私と契約してギアスユーザーになってよ!!   作:NoN

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8話

 数日後、気が付いたらスザクさんが学校に行くことになっていた。

 

 びっくりだ。物語的な知識で知ってはいたがびっくりだ。

 なにせ、当日の朝になるまで私は何も知らなかったのだ。私以外の特派の人達は知っていたというのに。

 

「なんで誰も言ってくれなかったんですか!?」

「いや、だって君。学校行きたくないって言ってたよね」

 

 ロイドさんは、私にそう告げる。

 その言葉を聞いて、数日前、具体的にはユーフェミア様と初めて会った次の日に、ロイドさんから集団生活が好きかどうか聞かれたこと思い出した。

 

 その時、質問に「そんなに好きではないです」と答えたら「ふーん」なんて何か含んだ返事をされたので何か変だと思っていたが、まさかこんなことになるとは。

 

 朝から憂鬱な気分になった。

 

 

 

 

 

 そんなわけで、今日は私一人で、朝からシミュレータを使用したデータ収集をしている。

 

 今回のテストは、以前私とスザクさんが行ったシミュレータ上での戦闘を見てロイドさんが考案した武装、シュロッター鋼ソードのテストだった。

 

 このシュロッター鋼ソードは、ロイドさんが二日前に考案した合金『シュロッター鋼合金』により作られた剣である。

 ロイドさんが考案したこの『シュロッター鋼合金』は、ブレイズルミナスを停滞させる性質を持っているらしく、剣にブレイズルミナスを纏わせることで高い切断能力を持たせることができるようだ。

 

 この名前には聞き覚えがあるので、おそらくコードギアスのどこかで出てきた武装だろう。

 

 シミュレータの画面に、対ナイトメア戦闘用大型ランスを構えたグロースター、このランスロットを除いた現行の最新型KMFが出現する。

 

 テスト内容は、戦闘時におけるテスト武装の耐久試験。

 このグロースターを相手にして戦闘を行い、件の武装がどれほど戦闘に耐えられるかテストを行うようだ。

 

『嚮導兵器Z-01ランスロット、作戦行動を開始してください』

 

 セシルさんの声に従い、目の前のグロースターに疾走する。

 身体にGがかからないことに違和感を覚えつつ、グロースターの槍にMVSを振り下ろした

 

 グロースターは、槍を持った右手を引きながらランドスピナーを利用し左足を軸に回転、MVSを振り下ろして隙を晒した私に手のランスを振り下ろす。

 

 ――早い!

 

 スラッシュハーケンを利用して跳躍、攻撃を回避すると同時に距離をとる。

 同時に左手のスラッシュハーケンをグロースターへと射出、追ってこれないように牽制した。

 

 200メートルほど離れた地点に着地、そこで私は小さく息を吐いた。

 

 ――あまりにも、反応速度が速い。

 

 感覚的には、操作を入力した直後に反応された気分だ。少なくとも、0.1秒以下で攻撃に反応された。

 スザクさんよりも早い。相手は、一体どんな反射神経をしているんだか。

 

「セシルさん、あのグロースターのパイロットは一体誰ですか?」

 

 気になったので、戦闘をモニターしているはずのセシルさんに聞いてみた。

 

『相手は、引退したとある騎士のデータを参考にロイドさんが構築したAIよ。参考にした騎士が誰かはわからないけれど、作っているときのロイドさんの様子から考えて、それなりに高名な騎士のデータを使用しているみたい』

 

 セシルさんからは、そんな答えが返ってくる。

 引退した高名な騎士……高位の騎士は、こんな格ゲーのAI並みの超反応をしてくるのか。

 

 右手のMVSをシュロッター鋼ソードに持ち替え、剣にブレイズルミナスを伝播させるためのコードを接続、持ち替えたMVSは左手に持つ。

 私は両足のスラッシュハーケンを射出し、同時にグロースターに疾走した。

 

 グロースターは、迫るハーケンをランスで巧みに叩き落とし、こちらにスラッシュハーケンを射出してくる。

 

 そのハーケンを両手のブレイズルミナスで受け流しながら左手のMVSを投擲、シュロッター鋼ソードを両手で握りしめてグロースターに振り下ろした。

 

 だが、投擲したMVSはグロースターにつかみ取られ、シュロッター鋼ソードを受け流された。

 

 ――ランスロットか! それはこっちの!

