デート・ア・ライブ パラレルIF   作:猫犬

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11話 <死之龍>

「あれ?_人ともやら_ちゃ_たか」

 

「とい_か、千_と入れ替わっちゃ_たけどヒ_トどうしよ?」

 

誰かの独り言で士道の意識が戻り目を覚ますと、茶色い木の天井が見えた。士道が身体を起こして辺りを見回すと、机やらソファーやらと生活感がある一室だった。士道はベッドに寝かされており、そばにあるソファーに士道と同じ髪色の少女が寝転んで本を読んでいた。

少女は士道が起きたのに気づくと、本を閉じ身体を起こす。

 

「ん、おはよぉ。って時間でもないか」

「千花?……いや、違うな。えっと、誰?」

「うん、士道のおねーさんの澪だよ。これって、生き別れってやつかな?」

 

澪は自己紹介を済ませると、何故か首を傾げて士道に問う。士道としては、いきなり姉と言われたことで困って、ついでに返答にも困る。

 

「俺に姉っていたのか?そんな記憶ないけど」

「うん、だって私が士道の記憶閉じたんだもん。まぁ、慣れてなかったから中途半端に混濁しちゃったけどね」

「記憶を閉じた?いろいろ気になることはあるけど、ここはどこなんだ?」

「ここは【心性世界(フィクション)】の中の世界だよ。と言っても、外界とは同じ時間の流れにしてるけどね」

 

澪は本棚に読み終わったシルブレをしまいながらそう言うと、士道はいつしかの二亜がやったのを思い出す。しかし、疑問はまだまだある。

 

「なんで【心性世界(フィクション)】の中なんだ?なんで俺はこんな場所に?たしか、千花に話を聞いて……」

「その後、ここに連れてきたんだよ。まぁその辺の説明は端折りたいから、これ見てくれる?」

 

澪は腕を組んでどうしたものかと悩み、テレビの電源を付けるとある映像が映し出される。

そこには、精霊達が澪?と戦っている光景が映っていた。ここにも澪がいるから、この映像は過去のものだと思う。しかし、澪がこの場にいるということで精霊達がどうなったのかという疑問に駆られる。

 

「これは、私の野望が人類殲滅ってことで、精霊達が止めようとしてるところだよ。あぁ、ここに映っている私は分身体だよ」

「……なるほど?って、なんでこんなことになってるんだよ!?」

「うん、まぁ見ながら説明するけど……」

 

そこから精霊たちと話した内容を簡潔にまとめて伝える。士道は適宜質問を交えながら聞いていくと、数分で話が終わった。

 

「で、士道的にはどうする?このままここで傍観するって選択肢と私を止めるって選択肢があるけど?」

 

澪は続いてそんな質問を士道に聞く。この質問の返答によってここからの展開が変化するから。そして、澪的には澪の思惑通りの行動をしてもらえると助かる訳で。

 

「悪いけど、俺は澪のやろうとしてる人類殲滅を許容することはできない。その中には友達もいるから。それに、皆も止めようと頑張ってくれた訳だしな」

「そっか。でも、精霊が安心して暮らすにはそれくらいのことをしないとダメだと思うんだよね」

 

士道の返答に不服なのか、澪は困った顔をする。

(なんで、精霊が安心して暮らすのに人類殲滅が必要なんだ?)

 

「なんでって顔してるね。だってさ、ASTも<ラタトスク>も精霊の存在を秘匿にしてる。これって真実が伝われば今以上に精霊が暮しづらくなるってことでしょ?」

「たしかに精霊の存在は秘匿にされているけど、それだって……あれ?伝わったらどうなるんだろ?」

「でしょ。たぶん伝われば危険物扱いされちゃうのが目に見えてるよ。それに士道の身にも危険が及ぶしね。だから私はやることに決めたの」

「うーん。なるほど?でも、別に霊力封印したし、みんな空間震を起こすことも無いだろ。現に今まで普通の人間と同じように過ごせてるからさ。だから、俺は伝えない限りは安心して暮らせると思うけど」

 

士道は澪の考えを理解しながらも、自身の考えを伝える。それを聞いた澪は「なるほどねー」と呟いていた。すると、澪は手をポンッとやって士道に言葉をかける。

 

「つまり、士道は精霊の皆に自分の能力を常にセーブさせて窮屈な生活を送れと言うの?」

「そうゆうわけじゃないけど……」

「そうゆうことになるんだよ。と言う訳で、士道の中にある霊結晶(セフィラ)ちょうだい」

「えっ?」

 

精霊の生活の話から急に士道の霊結晶の話になり士道は困惑する。なんで士道の中の霊結晶を澪が欲しがるのか分からないから。

(それに、澪の言う人類殲滅の方法が分かんないんだよな。それに必要ってことなのか?)

