インフィニット・ストラトス ~迷い込んだイレギュラー~   作:S-MIST

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巨大兵器が原作に比べ超絶強化されております。
そして今回、NEXTはついに切り札の1つを切りました。
ヒントはAC世界屈指のロマン兵器です。


第62話 緊急ミッション-2(後編)

 

 晶・ラウラ・セシリアが作戦領域に到着する少し前。

 包囲網を食い破るべく奮戦していた黒ウサギ隊のB・C小隊は、数の差に押され、乱戦の中ジリジリと劣勢に追い込まれ始めていた。

 

『クソッ!! このままでは!!』

 

 誰かの悪態が無線で流れた。

 B小隊が武装集団の中に突入し、主力戦車(MBT)を数両撃破したところまでは良かった。

 だが後から後から湧き出る物量が、個人の武勇を無力なものに変えていく。

 1両撃破する間に2両増え、10人倒す間に20人増える。

 そして常に四方八方から浴びせられる銃撃に、武装が1つ壊され、2つ壊され、機体にダメージが蓄積されていく。辛うじて腰部跳躍ユニット(ブースター)を駆使しての3次元機動で、致命傷こそ逃れているものの、撃墜は時間の問題だった。

 各隊員の機体ステータスは軒並みイエロー。特に駆動系のステータスはレッドラインギリギリ。今この瞬間も、酷使され続ける跳躍ユニット(ブースター)が悲鳴を上げていた。

 だがそれでも、彼女達は力を振り絞り奮戦する。

 

『頑張れ!! 後もう少しで隊長が来てくれる!! もう少しだ!!』

 

 シュヴァルツェア(黒い)ツヴァイク()経由の戦闘データリンクで、IS3機が急行中なのは、既に隊員達の知るところだった。

 そして本来なら、ここでB・C小隊が取るべき戦術は乱戦ではなく、一度地雷原の内側に戻り遅滞戦術で時間を稼ぐ事。

 増援が到着してしまえば、装甲車両の100や200程度、まして歩兵如きがどれだけ居ようと一瞬で片付く。

 しかしそれが出来ないほど、現状は泥沼の乱戦となっていた。

 こんな状態で無理に下がろうとすれば、各個撃破の良い的だった。無理に連携を取ろうとしても同じだろう。

 つまり黒ウサギ隊の各員は、いずれ物量で磨り潰されると分かっていながら、乱戦を続けなければその瞬間を生き残れないでいた。

 だがそれも、程なく破綻を迎える。

 

『09!! チェックシックス(後方注意)!!』

 

 叫ばれた隊員が、脚部パワーアシスト全開で地面を蹴りながら跳躍ユニット点火。その場から緊急離脱しつつ背部兵装担架起動。

 担架にあるマシンガンを背後に向けて斉射。

 幾人もの人間がバタバタと倒れていくが――――――。

 

『そこは駄目だ!!!!!』

 

 着地した瞬間、09に別の者から通信が入った。

 

『えっ!? しまっ――――――』

 

 気付いた時には遅かった。

 グレネードが右跳躍ユニットを直撃。

 攻撃を避けたつもりが、敵の射線に飛び込んでしまったのだ。

 そして爆発。直近で発生した爆炎と衝撃が、09を無様に吹き飛ばす。

 何度も地面をバウンドし、装甲の至る所が傷つき、全ての武装を喪失し、泥まみれになり、満身創痍の状態で大地に横たわる。

 

『う・・・・・・ぁ・・・・・・・・・・』

 

 漏れ出た声が、辛うじて搭乗者の生存を示していた。

 しかし09が倒れた場所、そこは運の悪い事に、主力戦車主砲(120mm滑空砲)の正面だった。

 

『・・・・・・ぁ・・・・・・・・・・・・・・・』

 

 助からない。誰もがそう思った。

 この光景を見れば、後は戦車砲を撃ち込まれて木っ端微塵に砕け散るだけ。

 それ以外の光景を思い浮かべられる者などいないだろう。

 だが次の瞬間、主力戦車(MBT)の分厚い正面装甲に大穴が開き、貫通した弾体がエンジン部を直撃。次いで燃料と砲弾に引火。車体が木っ端微塵に砕け散る。

 

『・・・・・・・・・・・・え?』

 

 何が起きた?

