ダンジョンに生きる目的を求めるのは間違っているだろうか   作:ユキシア

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二つ名

「【リトル・ルーキー】と【舞姫(まいひめ)】ですか?」

 

「うん・・・・・」

 

「そう」

 

『豊穣の女主人』でリリは怪訝そうに首を傾げる。

神ヘスティアが無難だ!とベルに抱き着きながら私とベルに二つ名を教えてくれた。

ベルはイマイチ不満そうだったけど私は変な中二病名じゃなくて少しほっとした。

 

「リリはどう思う?」

 

「何と言いますか・・・・普通ですね。桜様に至っては冒険者らしくない二つ名だとリリは思います」

 

「だよね・・・・」

 

「まあ、確かに」

 

リリの言葉に私もベルも同意する。

舞姫。姉さん、アイズ・ヴァレンシュタインに似ているという理由も恐らくはあるのだろう。剣の姫で【剣姫】のアイズ・ヴァレンシュタインと舞う姫で【舞姫】の私。

二つ名まで姉妹のようになってしまったことに私は呆れればいいのか、喜べばいいのかわからなかった。

 

『【ヘスティア・ファミリア】、か?』

 

私とベルに様々な視線が向けられる。驚く者もいれば、怪しむ者や苛立ち者の声も聞こえた。

 

「一躍人気者になってしまいましたね、ベル様、桜様」

 

「本当にそうみたいだな」

 

アイズ・ヴァレンシュタインの記録を抜いた私たちのことは既にオラリオに知れ渡っているだろうし、噂の張本人がいれば騒めくのも無理はない。

 

「桜様に至ってはもう神々の間でも噂になっていますよ。人気者ですね、桜様」

 

「皮肉か?リリ」

 

有名になんてなりたくもないというのに噂話が好きなのはどの世界も同じか。

 

「ふふ、じゃあ、ベルさん達もいらっしゃったことですし、始めましょうか」

 

「あの、シルさん達はお店の方は・・・・?」

 

「私達を貸してやるから存分に笑って飲めと、ミア母さんからの伝言です。後は金を使えと」

 

料理を持ってきたシルとリュー。

するとリューは料理を置いて私のところへと来た。

 

「貴女とこうしてちゃんと話すのは初めてですね。リュー・リオンと申します。あの時は貴女に敵意を向けたことを許してほしい」

 

頭を下げるリューに私は手で制する。

 

「私は気にしてもいませんから頭を上げてください。リオンさん」

 

「ありがとうございます。それと私のことはリューで構いません」

 

「では私も桜と呼んでください」

 

「わかりました、桜」

 

リューと友好を築く私を見てベルは安堵するように息を吐いて事情を知っているシルは嬉しそうに笑っていた。

それからすぐに私たちは乾杯とグラスをぶつけ合って私は果実酒を一口飲み、料理を口に運ぶ。

隣でベルを挟んでシルとリリで修羅場が起きているが私とリューは静かにそれを見守る。

 

「リューは元冒険者ですか?」

 

「それが何か?」

 

唐突の私の質問にリューは眉根一つ動かさずに答える。

やっぱり、と私は納得した。

何となくそんな気がしていた。そして恐らくは今の私よりLvは上だろう。

そんなリューに私は静かに尋ねた。

 

「私達は調子と装備を整えたら『中層』に向かう予定です。出来ればアドバイスを頂けませんか?」

 

「それならクラネルさんとも一緒に話しましょう」

 

それからリューはベルにこれからの動向を聞いた上で私達にアドバイスしてくれた。

リューによると今の私達では『中層』にはまだ行かない方がいいらしい。

上層と中層とでは違うらしく私達では処理できなくなる。

つまり今の私達にはあと一人だけでも仲間を作るべきだとリューは言った。

三人一組(スリーマンセル)がダンジョンの攻略に基本な形式とエイナに教わった。

もし、今のままで中層に行くとしたら私が前衛、ベルが中衛、リリが後衛になる。

だけど、サポーターであるリリが後衛な時点でバランスを崩してしまう。

 

「ところで、【ヘスティア・ファミリア】の団長はどちらなのでしょう?」

 

「ベル」

 

「ええっ!?」

 

団長は誰かと尋ねるリューに私は即答するとベルが予想外の顔で驚いていた。

 

「ぼ、僕が団長なんて務まらないよ!?僕なんかより桜の方がしっかりしているし、頼りになるし、カッコいいし」

 

