ダンジョンに生きる目的を求めるのは間違っているだろうか   作:ユキシア

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絶体絶命

「どういうことだい!?ロキ!ふざけるのもいい加減にしないと本気で怒るぞ!?」

 

ベル達が中層に向かったその日にロキの言葉にヘスティアは激高していたがロキは冷静に返した。

 

「ふざけとらんわ。本気で言っとる。桜たんをうちの【ファミリア】に改宗(コンバージョン)することを認めてうちに預けろや。ドチビ」

 

ロキは桜の所属している主神ヘスティアに直接桜の改宗(コンバージョン)するように言いに来ていた。

 

「フン!そんなにも桜君が欲しいのかロキ!生憎だけどボクは君みたいな母性の欠片もない神にボクの子は渡さないぞ!」

 

当然のように反対するヘスティアはロキの無乳(コンプレックス)を笑うヘスティアは見せびらかすように自分の豊満な胸を張るがロキは怒ることもしなかった。

 

「・・・・・あれ?」

 

ヘスティアはロキの様子に唖然とした。

いつもなら「なんやと!?このドチビがっ!?」とでも言って取っ組み合いになるはずなのに今回に限ってはそれがなかった。

 

「・・・・・前に桜たんがうちに自分の【ステイタス】を見せてくれたんや」

 

「なっ!?ロ、ロキ!【ステイタス】は」

 

「知っとるわ。せやけど黙って聞け」

 

ヘスティアでも知っている【ステイタス】の禁制(タブー)。ロキの行動をギルドにでも教えれば罰則(ペナルティ)が発生される。

だけど、ロキはそれを承知した上でヘスティアに話した。

 

「ハッキリ言って異常やで、桜たんの【ステイタス】。もう片方の子のことは桜たんの約束で詮索はせえへんけどこれだけは言わせてもらうわ、ドチビ」

 

目を開けてヘスティアに告げる。

 

「あのままやと桜は壊れてしまう。そうなる前にうちに預けろや、ヘスティア」

 

「っ!?」

 

いつものドチビではなく名で呼んだロキの真剣さにヘスティアは目を見開く。

それだけロキが本気だとヘスティアに伝わったからだ。

だけど、ヘスティアは桜をロキに預ける気なんてなかった。

 

「桜君はボクの大切な家族だ。ボクとベル君でしっかりと桜君を支えてみせる」

 

ヘスティアにとって桜も大切な子であり、家族。

全力で支え、助けてみせる。

そうロキに告げるヘスティアにロキは冷たく言い返した。

 

「じゃあ、聞くけど、ドチビは桜たんに何をしてやれるんや?支える言っとるけど具体的にはどうないすんねん?」

 

「そ、それは・・・」

 

言葉を濁らすヘスティアにロキの視線は鋭くなる。

 

「金も、設備も、人材もなにもかも足りとらへんドチビにいったい何ができるって言うねん?」

 

【ヘスティア・ファミリア】は零細ファミリア。

ロキの言う通り何もない。日頃の生活費だけで精いっぱいだった。

 

「うちは桜たんを気に入っとる。素質や容姿だけだけやないで?桜たんのおかげでアイズたんは前より柔らかくなってきとるし、少なからずうちの子たちにもいい影響を与えとるんや。そんな桜たんを死なせたくあらへん」

 

既に【ロキ・ファミリア】に少なからず関りを持っている桜。

その桜の影響で動いている者も何人もいる。

 

「それにな、桜たんは自分の事だけやない。ドチビ達のことも考えて動いとるんや」

 

最後にロキはヘスティアに告げる。

 

「うちの【ファミリア】なら桜たんを何とかしてやれるかもしれへん。ドチビ、桜たんのことを大切に想っとるなら桜たんの未来のことを考えてやり」

 

それだけを告げて去っていくロキにヘスティアは何も言い返せずに自分の無力さを悔やむかのように手に力を入れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私達は今はダンジョン13階層、中層にへと足を運んでいた。

 

「ヴェルフ!後ろからヘルハウンド!」

 

