ダンジョンに生きる目的を求めるのは間違っているだろうか 作:ユキシア
ラキア王国が軍を引き連れてオラリオに行軍。
そのラキア王国に姉さん達がいる【ロキ・ファミリア】などの上位派閥が迎撃しているなかでオラリオはいつもと変わらぬ日常を過ごしている。
尚且つ私も暇があれば書庫にある本を持って
「桜、どうかしたの?」
「いや、何でもない」
心配そうに尋ねてくるベルに問題がないと答える。
そう、現在進行形で私はベルとデートしている。
『桜!僕と一緒に街を歩こう!』
それよりも驚くべきことはベルが私を誘ったということだ。
あの奥手のベルが、積極的に女である私を強引に外へ連れ出した。
外に連れ出して初めは買い出しに付き合って欲しいと思ったが違った。
普通にお洒落な店に連れて行かされたり、食べ歩きしながら食べさせ合ったりと普通のデートをしている。
どちらかと言うとベルは引っ張られる側だと思っていたがまさかベルからデートに誘われるとは微塵も思わなかった。
買い出しや
だが、今のところそのような気配もなくいつものように無邪気そうに笑うベルを見て普通に私とのデートを楽しんでいる。
いったいどういうことだと考えているとあることが閃いた。
なるほど、そういうことか……。
「ベル。今日は姉さんとのデートの予行練習に私を誘ったのか?」
そう、今は姉さんはオラリオの外でラキア王国の軍隊と戦っている。
疲れて帰って来た姉さんを誘って好感度を上げる為の練習として私を誘ったと推測した。
それなら姉さんに似ている私を誘うのも頷ける。
全く、それならそうと言ってくれればいくらでも練習に付き合って上げるというのに。
「え?何の話?」
「え?」
きょとんとした顔で尋ねるベルに私も首を傾げた。
「僕は桜と一緒にいたいから誘ったんだよ?」
「………」
目頭が熱くなった。
ベルの癖に生意気なことを言うようになった。
どこでそんな誑し文句を覚えてきたんだ、こいつは……。
そういう台詞は神ヘスティア達に言ってやれ。
「ほら、あっちの方に行ってみよう!」
「あ、ちょっ!?」
私の手を握りながら走り出すベルに私は引っ張られる。
いったいどうしたんだ、今日のベルは……ッ!?
いつもと違うベルに振り回されながら私は北のメインストリートに来ていた。
主に服飾関係の店が多いここは様々な
ベルはその中で
和服から洋服まで種類豊富の服がある店にやってきたベルは私に言った。
「今日は僕がお金を出すから好きな服を買って!」
「いいのか?」
「うん!お金は溜めているから大丈夫だから!」
店も経営している私はそれなりに金はある。
少なくともベルの所持金の三倍は持っているが目を光らせているベルの好意を断ることは出来ずに了承した。
私は一応ある程度の服は揃えている。
金銭面を工夫する為に殆どが手作りだがせっかくなので色々試着してみよう。
和服から洋服まで試着して一つ一つベルに感想を聞いたがどれを着ても似合っているの一言で顔を赤くして目を逸らすばかり。
やっといつものベルらしいところが見えて少し安堵するが本当に今日のベルはどうしたのかと思ってしまう。
新しい服を試着してみようと物色していると前に姉さんが着ていた服を発見して試しに着てみた。
「どうだ?ベル」
「う、うん……」
顔を赤くしながら見惚れるのか凝視する。
なるほど、こういうのがベルの好みなのか。
先程とは違う反応をするベル。
私はその服をベルに買って貰い着たまま店を出た。
基本的には命のような和服などを着ている私にとって洋服で過ごすのは少しだけ新鮮味があると自分でもそう思った。
「次は繁華街に行こう!」
「はいはい」
やっといつもの調子になった私はベルに連れられて繁華街に足を運びベルと一緒に遊んだ。
「久しぶりに遊んだな……」
「うん!」
おもっきり遊んだ私達は南西のメインストリートにあるアモーレの広場で休んでいる。
この世界に来てダンジョンに潜ったり騒動に巻き込まれたりと色々大変だったから遊ぶ余裕もなかったが結構遊んでしまった。
帰ったら神ヘスティアに色々問い詰められるだろうな、ベルが。
まぁ、楽しかったから別にいいけど。
「それで?今日私を誘った理由は私の休暇か?」
「え、もしかして桜」
「流石に気付いたさ。お前は心底お人好しなんだから」
今日一日、ベルは女性が喜びそうなところばかり私を連れて行った。
そこで私は気付いた。
ベルは強引にでも私に休んで欲しかったのではないかと。
優しいベルの事だ。
日頃から忙しい私を休んでもらおうと考えて今日私を連れ出したのだろう。
ダンジョン探索、店の経営、家事など一日に休める時間など少ししかない。
「ハハ、やっぱり桜なら気付くよね」
ベルは観念したかのように苦笑しながら首を縦に振った。
「桜は僕達の為に色々してくれているから、その、恩返しがしたくて……でも何をすればわからなくて考えていると昔おじいちゃんが男なら女子を連れ出して楽しませてやれ!って思い出して」
「なるほどな。御祖父さんが」
ベルのハーレムや男の浪漫などはそのお爺さんの
一癖二癖あるであろう人に育てられたらそういう考えも持ってしまうのか。
そのベルの御祖父さんに呆れて、やっとベルが私を連れ出した理由に納得できた私は気の緩みと疲労で欠伸が出た。
「桜、もしかして眠たいの?」
「ん、まぁ、少しな」
「僕ので良ければ使う?」
自分の脚をポンポンと叩くベルの好意に私は甘えることにした。
「少し借りるな」
眠気を押さえられずにベルに膝枕してもらう。
周囲の人達から見たら私達は
この光景を神ヘスティア達が目撃したら大変なことになりそうだな、ベルが。
ベルの事を一人の男性としてではなく弟とでしか見ていない。
けど、たまには
そんなことを考えながら私は心地良いベルの膝枕に眠気が押さえきれなくなって眠りについた。