 

「だから、霊結晶(セフィラ)だよ。士道が今までに封印してきた霊力は士道の身体の中にある霊結晶(セフィラ)に溜め込まれてるのは知ってるでしょ?」

「あぁ、それは知ってるけどなんで欲しがるんだ?それも人類殲滅に必要なのか?というか、どうやって人類殲滅をやる気なんだ?」

「あー、うん。世界中を霊力で満たして、一気にドーンッと空間震を起こしまくるんだよ。だから、霊力がわんさか必要なんだよ」

「ん?あれ?皆が分身と戦ったからだいぶ霊力が空気中に放出されて……」

「てへっ」

 

澪の話を聞いて士道はそんなことに気付き口にすると、澪は自身の頭に手を当てて首を傾けたのだった。それは士道の言葉に対する肯定と取れてしまう。

(てことは、あのゲームすらも澪の準備の一つなのか?そうなるとみんな知らぬ間に利用されたことに……)

 

「まぁ、いいや。とりあえず私の計画の全容を教えてあげる。どうせ、今までに話した内容は本当の計画の準備でしかないんだし。今までの話の半分以上は作り話だしね」

 

 

 

~☆~

 

 

 

「行きますよ!」

 

真那は空を蹴ってアルテミシアに接近すると、アルテミシアは両手のクローで<月華狩人>による攻撃をガードする。しかし、真那の攻撃はそこで終わらず、鎌を引いた勢いで下から蹴り上げ、

 

「じゃぁ、真那の相手は私がするからそっちも頑張って」

「随分余裕があるんですね。じゃ、千花さん。武運を」

「いってらっしゃーい」

 

アルテミシアはそう言って、真那の蹴りを利用して上空へ飛んで行き、真那も千花に一言言って飛んで行ったアルテミシアを追って飛んで行く。それを千花は手を振って見送る。

こうして、互いに一対一になった訳だが、エレンは疑問があったので口にする。

 

「確かにあなたの腹を貫いたはずですけど?」

「そんなの、すぐ治るよぉ。まだ身体の主導権は澪ちゃんにあったんだからねぇ。それで、御望みは何かなぁ?」

「では、あなたへのリベンジということでッ!」

 

千花の返答でさらに疑問が生まれるが、それ以上の質問は些末なことだと判断すると、エレンはそう言って槍を千花に向け、槍の先端が輝き魔力の槍が放たれる。放たれた槍は光の速度で飛んでいき、多少照準がぶれたのか千花の横を通り過ぎてクレータに突き刺さる。千花の横を過ぎた際に多少かすめたのか頬に傷ができる。

千花は頬にできた傷に手を当てて、驚いた顔をする。

 

「うわぁ、見えなかったやぁ」

「ふむ、やはり風等がある分命中率に欠けますね。しかし、卸したてにしてはいい感じですね。それに、今のでそのあたりの影響も理解しました。次は外しません」

「ほへぇ、じゃぁ私もちゃんとやったげないとねぇ。てことで<死之果樹園(サマエル)>」

 

<死之果樹園>を顕現させると、千花は<死之果樹園>を握る。<死之果樹園>が近接武器なので、エレンは再び槍を構える。

 

「<死之龍(サマエル)>」

 

そして、千花の発声と同時に再び槍が放たれると一直線に千花のもとに飛んでいく。

しかし、その槍が千花に触れることは無かった。

 

「なっ!」

『千花、久しぶりだね』

「うん、久しぶりぃ」

 

千花の前に現れた真っ黒な体長二、三メートルほどの蛇龍の鱗に触れて弾かれると同時に四散したことによって。

エレンは突然出現した龍と槍の四散に驚きの声を漏らす。

そんなエレンとは対照的に、千花は龍の頭を撫でると、何か思ったのか口を開く。

 

「紹介しておくね。この子は私の魔王の<死之龍(サマエル)>だよぉ。あっ、そう言えばDEMの目標の一つに精霊の反転とかあったねぇ」

「なんで、あなたがそれを知っているのかとか、天使と魔王の同時顕現とか疑問が尽きないですね」

「そう?目標なんてみーちゃんを反転させてたからなんとなくわかるよぉ。最終的には、精霊全員を反転させたいんでしょ?同時に呼ぶのも私が<混沌霊装(カオス・セフィラ)>を纏ってるからねぇ」

「はぁー、どこまであなたは知っているんですか?あと、説明になっていませんよ」

 

エレンはため息をつくと千花に半眼を向けてそう問う。千花は知っていることがさも当然のような顔をする。

それ故、エレンは困惑する。

 

「そんなのどこまでもぉ?すべての精霊を反転させれば、始源の精霊が何らかのアクションを起こして現れるかもしれないからねぇ。で、現れた始源の精霊を捕まえて精霊にする術を得たいってとこでしょぉ?」

「はぁー、どうやら本当に知っているようですね。しかし、これは数人しか知らないはずですけど?」

「私と顔を合わせた時点で、秘密の大半はばれちゃうよぉ。例えば、そのユニット――<麒麟>は今までの四神シリーズのCRユニットバージョンで、AIじゃなくて魔術師(ウィザード)が使えば数倍もの力が引き上げられるってところかなぁ?だったら、今までのもCRユニットにすればいいのにねぇ」