「間に合わねえ!頼む!」

 

13階層で私達は中層のモンスターであるヘルハウンドと戦っている。

弓矢でヴェルフやベルの死角から襲ってくるモンスターを射る、もしくは牽制しながら戦っている。

 

「フッ!」

 

射る私の矢はヘルハウンドの頭を貫通して灰になるが次から次へと新たなモンスターが私達を襲ってくる。

上層とは違うと聞いたけど本当に休む暇もないな。

 

「リリ!矢を!」

 

「はい!」

 

リリから矢を貰いベルとヴェルフをサポートしつつ倒している。リリはモンスターを少しでも倒しやすいようにするために動きを封じている。

 

「ヘルハウンドの炎が来ます!桜様!」

 

少し離れたところにヘルハウンドの口から火炎が漏れている。

今のベルとヴェルフでは炎が来る前に倒すのは無理と判断したリリが私に魔法を使う様に指示を出す。

 

「【凍てつく白き厳冬 顕現するは氷結の世界】」

 

足元に桜色の魔法円(マジックサークル)が現れる。

『魔導』のアビリティを持っている者だけが出現する魔法円(マジックサークル)により私の魔法は強化されていた。

私の頭上でいくつのも氷の刃が出現する。

 

「ベル!ヴェルフ!避けろよ!」

 

「って!うおおおおおおおおおおお!?」

 

「うわあああああああああああッ!?」

 

私を中心に周囲に放たれた氷の刃はベルとヴェルフを巻き込んで周囲のモンスターを倒して氷の刃で周囲を埋め尽くした。

 

「殺す気か!?」

 

「酷いよ!桜!?」

 

「そうです!ベル様に当たったらどうするのですか!?」

 

「ごめんごめん」

 

怒鳴るベル達に簡単に謝罪しながら周囲に目を配る。

そこまで力を込めたつもりはなかったはずなのに予想以上に強い魔法を放つことができたし、思ったより精神力(マインド)も消費していない。

これが『魔導』によるアビリティの力なのだろう。

一戦闘終えた私達は一息入れてリリは魔石の回収に入る。

 

「まぁ、幸先はよさそうだな」

 

「初めての中層にしたらな」

 

連携もバラバラなところもあったけどそこまでは悪くはなかった。

しかし、一息入れているのも束の間で道の奥から兔の外見したモンスター、『アルミラージ』がやってきた。

 

「あれは・・・ベル様!?」

 

「違うよっ!?」

 

「ベルが相手か・・・冗談きついぜ」

 

「いや完璧に冗談だから!?」

 

「とうとう野生に返ったか、ベル」

 

「返ってないよ!?」

 

打ち合わせもせずにベルをいじる私達。

そんな冗談を言っている間にもアルミラージは天然武器(ネイチャーウェポン)を持って私達に襲いかかって来た。

襲いかかってくるベル、間違えた、アルミラージとぶつかり合う。

 

『キャウッ!』

 

『キィイ!』

 

私は弓を構えて矢を射てアルミラージの頭を狙うがそれよりも速くベルがアルミラージを倒してしまう。

やっぱり弓矢はまだ慣れないな・・・・。

今までは腰にある夜桜と紅桜を使って戦ってきた分、遠距離の武器にはどうも違和感を覚える。まぁ、弓矢を使えている時点で私も器用だなと感慨深くなる。

 

『オオオオオッ!』

 

遠くの方からヘルハウンドを発見したので射ると狙い通りに頭を貫通させて灰にする。

次から次へとモンスターが襲いかかってくるために予備で持ってきた矢もそろそろ底が付いてしまう。

矢が無くなり次第、私も前衛に行くとしよう。

そう思いながら射る私はベル達の様子を窺う。

後衛のリリと私はまだ余力が十分にあるが、ヴェルフとベルは息切れをしていた。

減る気配のないモンスターに私は先ほどのように魔法でモンスターを一掃しようとベル達に言おうとした時。六人組のパーティが真っ直ぐこっちにへと来ていた。

私達の後方にはルームの通路口があるが、何かがおかしい。

真っ直ぐにこっちに来すぎているような気がする私はあることに気付いた。

 