 誰かがそんな事を思っている間に、逆転劇は始まっていた。

 黒い影が音速の数倍という速度で戦場を駆け抜け、発生したソニックウェーブが、生身の人間を木の葉の如く吹き飛ばしていく。

 そしてオープン回線で、ゾッとするほど冷たい声が流れた。

 

『よくもまぁ、私の可愛い部下達をここまでいたぶってくれたな。貴様ら、生きて帰れると思うなよ』

 

 上空から戦場を見下ろすラウラの左目が、金色に輝く。

 

『死ね』

 

 ドイツの冷水(ラウラ)と呼ばれた女は、一切の情け容赦無く、その身に纏う力を行使した。

 上空からレールガン(WB14RG-LADON)で戦車や装甲車を狙い撃ち、歩兵はブレードワイヤで貫き輪切りにし、量産された肉塊が、大地を真紅に染め上げていく。

 必死の反撃は、足元に展開されたAICで全てシャットアウト。弾丸の一発すら彼女には届かない。

 そして敵わないと知った敵は、疲弊した黒ウサギ隊の面々を盾にしようとした。だがヴォーダン・オージェを発動しているラウラの知覚領域内で、そんな事が出来るはずも無い。

 盾にしようとした者から優先的に、そして容赦無く、人生に終止符が打たれていくのだった――――――。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 一方その頃。

 クラリッサのカバーに入ったセシリアは、射撃型の本領を存分に発揮していた。

 スターライトmkⅢ(レーザーライフル)による長距離狙撃でロケット弾を爆発させ、周囲の弾頭もろともブラザーキル。爆炎を抜けてきた残りも、空を縦横無尽に駆け巡るビット迎撃網を突破出来ずにいた。

 

(これなら、やれますわ!!)

 

 IS学園でのクラス代表決定戦以降、常にビットコントロールを行いながら機動戦闘を行ってきたセシリアにとって、自身が動かない迎撃態勢でのビットコントロールというのは、入学前では考えられなかった程の高精度制御を可能とするものになっていた。

 そして、その光景をセシリアの背後から眺めていた満身創痍のクラリッサは――――――。

 

(これが、イギリス代表候補生の実力か!?)

 

 ――――――学生とは思えぬ実力の高さに舌を巻いていた。

 狙撃能力の高さもそうだが、驚くべき視野の広さだった。

 三方向から撃ち込まれるロケット弾を、的確に捕捉・迎撃している。元々ハイパーセンサーは周囲360度全ての情報を拾っているが、それを有効活用出来るかどうかは本人次第。驚異的な捕捉能力と言えた。

 そして北、西、南と順に砲撃が途絶えていく。

 

『・・・・・・・・・これで、終わりですわね』

 

 セシリアがライフルを下ろし、ビットを回収しながら言った言葉に、ラウラも同意した。

 

『そうだな。だが巨大未確認機が接近中だ。早々に部隊を撤退させた方が良いだろう。――――――クラリッサ。指揮官はお前だ。撤退命令を』

『分かりました。ブラックラピット01より各員へ。撤退する。後、ヘリに09が乗るスペースはあるか?』

『こちらロート(ヘリ部隊)01、問題無い。だが装備は厳しいな。試験機だから持って帰りたいんだろ?』

『ああ』

『なら何人か02に乗せよう。それでどうにかなる』

『助かる』

 

 こうして撤退準備が行われていく中、セシリアの視線はラウラの戦闘跡に向けられていた。

 

(これが、戦場・・・・・・・・・)

 

 レールガン(WB14RG-LADON)で貫かれた戦車や装甲車が、至る所で黒煙を上げ、散乱した幾多の死体から流れ出た血が、大地を真紅に染め上げている。

 虐殺という言葉が脳裏を過ぎった。

 ISという超兵器が、一切の躊躇無く力を振るった結果がコレだ。

 セシリア自身は、こういう光景を見ても大丈夫だと、何の根拠も無く思っていた。いつもと変わらない自分でいられると。

 

(だけど、この気持ち悪さは何ですの?)

