ダンジョンに生きる目的を求めるのは間違っているだろうか 作:ユキシア
【フレイヤ・ファミリア】と【イシュタル・ファミリア】の抗争から数日が経過した。
【イシュタル・ファミリア】は消滅して解散。その後【フレイヤ・ファミリア】には罰金や罰則が科せられたらしい。
それでも神フレイヤは約束通りにしてくれたことに少なからず私は感謝している。
本当にああしなければ今でもこうして・・・・・・・・勝手なことをした馬鹿二人に罰を与えることもできなかったろうからな。
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
何を驚いているんだ?たかが書物の二十冊ぐらいどうでもないだろう?
「さて」
私に言葉に命とベルは肩を震わせているがどうでもいい。
「始める前に何故自分達がここにいるのかわかっているよな?まずは命」
「・・・・・じょ、助言を頂いたにも関わらず考えずに行動してしまいました」
「うんうん。その通りだよな。で、ベルは?」
「・・・だ、団長なのに皆の意見も聞かなかったことと桜に一言も声をかけないで勝手に
「まだあるだろう?」
「・・・・春姫さんを助ける為にオラリオを出ようとしました」
二人の言葉に私はうんうんと頷く。
「その通りだ。命は春姫を救うことだけでその後の事やそれ以外のことを考えていなかったよな?まぁ、お前に関してはすでに言ったからまあいいが、ベル。お前はダメだ。お前は団長だ。それなのにオラリオに出るだと?春姫を助けてオラリオに出た後、お前がした責任を残った私達に押し付ける気だったのか?そうするしか手がなかったとしてもそうなる前に私に相談なり、話し合ったりすることはできたはずだよな?私が色々後のことも考えて動いている間に
言いたいことを言って私は命とベルの前に置かれている書物を指す。
「馬鹿なお前らには体だけじゃなく頭も鍛えてもらう。いくら馬鹿なお前らでも今よりはマシな馬鹿にはなるはずだ。だからしっかりと勉強しろ、馬鹿」
「「・・・・・・はい」」
肩を落としながら一番上にある本を取ってページを開く命とベル。
その二人をヴェルフ達は苦笑しながら見ていた。
「桜様。もの凄くご立腹ですね」
「まぁ、あいつもベル達のことが心配だったんだろう」
「うんうん、あれも桜君なりの愛の鞭ってやつだよ。さて、ボクは巻き込まれないうちにティア君と遊んでくるぜ」
「では、リリもお供します」
「俺は鍛冶の仕事でもしてくるか」
「で、では私はお飲み物でも」
新しく【ファミリア】の一員になった春姫はベル達に飲み物を持って来てくれた。
「桜様もどうぞ」
「ありがとう、春姫」
お茶を受け取り一口飲む。
うん、お茶を淹れるのが上手いな、春姫は。
春姫は入団直後自ら
「どうだ?まだ数日だけどここには慣れてきたか?」
「はい。皆様のおかげで今もこうしていられます」
微笑みながら答える春姫の笑みは本当に楽しそうに笑っていた。
まぁ、娼婦生活からまともな生活ができるようになったんだから当然と言えば当然か。
「そうか、何か困ったことがあれば言ってくれ。間違ってもこの馬鹿二人のようにはならないでくれよ」
「あ、あはは・・・」
苦笑する春姫はテーブルに置いてある命とベルの小テストを眺める。
「それはベルと命がちゃんと勉強したことが頭に入っているかのテスト用紙だ。春姫もしてみるか?」
「え、よいのですか!?ぜひ受けさせてください!」
意外にやる気を出す春姫にベル達用の二枚目の小テストを代わりにやっておらう。
「出来ました!」
数十分後。早くも春姫は小テストを終わらせて採点すると9割は正解していた。
意外に頭がいいんだな、春姫は。
そういえば高貴な身分だと命から聞いたことがあったな、英才教育でも受けていたのだろうか?
「凄い・・・・」
「流石は春姫殿・・・」
「そこの馬鹿二人。しっかり勉強しろ」
春姫を称える馬鹿二人に声をかけて再び書物へと視線を向けさせる。
全く隙があればさぼりやがって・・・・。
「春姫。この二人は私が見るから春姫は自分の仕事をしてくれ」
「わかりました。それでは後程何か甘い物でもお持ち致します」
自分の仕事に取り掛かる春姫。
そんな春姫を迷宮探索に連れて行こうと今はリリ達と相談中。
春姫が使う『妖術』は強力だ。来てくれたら探索も少しは楽になる。
だけど、万が一に誰かに知られたらという危険もある為、今はまだ何とも言えない。
だけど、近い内にティアはダンジョンに連れて行くことは決定した。
ある程度人にも慣れてきている為、ダンジョンでどこまで通用するかお試しで今度潜るようになった。
とはいってもティアの魔法は治癒と防御。
後方支援だから私達がしっかりとしていれば特に問題はないだろう。
そう思いながらベル達の勉強を見つつ本を読む。
こうしてゆっくりと読む時間も最近はなかったからな・・・・・。
それにしてもこの世界の教育水準は私がいた世界より低いな。
いや、世界そのものが違うから当然と言えば当然だろうけどその辺の違和感はまだなくなりそうにないな。
それに詳しくはまだわからないがこの世界でも『学区』と呼ばれるところがあり、私の世界では学校のようなものがあるらしい。
まぁ、かなりの金はいるらしいけど。
あー、そう考えるとティアの勉強は私が教えたほうがいいな。
金もかからないし、私が教えた方が色々安心だ。
時間が経ち、夕日が沈みかける時、ベルと命の小テストの採点をしていた。
二人はテストの結果が気になる余裕もなくテーブルに突っ伏している。
やはり、たまにはこうして勉強をしたほうがいいな、と思いながら採点を終わらせる。
「ベルも命も8割正解。お疲れ様」
「や・・・・やっと、終われました・・・ね・・・ベル殿」
「そ・・・そうだね・・・・」
突っ伏しながらも終わったことに喜ぶ二人を見て私は微笑む。
「だけど、継続は力。毎日は流石にきついだろうからたまにはこうして勉強するから普段からも勉強するように」
私の言葉に二人は何も言わない動かない屍のようになった。
「さて、いつまでも死んでないでそろそろ夕飯にするから食堂に行くぞ」
「「・・・・・はい」」
目が完全に死んだ魚のようになっているベルと命を連れながら食堂に到着するとすでに神ヘスティア達が集まっていた。
「うおおおおっ!?ベル君!命君!目が、目が完全に死んだ魚のようになっているよ!気をしっかり持つんだ!」
「ベル様!お気を確かに!」
「命ちゃん!しっかりして!」
「あはは、神様、僕・・・・いっぱい勉強して頭も強く・・・なりましたよ・・・」
「春姫殿・・・・自分は・・・大丈夫です・・から・・・」
「【森林の恵みよ。この者に癒しを】」
ベルと命の様子を見て驚く神ヘスティア達を無視して私はキッチンへと向かって夕飯の準備に取り掛かる。
それとティア。ベルと命は怪我をしていないから魔法を使わなくても問題はないぞ。
「なぁ、桜。いったい何したんだよ?」
「別に。ただ勉強を教えただけ」
唯一ヴェルフだけが私に声をかけてきたが私は本当に勉強を教えただけだ。
ただその量がベルと命の頭の容量をオーバーしただけ。
さて、そんなことより今日は何を作ろうか・・・・・。
しばらくして元に戻ったベル達と皆で夕飯を食べてその日の馬鹿二人の勉強は終わった。