「止まれ!」

 

私はその冒険者たちに弓矢を向けるがそれでもこっちに真っ直ぐ駆けてきた。

威嚇で一人の冒険者の足を射ろうと考えると大柄の男の冒険者の背中にグッタリとしている女が背負われていた。

 

「・・・・・・」

 

それを見た私は弓矢を下に向けてその冒険者達を素通りさせた。

 

「・・・・行け」

 

「・・・スマンッ」

 

謝罪しながら通路口に向かう冒険者達から来た道から新たなモンスターが獲物を変更したかのように私達に襲いかかってくる。

 

「退却します!ヴェルフ様っ、右手の通路へ、早くッ!!」

 

「おいおいおい、冗談だろ!?」

 

混乱しながらリリの指示のもとに通路に向かいながら私は後ろから向かってくるモンスターを射ながら走る。

だけど、数が多すぎる為に矢が無くなってしまった。

 

「チッ!」

 

舌打ちする私はベルと一緒に前方と後方からくるモンスターを倒す。

リリの案で片方を強引に強行突破して逃げることにした私達だがダンジョンは少しずつ私達の余裕を削っていく。

ベルは時折ファイアボルトで倒すが私の場合はそうはいかない。

『並行詠唱』ができるようになったけどまだ完全に出来るというわけではない。

回避しながら詠唱は出来るようになった。

だけど、回避、詠唱、戦闘を同時にはまだ行えない。

それに短文詠唱とはいえモンスターで溢れ返って次々襲いかかってくるこの状況では魔法を詠唱する余裕もない。

ここできてベルの無詠唱で行える魔法が羨ましくなった。

 

『――――』

 

ビキリ、と。

モンスターと連戦しているなかで不吉な音が聞こえた。

音は次第に隙間なく積み重なり、ついには盛大な破砕音をまき散らして何十匹もの『バッドバット』が天井から産まれ落ちた。

 

『キィァァァァァァァァァァ―――――――――!!」

 

甲高い産声を上げるバッドバット。

更にモンスターが産まれた天井は安定さを失い崩落した。

 

「「「「――――――――ッッ!?」」」」

 

驚く私達に降り注ぐ岩雨に私は魔力暴発(イグニス・ファトゥス)覚悟で詠唱を行った。

 

「【凍てつく白き厳冬 顕現するは氷結の世界】!」

 

何とか発動に成功した私は急いで氷の障壁を作ろうとするが一歩遅かった。

 

間に合わない―――――ッ!?

 

降り注ぐ落石の私は直撃した。

だけど、【不死回数】のスキルのおかげで何とか助かった私だが岩盤により周囲は岩だらけでベル達の姿が見えなかった。

 

「ベル!?ヴェルフ!?リリ!?」

 

叫びながらベル達を探す私にモンスターが襲いかかって来た。

私は夜桜と紅桜を強く握りしめてモンスターに振るう。

 

「どけっ!!」

 

モンスターを斬りながら私は思考を落ち着かせる。

落ち着け。氷の障壁はベル達を中心に少しは張れた。

気休めでもそれが防御の役割にはなったはずだ。それにベル達がこんなところで死ぬとも思えないし、私が覚えている原作知識はもう役には立たないから確証もなにもないがベル達が死んでいないことに会える可能性に賭けよう。

 

 

「なら、緊急時用の作戦通り動いてくれよ、ベル」

 

万が一の時の為に私はベル達に告げておいた。

いざという時は安全階層(セーフティポイント)である18階層へ向かうように言ってある。会える可能性があるとしたらそこだな。

 

「頼むから生きていてくれよ・・・・」

 

私はモンスターを倒しながら18階層へと向かうために縦穴を使うことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・16階層」

 

あれからどれだけの時間が経ったのだろうか・・・・・・。

あれからモンスターと戦いながら縦穴を使い下へ降りてきてはいるが体中が重い。

私は最後の高等回復薬(ハイ・ポーション)を飲み干して18階層へと向かう。

 