 

 物言わぬ肉塊になった人達を見ていると、どうしようも無い程の不安が沸き上がってくる。

 既にものを見ていない虚ろな視線が、抗い難い恐怖を与えてくる。

 

(晶さんも、ラウラさんも、どうしてこんな場所にいて冷静でいられますの!?)

 

 映画の中にしか存在しないような、凄惨な光景に、彼女はそう思わずにはいられなかった。

 だが幸いにも、セシリアの思考は中断を余儀なくされる。

 遠方で巨大な爆光が煌き、極太のレーザーが大空を貫いていったのだ。

 そして晶から、2人に通信が入った――――――。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 ラウラとセシリアに通信が入る少し前。

 砲撃元を爆撃したNEXT()は、進路を未確認巨大兵器(UNKNOWN)へと向けていた。

 既にオープン回線を使って、即時停止を呼びかけているが反応は無い。

 

『停止しなければ、攻撃の意志ありと判断し排除する』

 

 とまで言っても無視なのだから、向こうもやる気なんだろう。

 なので晶は、遠慮無くやらせてもらう事にした。

 リミッターを解除したおかげで、もう使い捨てるしかないVOBにコマンド。

 

 ―――分離後、自壊せずにフルパワーでそのまま直進。

 

 選択した手段は、VOBをそのまま突撃させるというもの。時速8000kmオーバーの質量弾だ。

 幾ら30m級の巨大兵器と言えども、こんな物の直撃を受ければタダでは済まないだろう。

 晶はVOBを直撃コースに乗せた上で、一瞬だけ減速して分離。直後、クイックブースト(QB)で進路上から退避。

 主のいなくなったVOBはコマンドに従い、フルパワーで直進。

 一筋の閃光となり巨大兵器に突き刺さる―――――――――と思われたその時、敵が動いた。

 胴体中央に強力なエネルギー反応。

 放たれたレーザーがVOBを貫通、爆散させる。

 飛び散った破片が巨大兵器に向かっていくが、それも分厚い装甲に阻まれ、ダメージを与えているようには見えない。

 

(今ので沈んでくれれば楽だったんだが、まぁいい。やりようは幾らでもある)

 

 強化人間の機能で、恐怖心や不安といった感情を適度に抑制されている晶は、冷静に思考を走らせた。

 現在の武装は、右腕MOTORCOBRA(マシンガン)、左腕EB-R500(レーザーブレード)、肩GALLATIN02(フレア)、右背部WHEELING01(多連装ミサイル)、左背部CP-49(ロケット)。ある程度の状況には対応出来る標準的なアセンブルだ。

 対する敵は、頭頂高36.7mの歪な人型。

 全体的にオレンジを基調とした角ばった胴体と手足。背中に巨大なコンテナが2つ。肘にも小型化された同じようなものが付いている。腕は人型らしく5本の指まであるが、指先が無く中身が空洞になっている。フィンガータイプの武器だろうか? 脚は太腿が前後に長くて、脛は太く短い。両膝にはエネルギー兵器の発射口と思われるものが1つずつ。背中には巨大なテールバインダーが見える。

 まさしく、動く要塞といった感じだった。

 

(だがなっ!!)

 

 デカブツを倒す方法は、今も昔も変わらない。戦艦が戦闘機に沈められたように。近距離に潜り込んでのヒット&アウェイ。

 しかし敵は、思いもよらぬ方法でNEXTを引きはがしにかかった。

 背部と両肘のコンテナが開き、中から無数のミサイルが現れる。にも関わらず、ロックオン警報が無い。

 瞬間、晶の脳裏を確信めいた直感が走り抜けた。

 狙いはラウラでもセシリアでもなく、クラリッサ・ハルフォーフ大尉とその部下達。

 どうあってもISを墜とす気らしい。

 

(やらせるか!!)

