デート・ア・ライブ パラレルIF   作:猫犬

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連日投稿5日目
今回も前半は千花視点で進みます。


5話 少女たちの計画

それから何度も繰り返し訪れた千回目の世界で、澪は偶然死に体の千花を見つけ、千花の身体に霊力を与えることで延命させた。はっきり言えば千花を助ける意味は無かったのだが、これも何かの縁だろうといった気持ちでの行動だった。

 

そして、澪は千花にあれは夢だったという認識をさせて、公園に寝かせておいた。そして、琴里の炎によって霊力が一時的に満ちていたことで令音とコンタクトが取れて、<封解主(ミカエル)>で無理やり封印をこじ開けて令音の記憶を戻すことに成功する。

令音は士道と真那を探そうとすると、澪は士道を五河夫妻に預けていること、真那はDEMの魔術師になっていることを伝える。そして、令音に千花を預け、澪の計画を引き継いでもらい、自身の力を全て使い、零奈と共に隣界に飛び幽閉した。澪自身が出来る零奈への対抗策はこれしかなかったからだった。それに、零奈事態を封じてしまえば、世界崩壊が起こることは無いから。できればこれだけはやりたくなかった最終手段ではあるが……。これを行えばもうループができないので、失敗も許されない。

 

それから数年が経ち、澪は隣界でずっと零奈を封じた立方体の監視を続けていた。向こうに戻ってもわずかになった霊力だけでは姿が保てないから。

そして、精霊になった千花が現れ、なんとなく千花に話すと、千花に提案されそれを一度は拒んだ。しかし、千花は澪を置いていくことが出来ないからか、霊力のみの身体なのなら、千花の中にいられないのか提案されて、可能性を感じて千花の提案に乗った。

しかし、千花に余計な知識は付けさせるわけにはいかないので、士道・令音・零奈のことは伏せていた。

その後、士道と出会い千花の霊力を封印したことで、士道と千花のパスを通して澪自身の霊力も回復し始め、澪はあらたな計画を練った。

 

「ふぅ、それにしてもあの子はどうなってるのやら?士道を中心に世界を繰り返し過ぎたせいで因果律が集中して生まれた精霊(イレギュラー)なんてね。さらには、隣で過去に飛んだ士道をこっちに引き込んじゃうなんて……」

 

 

 

~☆~

 

 

 

澪ちゃんと隣界で出会ってからは、普通に学校生活を送りながら困っている精霊を守るために行動した。何故か私は隣界に飛ばなくても平気っぽいから、一度も向こうに飛ばされていない。

私の天使<死之果樹園>は、基本能力に種が必要なのだけど、この種は人間の悪意を還元させた植物からしか作ることが出来なかった。隣界で使ったのは最初の分という形で元からあったもの。

私がたまたま公園で日向ぼっこをして寝ていたら、人間が私にちょっかいを出してきた。だから、私はその人間を眠らせ、その人間の中にある悪意を奪った。

それからは、人間の悪意を奪いながら、種を増やしていき、精霊を護った。だけど、私より幼い魔術師には攻撃したくなかったから睡眠作用のある花で眠らせた。やたらと強い子が一人いて大変だったけどねぇ。

 

 

 

それから半年ほど経ち、日向ぼっこをしていたその日も、いつも通りの人間が来たのだと思った。

まぁ、その前にも人間から悪意を奪ったしね。

しかし、その少年はちょっかいを出すどころか、私が倒れているのだと勘違いして心配していた。

それが士道君との出会いだったっけ?

それからもちょくちょく士道君にあったなぁ。で、霊力封印をした翌日。寝てたら澪ちゃんが精神世界から呼んできたのか、澪ちゃんが目の前にいた。

 

「で、新たな計画って何なのぉ?」

「うん、千花が士道とパスを繋いだからか、私にも霊力が流れ込んできてね。だから、この調子で精霊皆の霊力を封印していけば、私の霊力が完全に回復できると思うの」

「ほへぇ、よくわかんないけど、とりあえず澪ちゃん完全復活な訳だねぇ」

 

なんで、私と士道君の霊力のパスが繋がったら澪ちゃんも回復するのかはわからないけど、そこは置いておこうかなぁ?分かんないしねぇ。まぁ、協力するのはやぶさかではないんだけどぉ。

 

「それじゃ、今後どうしていくかなんだけど……」

「その前に聞いていい?」

「ん?何?」

「零奈って誰ぇ?令姉の知り合い?」

「えっ、何処でその名前を?」

 

ありゃ?私がその名前を知っていることが意外だったのか、澪ちゃんは驚いてるけど、時々澪ちゃんの心の声でその名前が聞こえてきたんだよねぇ。

 

「と言うことで、<死之果樹園(サマエル)>――【記憶樹(メモリツリー)】」

 