 

 焦りながらも目の前のグロースターにツッコミを入れつつ、両手のスラッシュハーケンを利用してわずかに跳躍、いつの間にか迫っていたランスを回避しながらハーケンのワイヤーをグロースターの両腕の関節部に食い込ませて振り返ることができないように軽く拘束した。

 

 そして隙だらけの背後に着地し、シュロッター鋼ソードをコックピットに突き刺す。

 

 しかし、その直前にランスロットのバランスが崩れ、シュロッター鋼ソードは何もない地面に突き刺さることになった。

 

 ――嘘でしょ!? KMFでは転んだことなんてないのに!

 

 一瞬思考が自分のミスを疑うが、直後に視界に映った光景がそれを否定した。

 

 よく見れば、グロースターが引き戻したスラッシュハーケンのアンカー部分が、グロースターの腕の関節に食い込んでいたワイヤーに引っかかり、こちらのスラッシュハーケンを引っ張っていた。

 

 今、スラッシュハーケンのワイヤーは、グロースターを拘束するためにぴんと張っている。

 その為、少しワイヤーを引っ張るだけで、私の機体は傾いてしまったのだ。

 

 グロースターは手に持ったMVSでこちらのスラッシュハーケンを切り払い、拘束をほどく。

 

 それを見た私は、シュロッター鋼ソードを地面から引き抜き距離をとった。

 相対するグロースターは、ランスを捨ててMVSを両手に構える。

 

 私は、小さく深呼吸を行い、シュロッター鋼ソードを上段に構えてランドスピナーで疾走した。

 

 上段に構えたシュロッター鋼ソードを、グロースターに振り下ろす。

 目の前のグロースターは、MVSでその一撃を右に受け流し、その隙に下段からランスロットの右足めがけてMVSを振るう。

 

 その一撃を、左手のブレイズルミナスを展開しながら体当たりすることで阻止し、同時に右手に持ったシュロッター鋼ソードをグロースターに振るった。

 

 その斬撃も、MVSで受け止められる。

 

 一歩引いて薙ぐ。それも受け流される。

 

 さらに何度も薙ぎ、突くも、それらは巧みに受け止め受け流された。

 

 そして、10度剣を交わし合った直後、突然シュロッター鋼ソードの刀身が崩壊する。

 

 ――っ!?

 

 とっさに背中から新たにMVSを引き抜こうとするが、その一瞬を突かれコックピットにMVSを突きたてられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱりかー」

 

 シミュレータの光景を見ていたロイドは、AIの操るグロースターとアリスの操るランスロットの動きを見比べ、小さくそう呟いた。

 ロイドのその言葉を聞いたセシルは、その言葉を発した彼に不思議そうな眼差しを向ける。

 

「やっぱりって、いったいどういうことですか」

 

 セシルの言葉に、ロイドは複雑な心境を顔に浮かべながらセシルに告げる。

 

「セシル君は、あのランスロットとグロースターの動きを見比べて、何も思わない?」

「ランスロットとグロースターの動きを見比べて、ですか?」

 

 ロイドにそう言われ、セシルはシュロッター鋼ソードとMVSを打ち合わせる二機の動きを見比べる。

 

 彼女は、二機の剣を打ち合う姿をしばらく見比べる。

 

 ランスロットの振り下ろした剣を、グロースターが左脇腹から右肩に僅かに振り上げるような薙ぎで受け流す。

 グロースターは、剣を受け流した直後に刃を返す様にしてランスロットに振り下ろす。

 ランスロットは、その一撃を先ほどのグロースターに似た一撃で受け止めた。

 両者は一旦距離を取り、即座に距離を詰めつつ剣を振るう。

 今度は、ランスロットは突きを放つ。狙いは、グロースターのコックピット。

 技術者であるセシルには、正確無比にすら見えるその一撃はしかし、グロースターの叩き落とすかのような一撃によって軌道を逸らされることになった。

 空振るランスロットの剣、その隙を突くようなグロースターの鋭い一撃。

 ランスロットは、瞬時にシュロッター鋼ソードを引き戻すと、その一撃を打ち払うように受け流して少し距離をとった。

 

