ダンジョンに生きる目的を求めるのは間違っているだろうか 作:ユキシア
ベルと共に朝帰り後、神ヘスティアの説教の後に私とベルはステイタスの更新を行ったのだが、今回はあまりにも熟練度がとんでもなかった。
耐久ならまだ理解できる。
ワンちゃんの攻撃で私は一度死んだ。その分熟練度が上昇するのも頷ける。
だけど、他はどういう訳か耐久に負け劣らず上昇している。
異常な熟練度上昇事態は私が持つスキル【目的追及】で納得できるが、ベルと一晩ダンジョンに潜っているだけでここまで上がるものなのか?
それとも私が知らないうちに私自身が目的を追求していた?
なら、私の目的はなんなんだ?
改めて私は私自身が探し求めているものを考えるが、いくら考えても結論には至らなかった。だけど、今まで足取りすら掴めることができなかった目的に近づけれただけでも収穫だと私は納得した。
「さて、ここか」
私はステイタスの更新後すぐにロキ・ファミリアがいる
ロキ・ファミリアの団長から正式な謝罪を受け取るためと恐らく交渉的何かをロキ・ファミリア団長から行う為だろう。
まぁ、後者はあくまで私の予測でしかないけど。
そんなことを考えながら私は門の前にいる人に私が来たことを告げる。
しばらくしてからワンちゃんが仏頂面で門を開けてきた。
「・・・・来な」
ワンちゃんはその一言だけを言って私をある一室へと案内してくれた。
そこにはあの時会ったロキ・ファミリアの団長フィン・ディムナを始め、エルフ、ドワーフ、アマゾネス姉妹、アイズ・ヴァレンシュタイン。第一級冒険者がいる部屋へと私は招かれた。
「よく来てくれた。生憎僕たちの主神は宴に行っていて不在だが、この場は僕が仕切らせて欲しい」
「はい、それでかまいません」
淡々と告げる私にディムナさんも何も言わず頭を下げる。
「先日、君の仲間を侮辱してしまい申し訳なかった。ベートにはそれなりの処罰を与えることにした」
「わかりました。貴方方の謝罪はしかと受け取ります。私からも私の仲間へそう伝えておきましょう」
「助かる」
頭を上げるディムナさんに私の後ろで舌打ちするワンちゃん。
「それから実はもう一つ、これは君に話がある。今日来てもらったのは実は謝罪だけではないんだ」
ディムナさんからの言葉に私は内心でやはりと思った。
私には【不死回数】というレアスキルがある。一日三回だけとはいえ死を回避できるスキル。あんな大所帯でそれを使えば今回のように話をしにくる奴も出てくるのは予測していた。
「申し訳ありませんが、その前に後ろにいるワンちゃんに用があるのですがよろしいでしょうか?」
「ん?ああ、そうだったね。確か負けた方は勝った方の言うことを一つきく約束だったね。ベート」
「・・・・わかってる」
後ろにいたベートは私の前に来て床へ座り込む。
「約束は約束だ。煮るなに焼くなり好きにしろ」
「じゃ、奴隷」
「は?」
私の言葉にワンちゃんや周りの人たちは口を大きく開けたが、私はここに来る前に買っておいたピンク色の首輪をワンちゃんの首にかける。
「ワンちゃんは今から私の奴隷、ペット、下僕。負け犬のワンちゃんにはお似合いだろう?」
「ふざけんなッ!何で俺が!?」
「あれ?煮るなに焼くなり好きにしろと言ったのはワンちゃんじゃなかったっけ?」
「ぐッ」
喉を詰まらせるように何も言えなくなるワンちゃんに私は追い打ちをかけるように命令を出した
「とりあえずじゃが丸くんでも買ってきて貰おうか。ここにいる全員分を」
「私、小豆クリーム味!」
真っ先に好みの味を告げるアイズ・ヴァレンシュタイン。その言葉にワンちゃんはまるで裏切られたような表情をしながら突っ走るように部屋から出て行った。
「あ、安心してください。変な命令などだしたりしませんから」
「あ、ああ。よろしく頼む」
引きながら了承するディムナさん。その横でエルフが深く息を吐いていた。
「では、改めて話を進めさせてくれ」