「ベル、褒めてくれるのは嬉しいが真面目な話。私よりベルの方が団長に相応しい」

 

「な、何で僕なの?そりゃ、桜より早く入団はしたけど・・・・」

 

「いや、それは関係はない。ベルは誰よりも神ヘスティアを敬愛しているのもあるがベルは団長としての素質がある。今は足りないものの方が多いだろうがそれは副団長として私が助けてやる。だから団長になれ、ベル」

 

「・・・・桜」

 

目を輝かせながら私を見るベル。

 

「騙されないでください、ベル様!桜様は都合のいいことを言ってベル様に面倒事を押し付けているだけです!」

 

「ええっ!?」

 

「チッ」

 

リリに目論みを見破られた私は小さく舌打ちする。

騙そうとした私にベル達はジト目で私を睨むため正直に話した。

 

「悪かった。騙そうとしたことは謝る。だけどさっき言ったことは本当だ。私なんかよりベルが団長をした方がいい」

 

私は人の上に立てるような人間ではない。だけど、ベルは違う。

素質はベルの方が明らかに上だ。なら私は副団長としてベルを手助けする方が性に合ってる。

 

「わ、わかった。僕でどこまで出来るかわからないけど・・・・」

 

「では、クラネルさん。貴方達は後一人、仲間と呼べる者を見つけた方がいい」

 

「ああ、それに関しては」

 

「はっはっ、パーティのことでお困りかあっ、【リトル・ルーキー】、【舞姫】!?」

 

新しい仲間としてヴェルフのことを紹介しようとした時突然の大声により遮られた。

見ると、他のテーブルから酒をあおりながら三人の冒険者が私たちのテーブルに立ち止まった。

 

「話は聞ぃーた。仲間が欲しいんだってなぁ?なんなら、俺達のパーティにてめえらを入れてやろうか?」

 

突然のありがい誘いだが、下心が丸見えだな、この冒険者。それに酔っていやがる。

正直速攻で断りたいがベルを団長にした以上少し黙っておこう。

 

「ど、どいうことですかっ?」

 

「どうもこうも、善意だよ、善意。同業者が困っているんだ、広ぇ~心を持って手を差し伸べてやっているんだよ。ひひっ、こんなナリじゃあ似合わねえかぁ?」

 

「い、いえっ、別にそんなことは・・・」

 

気圧されているベルは私に助けを求めるように目を向けるが私は自分で考えろと目で訴える。さぁ、ベル。お前はどう答えるか見させてもらうぞ。

調子に乗る酔っ払いにベルは気圧され続けるのを見た酔っ払いは調子の乗ったのか私に嫌な視線を向けてきた。

 

「お前の所の【舞姫】を俺達に貸してくれよ!?」

 

定番すぎる言葉に私は顔色変えずに内心で呆れていた。

私は姉さんにアイズ・ヴァレンシュタインに似ている。姉さんでは無理だが似ている私に何かして欲しいのだろう。心から嫌だが。

 

「仲間なら助け合うのは当然だろう!?少ーしお前の所の【舞姫】を貸してくれるだけでお前ら二人のお守をしてやるぜ?」

 

「で、出来ません・・・」

 

「ああっ!?今なんつった?」

 

臆しながらもベルはハッキリと酔っ払いに言った。

 

「仲間を・・・家族を売るような真似僕には出来ません。パーティの話はお断りします」

 

弱弱しくはあるがハッキリとベルは断った。

それを聞いた私は静かに笑う。

 

「ああっ!?調子に乗ってんじゃねえぞ!?クソガキ!」

 

怒りに任せてベルを殴ろうと拳を振るう酔っ払いを私は投げ飛ばした。

 

「がっ!?」

 

宙を舞ってテーブルに叩きつけた酔っ払いとその仲間に私が言う。

 

「そういうことだ。それにパーティの問題はすでに解決済みだ。これ以上すると言うのなら表へ出ろ、三人纏めて私が相手になってやる」

 

挑発する私に酔っ払いは立ち上がって激高する。

 

「ナメてんじゃねえぞ、このアマッ!俺たちは全員、Lv.2だぞ!?」

 

「そうか。まだたったLv.2なのか」

 

挑発する私に酔っ払いたちはキレた。

 

「上等じゃねえか!表へ出やがれ【舞姫】!冒険者の矜持ってもんを教えてやる!」

 

