鎮守府の床屋   作:おかぴ1129

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私が守っていたもの

 主機をフル回転させ、私は鎮守府を目指し全速力で走る。敵の数は果てしない。今はビス子がなんとか抑えてくれているが、ビス子もいずれ突破されるだろう。それまでになんとか……少しでも距離を稼がないと。

 

 私は今日、ビス子と共に出た哨戒任務で信じられない光景を見た。深夜の海の闇に紛れて、尋常ではない数の深海棲艦の艦隊が、鎮守府に向かって迫りつつあった。

 

「センダイ。あなたは鎮守府に戻ってこのことを伝えて」

「え……でもビス子はどうするの?」

「……私はできるだけ時間を稼ぐわ」

 

 私には分かる。きっとビス子は、自身が轟沈する覚悟で、あの場所に残ることを選んだんだ……。

 

 敵の旗艦と思われるタ級を見た途端、ビス子の顔が変わったことに私は気付いた。……ひょっとすると、あのタ級が暁ちゃんの仇なのかもしれない。ビス子が暁ちゃんの仇を取りたがっていたのはよく知っている。

 

――ええ。またあとでね!!

 

 ビス子のバカ……あんなヘタクソなウソをつくだなんて……あんた本当は轟沈する覚悟のくせに……命と引き換えにしてでも暁の仇を取りたくて、あの場に残ることを買ってでたくせに……

 

 それなのに、あんな笑顔でストレートにウソをつかれたから、私は気付かないフリをすることしか出来なかった。……見てなさいよビス子。帰ってきたら、夜戦演習で張り倒してやる。

 

 私の鼻を、何かがかすめた。左右を見ると、左右に一体ずつ駆逐艦のハ級が迫ってきていた。私を左右から挟撃するつもりらしい。

 

「甘い!!」

 

 左肩に取り付けた那珂の探照灯で、左側で並走するハ級の目をくらませた。と同時に進行方向に魚雷をばらまいて雷撃。左側にいたハ級を撃沈させた。

 

――姉さん

 

 つづいて姿勢を低くする。と同時に私の頭頂部を1発の砲弾がかすめた。偶然ではない。肌に伝わる感覚が、私に敵の次の行動を教えてくれた。そのままの姿勢で私自身は急減速。と同時に敵の進行方向に魚雷をばらまいた。数秒の間の後、私がばらまいた魚雷はもう一体の駆逐ハ級を撃沈した。

 

「今の私に夜戦で勝てるなんて思わないでよ?!」

 

 再び主機をフル回転させ、私は再度トップスピードで鎮守府に帰投した。

 

――姉さん 敵に包囲されつつあるから気をつけて

 

 懐かしい声が聞こえた。かつて鎮守府において最強の軽巡洋艦として君臨した私の妹、神通が私をフォローしてくれている。

 

―今晩のセンターは譲るよっ

 

 同じく、妹の那珂が激励してくれる。態度こそふざけた那珂だったが、その夜戦の実力は本物だった。最強の妹たち……これほど心強い存在はない。今の私なら、きっと鎮守府にたどり着ける。大丈夫だ。

 

――姉さん 空から雷撃機が来ます

 

 分かってる。すぐに対空戦闘に入り、私はすべての雷撃機を撃墜した。

 

――重巡が進行方向を塞いでるよ!!

 

 大丈夫。私は肩と太ももの探照灯を同時に点灯して進行方向をふさぐ重巡リ級を照らした。目を潰されたリ級は取り乱し、その隙をついて単装砲を乱れ打った。リ級の撃沈を確認。

 

――姉さん足元!