 

 咄嗟にマシンガンでミサイルコンテナを狙い撃つが、頭頂高36.7mという巨体の積載量は伊達では無かった。ISコアが無ければ大規模設備が必要となるエネルギーシールドで、弾丸が弾かれる。

 

「なっ!?」

 

 直後、Type-D No.5(巨大兵器)から数百というミサイルが放たれ、クラリッサの元に向かっていく。

 

「させるかぁぁぁぁっっっ!!」

 

 殆ど反射的に晶は動いていた。フレアをばらまき、マシンガンで撃ち落とし、多連装ミサイルで放たれたミサイルを迎撃していく。

 しかし、初動で完璧に遅れを取っていた。半数以上の迎撃には成功したが、それでも100を越えるミサイルが救出目標へと向かっていく。

 

『ミサイル迎撃!! 任せた!!』

『任せろ!!』

『わ、分かりましたわ』

 

 頼もしいラウラの返事と、何処か焦りを含んだセシリアの返事。しかし今は信じるしかない。

 

(時間を掛けて良い事は無い。すぐスクラップにしてや――――――)

 

 だがふと、とある疑問が晶の脳裏を過ぎった。

 

(――――――待てよ。ISコア無しでこれだけの物を動かせるジェネレーターって何だ?)

 

 真っ先に思い付いたのは核だった。艦船への搭載実績がある以上、あれだけの巨体なら積む事も可能だろう。

 だが原子炉が核分裂のタイプだった場合、破壊したらこの辺り一体を汚染してしまう。核融合炉なら大丈夫だが、恐らく試作機であろう巨大兵器に、高度な技術と制御が必要な融合炉を使うだろうか?

 束に頼めば、あの巨大兵器をハッキングして分かるかもしれない。それどころか制御下に置けるかもしれない。だがハッキングに気付かれて自爆でもされようものなら最悪の事になる。

 ほんの数瞬の思考。

 

(仮に核だったとしても、汚染物質もろとも消し飛ばしてやれば良い。――――――可能な武器は幾つかある。どれも切り札だが、仕方が無い!)

 

 覚悟を決めた晶は回避機動を取りながら、ロケット弾とミサイルで巨大兵器のシールドに負荷を掛けていく。

 しかし敵も負けてはいなかった。片指5本、計10本の指から大口径グレネードが次々と放たれ、膝からはパルスキャノンの猛連射。加えて、回避する隙間すらないミサイルでの面制圧。

 

(流石巨大兵器。だがなっ!!)

 

 マシンガンとフレアで迫るミサイルの壁に穴を開けながら、EB-R500(レーザーブレード)をシールドモードで起動。

 パルスキャノンの猛連射とグレネードの爆風を、エネルギーシールドで防ぎつつクイックブースト(QB)。爆炎を突き抜け背後に回り込もうとするが、敵もその辺りは良く考えていた。

 肘と背部にあるミサイルコンテナが回転し、背後に向けて一斉射。と同時に背部ブースター全開。巨体を動かせるだけの膨大な熱量が、ミサイルをブラザーキル。発生した爆発がNEXTの前進を阻む。

 更にType-D No.5(巨大兵器)は、腕を大きく振ったAMBAC(※1)機動で高速旋回。NEXTを正面に捕捉し、嵐のような弾幕で攻め立ててくる。

 

(あの巨体でAMBAC機動!? ふざけた真似を!!)

 

 対するNEXTは、迫る弾幕を回避しながら次の行動に移った。

 死角から攻撃して安全に撃破出来ないなら、力ずくで捻じ伏せるしかない。

 時間をかければもっとスマートに攻略出来るかもしれないが、万一VOBを破壊したレーザーで救出目標を狙われたら防ぎようが無い。

 よって、ここは攻めるべきと判断。

 右腕と肩の武装を拡張領域(パススロット)へ戻し、新たな武装をコール。

 

 ―――ASSEMBLE

    →R ARM UNIT  :SAMSARA(プラズマライフル)

    →SHOULDER UNIT :MUSKINGUM02(32連動ミサイル)

 

