トメィト量産工場   作:トメィト

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これはひどい


戦争遊戯(笑)

 

 

 

 

 戦争遊戯(ウォー・ゲーム)。それは神々の代理戦争。自分たちの眷属により行われるものである。

 そして今日はアポロンファミリアとヘスティアファミリアの二つのファミリアによって行われる戦争遊戯の日である。内容は攻城戦。意味は読んで字のごとく、城を攻める戦いということである。攻め側はヘスティアファミリアというかなり公平さに欠ける勝負だ。

 それはなぜか?何を隠そう攻め手であるヘスティアファミリアは団長のベル・クラネルしかいない超小規模ギルドだからである。一人で城を攻め落とせという無茶振りとなっているのだ。本来であれば、勝敗が分かり切ったつまらない消化試合になってしまうのだが、ここでベル・クラネルが今まで結んできた縁が活きてくる。これにより、勝率が0%を越え、勝てる可能性がわずかでも生まれた。

 そのことを聞いた神々も少しはこの出来レースが面白くなるだろうと熱を取り戻し観戦している。

 

 さて、色々言ってきたが簡単にすると意外と多くの人が注目している戦争遊戯が今日始まるということだ。そんな今回の戦争遊戯が開始される直前、この勝負を観戦している神々はもちろん、戦うこととなる両神の眷属たちですら注目する存在が居た。

 

 「………」

 

 ここに来てから無言を貫くその存在に、誰もが目を奪われていた。

 外見は簡単にいうなれば継ぎ接ぎだらけの兎といったところだろう。ところどころつなぎ目が見え、どこか人形のようである。全長は二メートルを超え、二足歩行。

 これは注目されても仕方がない。事実、その兎を見ている人たちの内心は完全に一致している。

 

 『(一体何者なんだ……)』

 

 ゲームとは言え、今から始まるのはお互いのファミリアの未来をかけた戦いと言ってもいい。そんな中明らかにキグルミっぽい奴が居たのであればこうなるのは必然と言えるだろう。件のキグルミ本人はまったく気にしていないのかボーっと突っ立ったまま微動だにしていないが。

 

 そんな異質ともいえる空気の中、キグルミに近づく影があった。

 ヘスティアファミリア団長、ベル・クラネルである。彼は耳があるだろうと思われる部分に口を寄せて小声でキグルミに話しかけた。

 

 「あの、助けてくれるのは嬉しいんですけど、何故このような恰好を?」

 

 『正体がばれないようにちょっと変装』

 

 ベルの問いに返ってきた答え。それは白いプラカードに書かれていた文字だった。どうやら声も聴かれたくないらしい。ベルは苦笑した。それと同時にこれ以上何も訊かないことを決めた。

 ベルはキグルミの中身を知っているためそれで納得したのだが、彼を助けるためにヘスティアファミリアに入ることとなった仲間たちは不審者@キグルミが気になって仕方がないらしくたまらずベルに問いかけていた。

 

 「なぁ、あれは一体何なんだ?仲間なのか?」

 

 「うん、相手が出してくれた助っ人枠で来てもらった人なんだ。実力は折り紙付きだよ」

 

 「………大丈夫なのか?本当に」

 

 ベルを助けるために彼の元へとやって来たヴェルフはキグルミに視線をぶつける。そこには変わらずボーっと立っているキグルミの姿があった。覇気のかけらもなかった。 

 「うん平気」

 

 一応ベルが信頼に足る人物であることが分かっているヴェルフはひとまずベルの言葉だけで納得することにした。

 

 

―――――――――

 

 

 攻城戦が始まってからしばらくして、ベル達ヘスティアファミリアは神々の予想を裏切り善戦していた。ついでに謎の助っ人キグルミも善戦していた。ごく少人数にも拘わらず頭を使ったプレイで城の中に侵入し勝利条件である特定の人物撃破のために奮起していた。

 一方キグルミは、その目立ちすぎる外見がゆえにベルたちの方法では城の中に入ることができなかった。なので彼は自分を囮とすることで数による不利をひっくり返そうとした。

 その具体的な方法は………

 

 「ヒ、ヒィ……!」

 

 「来るな……ッ!来るなァー!」

 

 「俺のそばに近寄るなぁぁあああああ!!!」

 

 片っ端から敵を倒していくことである。

 二メートルにも及ぶキグルミを着ていることで、戦う前まではまともに動くことすらできないと思われていたキグルミが多くのファミリアメンバーを倒していく様は、アポロンファミリアに危機感を抱かせ、自然と彼に戦力が集中しつつあった。二メートルのキグルミが無言で迫ってくる………その光景も相俟ってとんでもない効果を発揮している。

 

 「くそっ、何だアイツは!?あれだけ重そうなもんを着てあの動きとかどうなってんだ!?」

 

 「動きが三次元的すぎて捕らえられない……!」

 

 アポロンファミリアの面々とて黙ってやられるつもりはない。恐怖心に駆られながらもしっかりとキグルミ目掛けて攻撃を仕掛ける。だがキグルミは床を蹴り、柱を蹴り、天井を蹴り、プラカードを操って確実にアポロンファミリアの人員を倒していった。

 

 「何で攻撃が当たらないんだ!?」

 

 「この人数でこの空間だぞ!?」

 

 「こいつを止めろ!団長のもとに行かせたら俺達負けるかもしれないぞこれェ!」

 

 室内ということで、限りのある空間。そして孤立してる状態……にも拘らず倒されていくのはアポロンファミリアの面子のみ、もはやこの場にいるほとんどの人間はまともな思考すら危うくなってきていた。主に恐怖で。

 

 『いらっしゃいませー』

 

 と書かれたプラカードで次々とアポロンファミリアの団員を地面に沈めていくキグルミ。結局、この戦争遊戯が終わるまで彼はひたすらプラカードで無双を続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 




アポロン「………( ゚д゚)」
ヘスティア「( ゚д゚)ポカーン」
ヘルメス「ブッ、ブフッ……wwwwwwwwwwwww」
アスフィ「ヘルメス様。流石に笑いすぎです」 

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