ダンジョンに生きる目的を求めるのは間違っているだろうか 作:ユキシア
ベルと命の救出と春姫を攫う為に私達は第三区画前、【イシュタル・ファミリア】
「ここにベル君達がいる筈だ、通してくれ!」
娼館街の入り口を封鎖する二人のアマゾネスに神ヘスティアが叫んだ。
「女神様ぁ、証拠はあるんがッ!?」
「な、ぐっ!?」
「さぁ、早く行きますよ」
あまりにも白々しいアマゾネス二人の意識を刈り取って私はヴェルフ達に進むように進言するが皆は何故か唖然としていた。
全く何をしているんだ?こっちは時間がないというのに・・・・。
「・・・・容赦ねえな」
「というより手慣れていませんか?リリは桜様以上に相手の意識を刈り取るのが上手い人は見たことがありませんよ」
知った事か。
本来なら尋問でもして吐かせてから言質を取ろうと思ったけど、ティアの前では教育上よろしくないし、尋問する時間も勿体ない。
ヴェルフ達の言葉を無視して私達は第三区画へ入り、目的である『
満月の光が必要になる儀式ということは確実に外でするはず。そして、誰にも邪魔がされない場所と言えば自分達の
走っている私達に突然の爆発音が聞こえて顔を上げると視線の先にベルの魔法である【ファイアボルト】が見えた。
「桜君。先に行ってくれ」
ベルの魔法を見て神ヘスティアがそう言った。
「ボク達が一緒にいると君の足を引っ張ってしまう。だから先に行ってベル君達を助けに行ってあげてくれ」
神ヘスティアの言葉を聞いた私はヴェルフ達の方に視線を向けると全員頷いて応えた。
「わかりました。では、先に行きます」
足に力を入れて一気に加速する。
ヴェルフ達から離れて行き、目的である『
さっきの【ファイアボルト】といい、恐らくはベルが囮になって命が春姫を助けに行っているのだろう。というより、捕まったんじゃなかったっけ?あの二人。
そんな疑問を抱いていると二人のアマゾネスと目が合った。
「【舞――」
言葉を発する前に瞬時に接近して両手で口を塞いで壁へと叩きつける。
「いいか?お前達は私の質問に正直に答えろ。答えるのなら一回頷け。嫌なら二回頷け。いいな?」
私の言葉にアマゾネス達は一回頷いたのを確認して一人気を失ってもらう。
喋るのは一人で十分。
「さて、それじゃ、まずはお前達の計画を教えてもらおうか?」
残った一人のアマゾネスから情報を聞き出すことに成功した私は残った方にも寝てもらい、別館にある空中庭園を目指す。
やっぱり私の推測通り、春姫を使って【フレイヤ・ファミリア】に戦争を仕掛けるつもりだったのか。
【イシュタル・ファミリア】に見つからないように慎重に駆けあがっているとベルとモンスター、いや、恐らく【イシュタル・ファミリア】団長であるフリュネ・ジャミールとベルが戦っているところが見えた。
正直、ベルを助けに行ってやりたいがまだこちらに気付いていない以上、私は上へと行った方がいいだろう。
それにベルが表だって囮になっているはずだ。なら、私は目的である春姫を攫うことに専念した方がベルの為にもなるだろう。
別館の空中庭園へ進む空中廊下がある四十階へ向かっていると上から何かの衝撃音が聞こえると命が落ちているのを見てしまった。
「――ッ!?」
一驚しながらもすぐに窓を突き破って空中で何とか命をキャッチした私は夜桜を壁に突き刺して勢いを止める。
何とか勢いは止まり、空中でぶら下がっている状態になるが何とかなったと一安心した。
「さ、桜殿・・・・どうしてここに」
私の登場に驚く命に私は頭突きをかました。
「~~~~~っ!?」
デコを押さえて涙目になる命。
本当なら拳骨の一つでもしたかったが両手が塞がっている以上それは後でしよう。
「命・・・・帰ったらお前とベルには言いたいことが山ほどあるから覚悟しておけ。せっかく人が春姫を助ける為にあちこち動いていたというのにそれを無駄にしやがって」