 

 主機をフル稼働させ、私は空高くジャンプする。と同時に私が立っていた海面に水柱が立った。

 

「雷撃? でもどこから……」

 

 着水して周囲を見回す。目立った敵はいない。いるのは少し離れた位置にいるヲ級と、その周囲にいる駆逐艦たち……距離的に少しおかしい気もするが、今の攻撃はあいつらの雷撃だったのだろうか……。

 

「まぁいっか。……行くよ!!」

 

 再度、主機の回転を限界まで引き上げ、私は鎮守府に向かう。さっきの一瞬の交戦の後、敵が手を出すことはなくなったが、手を出してこないというのならそれは好都合だ。今の内にめいっぱい距離を稼がせてもらう。

 

 鎮守府の中でも最強と言われていた妹の神通は生前、ハルの前任者にあたる美容師のアキツグさんと、恋に落ちた。

 

『アキツグさんと、正式に……お付き合いすることになりました……』

『え?! そうなの?! よかったじゃん神通!! 二人とも仲良かったもんね!!』

『那珂ちゃんは……羨ましいけど……アイドルに恋愛はご法度なんだよっ』

『それはあんたの都合でしょ……でも、アキツグさんが私の兄さんになるのかー……』

『いや姉さん……姉さんから見たら弟になるんじゃ……』

『あそっか……あ! てことは、神通!』

『アキツグさんと結婚するつもりだね?!』

『え……いや……あの……プロポーズ……されました……』

 

 那珂と共に、幸せそうな神通の姿を見ることが楽しく、また相手のアキツグさんも、とても私たちによくしてくれた。あのまま妹は、幸せになってくれるものだとばかり思っていた。

 

 ある日、神通は轟沈した。侵攻してきた屈強な敵艦隊を食い止める作戦で、私と那珂の目の前で轟沈していった。

 

 鎮守府に戻った私達を、アキツグさんは激しくなじった。

 

――なんでお前らが生きてて神通が沈んでるんだよ!

  神通助けてこいよ!! 早く行けよッ!!!

 

 あの時の彼を責めるつもりはない。誰しも最愛の人を理不尽に奪われれば、誰かにその責任を取らせないと心のバランスを保つことは難しい。アキツグさんはあの時、私と那珂をなじらなければ、きっと壊れていた。だから私たちは、アキツグさんを悪く思うことはなかった。

 

 神通を失ったアキツグさんは、やがて鎮守府での居場所がなくなったと錯覚し、完全にやる気を失って鎮守府を出て行った。『川内、那珂ちゃん……あの時は酷いことを言ってごめん。……でも、来なければよかった。こんなに辛い思いをすると分かっていたら、来なかった』そう言い残して、アキツグさんは失意のまま鎮守府を去った。

 

『那珂……私はさ、もうこんな思いはしたくない』

『そうだね。……那珂ちゃんも、もうイヤ……』

『私達で助けられる命は……もう絶対にこぼさない』

 

 私は、もう二度と神通とアキツグさんのような犠牲者を出すまいと誓った。那珂は志半ばで轟沈してしまったが、私は那珂の分まで鎮守府の皆を守ろうと二人に誓い、那珂と神通の探照灯を受け継いだ。

 

 それからもうかなりの月日が経つ。そのあとやってきた床屋さんのハルは、球磨ととても仲良くやってくれている。球磨もそんなハルととても楽しそうに日々を過ごし、二人の姿は生前の神通とアキツグさんを彷彿とさせるほどに微笑ましい。……夜戦には全然付き合ってくれないけれど。その度に胸がチクチクするけれど。

 

 一方で、提督は隼鷹と結ばれていた。ある日の朝、顔を真っ赤にした二人から……

 

『昨日……ケッコンした』

 

 と報告され、私たち鎮守府のメンバーは皆、二人のことを祝福した。その後も色々とあったが、二人の愛情は今もしっかりと育まれている。

 

 その二組を見るたび、私は神通とアキツグさんを思い出した。神通が生きていれば、この二組のように、今も仲睦まじく幸せな毎日を過ごしていたのかも知れない……私のせいではないというのは分かっている。でも私は、提督が隼鷹に怒られて嬉しそうに悲鳴を上げる姿を見るたび……球磨とハルが楽しそうに口喧嘩をしているのを見るたびに、神通とアキツグさんの幸せそうな笑顔を思い出さずにはいられなかった。

 