「それは楽しみだ」

 

私の喧嘩を買った酔っ払いたちはズカズカと表へ出る。

 

「ベル、リリ。三分間待ってろ」

 

そう言って私も表へ出た。

三分後。ボロボロになった酔っ払いたちを捨てて私は元の席に戻った。

 

「ただいま」

 

「お、お帰り・・・・」

 

何事もないように戻って来た私にベルは顔を引き着かせながら返事をするとリリが呆れるように私に尋ねる。

 

「桜様は戦闘狂なのですか?あんな冒険者様なんか放っておくのが一番です」

 

「その通りです。桜、貴女は無茶をしすぎだ」

 

「そうですよ。何かあったらどうするんですか?」

 

リリ達は色々言ってくるけど実際のところさっきの酔っ払いはたいしたことはなかった。

もちろん、酔ってまともな判断もできなかっただろうけど力も動きも連携も大したことはなかった。

いや、今までの相手が強すぎただけか・・・・。

 

「まぁ、それは置いといて」

 

「逃げましたね・・・」

 

「置いといて」

 

ジト目するリリに無理矢理話題を変える。

 

「前に私と一緒にダンジョンに潜っていた人がいる。明日ベルの防具を買ったとのでも紹介する」

 

「失礼を承知で尋ねますが大丈夫なのですか?戦闘狂はリリは嫌ですよ」

 

「リリが私をどう思っているかよくわかった。だけど、安心しろ。常識ある人で義理堅い人だ」

 

先程のことでリリの中では私は戦闘狂と認識している所を少し話し合いたいが今は聞き流してやろう。

原作ではヴェルフはバベルにいたはずだからヴェルフの工房に行くよりそっちに行った方が速く会わせられるだろう。

 

「まぁ、今は楽しもう」

 

果汁酒を飲みながら今は楽しむことにした。

 

 

 

 

 

 

祝賀会から一夜明けて、朝。

私とベルはバベルにある【へファイトス・ファミリア】の武具屋に足を運んでいた。

せっかくだから私も何かいい物があれば買おうと金を少し多めに持って来ていた。

様々な武器や鎧を見ているとカウンターの方から聞き覚えのある怒鳴り声が聞こえた。

 

「何でいつもいつもっ・・・・あんな端っこに・・・・!俺に恨みでもあるのか!」

 

店員と言い争っているのは予想通り、いや、ここは原作通りと言った方がいいのか?とりあえずヴェルフがいた。

 

「ヴェルフ、何言い争ってるんだ?」

 

「お、桜!」

 

私に気付いて寄って来たヴェルフは私の肩をバンバン叩く。

 

「聞いたぜ!Lv.2になったんだってな!お前専属鍛冶師(スミス)として嬉しいぜ!」

 

「ありがとう。で、何を言い争っていたんだ?」

 

そう尋ねる私にヴェルフはよくぞ言ってくれたかのように店員を指す。

 

「こいつ俺の作品をいつも端っこに置いていやがるんだよ!あれじゃ売れる物も売れねえ!桜からもなんか言ってくれ!」

 

ああ、そういうことか。

ヴェルフは腕はいい。それは契約している私がよく知っている。

だけど売れないのはクロッゾという家名にもあるだろうけどヴェルフの作品につける名前が残念すぎるから売れないのが大きいと私は思っている。

カウンターに置かれているボックスはヴェルフの作品だろうが売れずに返品でもされたのだろう。さて、どう言うべきか。

 

「あれ、桜?」

 

「ベル、いい防具は見つかったか?」

 

なんて言おうか悩んでいるところに都合よくベルが来てくれた。

 

「ううん、僕が探しているヴェルフ・クロッゾさんの作品は売られていなかったよ」

 

その言葉に声が止んだ。

ベルを凝視する店員とヴェルフにたじろくベル。

 

「ふ・・・・・うっはははははははははは!?ざまぁーみやがれっ!俺にだってなぁ、顧客の一人ぐらい付いてんだよ!!」

 

高笑いするヴェルフは嬉しそうにベルを寄せて作品を見せる。

 

「名乗るぜ、得意客二号。俺はヴェルフ・クロッゾ。【へファイストス・ファミリア】の、今はまだ下っ端の鍛冶師(スミス)でそこにいる【舞姫】の専属鍛冶師(スミス)だ」

 

愛用している防具を作った本人に呆気を取られるベル。

ん?二号ということは私は一号なのか?