「も、申し訳ございません・・・」
苛立つ私に命が謝罪してくるが謝って済む問題じゃないんだよ。
こっちはあちこち動いては調べた私の努力を無駄にしやがって・・・・。
「聞いたぞ?お前とベルは『身請け』の為に金を稼ごうと目の前にやっていた
「さ、桜殿・・・お叱りは後でしっかりとお聞きしますので今は・・・」
苛立ちのあまり思わず言ってしまったがこれでもまだ足りないぐらいだ。
だけど、状況も状況だ・・・・後でしっかりと説教してやるとしよう。
息を吐きながら落ち着かせて命と一緒に何とか館の中へと入る。
「命。お前はこのまま空中庭園へと向かえ。私はベルを助けてから行く」
「わかりました。どうか、ベル殿を頼みます」
そこで命は空中庭園へと行き、私はベルがいた場所へと向かう。
だけど、私が到着したころには既にベルはいない。
その代わりかどうかはわからないが上半身裸の肌黒の男と裸でどこか怒っている神イシュタルがいた。
まぁいい・・・・・せっかくだから会っておこう。
「誰だッ!?」
降りてきた私に声を荒げる神イシュタルに私は一礼する。
「お初にお目にかかります。私は【ヘスティア・ファミリア】副団長、二つ名は【舞姫】、柳田桜と申します。私の団長と団員がお世話になりました」
「・・・・ああ、お前か、もう一人のあの女のお気に入りは。なるほど、確かにあいつ好みだ」
あの女というのは神フレイヤだろう。
というより、神イシュタルも美の女神だったな、でも、何故だろうか、そこまで美しいとも思えないな・・・・。
そんな疑問を抱えていると神イシュタルに苛立ちが消えて唇を舐めて私を見た。
「ちょうどいい、あのガキには妙なスキルのせいで虜にできなかったがお前なら出来るだろう」
艶然と微笑む神イシュタルの横にいる肌黒の男が動いた。
というより、妙なスキルというのはベルの【
「タンムズ!その女を捕まえろ!今度こそ骨の髄まで『魅了』してやる!」
私を捕まえようと襲いかかってくるタンムズを回避するが、予想以上に速いことに気付いた。
「タンムズはLv.4だ。Lv.3のお前では逃げられん!」
神イシュタルがそう告げる。
それに対して私はちょうどいいと思った。
リューには通用出来るようにはなったが他の奴では通用出来るか試してみよう。
「この!大人しくしろ!」
襲いかかってくるタンムズ。
だけど、私はそのタンムズを斬った。
どうやら通用できるな、これならLv.5でも多少は通用できそうだ。
斬られたタンムズを見て納得する私に神イシュタルが驚いているまま。
「な、何故だ!?何故、タンムズがああもあっさりとやられる!?Lv.3ではないのか!?お前は!?」
自分の従者が斬られたことに納得も行かずに叫ぶ神イシュタル。
ああそっか。第三者の視点からだとそう見えるのか。一対一の決闘でなら使えるけど、多数相手だと使えないか。
新しい技の反省点に気付く私はまだまだ練習が必要だと判定して神イシュタルに言う。
「私はLv.3ですよ。それでは神イシュタル、私はこれで」
「ま、待て!?」
駆け上がる私に声を荒げて止めようとする神イシュタルに私は足を止める。
「神イシュタル。貴女と神フレイヤの違いに私は気付きましたよ」
「何!?」
「それは――――」
違いについて言おうとした瞬間、別館である空中庭園の方から爆発音が聞こえた。
それを聞いた私は違いを神イシュタルに告げずに急いで駆けあがって行く。
神イシュタルと神フレイヤの違い。
それは―――――品性。
それ以外ないだろう。恐らく神フレイヤも同じ答えを出すだろうな。
・・・・・・・って、何故神フレイヤと共感してしまうんだ、私は。
神フレイヤに染められてきているのかと思うとゾッと背筋が凍った。
私の心の中で神フレイヤが嬉しそうに微笑んでいるように見えた。