 

千花はほんわか口調のままそう言うと、エレンは自身のCRユニットの情報まで知られていることに驚く。この情報に関してはウエストコットとアルテミシア、製作チームのみが知っていることであり、それ以外は知らないはずだから。

 

「なんで誰にも言ってないことがばれてるって思ってるねぇ。目的に関しては単なる予想かなぁ。で、ユニットに関しては槍を放つときにユニットの情報を思い出したでしょぉ。その時にねぇ」

「なるほど、そう言えばあなたは人の心が読めるのでしたね。では、あなたの発言に訂正を。ちゃんと今までのもユニットにしましたよ。生憎扱える人間がいませんでしたが。私たちを除いてね」

「ふーん、あっちが持ってる感じなんだねぇ。まぁ、真那ちゃんなら問題ないでしょぉ。正直、あの天使の能力もチート級だしねぇ。というわけで、おしゃべりは終わりねぇ。あっ、一つ忠告しとくねぇ。残念ながら始源の精霊の捕縛は無理だし、死ぬだけだから止めて置いて、表向きの仕事で頑張りなよぉ」

「大きなお世話です!私は人類最強なんですから負けません!」

『なるほど、私が寝てる間にあったことは理解したよ』

 

千花の発言を真っ向から否定すると、槍の発射は龍に阻まれるのでエレンは地を蹴って千花に接近する。いままで状況を把握するために黙っていた<死之龍>がそれに反応すると、千花のもとから離れて、エレンを迎え撃つ。エレンの魔力を纏った槍と龍の霊力を帯びた尾がぶつかると、その場で拮抗して魔力と霊力が弾けて互いに距離を取る。

すると、二人の身体が陰る。千花がなんだ?と思いながら上に顔を向けると、そこには数隻の空中艦が飛んで来ていた。龍はその間に千花のそばに寄る。

 

『支部長、今救援を』

 

空中艦からそんな声が響くと、空中艦の砲門に魔力が収束していく。千花は面倒そうな顔をすると、

 

「あれが攻撃したら、あれも敵とみなすからねぇ」

『最近はあんなのもできてるんだね』

 

エレンに向かって低いトーンでそう言う。エレンは千花の声のトーンで嫌な予感がした。

 

「砲撃をや――」

『放てー』

 

それ故に、エレンは砲撃を止めようとするが、その前に放たれてしまう。範囲的にエレンも巻き込みそうだが、おそらくエレンならうまく回避ないしは防御するだろうと思っている感じだった。

そして、エレンは砲撃の範囲外に退避し、魔力砲が千花の身体を包んだ。数秒後、魔力砲が止み、砂煙が舞っていて状況がつかめないでいると、さっと強風が吹き砂煙が散る。

砂煙が晴れたそこには千花が立っていてその隣には<死之龍>もおり、どちらも傷が無かった。そして、千花の周囲一メートルほどの地面も一切傷が無く、そこ以外はごっそり削れていた。

 

「はぁー、あれも敵ってことになった訳だし、容赦しないよぉ。よろしくぅ、<死之龍(サマエル)>」

『うん、わかったよ』

 

千花が<死之龍>に一声かけると、<死之龍>は千花の前に移動し、口に霊力を溜めると、空中艦目掛けて一気に真っ黒な光線を放つ。空中艦は随意領域を張るが、まるで紙のように容易に破られて空中艦を光線が包み込んだ。<死之龍>は光線を撃ったまま首を横薙ぎして空中艦すべてに光線を当てると、光線を放つのを止める。

 

「ん?光線を喰らったのに無傷?」

 

エレンが空中艦に目を向けると、どの空中艦も一切の外傷が無く、宙を浮いていた。エレンが疑問に思いながら、随意領域でしのぎきっていた?と思うのもつかの間、空中艦が一斉に高度を落していき、墜落した。

 

「一体何が?」

『空中艦の生成魔力を消滅させただけだよ』

「そういうことぉ。あんなに大きいものただの的だよぉ」

 

エレンが困惑していると、千花はそう言ったのだった。

 

 

 

~~~~~

 

「どうやって精霊になったの?」

「断ります!」

「はて?」

「これが私の奥義、アマノハバギリ」

「<月華狩人(サリエル)>――【侵蝕月天(ムーン・イーター)】!」

 

次回 “真那VSアルテミシア”




やっと登場、最後の四神シリーズパート1「麒麟」
スピードとパワーに振った結果、エレンしか扱えなくなったある意味残念な機体。見た目のイメージはネプテューヌのベールのネクストフォームに黄色を混ぜて多少ペンドラゴン感がある感じ。書いててだんだんわからなくなってきた。
ネクストフォームは画像とかで見た程度ですけども。ブランが一番すきだけど。プレ4欲しい。新作はvitaだったら買えたのに・・・

さて、パート2は次回登場予定。まぁ、四神の名は関してないけども。

では、次回。ノシ

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