神と、戦士と、魔なる者達   作:めーぎん

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不思議な魔法を使う少女と、絶対零度を操る聖闘士の異種格闘戦が始まる


黄金聖闘士の推理タイム

「黄金聖闘士? 水瓶座の、デジェル? 巴マミと組んだ2人と何かしら関係があるのかしら? 聞きたいことはいっぱいあるけれど、とりあえず、なぜ私を助けてくれたの?」

「君があまりにも危なっかしい戦いかたをしているから、だ。さっきも言ったが、あれではいずれ魔女の餌食になる。なぜ敢えて一人で戦っているのだ?」

「あなたにそんなことを話す義理はないけれど、まぁ、助けてもらった立場だし。私は他の魔法少女を信用していない。感情に流されたり、冷静な判断ができなかったり。私一人で戦っていたほうが、効率よく、確実に魔女を仕留めることができる」

「ふむ、それにしては、先ほどの魔女にはずいぶんと苦戦していたし、戦いぶりも冷静さを欠いていたように見えたが?」

「。。。。っ!」

 

「私達は君と手を組みたいと考えているのだ。だから助けた。魔女との戦いで君が死んでしまう事態は避けたいのでな。私達の当面の目的は、魔法少女が魔女になることを防ぐ方法、魔女になってしまった魔法少女を元に戻す方法を見つけること。そして、そもそもの元凶といえるキュウべぇの目的を明らかにしたうえで、かの存在のこれ以上の活動を防ぐこと。もっとも、これが最終目的というわけではないが。君の目指しているところもそれほど変わらないと思うのだが、どうかな?」

 

「(この人、どうして魔女と魔法少女の関係を知っているの?)私は別にそんなことを目指しているわけではないし、誰の助けも借りるつもりはないの。さっきはちょっと油断しただけ。どうしても首を突っ込んでくるというのなら、力ずくで排除させてもらうわ?私には時間がないのだから」

ほむらはそう言うと、デジェルから距離をとり、盾を構えて戦闘態勢にはいった。

 

「君と戦うつもりはないが、それでも攻撃してくるというのなら、防戦はしないとな。では、お手並み拝見といこうか?」

水瓶座の黄金聖闘士、デジェルは直立不動のまま、ほむらの出方をうかがっている。

 

「舐められたものね? 後悔するわよ」

 

 

この少女の戦闘スタイルから推測するに、次の瞬間、おそらく爆弾が自分の目の前に現れるだろう。爆弾の爆発を回避することは容易いが、それではいつまで経っても決着が付かない。反撃して彼女を倒すことも難しくはないが、それでは意味が無い。さて、どうしたものか。。

そんなことを逡巡しながら彼女の攻撃に備えていたデジェルを待ち受けていたのは、四方八方から彼を取り囲むように放たれた無数の銃弾だった。

どの弾も、彼から数十センチの距離に突然現れ、彼めがけて飛んでくる。意表を突かれて少なからず驚いたデジェルだが、それぞれの弾の軌道を見切り、どうにか弾をかわす。

避けきって次の動作に移ろうとするデジェルの周りを、再び無数の銃弾が取り囲む。

 

「大口叩いていたわりには、銃弾をかわすだけで手一杯みたいね。全ての弾をかわしているのはさすがだけれど、いつまでもつかしら?」

ほむらの立っている位置は、戦い始めてからほとんど変わっていない。巴マミのように無数のマスケット銃を魔力で生み出しているわけでもないのに、なぜあらゆる方向から同時に銃弾が飛んでくるのか?