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、お前があの【リトル・ルーキー】か!?」

 

「こ、声が大きいですっ」

 

八階に設けられた休憩所で私たちは互いに自己紹介をしていた。

 

「改めて紹介するな、ベル。私と契約している鍛冶師(スミス)のヴェルフ・クロッゾだ。ヴェルフと呼んであげてくれ。名前のセンスは悪いが腕は確かだから安心しろ」

 

「おい、何微妙に貶してんだ、桜」

 

文句を言うヴェルフだが私は無視した。事実だから謝るつもりはない。

 

「にしてもまさか桜が言っていた同じ【ファミリア】の仲間が【リトル・ルーキー】だったとはな」

 

「ちゃんと言ってなかったもんな。ところでヴェルフ、一つ相談なんだがベルとも契約を結んではくれないか?ベルはヴェルフの作品を愛用しているし、私的にも信頼できる鍛冶師(スミス)に武器や防具を作って欲しいんだ」

 

「俺的にはむしろこっちから頼みたいぐらいだぜ?Lv.2のお前らが下っ端である俺とじゃあ、釣り合わないだろ?」

 

ふむ、ヴェルフ的には了承してくれるみたいだな。

 

「ベル。お前はどうだ?ヴェルフはソロで11階層までも行ったことがある。鍛冶の腕もヴェルフ本人も信頼できる。悪くはないはずだ」

 

「うん、ヴェルフさん。僕でよければ僕とも契約を結ばせてください」

 

「応ッ。よろしくな、ベル」

 

手を掴み合う二人に私も一安心する。

さて、パーティもできたことだし、後は私とベルは【ランクアップ】した今の状態を確かめておかないといけない。

明日にでもヴェルフ達と一緒に新しい階層である11階層にでも行くとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

「やってきたぜ、11階層!」

 

私達は新しい階層である11階層へと足を運んでいた。

ヴェルフがパーティに加わり、ベル、私、リリ、ヴェルフの四人のパーティが完成した。

ベルもヴェルフから貰った新しい装備を身に着けて私も新調した白桜を身に着けていた。

 

「はぁー、リリは悲しいです。とてもとても悲しいです。お買い物に行かれただけなのに、見事リリの不安(きたい)を裏切らず厄介事をお持ち帰りなるなんて・・・・ベル様のご厚意に、リリは涙が出てしまいます」

 

酷い言われようだな・・・・・・。

まぁ、リリにとってはそう思うのも仕方がないだろう。

 

「桜様はどうしてクロッゾと契約したのですか!?」

 

リリには既にヴェルフのことを紹介しているのだから。

 

「私が契約したのはクロッゾとしてのヴェルフじゃなくて鍛冶師(スミス)のヴェルフとしてだ。いくらリリでもそれ以上ヴェルフを貶すな」

 

呪われた魔剣鍛冶師、凋落した鍛冶貴族とクロッゾという家名を持っているヴェルフに周りからいい印象はないだろう。

リリは常にベルや全体のことを考えている。

パーティの印象を悪くするようなクロッゾを受け入れにくいのだろう。

リリは悪くはないのは私も十分に理解している。

 

「まぁ、この話は後だ」

 

私は夜桜と紅桜を抜きながら周囲を見渡す。

ダンジョンの壁からオークが産まれて、あっという間にこの『ルーム』全体にモンスターが溢れ返った。

 

「ベル様と桜様は好きに動いてください。この鍛冶師(スミス)の方はリリが微力ながら援護しましょう。正直に言えば、どちらかは時折こちらにも気にかけてくれると助かりますが」

 

「了解。それじゃ、お先に!」

 

私はオークとインプの群れに突っ込むと一瞬で距離を詰めることができた。

 

『ヒェ?』

 

そして、オークとインプ達を瞬殺した。

オークやインプ達が私に気付く前に灰にすることができた。

強くなってる・・・これが【ランクアップ】・・・・・。

Lv.1の時とは全く違う感覚。

これが神の恩恵・・・・。

 

『ロオオオオオオッ!』

 