 今、私の大好きな仲間たちの命運が、私の頑張りにかかっている。確かに私は今、たくさんの深海棲艦に追い立てられ、周囲を包囲されている。恐らくは、目視出来る数以上の艦隊に囲まれていることだろう。

 

 ならば少しでも早く、私は鎮守府にたどり着かなければならない。あの時のようなことは……神通を失い、アキツグさんから笑顔を永遠に奪ってしまった失敗はもうイヤだ。繰り返さない。絶対にたどり着く。この事実を鎮守府のみんなに伝える。私が鎮守府のみんなを守る。笑顔を守り通す。

 

――姉さん……様子がおかしい

 

 神通が私の耳元でそう言い、警戒を促した。確かに周囲を敵に包囲されていることは雰囲気でつかめているが、私と距離を取り、一向に攻撃してこないことに対して、私は疑問を抱いていた。

 

――周囲の警戒を怠っちゃダメだからね!

 

 分かってる。でも何よりも、少しでも早く鎮守府に戻らないと……ジャミングが一向に解けないことから考えても、きっとまだ包囲されている可能性が高い……

 

 不意に、出処不明の魚雷が前方から迫ってきた。冷静に魚雷の隙間を縫って回避する。

 

――左右からも来てるよッ!

 

 減速し、左右の魚雷をやり過ごそうと主機を逆回転させた。スピードが急激に下がったことで、相手の魚雷の進行ラインから外れることが出来た。

 

――背後からも!

 

「せわしないッ……!!」

 

 再度主機をフル回転させ、私は再び海面から跳躍した。どこから飛んでくるのか分からず、正確無比な狙撃で私を狙ってくるのはきっと潜水艦。

 

「まずい……爆雷もソナーもないし……なにより夜に潜水艦の相手をするのは……!!」

 

 空中から海面に着地したその時だった。私の着水地点から、たくさんの潜水艦の腕が伸びてきて、私の左足を掴んだ。

 

「クッ……!!」

 

 私の足を掴んだ潜水艦たちは、そのまま私を海中に引きずり込んだ。私は水中で単装砲での砲撃を試みるが、水中では威力が出ない……いけない……このまま海中に引きずり込まれるわけには……

 

 直後、私を海中に引きずり込む潜水艦の一人の手に、魚雷が掴まれているのが見えた。そいつはその魚雷を、私の左足の主機にそのままぶつけた。

 

 巨大な水柱が上がり、その勢いで私は海中から海上に脱出することが出来た。すぐさま立ち上がろうと足に力を入れるが、左足に力が入らない……踏ん張りがきかず、立つことが出来ない。

 

――姉さん……左足が……

 

「言わないで神通!!」

 

 言うことを聞かない左足を無視し、右足だけで強引に立ち上がった私は、そのまま右足の主機だけをフル稼働させ、再び鎮守府に戻るべく、海上を走った。

 

 しかし、たった一つの主機だけでは出力が出ず、さっきまでのようなスピードを出すことが出来ない……

 

――爆撃機が来てるよ!!

 

 空を切る甲高い不快な音が私に近づいてきた。身をよじって爆撃を回避したいが、主機が一機だけではそれもおぼつかない。うまく回避行動が取れない私に、ヲ級の爆撃機の正確無比な爆撃が炸裂した。

 

「ァァァアアアッ?!!」

 

 爆撃機の爆撃は予想以上に痛く、私の背中と後頭部を焼いた。でも止まらない。止まってやらない。

 

――また横に雷巡がいるよ!!

 

 背中と左足の痛みに耐えていたことで一瞬反応が遅れた。いつの間にか私と並走していた雷巡チ級が、私に砲撃をしてきた。

 

「……ッ!!」

 

 寸前で直撃は避けたが、砲弾は私の頭部をかすめ、髪と皮膚を少しこそげとっていった。おびただしい量の血が頭部から吹き出し、那珂の探照灯をべっとりと汚した。

 

「……だったら……!!」

 