『オオオオオオオ!』

 

吠えるヘルハウンドに私は炎が来る前に駆け出して倒す。

だけど、吠えたヘルハウンドのせいで他のモンスターまでやってきた。

天然武器(ネイチャーウェポン)を使うアルミラージ。

炎を吐くヘルハウンド。

突進してくるハード・アーマード。

モンスターに囲まれながら私は夜桜と紅桜を強く握りしめる。

 

「私は・・・こんなところで死ぬ訳にはいかないっ!」

 

探し求めている目的を見つけるまで私は死なない。

重い体に鞭を入れながら私は走った。

モンスターを斬って斬りまくり。

魔法を放てるだけ放って倒して。

私は生きる為に、目的を見つける為に必死にモンスターを倒した。

 

「はぁ・・・はぁ・・・・」

 

モンスターを倒し終えて膝をつく私。

少しは小休憩しようと思った時。

 

『ヴヴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』

 

ダンジョンは無情にも私を休ませてはくれなかった。

目の前にいるのはミノタウロスは天然武器(ネイチャーウェポン)を持って私に襲いかかる。

仕方がない・・・・・ッ!

私は夜桜を自分の胸に突き刺す。

それにより【不死回数】のスキルにより私は全回復する。

18階層までまだあるこの先の為にも使いたくなかったがそうも言ってはいられなかった。これで残りのストックは1。

一気に行くしかない。

回復した私は一気にミノタウロスに近づき天然武器(ネイチャーウェポン)を持っている腕を斬り落として悲鳴を上げている隙をついて首を斬り落とす。

連撃烈火(コンボレイジング)】のおかげで分厚い体を簡単に切断できた。

【不死回数】のスキルのストックがあと一つで、回復している今ならこのまま一気に向かった方がいいな。

私は縦穴を使って更に下の階層である17階層へと降りるとあることに気が付いた。

静か過ぎる・・・・。

先程の16階層とは違い、17階層は静か過ぎた。

奥へ奥へと向かうと私はついに『嘆きの大壁』へとやってきた。

 

「・・・・・・・・」

 

嫌な気配を感じながら私は大広間へと足を踏み入れた。

バキリ、と鳴った。

大壁に亀裂が生まれて、大壁から現れたのは巨人。

迷宮孤王(モンスターレックス)』――――『ゴライアス』。

 

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!』

 

咆哮を上げるゴライアスに私は18階層へと続く洞窟へと走った。

今の状態じゃ碌に戦うこともできない。

ポーションもなくなり、装備も心もとない今の状態では戦いにもならない。

だけどそれ以上にベル達が心配だ。急いで18階層へ行かないと。

 

「桜!!」

 

後方より聞き覚えのある声が聞こえた。

振り返ると私は目を見開いた。

そこにはベルに担がれているヴェルフとリリがいた。

生きていたことは正直嬉しかった。だけど。

ゴライアスの狙いが私からベルへと向けられた。

 

「走れ!!」

 

怒鳴ると同時に私は魔法の詠唱を行った。

 

「【凍てつく白き厳冬 顕現するは氷結の世界】!」

 

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」

 

ゴライアスの顔中心に氷の槍を連射する。

ゴライアスは痛みのあまりなのか顔を押さえる。

 

「こいつは私が引き受ける!速く18階層へ!」

 

「で、でも!桜が!」

 

「リリとヴェルフを殺すつもりか!?」

 

私の言葉にベルは歯を食いしばって私の横を走り、叫ぶ。

 

「必ず!必ず助けを呼んでくるから!」

 

そう言ってベルはヴェルフとリリを抱えたまま18階層へ繋ぐ洞窟へと飛び込んだ。

 

『オオオオオオオオオオオオッ!』

 

