トメィト量産工場   作:トメィト

15 / 27
この話は続かないといったな。


あ れ は 嘘 だ !





もしも仁慈がだんまちの世界に行ったら そのに!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まずは、今回急に集まってもらったことを詫びるわ」

 

 

 そんな出だしで、ロキ・ファミリアの主神であるロキは口を開いた。普段であれば彼女がそのようなことを言うと囃し立てる周りの神々も皆一様に緊張した表情を浮かべており、格ファミリアの団員が見たら別人なんじゃないかと疑ってしまうレベルである。

 

 

神会(デナトゥス)

 

 

 何時もは雑談や情報交換、まったく真面目につけないランクアップした冒険者への命名等を行っているこの集会だが、今回はまったく毛色が違った。

 本来は三ヶ月に一回と定期的に行われるこの神会であるが、今回のものは予定にはないいわば緊急の集会だった。

 

 

 「ここに居る奴は今から言うことをよう聞いとき。聞き逃したら、割と命に直結する用件やで」

 

 

 そういってロキはその場を下がる。

 てっきりロキからの案件かと思っていた神々は多かれ少なかれ誰もが驚愕の表情を浮かべるが、次に前に出てきた人物にさらに驚いた。

 

 

 「さて、今回の案件は珍しいことに俺なんだぁ……驚いたかい?」

 

 

 「ヘルメス……今はそんな事言っている場合じゃないよ……」

 

 

 出てきたのは何かとロキと喧嘩するロリ神様ことヘスティアと飄々とした態度で何時もファミリアの団員に迷惑と苦労を掛け捲っている自由人ヘルメスであった。

 

 

 「そうだったそうだった。いやいや、ここに立つ機会はなかなかないからね。緊急時であれば尚の事……」

 

 

 「緊急時だからこそ、急いで話すんだよ。ヘルメス。君が言わないなら僕から言ってしまうよ」

 

 

 「おっと、それはおもしr――――ゲフンゲフン。………では、話をしよう。アレは今から36万――――」

 

 

 「実は、数日前。異世界から来たという人間が現れたんだ」

 

 

 あぁ、言われてしまった……と残念そうにするヘルメスをガン無視して結局ヘスティアは話し始めた。神々は思ったヘルメス(こいつ)何のために出てきたんだと。

 それと同時に思った。異世界から来た人間なんて恰好の暇つぶし道具ではないかと。この発想にたどり着いた神々は総じて目を光らせた。しかし、前もってある程度の話を聞いていたロキやヘスティアの友人であるヘファイストスはヘスティア本人のこわばっている表情を見てそうは考えられなかった。

 

 

 「問題はその人間のことだ。彼は自らの職業を神喰らいと言ったんだ」

 

 

 浮ついた空気が一気に凍った。

 今、あのロリ神はなんといった?職業が神喰らいだと?もし本当なら俺達大ピンチじゃねーの?

 と、そこに居る神々の殆どがそう思った。

 

 

 「でも、それが本当だかわからないだろう?」

 

 

 ヘスティアとも親睦の深いタケミカヅチがそう言葉を発する。彼の質問には今の今までガン無視されてきたヘルメスが答えた。いつの間にか無視された悲しみから復帰したようである。

 

 

 「確かにそうだけど、直接会って見れば分かると思うぜ。アレがどれだけ俺達の存在に仇なしているかどうか、ね」

 

 

 普段は飄々としたヘルメスが珍しく(これ重要)真顔で宣言する。ギャップもあって他の神々は口を閉ざした。

 

 

 「しかも、俺の神の恩恵(ファルナ)も受け付けなかった」

 

 

 さらりと付け加えられた一言で、三度目の驚愕が神々を襲った。異世界からの住民という超絶面白そうな存在を普通に自分のファミリアに入れようとしたことも驚くべきというか文句をつけるべき案件だが、神の恩恵を受けないということも十分に驚くに値する内容である。

 

 