 立て続けに放たれたプラズマライフルが、巨体を守るシールドを軋ませ、着弾で発生したECMが電子機器を阻害。精密計算が必要な遠距離ロックにエラーが発生する。

 しかし例え高濃度ECM環境下だろうと、互いを光学認識出来る近距離戦能力まで、無くなる訳ではない。

 反撃として放たれるのは、多連装大口径(フィンガー)グレネードとパルスキャノンによる面制圧。

 だが対するNEXTは、爆風でエネルギーシールドを削られながらも、巧妙な回避機動とクイックブースト(QB)で制圧圏を離脱。

 そして互いの次の一手は、まるで申し合わせたかのような、ミサイル発射管のフルオープンだった。

 直後、数百というミサイルが入り乱れ、乱打戦が開始される。

 その様はまるで、個体VS個体ではなく艦隊戦。

 都市一つを灰に出来るだけの火力が注ぎ込まれる。

 互いのミサイルが空中で喰らいあい、爆発に次ぐ爆発。乱れ咲く爆光が連なり光のカーテンを生み出していく。

 しかし拮抗しているかのように見えた乱打戦だが、ここで巨大兵器の弱点が露呈した。

 それは攻撃を回避出来ないという事。これは同等以上の攻撃力を持つNEXTを相手とするには、致命的な弱点だった。

 被弾率の差が、徐々に勝敗の天秤を傾けていく。そしてついに、巨大兵器のシールドが喰い破られた。

 ミサイルが次々と装甲に突き刺さり、爆発の衝撃で巨体が揺らぐ。

 更に放たれたロケット弾が、肘部ミサイルコンテナを直撃。誘爆で巨大兵器の左腕が吹っ飛んだ瞬間、戦いを生業とする強化人間の本能が、「今だ」と告げた。

 晶は迷わなかった。

 クイックブースト(QB)ダブルアクセル(WA)を駆使した神速の踏み込み。刹那の間に吹き飛んだ肩口にポジショニング。と同時に、右腕プラズマライフルをラピットスイッチ。新たにコールされた武装は、AC世界において登場以来、一度として最強の座を譲った事の無い兵器。

 ノーマルが使うソレですら、ネクスト撃破の可能性を秘め、ネクストが使うソレは、アームズ(A)フォート(F)の撃破すら可能とする近接兵装。

 その魅力に取り付かれた幾多のレイヴンとリンクスが愛用し、極めた人間の前ではあらゆる戦術が意味を成さなくなる必殺兵器。

 引き絞られたNEXTの右腕に光が集まり、その中から現れた武装の名は――――――。

 

 ――――――パイルバンカー(KIKU)

 

 鉄杭を突き刺すという、ただそれだけのアナクロな兵器。だがAC世界の技術者(変態)どもは、ソレを恐るべき兵器へと昇華させていた。

 超硬々度の鉄杭で敵の装甲をブチ抜いた後、杭を探査針として内部構造をサーチ。割り出した物体の固有共鳴周波数で内部構造を共振させ、分子結合を崩壊させるという、物質である以上決して逃れられない必滅の一撃。

 それがType-D No.5(巨大兵器)の吹っ飛んだ肩口に、装甲が存在しない接合部に突き刺さる。

 

「くたばれっ!!」

 

 思考トリガーに従い放たれた鉄杭が、柔らかい内部構造を抉ると同時にスキャン。

 割り出された固有共鳴周波数と同調する振動波が、打ち込まれた鉄杭を通じて、Type-D No.5(巨大兵器)に浸透していく。

 その効果は劇的だった。

 共振した内部構造が瞬時に崩壊を始め、頑強に作られているはずの原子炉さえ崩壊していく。

 結果、四肢を繋ぐ胴体が塵と化し、残った右腕と下半身が崩れ落ちる。

 だが晶は、これで終わらせる気など無かった。残骸を解析されると少々厄介な事になる。戦闘レコーダーが残っていたりしたら最悪だ。なので新たな武装をコール。

 

 ―――ASSEMBLE

    →R BACK UNIT:CP-48(ロケット)

    →L BACK UNIT:CP-48(ロケット)

 

 他人に見られても構わない単純な武装だ。

 だが、その威力は折り紙付き。

 それを残骸へと撃ち込み、文字通り跡形も無く消し飛ばしておく。

 こうしてType-D No.5(巨大兵器)との戦いは、敵機の完全消滅という形で幕を閉じたのだった――――――。

 

 

 

 第63話に続く

 

 

 

 ※1:AMBACシステム(ガンダム用語辞典より)

 Active Mass Balance Auto Control System(能動的質量バランス自動制御システム)

 腕や脚などの可動部を振ることで推進剤を使わずに姿勢を制御するシステム。

 特別な事ではなく、人間を含めた動物も同様の事を無意識に行っている。

 (チーターが急激な方向転換をするために尻尾を振り回すとか)

 姿勢や向きは変えられるが軌道までは変えられない。

 


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