 

いったん距離をとろうとジャンプしたデジェルだったが、それでも弾幕から逃れることはかなわない。

避けては囲まれ、また避けては囲まれる。

 

何度かそれを繰り返しているうちに、デジェルはあることに気がついた。

 

「なるほどな。どうしたものかと思っていたが、わかってしまえばどうということはない」

 

「あら、負け惜しみ? それとも動揺を誘おうとしている? いずれにせよ、それでどうなるものでもないわ。そろそろ終わりにしてもいいかしら?」

再び弾幕がデジェルを取り囲む。今度はデジェルから十センチも離れていない空間に無数の弾丸が現れた。

「どうかしら、これでまた回避できたらたいしたものだけど」

 

そう余裕を見せていたの表情を浮かべていたほむらの表情が、こわばる。

 

氷。

 

現れた瞬間デジェルに一斉に襲いかかるはずだった無数の弾丸は、現れた場所で一つ残らず凍り付き、空間で止まっている。そう、まるで時が止まったかのように。

 

「さきほどまでは様子をうかがっていただけのこと。この程度、絶対零度を操る私には造作も無い。では今度はこちらからいかせてもらおうか。。 ダイヤモンドダスト・レイ!」

 

デジェルの周りに現れた無数の氷塊、それに乱反射した太陽の光が眩いばかりの光芒となってデジェルを包む。

 

「目くらましなんて、またずいぶんと単純なギミックを使ってくるものね。そんなことでは。。」

と言いかけたほむらの動きがまた止まる。

 

光芒の中に現れたのは、無数の人影。氷塊の中からデジェルの無数の分身が姿を現すと、それぞれが宙を舞い、ほむらをとりかこんでいる。

どのデジェルも本物と見分けがつかない。さしものほむらもこの状況には戸惑っている。

 

「どうした?あの不思議な術を使わないのか?」

さきほどのほむらのように余裕を見せつつ、デジェルが問いかける。

その声に我を取り戻したほむらは、左腕の盾に手をかける。どんな状況であろうと、次の瞬間には巻き返せる。絶対の自信をもって盾に手をかけたほむらだったが。。

 

「どうした? また予想外の出来事に戸惑っているようだな」

「!? そんなはずは。。 どうして、なぜ貴方は動けているの?」

「事態がまだわかっていないようだな。自分の足下を、見るがいい」

 

そう言われて、ほむらは自分の足下に目を向ける。

視界にはいってきたのは、蜘蛛の糸よりも細い、一本の糸。光をうけてキラキラと輝く細い糸が、自分の足に巻き付いている。銃で撃っても、ナイフで切りつけても、まるで鋼のように硬いその糸をどうしても切断することができない。

 

「それは、絶対零度の凍気で編まれた糸。そうやすやすと切ることはできない。さて、謎解きの時間だ。その前に、ちょっとだけおとなしくなってもらおうか。。 カリツォー」

 

ほむらのまわりに、いくつもの氷の輪が現れる。それらは次々に数を増やすとともにほむらの体を縛り上げていく。ものの数秒も経たないうちに、ほむらは完全に動きを封じられてしまった。

 

「すまないが、ちょっとの間、我慢していてくれ。君の操る魔法は”時間停止”だな? 魔法を発動することによって、君以外の時間を止めることができる。攻撃、防御、回避、あらゆる行動を妨げ、どんな不利な状況に陥っても魔法を発動するだけで逆転を可能にできる。全くもって、恐ろしい魔法を操るものよ」

「。。。」

 

「一見無敵に見えるこの魔法にも、弱点がある。暁美ほむら、君に物理的に接触している限り、時間の流れは君と同じとなる、つまり時間停止の影響を受けなくなるということだ」

「たったあれだけの時間でそこまで見抜かれていたなんて。たいしたものだわ。」

 

「君は自分のその魔法に絶対の自信を持っているようだな。だが、それ故にその魔法に頼りすぎている。戦い方も単調な一本調子で工夫がない。からくりに気づきさえすれば、勝負はあっけなく決まる。」

「それは認めるわ。そこまで見抜いているのなら、魔法少女としての私のもう一つの弱点にも気づいているのでしょうね」

「もちろん、だとも。君は魔法で時間を止めることはできても、他の魔法少女のように魔法で攻撃することはできない、そうだろう?」

 

この男の洞察力は底が知れない。ほむらは、諦めたかのようにため息をつく。

結果を受け入れて落ち着いたほむら。心に余裕が出てくると、今度は好奇心がわいてきた。

 