雄叫びを上げるモンスター、『ハード・アーマード』は全身を丸めて突進をしてきた。

背面の甲羅は堅牢の盾と武器とエイナから教わっている。

突進してくるハード・アーマードだが、その突進は私からにはゆっくりと動いているようにしか見えなかった。

私はぶつかる寸前で躱して横から弱点である腹に夜桜を突き刺した。

串刺し状態になったハード・アーマードはぐったりと動かなくなったのを確認してから夜桜を抜く。

今でもまだまだ余力はある。

強くなっていることに実感しているとあることを思い出した。

私の新しいスキルである【連撃烈火(コンボレイジング)】がどこまで通用出来るのかを試そうと思った時、ヴェルフ達に二体のシルバーバックがいるのを見て私は走った。

 

『ガァァアアアアアアアアッ!!』

 

吠えるシルバーバックは私を殴ろうとしてくるが私はそれを躱してシルバーバックの胸部まで跳んだ。

新しいスキル、【連撃烈火(コンボレイジング)】は連続攻撃により攻撃力が上昇する。なら、少しずつ攻撃してみようと軽くシルバーバックの胸部を斬りつける。

 

「え?」

 

『ガァァァッ!!』

 

恐ろしいほどあっさりと斬れた。

豆腐でも切ったかのようにあっさりとシルバーバックの胸部を切り裂いて倒してしまった。今のは【ランクアップ】の影響だけではないだろう。

オーク、インプ、ハード・アーマードを攻撃していた。

それで攻撃力が上昇して、『力』の補正も加わりあそこまであっさりと倒すことができたのだろう。

この新しいスキルは恐らくダメージを喰らうか、一定時間以上攻撃をしなければ攻撃力は元に戻るのだろう。

だけど、言い返せば一定時間ダメージを喰らわずに攻撃し続ければ攻撃力は上昇し続けると考えていいだろう。

まぁ、もう少し検証してみよう。

私は二匹目のシルバーバックに向かって走った。

 

 

 

 

 

「しかし、とんでもなく速かったな、ベル。桜も最後はモンスターたちを一撃で倒していたしよ」

 

大群のモンスターを倒し終えた私達は小休憩を取っている。

その間にリリは魔石やドロップアイテムを拾っている。

でも、ヴェルフの言う通りベルは速かったし、私も最後はもはや斬った感覚がないぐらいにスパッとモンスターを斬った。

私の新しいスキルは攻撃特化型のスキルだな。

少なくともそれだけはハッキリとわかった。

パーティをするとしたら私は前衛だな。

【不死回数】というスキルもある私はこれ以上ないぐらい前衛向きだ。

だけど、それだったら一番の不安要素である後衛が変わらない。

ヴェルフは武器なども考えて前衛だろう。そこで私とヴェルフが前衛をしたとしても私とヴェルフ二人をリリはサポートしなければいけない。

それだとリリの負担が増えるだけだし、何とかしないといけないな。

パーティのことを考えていると他の冒険者が増えてきたことにより私達は場所を変えて昼食にしようと話し合っていると。

 

「・・・・おい、ベル。それ、何だ?」

 

「!」

 

ベルの右手に白い光の粒が、明滅していた。

そのことにベル自身も目を見開いているがベルの右手からリン、リン、と鐘の音が聞こえた。

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

私達は顔を見合わせる。

 

『―――――――オオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!』

 

困惑している私達に凄まじい哮り声が轟いた。

その哮り声の先には小竜、インファント・ドラゴンが現れた。

11、12階層に出現する希少種(レアモンスター)で『迷宮の孤王(モンスターレックス)』が存在しない上層の唯一の階層主。

 

『―――――――ッッッ!!』

 

雄叫びをとともにインファント・ドラゴンは動き出して近くにいた冒険者を襲う。

 

「リリ!?」

 

「リリスケェッ、逃げろっ!?」

 

リリの元に突き進むインファント・ドラゴンに私は走り、ヴェルフは叫ぶ。

連撃烈火(コンボレイジング)】の効果ももう切れているだろうけど今はリリを助けないとリリが死んでしまう。

 

「【ファイアボルト】!!」

 

リリの元へ走っていると純白の閃光と共にベルの【ファイヤボルト】が飛び出した。

だけど、今まで見た【ファイヤボルト】とは全くの規模が違っていた。

そして、インファント・ドラゴンを撃ち抜いただけでなく、遠くに離れたダンジョンの壁面にまで届いた。

 

「・・・・・」

 

静寂するルームに私を含めてベルに視線を向けた。

驚きながらも私はそれがベルのスキル、【英雄願望(アルゴノゥト)】だと知ったのはもう少し後だった。


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