 セシルは、二機の動きに少し違和感を感じた。

 

「随分と、似てますね」

「そうみたいだねえ。

 アリス君の動きは、中距離、そして近距離における一撃目こそ下手な物まね程度にしか似ていないけれど、近接戦闘におけるとっさの反応は、粗削りではあるものの驚くほど似てる。

 おそらく、とっさの反応以外の動きは考えて動くから似てないだけで、戦闘の資質というか癖というか、その辺はかなり近いんじゃないかな。それこそ、血縁とか弟子とかを疑うほどに」

 

 ロイドのそれを聞いて、セシルは目を見開いた。

 

 一般的に、KMFのパイロットは"名誉の付かない"ブリタニア人が務める。

 つまり、ロイドの言葉が確かだとすれば、アリスはブリタニア人の血縁者か、もしくはブリタニア人に教えを乞うた人間ということになる。

 アリスを保護した際にロイドがこっそり行った検査、KMF騎乗における肉体的素養と共にセシルが見たその結果と、彼女の外見から推測されることが正しければ、結果は後者だろう。

 

 だが、それは本来あってはならないことだ。彼女は、最近まで何らかの人体実験を受けていたのだから。

 それが正しいとすれば、ブリタニア軍が人体実験に手を出していることになる。

 

「ロイドさんが構築したあのAI、基にした人物は誰ですか……?」

 

 セシルは、ロイドに恐る恐る問いかける。

 そんなセシルの様子を見て、ロイドはおかしそうに笑った。

 

「あはは――残念でした、セシル君の考えているようなことはありえないよ。

 基にした御方は、十年くらい前に引退して、それから二年程度で死んじゃった人だからね。アリス君の年齢を考えると、彼女が弟子だったなんてことはないでしょ」

 

 ロイドがそう告げたところで、シミュレータのランスロットがグロースターに撃墜された。

 

「ん、ちょうど終わったみたい。セシル君、今度はランスロットのスラッシュハーケンを切断タイプのものに換装して」

「わ、わかりました。

 切断タイプって、あのガウェインのものですよね」

「そうだよ、その後はハーケンブースターのテストをするから」

「なるほど、わかりました。では、本来のランスロットと同じくブースターを封印するような形で、ブースターを搭載したものに換装しておきますね」

 

 セシルは、シミュレータのランスロットの武装の変更を始める。

 その後ろで、ロイドは難しそうな表情を浮かべてシミュレータのグロースターを見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 呆然とする私の目の前で、シミュレータはランスロットが撃墜されたことを表示した。

 

 ――いや、なんで刀身無くなったのよ。

 

 余りの驚愕に言葉も出ない。

 戦闘中に刃が消えるなど、欠陥兵器もいいところだ。

 

 そこまで考えて、ふとシュロッター鋼ソードという名前をどこで聞いたか思い出した。

 

 『ランスロット・グレイル』、ブリタニア第88皇女マリーベル・メル・ブリタニアの率いるグレイル騎士団、その筆頭騎士であるオルドリン・ジヴォンが駆る機体に搭載されていた武器の一つだ。

 試作兵器の一つで、刃にブレイズルミナスを纏わせることができるが、一度ブレイズルミナスを纏わせると刀身が崩壊するという性質を持っていたはず。

 

 おそらく、試作兵器の試作兵器であるために、戦闘中に刀身が崩壊するなんてことになったのだろう。

 

『アリスさん、聞こえる?』

「あ、はい。大丈夫ですセシルさん」

 

 セシルさんから急に通信が入ったので、考えることを止めて顔を上げる。

 

『今度は試作型のスラッシュハーケンをテストしてもらうけれど、続けてシミュレータをしても大丈夫かしら』

「はい、問題ないです」

 

 セシルさんの心配する声に、元気よく答える。

 セシルさんは、シミュレータの連続使用による負荷を気にしているのだろう。

 だが、問題ない。この肉体はネモとの融合で強化されているのだ。精神的にはともかく、肉体的な疲れは全くなかった。

 

『なら良かったわ。

 それでは、今度は新しいスラッシュハーケンのテストを行います。

 テストする武装の名称は、試験強化型スラッシュハーケンⅡ。従来のスラッシュハーケンとは異なり、移動手段としてではなく攻撃手段の一つとしての強化が施されています。

 出力の向上、ワイヤーへの切断能力の付与が行われた反面、ワイヤー部の耐久性が低下しているので注意してください』

「了解です」

 