 「アレには流石に驚いた。この世界をしょっちゅう旅しているけど、あんな存在は初めてだよ」

 

 

 くっくっくと愉快そうに笑う。

 コイツは恐れるのか面白がるのかどっちなんだと誰もが思った。彼が話していると埒が明かないと思ったのはヘスティアが結論を述べる。

 

 

 「要するに、その異世界人にはうかつに手を出すなということさ。彼に神の力は効かないし、ついでに言うと彼は神の恩恵がないのにその戦闘力は少なくともレベル5の冒険者と同等だ」

 

 

 『――――――っ!?』

 

 

 今日一日で俺達は一体どれだけ驚けばいいんですかねぇ……。

 神々の心境はこれに尽きた。

 神の恩恵なくしては、ダンジョンのモンスターはおろか地上に出るゴブリンやコボルトすら命がけで戦い勝てるか勝てないかといったレベルなのに、ダンジョンの下層でも実力が通じる一級冒険者と同じ戦闘能力とかふざけてんのか。

 

 

 「いいかい?元の世界で神喰らいという職業であれば、神という存在をよく思っていないことは確かだ。その異世界人に余計なちょっかいを出したらどうなるか……わかるだろう?」

 

 

 「………とりあえず、その異世界人の特徴を教えてくれないか?」

 

 

 神の一人が言う。

 注意するといっても、その人物の特徴を知っていないとどうしようもないだろうし、その問いは当然の問いだった。ただし、それが本当にその異世界人に近付かないようにするために聞いたのかは分からない。

 新しいものが大好きで、退屈を紛らわすために割と何でもやらかす神々のことだから特徴を聞いてあえてちょっかい出しに行くのかもしれない。

 そうなったらそうなったで自己責任だと思いつつ、ヘスティアはその異世界人の特徴と名前を口にした。

 

 

 「異世界人の名前は樫原仁慈。特徴は白に近い銀色の髪に、血のように赤い瞳。自分の背丈と代わらない巨大な大鎌を持っているからすぐに分かると思うよ」

 

 

 彼女の一言を最後に神会は終了。

 神々は解散ということで、各々が各々の考えを持って自分のファミリアに帰還した。

 

 

 「おい、ドちび。その件の異世界人は今何処に居るんや?」

 

 

 「それは……」

 

 

 「今はうちのファミリアの団長を監視につけてる。心配は要らないよ」

 

 

 どこか胡散臭い笑みを浮かべるヘルメスを一目見たロキはそうか、とだけ返事をして踵を翻す。

 そして、そのままこちらを向かずに言った。

 

 

 「あんたらが言った情報が確かなら、注意しとき。あの話し方じゃあいくらかの神には逆効果やで」

 

 

 それだけ言い残すとロキは今度こそその場を離れていった。

 

 

 「うー……なんか唐突に不安になってきたよ……」

 

 

 「まぁ、さっきも言ったようにアスフィを付けてるし彼自身も理性的な人だったし、滅多なことでは力を振るわないだろう。心配なら、これから見に行ってみるかい?」

 

 

 「遠慮しとくよ。彼自身の性格は嫌いじゃないけど、雰囲気がちょっとキツイ」

 

 

 どこか疲れた様子のヘスティアをにやにやした表情で見つつ、ヘルメスは思考する。

 

 

 「(彼の存在は一体どのようなことを巻き起こしてくれるのか……いやはや、これは面白くなってきたねぇ)」

 

 

 ………さて、神々にここまで色々な影響を与えている当の本人はというと、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「まったく、ヘルメス様はいつも何時も私に仕事を押し付けてくるんですから……!こちらの苦労も知らないで……!」

 

 

 「わかる、分かりますよ。上司とか、目上の存在がロクデナシだと。下は苦労するんですよねぇ……」

 

 

 「そうなんですよ!この前だって―――――」

 

 

 

 豊饒の女主人という店で、盛大に愚痴を溢し合っていた。

 

 

 

 

 

 

             

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。