このままはぐらかされそうだから、私は強行策に出るよぉ。それに、こっちの方が手早いしねぇ。

まぁ、【記憶樹】から流れ込んでくる情報が膨大な量だったのは驚いたけどねぇ。そして、私は令姉が始現の精霊なった事件から澪ちゃんの千回におよぶループ(全ては見れず三百回程)を知った。

脳内処理を頑張って数分経つとやっと頭の中の整理が付いた。どこかで人間の記憶は百二、三十年程だと聞いてたから、私が精霊になってなかったらパンクしてたねぇ。

とりあえず、澪ちゃんが隠していたことは全てわかったけどぉ。

 

「なんで、今まで話してくれなかったのぉ?」

 

私は澪ちゃんをジト目で見た。隠してた理由はちゃんと澪ちゃんの口から聞きたかったしぃ。

 

「はっきり言えばこの情報を言った後に士道と出会って、今の状態になれた?私はたぶん無理だったと思うんだ。だから伏せてきただよ」

「……なるほどぉ。まぁ、確かに知ってたら士道君のことを純粋に好きになってたか分かんないねぇ……うん、そういうことならできることなら協力するよぉ」

「ありがと。といっても、特別なことは特にないよ。士道に千花を除く十人の精霊の霊力を封印してもらうだけだよ。そうすれば、私の霊力がたぶん相当な量になるはずだから、その状態で零奈を倒すだけ」

「……結局、拳で語るってやつなのぉ?」

 

澪ちゃんの計画は単純明快ではあるけどそれでいいのか疑問なんだけどぉ。それにぃ……

 

「それだと、繰り返しになっちゃうんじゃないのぉ?」

「まっ、それは計画の途中だよ。最終目的の邪魔をされない為には零奈を戦闘できない状態にしないとだからさ」

「ほぉ、それで最終的にはぁ?」

 

まだ話の途中ならそう言ってほしいよぉ。それに、私は精霊全員を助けたいんだから今の計画なら乗らないなぁ。

最終的にどうするんだろぉ?

 

「うん、最終的には三十年前に飛んで空間転移の機械をぶっ壊すの。そもそもあれさえなければ私たちは三人に別れることも無かったし、そもそも精霊になることも無かったからさ」

「たしかに、もとを正すのが一番かぁ。それに、霊力がそんなにないから過去にも飛べなかったとぉ」

「恥ずかしながら。それに、決行しようとしたら零奈が邪魔すると思うんだよ」

「ん?なんでその零奈が邪魔するのぉ?もとを正せば士道君と真那ちゃんが怪我することも……」

 

言ってて気づいたけど、なんで士道君と真那ちゃんがこの世界にいるんだろぉ?あっ、隣界的な場所にずっといたからかぁ。それに、零奈が人への怒りとかで動いてるから、救う気は無いのかぁ。

 

「察してくれたみたいだから続けるけど、千花には士道のサポートを頼んでいいかな?<ラタトスク>を作ったのはいいけど、精霊相手のサポートはあんまり期待できないからさ。あと、さっきの【記憶樹(メモリツリー)】って現実でも使える?」

「んと、なんでぇ……あっ、そういうことねぇ。士道君にある程度の記憶を入れたいんだねぇ。いけるからやっとくねぇ」

 

その後も澪ちゃんと計画を詰めていき、気づけば体感時間的に結構経っている気がした。と言っても、精神世界だからそんなに時間は経たないんだけどねぇ。

 

「じゃぁ、この辺でぇ。明日には士道君に記憶を定着させるとして……真那ちゃん引き込んでいい?」

「ん?真那を?なんでまた?」

「だって、せっかく会えたんだし士道君と一緒の方がいいでしょぉ?それに、真那ちゃんと戦いたくないしねぇ」

「うん、いいよ。できれば私もそうしたいし」

「じゃ、そういうことでぇ」

 

澪ちゃんの了承も取れたし、真那ちゃんを引きこむ準備をしないとねぇ。

 

こうして一つの世界を、精霊を巻き込んだ計画を行動に移した。

 

 

 

~☆~

 

 

 

「これが計画の全容だよぉ。士道君には機械を壊してもらえばいい感じぃ」

 

千花の口から紡がれた話を聞きた士道は少しの時間をかけて整理をした。

 

「ん?結局それだけでいいのか?」

「うん、あの機械さえ壊せれば令姉が隣界に飛ばされることは無いからねぇ。あっ、そうこうしてるうちに着いたみたいだよぉ」

 

千花がそう言うと、辺りの時計の回転が遅くなっていて、それが合図のようだった。

 

「じゃぁ、行ってみよぉ!」

 

千花の声と同時に周囲が輝き出して、士道はあまりの眩しさに目を瞑り、目を開けると目の前には巨大な工場があった。

 

『着いたねぇ。三十年前のあの日にぃ……さてぇ』

「……ッ!なぁ、一つ聞いていいか?」

『ん?どうしたのぉ?』

 

そこの工場が目的地なのは士道にもすぐわかったのだが、一つ気になることが。

 

「その機械ってどこにあるんだ?あと、平然と俺の中で声を出さないでくれ。驚くから」

 