「その通りよ。勝負、あったようね。わかった、降参するわ。それにしても、なぜ私の魔法を見抜けたのかしら? 今まで、私から明かしたり、偶然バレたのを除けば、私の魔法に気づいた人はいないのだけれど」

「きっかけは、君がやたらと撃ちまくった銃弾だ。君のその銃は、魔法で生み出したものではなく、通常の拳銃やマシンガンだろう。私は氷を操る聖闘士。物質の温度を操ることに長けている。君の放った弾丸、その一つ一つを見ると、どれも少しずつ温度が違っている。温度の高い弾、低い弾。温度の高い弾は、弾の近くに火薬の煙や衝撃波を伴っていたが、温度の低い弾にはそれがない。また、銃弾のライフルマークを見てみると、温度の高い弾は、温度の低い弾に比べて、摩耗が進んだ銃身から発射されていることもわかった。これらから私が立てた仮説は、弾は同時に放たれたのではなく一つ一つ順番に放たれたということ、そして発射された弾は一定時間経つとその動きを止めるということだ。」

「。。。」

 

「君は、私から等距離で弾が停止するように、自分の立ち位置を変えながら丹念に撃っていたようだが、私にはその動きはつかめなかった。結構な手間と時間をかけて君があれこれやっているのに、私はそれを認知できない。そこで私はもう一つ仮説を立てた。君は私の時間を一時的に止めつつ、自分はその影響を受けず自由に行動できるのでは、とね。そこで、それを証明するために、ちょっとした仕掛けをさせてもらった」

「仕掛け?」

「君の盾を見るがいい」

 

ほむらは、自分の左腕に取り付けられた盾を見てみた。

「氷!?」

「そうだ。私は、細かく砕かれた氷を、君の盾に付着させたのだ。そして全く同じものを自分自身の聖衣にも。しかも、絶対零度の氷ではなく、融点ギリギリの比較的高速で融ける氷をな」

「なぜそんなことを。。。はっ!?」

「気がついたようだな。君の盾の氷は、私の聖衣の氷に比べ、より融解が進んでいた。君の氷のほうが、私の氷よりもより多くの時間を経ていた、ということだ」

 

「私の時間が止められていることはわかった。その次は、時間操作からいかに逃れるか。解決のヒントは、先ほどの魔女がくれた。糸でもなんでも、なんらかの手段で君と物理的に接触を保っている限り、私は君と時間を共有できる、つまり時間停止から逃れることが出来るとね。あの魔女はそれを意識していなかったようだが、君はやたらと慌てて冷静さを失っていた。自分の最大のアドバンテージが完全に失われてしまうのだから、無理もない」

 

「あなたには勝てる気がしないわね。敵対するよりは、協調路線をとったほうがよさそうね」

「そういうことだ。ちょっと手間はかかったが、物わかりがよくてなによりだな。」

 

パチパチパチ。。♪

 

突然、二人の背後から誰かの拍手が聞こえてきた。

 

「ハクレイ殿、いつからそこに?」

「「正体を隠す理由は私にはない」のあたりだな」

「ほとんど始めからではないですか?」

 

突然現れた老人は、デジェルとなにやら親しげに話している。

 

「あなた、あのときエイミーを助けてくれた。。」

その場に放置される格好になったほむらが、じれったくなって口をはさむ。

 

「そうじゃ。そういうそなたは、物陰からわしらをのぞき見しておったな?」

「もう、嫌になるくらい何でもお見通しなのね。ということは、あなたもデジェルと同じ聖闘士なのかしら?」

「その通り。ワシは、白銀聖闘士、祭壇座アルターのハクレイと申す。暁美ほむらと言ったな? そなた、時間がないと言っておったじゃろう。ならば、さっそく話を進めさせてもらおう。会わせたいお方がいる。ついて参れ」

「問答無用なのね。わかったわ」

 

3人は連れだって、いずこかへと去って行った


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