 右ふとももの神通の探照灯を照射し、チ級の視界を奪った後、腕の単装砲を乱れ撃つ。それでも弾幕が足りないせいか、私の砲撃に臆すること無く迫ってくるチ級。自身の右腕に装着された巨大な口のような艤装で私を噛み砕こうと、その右腕をこちらに突き出してきた。反射的に突き出してしまった私の左手を咥え込み、噛み砕いて咀嚼するその寸前……

 

「……負けないッ!!」

 

 左手の単装砲を乱れ打ち、チ級を内部から砲撃する。轟沈を確認したのち、私は再度右足の主機だけをフル回転させ、鎮守府に戻る。チラと左腕を見ると、左腕に装着されているいくつかの単装砲は、すべて破損してしまっていた。

 

 止まれない。これぐらいのことで止まってやらない。私は鎮守府に戻る。たとえどのような目に遭っても……私は、私が助けることが出来る人たちは、絶対に助ける。

 

「……ス子! 川……定時連……は……た?! 返……ろ!! ……とも!! 返……ろ!!」

 

 唐突に、とぎれとぎれながらも鎮守府との無線通信が復活した。周囲を見るとすでに夜が明け明るくなっていたが、周囲にすでに敵影はなかった。私のことを追跡することを諦めたのか、それとももう充分に損傷を与えたという判断なのかは分からないが……

 

「提督! 提督!! 返事して!! 敵艦隊がすぐ近くにいる!!」

「……れか?! 返事……く……内!! ビス……事をし……!! ……だ!!!」

 

 だめだ。私の通信機が壊れたのか、まだジャミングが生きているのかは分からないが、私から提督に通信を送ることが出来ない。ならばなんとしても戻らなければ……

 

 提督の悲痛な叫びを聞きながら、私は鎮守府を目指す。少しずつ鎮守府が見えてきた……しかしここにきて、私は気力が尽きかけてきた。感覚のない左足の代わりに、右足の主機だけを稼働させてここまで気力で立ち続けていたが……

 

――姉さん もう少しです

 

 私はそのまま、海面に倒れ伏してしまった。右足の様子が目に入った。何度見ても見慣れない光景が展開されている。私の足は沈み始めていた。

 

――アイドルは諦めない!!

 

「当たり前でしょ……ここまできたんだから……ッ!!!」

 

 沈みつつある右足の主機にあらためて火を入れ、フル回転させた。もう起き上がる力もない。でももたついていたら私は轟沈してしまう。私は海面に倒れ伏したその姿勢のままで、目の前まで迫った鎮守府のドックへと入った。

 

 ドックに入り、その通信機を使って執務室に通信を送った私は、万が一にも身体が水没してしまわないよう、なんとか水上から陸に上がり、提督が来るのを待った。しばらくして乱暴にドック入り口のドアが開き、血相を変えた提督が私の元に駆けつけてくれた。

 

「川内!! 川内!!!」

 

 伝えないと……敵艦隊が迫っていること……ビス子が残ったことを……伝えないと……

 

 提督が私を抱きかかえたところで、ハルと球磨もやってきた。この二人……私は呼んでないのに、なんでここにこれたんだろう……

 

「あ、ハル……ごめん……ショルダーライト……壊しちゃった……」

「んなもんどうだっていい!!」

 

 ハルの姿を見て、反射的に謝罪の言葉が出た……今回、ハルがくれたショルダーライトがなければ、私はここまで帰ってこれなかったのかもしれない……それなのに私は、ショルダーライトに血をつけて使い物にならなくしてしまった……そのことが、どこかでひっかかっていた。

 

「川内! 何があった? ビス子はどうした?!」

「ごめん……こっちにとんでもない数の敵艦隊が迫ってる……」

「?! なんで連絡しなかった?!」

「ジャミングされてたみたいで……私もビス子も、無線が全然通じなくて……」

 

 事の次第を説明した後、提督は私のことをハルに任せ、ドックを出て行った。これで提督は、ここに迫ってくる敵への対策が取れる。よしんば対策が充分でなくとも、市街地のみんなやハルたちを逃がす余裕が出来る……

 

 私は、私にとって大切な人たちのことを守ることが出来た。私にとって大切な人たちが守りたいものを、守ることが出来た。

 