それを追っ払って私は空中庭園へとたどり着くとそこには憤怒を身に滾らせているフリュネとアマゾネス達。
そして、ベルと
「私はっ・・・・・私は娼婦です!?」
自分の体を震わせて抱きしめながら春姫は叫んでいた。
「貴方達の重荷になりたくない!?汚れている私に、そんな価値はない!!」
「僕達が何もできないとか、自分の価値がないとか決めつけるなよ!?」
「―――――――っ!?」
「一番恥ずかしいことは、何も決められずに動けないでいることだ!!」
ベルの言葉に春姫は瞳を一杯に見開かせる。
「僕はまだ、貴方の願いを何も聞いちゃいない!」
ベルは春姫に向かって手を伸ばした。
囚われのお姫様を救う英雄のように。
「貴方の本当を教えてください!!」
響き渡るベルの声に春姫の頬に涙が流れた。
「・・・・・春姫ぇ」
だが、春姫の背後でフリュネが春姫を名を呼び、春姫は体と尾も震わせながらゆっくり唇を開く。
「【――――――大きくなれ】」
「っ!?」
春姫は詠唱を始めた。
まずい、春姫の魔法は一時的な【ランクアップ】。
ここでフリュネに使われたらいくらベルや私でも勝てるかどうかはわからなくなる。
詠唱を止めようと動く私にフリュネを始め、多くのアマゾネス達やベルが私の存在に気付いた。
「お前達!あいつを止めな!」
襲いかかってくるアマゾネス達に私は夜桜と紅桜を引き抜く。
「【其の力に其の器。数多の財に数多の願い。鐘の音が告げるその時まで、どうか栄華と幻想を】」
アマゾネス達を相手にしながらも春姫は詠唱を止めなかった。
「英雄気取りの文句も無駄だったねぇ~!?ゲゲゲゲッ、今からたっぷり借りを返してやる!」
大戦斧を受け取ったフリュネは嗜虐的笑みを浮かばせていた。
「【―――――大きくなれ】」
アマゾネス達と戦いながら私は春姫の『魔力』の流れに気付いた。
「【神饌を食らいしこの体。神に賜いしこの金光。槌へと至り土へと還り、どうか貴方へ祝福を】」
詠唱は春姫の同胞である【イシュタル・ファミリア】を素通りしてベルへと送られて薄い霧状の『魔力』の光雲が生まれるとベルの頭上に、
「【―――――大きくなれ】」
春姫の詠唱を止めようとするアマゾネス達を今度は私が行方を塞いだ。
そして、春姫の詠唱が終わった。
「【ウチデノコヅチ】」
燦然と輝く光槌が落ちてベルを包み込んだ。
「う、うおおおおおおおおおおおおおおおおっ!?」
四方の
確かにこの力があれば神フレイヤと戦争しようともするのも理解出来るな。
「は、春姫ええええええええ!?」
激昂したフリュネは春姫の首を掴んで宙に掲げる。
「アタイ達を裏切るのかァ!?さっさと解けっ、この出来そこないの娼婦めェ!?」
フリュネの言葉を聞く限り、どうやら時間制限か春姫の意志で解除ができるのだろう。
春姫を助けようと動く私とベル。
「もう、体を売りたくないっ・・・」
首を締め上げながら春姫は言った。
「もう、誰も傷付けたくない・・・・!」
震えながらもその声には強い意志を感じられた。
「死にたくない・・・・・!」
次の言葉に私とベルは動き出す。
「助けて・・・・っ!」
群がるアマゾネス達をベルは吹き飛ばしながら私は斬り捨てながら突っ走る。
「なァ!?」
「あああああああああああああああああああああああああッ!!」
一手早くベルが先の到着して大剣の一撃を繰り出すがフリュネは大戦斧で防いだが、後方へと弾き跳ぶ。
だけど、ベルの腕の中には春姫はいなかった。
もちろん私でもない。
「アイシャさん・・・・!」
アイシャと呼ばれるアマゾネスのに春姫は抱きかかえられている。
いますぐに
だけど、一番の問題が立ち上がった。
「どけぇええええええええええええええええええええええッ!?」
頭に血がのぼったフリュネは味方事蹴散らしながらベルに接近する。