腕を振るってくるゴライアスに私は回避するがそのせいで魔法円(マジックサークル)が消えて魔法が終わった。

そして、ゴライアスの視線が私に向けられた。

私もベル達同様に速く後ろにある洞窟へと駆け出したいが後ろを振り向いた瞬間に私は壁にへと叩きつけられるだろう。

戦って隙を見て逃げるしかなかった。

そして、最悪なことに【舞闘桜】を使えるだけの精神(マインド)が先ほどの魔法でなくなった。

正確には使えるが数秒から数十秒程度。

その短い間で階層主は倒せない。

最後のストックを使えばいいが、それでも万が一倒しきれなかったら間違いなく私は死ぬ。動けなくなった私にゴライアスはその剛腕で私を潰すだろう。

 

「戦うしかないか・・・・・」

 

攻撃しまくって隙をついて逃げよう。

 

『オオオオオオオオオオオオオオッ!!』

 

開戦の合図のようにその咆哮と同時に私は動いた。

足から斬り落とす。

足を斬って倒そうと動き出す私にゴライアスは私を粉砕するかのような鉄槌が私に襲いかかる。

 

「くっ!?」

 

私は横に跳んでギリギリで回避するがその風圧に私は軽く吹き飛ばされた。

態勢を整えると同時に握り締めた二つの大拳を私に向かって振り下ろされるが運よくそれも避けることには成功したが近づくことができなかった。

 

「それでも行くしかないッ!」

 

ゴライアスの周囲を円を描くように走って私に狙いを絞らせない。

そして、一気に駆け出して今度こそゴライアスの足を斬るが大した傷を負わせることができなかった。

だけど、せっかく掴んだチャンスを捨てるわけにはいかなかった。

 

「ハアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」

 

ゴライアスの足に連続斬りすることにより【連撃烈火(コンボレイジング)】により攻撃力が上昇してゴライアスの足に致命傷を負わせる。

 

『グッ――――――――オオオオオオオオオオオオオオッ!?』

 

絶叫を上げて倒れるゴライアス。

倒れるゴライアスに背を向けて私は洞窟へと駆け出す。

一人で中層をさ迷って体力も精神もほぼ使い果たした今の状態ではこれ以上はまともに戦うことができない。

私の役目は終えた。18階層へ行ってベル達と合流しよう。

そう思いながら駆け出す私に突如影が私を覆った。

 

「―――――え?」

 

次の瞬間。私はゴライアスの大拳に潰された。

ゴライアスは倒れながらも腕で私に攻撃してきていた。

最後のストックのおかげで何とか助かったがもうストックがない以上、次は確実な死。

だけど、ゴライアスはまだ倒れている上に洞窟まであと少し。今なら次の攻撃が来る前に何とか飛び込められる。

そう思って動こうとした時、足が動かなかった。

 

「こんなときに・・・・・ッ!?」

 

地面に叩きつけられたときに私の左足は地面に埋まっていた。

抜こうにも深く埋まっているのか、なかなか抜くことができなかった。

そうこうしている間にもゴライアスは立ち上がり私を睨みつけてきた。

 

『オオオオオオオオオオオオオオオオッ!!』

 

振り下ろされる巨大な拳は先ほど違ってスローモーションに見えた。

私はここで死ぬのか・・・・・?

もう【不死回数】のスキルのストックもない。

この拳が私に当たった瞬間、私は間違いなく死ぬだろう。

ふざけるな・・・・・ッ!

私はまだ、まだ死ぬ訳にはいかない!

私はまだ見つけてもいないんだぞ!ずっと探し続けてきたものを!ずっと追い求めていたものを!まだ、まだ何も・・・・ッ!

死にたくないと強く願いながら私の脳裏に神ヘスティアとベルが浮かび上がった。

いや、神ヘスティアとベルだけじゃない。

この世界に来て出会った人たちのことを思い出していた。

それが走馬灯と知りながら私は叫んだ。

 

「助けてッ!!」

 

「【目覚めよ(テンペスト)】」

 

聞こえたその声と同時に風がゴライアスの腕を斬り落とした。

 

「え?」

 

驚く私の前には風を纏う金色の髪をした女性が立っていた。

ベルが憧憬する女性、アイズ・ヴァレンシュタインがそこにいた。

 

「助けにきたよ」

 


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