意識を切り替えるように息を吐いたディムナさんは真剣な表情で私に告げる。
「柳田桜。ロキ・ファミリアに
「・・・・・理由をお聞きしても?」
ディムナさんの言葉は私が予測していたことの一つだった。ここで私の口から嘘交じりの言葉より確実で戦力が増える
「簡潔に言うと君が欲しい」
「・・・・・申し訳ございませんが貴方のお気持ちにはお答えできません」
「団長!?そうなのですか!?」
胸が大きいアマゾネスの方が喰いついてきたがディムナさんが困惑気味に溜息をしながら首を横に振る。
「そういう意味じゃなくて戦力として君が欲しいんだ」
「私はLv1ですよ?少なくとも即戦力にはなりませんが?」
「ああ、だけど、将来性を考えれば君ほどの人材に声をかけないわけにはいかない」
片目を瞑りながら私を優秀な人材と言うディムナさん。
「つまり、貴方はロキ・ファミリアの将来の戦力として私が欲しいと?」
「その通りだ」
「なるほど、貴方の言いたいことは理解できました。ですが、その上で言わせてもらいます。その話はお断りさせていただきます」
「ちょっとどういうことよ!?団長からの勧誘を断るっていうの!?」
「ティオネ!?ダメだよ!」
胸が大きい方のアマゾネスが胸のない方のアマゾネス制止をきかず、私の胸ぐらを掴んでくるが掴んできた手を掴んで床へと叩きつける。
「貴女がロキ・ファミリア団長にどういう感情を抱いているのかは察しますが、これは私と貴女の団長との話です。関係のない貴女は引っ込んでいてください」
「この・・・・ッ!」
「ティオネ!」
怒気を隠すことなく私に向けてくるティオネだが、ディムナさんの一言に怒気を収める。
「重ね重ねウチの団員が申し訳ない」
「そう思うのなら初めからこの人をここへ呼ばないでください」
「彼女にも深く反省させておく。話を戻してもいいだろうか?断る理由を教えてもらいたい」
しぶしぶと元の席に戻るティオネ。
二大派閥であるロキ・ファミリア、それも団長からの直接の勧誘に断っているのだから理由ぐらい話してもいいだろう。
「私は今のファミリアをそれなりに気に入っています。断る理由がこれではいけませんか?」
「いや、納得出来る理由だよ」
笑顔で納得してくれるディムナさん、それ以外の人たちもそれ以上私に何か追求してくることはなかった。
「話はこれで終わりですか?それなら帰らせていただきます」
「ああ、だけど君たちに二度も無礼をした償いをしないまま返すのはファミリアの信頼に関わる。何か必要なもの、もしくは欲しいものはないだろうか?」
ディムナさんの言葉に私は自然に目を細める。
この
更に私やベルが所属しているのは零細ファミリア。必要なものも欲しいものも山のようにある。神ロキから神ヘスティアのことを前もって聞いていたのだろう。
中々腹黒い性格をしているな、この
だけど、この罠のある好意には甘えておくとしよう。支給されている武器では私の使い方に耐え切れずすぐに耐久値を超えてしまう。
もっと頑丈な武器が今の私には必要だ。
「わかりました。では、その好意に甘えて武器を一つ頂けませんか?」
「わかった。アイズ、武器庫まで案内してあげてくれ」
「うん」
アイズ・ヴァレンシュタインが私を連れて外に出ようした時。
「ああーーーーーーーーーーーッッ!!」
突然の大声に私は驚いた。
「どうした、ティオナ。突然大声を出して?」
エルフの女性がティオナに声をかけるがティオナは私をいや、私とアイズ・ヴァレンシュタインを指す。
「よく見たらアイズとこの子がそっくり!!」
私とアイズ・ヴァレンシュタインは互いの顔を見合わせる。確かに似ている。
髪の長さは違うが、同じ金髪で瞳の色も同じ。背格好は私の方が低いがアイズ・ヴァレンシュタインの妹と思われてもおかしくはないだろう。
「・・・・・・お姉ちゃんって呼んで」
「呼びませんよ」
何故そうなる?アイズ・ヴァレンシュタイン。