だけど、そうはさせない。
私は夜桜と紅桜でフリュネの攻撃を捌く。
「
「どきなぁあああああああああああこの不細工があああああああああああああッ!!」
怒りで我を忘れているフリュネの攻撃を捌きながらこの場を離れる。
ベル。こいつは私が何とかしてやる。
だからお前は英雄らしく囚われの
「ぬらあッ!」
迫りくる大戦斧を捌きながら桜も負けじと反撃する。
「ゲゲゲゲゲゲゲゲェッ!?やるじゃないかァ!?」
「笑うな、気色悪い」
血走った眼で交渉するフリュネに桜は淡々と毒を吐く。
「ゲゲゲゲゲゲェ!不細工の言い訳にしか聞こえないねぇ!?」
それは都合のいい耳をしているな。と桜は内心で思いながらもフリュネの大戦斧を躱し始めて反撃するが見た目に反して素早い動きでフリュネは桜の攻撃を躱す。
「あの力があれば、Lv.6だろうと関係ないッ!!【剣姫】という小娘もねェ!?」
怒りが高ぶり、フリュネは怨嗟を放つ。
「あんな人形女が最強で、美しいだってェ!?冗談じゃないよォ!!」
フリュネは目の敵にしているアイズに憎悪して、敵愾心をむき出しにしながら叫んだ。
「つくづく腹が立つよォ、お前は!?あの女と同じ顔をしやがって!?」
顔つきが似ている桜にフリュネの怒りはさらに高まるなかで桜はただ冷静に攻撃を捌く。
「あの力があれば、あんな不細工どうってことないんだよおおおおおおおおォ!!」
桜に向かって大縦断の一撃を放つフリュネに対して桜は横に跳んで躱して口を開く。
「なるほど。お前はアイズ・ヴァレンシュタインを妬んでいるのか。自分より美しい存在に許せないから春姫の力を使って倒そうと。フフ」
「何が可笑しいのさぁ!?」
思わず笑ってしまった桜にフリュネは吠えると桜はフリュネに向かって言った。
「あまりにも醜いと思ってな、体だけじゃなく心までも。断言してやる。お前はアイズ・ヴァレンシュタインには勝てない。例え、春姫の力を使ったとしてもな」
桜の言葉にフリュネは今までにないくらいの怒りが内側から溢れ出て歯を噛み締める。
「こ・・・この・・・不細工がぁぁああああああああああああっ!!その顔をグチャグチャにしてやるよぉおおおおおおおおおおおおおッ!!」
完全に怒りで我を忘れたフリュネは砲弾のように桜に突撃する。
大戦斧を振り上げて叩き潰さんとばかりの力を込めるフリュネの攻撃は桜の体をすり抜けた。
「なっ!?」
怒りで忘れていたフリュネさえもそれに驚き目を見開いたが、すぐに自分の体が斬られていることに気付くと一度落ち着きかけた怒りが再び頂点へときた。
「ぬああああああああああああああああああああああああッ!!」
大戦斧を振り回すフリュネだが、一向に桜に当たらないどころが桜の姿さえも見えなくなった。
その代わりに自分の体はどんどん斬られていく。
「どこだいっ!?いったいどこに隠れたんだい!?」
喚き散らすフリュネの背後に桜は立っていた。
「ここだよ」
「っ!?」
我を忘れていたせいか、桜の存在にやっと気づくことができたフリュネは体を回転させて背後にいる桜を攻撃するが再び桜は姿を消しながらフリュネにまた一太刀入れる。
「小賢しいねェ!?それがあんたの魔法かい!?」
「お前は恩恵に頼りすぎているんだよ」
桜はずっと考えていた。
いずれ戦う
再戦する時が来た時も自分の方が断然に格下。格下が格上を倒す方法を。
Lv.を上げたとしてもそれじゃ相手の方が何歩も上回っている以上それ以外の方法を考えていると桜はあることに気付いた。
いくらLv.が上がっても生物の視界の広さ、体の構造までも変えることができないことに。そして、桜だけの武器もあった。
前の世界で身に着けた武術を活かせることができるのかもしれないと。
桜は自分の主神であるヘスティアからダンジョンへ行くことを禁じられて以来、自分よりLv.が上のリューとずっと特訓していた。