 その場を離れた提督の代わりに、ハルが私を抱き寄せてくれた。ハルが私の肩に手を回したせいで、私の焼けただれたむき出しの背中にハルの手が触れた。そんなとこ触ると血で汚れるのに……それに傷も痛む……でも、不思議と悪い気はしない。傷の痛みが気にならないほど、全身に安らぎが広がっていく。

 

「いたたた……ニッヒッヒ……球磨……ヤキモチやいたらダメだよ……?」

 

 口をついて出た一言だった。球磨と仲の良い男性にして、恐らくは球磨の将来のダンナ様……そんな人に抱かれて安らぎを感じてしまった私は、悪い子だろうか……

 

「ちゃんと足の裏もかいてよ……左足はかゆくないから、今日は右足がいいな……」

「……分かった。今日だけは却下しないでかいてやるから。だからちゃんと店に来い」

 

 なんとなく気恥ずかしくなり、シャンプーした時に右足をかいてもらうことを約束した。私の左足はもうかゆくなることはない……恐らくは今日シャンプーした時にかゆくなるのは、きっと右足だろうから。

 

 ハルは、私の右足をかいてくれると約束してくれた。そしてその瞬間、私は胸にとても心地よい暖かさと、大きい充足感や安らぎ、心地よさ……そういったもので満たされたことを感じた。

 

 ……今わかった。そっか。きっとこれが、隼鷹が提督に感じて、球磨がハルに感じて、神通がアキツグさんに感じた……私が守りたかった気持ちなんだ……こんなに温かいものだったんだ……こんなに心地いい気持ちを、守れたんだ……。

 

「神通……那珂……あり……が……これ……で……やせ……」

 

 目を閉じる寸前、自然と頬をハルの胸に寄せてしまい、球磨への罪悪感と、それ以上の安らぎに身を委ねながら目を閉じた。ごめんね球磨。でもこれで最期だから。もう二度とこんなことしないから、今だけ許して。今だけハルを感じさせて。

 

 思い出してみれば、今回の戦いは夜戦だった。大好きな夜戦で、大好きな人たちを守ることが出来、自分が何を守りたかったのかも分かった。私の最期は、きっと、悪いものではなかったはずだ。

 

 だから私は、もう充分だ。

 

「せんだーい! 起きるクマー! 今晩球磨と夜戦演習やるクマー! ひぐっ……夜戦クマよー? 起きるクマー!! ……ひぐっ」

 

 ごめんね。私はもう充分満足したよ。大好きな夜戦を駆け抜けて、大切な人たちを守ることが出来た。大切な気持ちに気付けて、それを守っていたことに満足したよ。

 

 だから球磨、夜戦はもういいよ。私は先に逝くね。

 

――姉さん お疲れさまでした

 

 んーん。確かにさっきの戦闘は激しかったけど、私は満足だよ神通。……それに、例え死ぬ寸前だったとしても、神通がアキツグさんに抱いて気持ちを、私も感じることができた。大切なものに気付いたんだ。それを守れていたことがうれしかったんだ。悔いはない。

 

――遅かったね 残念だったね

 

 残念なんかじゃないよ那珂。私は満足してる。その気持ちに気付けたこと、そしてみんなのその気持ちを守り通せたことにね。……ただ、確かに少しだけ遅かったけど。私は気づくのが遅かったけど。

 

 さぁ、私は胸を張って、暁とビス子に会いに行こうかな。

 

 加古、あんた夜戦で私と同じぐらい強いんだから、たまにはシャキっとするんだよ? 隼鷹、提督、どうか幸せに。でもケンカはほどほどにね。

 

 北上、アンタとは一度夜戦で決着つけたかったけど……まぁいいか。アンタは強かった。球磨、ハルと幸せになってね。ハルを幸せにしてあげてね。

 

 ……ハル。もし次があるのなら、その時は……球磨じゃなくて、私が最初にハルを出迎えてあげても……いいかな。

 

 終わり。

 

 

 


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