 つまり、スラッシュハーケンがピアノ線になったと考えればいいのだろう。

 

 私は、セシルさんの言葉に頷いた。

 

 それから少しして、目の前のモニターの映像がシミュレーションを始める前の光景に戻る。

 だが、今度は先程とは異なり、その光景にいくつもの煤けたビルが追加された。

 

『それでは、嚮導兵器Z-01ランスロット、作戦行動を開始してください』

 

 私は、セシルさんの言葉に合わせ、シミュレータの操縦桿を傾けた。

 

 

 

 

 

 

 

 昼を過ぎて、その夜。

 シミュレータで幾つかの試作兵器を試した私は、何時ものように大学側にあるトレーラーの中で横になっていた。

 

 大学内で寝食をする許可は取れたものの、その当日に何者かに私とスザクさんのお部屋が汚部屋にされるという事件が起こったため、未だに大学内で寝ることは叶っていない。

 私の視線の先にいるランスロットも、ナンバーズをパイロットにしているので念の為大学外に置かれている。

 

 今このトレーラーにいるのは、私とロイドさん、セシルさんの三人だけ。スザクさんは、大学の友人の家に泊まっているとの連絡が入っている。

 

 寝返りをうつ。

 振り向いた視線の先には、私と同じで床に敷いた布団に包まって眠るセシルさんと、KMFのバッテリーであるエナジーフィラーの上で胡座をかき、膝の上に置いたノートパソコンを叩くロイドさんの姿があった。

 

 暗闇の中、キーボードを笑顔で叩くロイドさんは、まるで悪の科学者の様で少し怖い。

 

「ロイドさん、何してるんですか?」

 

 不安になり、ロイドさんに声をかけてみる。

 ロイドさんは、キーボードを叩く手を止めると、私の方を見て少し難しそうな顔をした。

 

「ねえ、君に初めて会ったあの日の約束、覚えてる?」

「約束ですか? えっと、マッスルフレーミングの事ですよね」

「うん、そうそれ。

 今はランスロットが忙しいからその約束は後でいいけど、それに関してちょっと聞きたいことがあるんだよね」

「聞きたいことですか?」

 

 ロイドさんの言葉に、内心首をかしげる。

 

 理論が聞きたいとかではなく、それ以外のことで聞きたいことがあるというのは、一体どういうことだろうか。

 

「そのマッスルフレーミングを開発したのって、アッシュフォードであってる?」

「いえ、違いますが」

 

 ロイドさんのその言葉を、私は否定する。

 私の機体、コードギアスを開発したのは、少なくともアッシュフォードではない。

 おそらく、ナイトメア・オブ・ナナリーの世界のエデンバイタル教団だ。ネモの生み出したコードギアスやマークネモは、エデンバイタル教団と繋がりがあるはずの、特殊名誉外人部隊が使用していた機体を基にした機体なのだから。

 

 その私の答えに、ロイドさんは、ぽかんとした表情を浮かべ、ため息をついて肩を落とした。

 

「そ、ならいいや」

 

 ロイドさんは、そう言って再びキーボードを叩き始める。

 アッシュフォード家が開発していることに、何か問題があったのだろうか。

 

 しばらく考えて、一つのことに行き着いた。

 

「ロイドさん、もしかしてアッシュフォード家のご令嬢と婚約するつもりですか?」

「ん、そうだよ。なんでわかったの?」

 

 ロイドさんは、私に不思議そうな顔を向けた。

 

 私がそう思ったのは、コードギアスという物語において、ロイドさんはアッシュフォード家の令嬢であるミレイ・アッシュフォードに婚約を申し込んだことがあったからだ。それも、アッシュフォードの持つ第三世代KMF『ガニメデ』目当てに。

 まあ、彼女に何の感情も持っていなかったわけではないようなのだが、なんともひどい話である。

 

 

 

「いや、だってロイドさんですから」

「……君、明日のテスト倍ね」

 

 ――完全に言葉を間違えた。




 舞台はアニメ、キャラは漫画、キャラの心境は小説、時系列はゲーム

 ……なんというか、つぎはぎだらけだ。

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