その工場はやたらと大きく、いくつもの建物があり、さらには侵入を防ぐかのように高い柵で囲まれていた。その為目的の機械の位置は定かでは無かった。

そして、千花は士道の中から喋り出したので驚いてしまった。

 

『仕方ないでしょぉ。私の身体は三十年後の世界に置いてきちゃったんだからぁ。あっ、向こうの一番大きい建物が目的地だからぁ、<封解主(ミカエル)>で一気に行っちゃおう』

「ん?それでいいのか?まぁ、それが一番誰にも見つからずに入れるか」

 

千花の指示に従って士道は<封解主>を顕現させて空間に穴を開ける。そして、穴の中に入り出てくるとそこは工場の中の廊下に当たる場所だった。

 

「(さて、中に入ったけど、さすがにこの中のどこにあるかはわかんないんだよな?)」

『うん、流石にそこまでわねぇ。<囁告篇帙(ラジエル)>は使えないのぉ?』

「(残念ながら、お探しの機械が何なのかよくわかってないから検索のしようがないな。あれって、結構イメージとかないと変な物検索するし、似たものが多そうだからな。ここからは足で探すしかないと思う)」

 

ここで声を下手に出すわけにはいかないので、士道は声には出さず、いわゆる思考発声で千花と会話していた。といっても、千花が勝手に士道の心を読んでいるだけだが。

士道は足音を立てないようにしながら歩き、数分経って疑問が生じた。

 

「(おかしくないか?ここまで誰にも遭遇しないなんて)」

『だねぇ。こんなに大きいなら人が忙しなく歩いていてもいいのにねぇ。それに、監視カメラはなんでか動いてないしぃ』

 

千花も疑問に思っているのかそう言い、士道は千花の言葉で初めて監視カメラがあることに気付いた。壁に埋まっていて割と目立たないから気付いていなかったが、これでも何も起きていないとなると謎だった。

 

『ねぇ、士道君』

「(ん?どうかしたのか?)」

『もし人に遭遇してもいいように段ボールを用意しておかない?』

「(……こんなところに段ボールがあったら不自然だからやめとく。うまくしのげるのは二次元だけだからな)」

『りょうかーい。それにしても、鞠亜ちゃん連れてくればよかったねぇ。鞠亜ちゃんならここのシステムにハックして構造とかの詳細が得られただろうしぃ』

『呼びましたか?』

『「(……ッ!)」』

 

千花が無い物ねだりをした結果、唐突に士道のインカムから鞠亜の声が響いた為、二人は驚いて息を呑んだ。二人とも鞠亜はついてきていないものだと思っていたから。

 

「えーっと、いつからいた?」

『士道が過去に飛ぶ直前にスマホに入ったので、ずっといたってところでしょうか?まぁ、精神世界で話を聞いてる時はいませんでしたけどね』

『なるほどねぇ。カメラが止まってるのは鞠亜ちゃんがやってくれたんだねぇ』

『ええ、そうですよ。ここのセキュリティはザルですね。まぁ、過去ですしシステムがだいぶ古いから仕方ないかもですけど』

 

鞠亜は胸を張ってそう言った。

注)声しか聞こえないから見えていないが。

士道は鞠亜がカメラをいじったから何事も無く進んだのだと分かり安心する。

 

『ところで、人がいない理由を知りませんか?』

「ん?どういうことだ?」

『いえ、この工場だけ何故か人がいないんですよ。他の施設には人がいるのにですよ』

「えーと、つまり……どういうことだ?」

 

鞠亜の疑問によって士道にもわからない疑問が生じた。

(ここにその空間転移の為の機械があるからなのか?一部の人間しか知らないとかなのかな?)

 

『そうなんじゃないのぉ?というか、一応私が作ったあの転移装置も令姉から図面とかもらって作ったやつだけど、普及してないからたぶん秘密裏だったと思うよぉ』

「そうなのか?てことは、ここに人がいないのもそういうことなのか……ん?というか、令音さんが飛ばされて、大慌てだったんだよな?」

『そうだねぇ……あれぇ?じゃぁ始まってるってことぉ?でも、まだなはずだけどぉ。まぁ、進んで行けば何かわかるでしょぉ』

 

人が見当たらない理由が分からぬままとりあえず先を進むことになり、階段を下りたりして地下を目指した。

隠したいものなら人目に触れぬ場所の可能性が高いから地下を目指すことになった。そうして、地下二階に着くと、やたらと大きな部屋があり、そこに一人の少女がいた。

 

「ふぅ、やっと来たね」

「……零奈?」

 

大きな部屋の中には何故か零奈が立っていた。真那と澪が零奈の相手をしているはずなのにここに居ることに対して士道は疑問と共に困惑する。二人がやられて零奈が追いかけてきたのかと士道は思った。

 

「さてと、色々疑問があるようだけど話す必要は無いね」

『おぉ、あの時の事故の原因が分かっちゃったかもぉ』


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