移動することになった。士道の言葉を聞き、四人は何が起きたのか察する。

 

「次の世界に行くのですね。真那たちは行けねーみたいなので、ご武運を」

「士道、鞠亜。後は任せた」

「少年、鞠亜ちゃん。ファイトだよ!」

「御二人とも、ご武運を」

「ああ。任せろ」

「はい。行ってきますね」

 

こうして、次の世界に行けない四人に鼓舞されて、士道と鞠亜は次の世界に転移するのだった。




たぶん、明日3話を投稿します。ノシ

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