打撃、投げ、締め技。そのどれもリューには通じなかった。
そこで桜は相手への攻撃に通じるものは技は意味がないと思い、別の方向性を考えた。
足さばき、抜き足、歩法など相手を攪乱させたり、懐に潜りやすく技法を身につければどうなるのだろうかと。
そして、それは成功した。
Lv.が上のリューにも十分に通用することができた。
そして、桜はフリュネに動きや重心を錯覚させながら常に死角へと移動することで自分よりLv.が上のフリュネと互角に戦っている。
「でも、まだまだあいつには通じないな」
相手がフリュネだからこそまだ通用している足さばきだが、武人であるオッタル相手にはこの程度ではまだ通用しないことに桜は気付いた。
そして、悔しいことにいくら上手く動くことができてもLv.の差はあまりにも大きかったことに桜は気付いた。
まぁ、初めての実戦にしては良しとしておこう。
そう結論を出した桜は詠唱を唱える。
「【瞬く間に散り舞う美しき華。夜空の下で幻想にて妖艶に舞う。暖かい光の下で可憐に穏やかに舞う。一刻の時間の中で汝は我に魅了する。散り舞う華に我は身も心も委ねる】」
「詠唱!?させると思っているのかい!?」
桜色の
「【舞う。華の名は桜】」
迫りくる大戦斧だが、一瞬早く桜の詠唱が完了した。
「【舞闘桜】」
魔法を発動した桜は一閃で、大戦斧を弾き飛ばす。
「っ!?」
フリュネは【舞闘桜】を発動した桜を見て認めてしまった。
自分は女神よりも美しいとフリュネは心の底から思っていた。
自分より美しい女なんていないと断言してもいいぐらいに自分は美貌なのだと思っていた。そんなフリュネは一瞬とはいえ認めてしまった。
今の桜は自分より美しいと。
「ぐっっ、おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!?」
フリュネは一瞬とはいえ、自分よりも美しいと認めてしまった桜が許せずに咆哮を上げて疾駆した。
自分より美しい奴はいてはならない。
自分以上の美貌の持ち主なんているわけがない。
だから目の前にいる桜を潰して自分の方が美しいと証明しようと桜に突貫するが、桜は冷静に向かってくるフリュネに対して夜桜と紅桜を構えた。
『――――――――っ!!』
交差する桜とフリュネ。
「がふ・・・・・・」
どしんと巨体であるフリュネは倒れて桜もその場で膝をつく。
「ふぅ・・・・・終わった・・・」
息を吐く桜はその場で腰を下ろしてポーションを飲む。
「まだまだか・・・・・」
フリュネとの戦闘での反省点に気付いた桜はまだまだ精進しなければと決意する。
今回勝てたのは相手がフリュネだからこそで。万が一、別の第一級冒険者だったら結果は逆になっていたかもしれない。
それでも、相手はLv.5。
初めて格上に勝てたことに少なからず桜は歓喜していた。
「フリュネ・ジャミールに勝利したか」
「・・・・・・・オッタル」
桜の前に現れたのはいずれ倒す強敵であるオッタルが姿を現した。
「流石はあの方の寵愛を受けるに値する。だが、その程度ではまだまだか」
「・・・・・・」
表情一つ変えずに言うオッタルに対して桜は不愛想な顔をしたまま何も言わなかった。
オッタルの言葉通り。この程度では駄目だと桜自身も思っている。
いつかの敗北を今度は桜がオッタルに与える為にはまだまだ力不足。
「もうじきここは落ちる。今の内に避難しておけ」
オッタルは腰から
最後の交差で深い傷を負ったことを見抜かれたことに気付かれながらしぶしぶ
「・・・・借りだとは思わないからな」
敵に塩を送られたことに悔しむあまり思わずそう言ってしまうが気にも止めていないのかオッタルはその場から姿を消した。
そして、一夜にして【イシュタル・ファミリア】は消滅した。