インフィニット・ストラトス ~迷い込んだイレギュラー~   作:S-MIST

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お待たせ致しました。
今回で教導編の最後となります。

そして地味に、今回の教導中のとある思いつきが切っ掛けで世界に影響が………。


第100話 教導・後編-2

 

 教導2日目は、瞬く間に過ぎ去っていった。

 オペレーター1人にパイロット1人という組み合わせで、ひたすらシミュレーションだ。その中で晶は、巨大兵器と戦う時のコツや注意点といったものを教え込んでいく。

 泣き言を言おうが喚こうが容赦はしない。しかし決して優しい教え方ではなかったが、皆良くついてきていた。

 誰もが、この教導で何かを掴まなければと必死だったのだ。

 だが実を言うと、彼女達が脱落しなかった理由はもう1つあった。

 それは彼の隙を見つけ出して喰い破る力――――――言い換えれば弱点を指摘して少なくする事による、パイロット能力の底上げだ。加えて言うなら、彼は弱点を自覚させるのが非常に上手かった。

 強化人間の研ぎ澄まされた感覚とアセンブル(装備の組み合わせ)に対する理解度、晶の戦闘経験と専用機持ちを指導してきた経験、それら全てが合わさった結果、参加メンバー達自身も自覚していなかった弱点が次々と指摘されていったのだ。

 これだけでもパイロット達にとって、教導に参加した価値があっただろう。

 そして良くも悪くも、彼は戦闘で手を抜かない。必ず一緒に隙を無くす方法、或はリカバーの方法もセットで教え込んでいた。

 この光景を織斑千冬とナターシャ・ファイルスは、ピットルームの様子が映し出されるモニタールームで、熱心に見つめていた。

 そんな中で、ナターシャが口を開く。

 

「………ねぇ千冬。彼、アメリカに教官として招けないかしら?」

「束の怒りを買いたいなら、アタックしてみたらどうだ」

「私、まだ死にたくないわ」

「だろう。私も同僚を、そんな事で失いたくはないな」

 

 彼女とて、本気で招けるとは思っていない。ただの冗談だ。

 だがIS学園は昔一度だけ、彼をISの実技専門教員として雇おうとした事があった。その顛末は、彼女とて知っている。

 束が怒り狂い、千冬が宥める事でどうにか事無きを得ていたのだ。

 

(それにしても………)

 

 モニター越しに晶を見るナターシャは、思わず1年専用機組に嫉妬してしまいそうになった。

 もしも、もしも自分が今IS学園の1年生だったなら。彼の指導を3年間受けられたなら、パイロットとしてどれだけの高みに登れただろうか?

 思わず、そんな事を考えてしまった。

 

「………余計な事は考えない方が良いぞ。ナターシャ・ファイルス」

 

 唐突に掛けられた言葉に、ハッとなる。内心を見透かされたかのような言葉に、思わず彼女は話題を変えた。

 

「良いわよねぇ千冬は。今回の報酬、彼との模擬戦でしょう。私も混ぜてくれないかしら」

「馬鹿を言うな。私の報酬を奪う気か? パワードスーツとは言え、機体を限界まで振り回して戦える相手だぞ。1分1秒だって譲ってやる気はない」

「1戦だけでも、ダメ?」

「ダメだ。代わりにお前とは私が戦ってやるから安心しろ。それとも、私では不満か?」

「まさか。貴女と戦えるだけで、他のパイロットにどれだけ羨ましがられると思ってるのよ。ブレード一本で世界を征した実力、とくと味わわせて貰うわ」

「嬉しい事を言ってくれる。で、本音は?」

「貴女がそれほど入れ込む相手よ。興味を持つな、という方が無理じゃない?」

「否定はしない。パイロットなら誰でも興味を持つだろうな」

 

 そんなやり取りをしつつ、千冬は別のモニターに視線を向けた。

 表示されているのは、教導参加メンバー達のシミュレーション内容―――回避率、与ダメージ、被ダメージ、戦闘機動の軌跡、あらゆるデータがその画面で分かるようになっている。

 そこで千冬は、手元に仮想コンソールを呼び出して操作。初回のシミュレーションデータと現在のデータを比較表示してみた。

 

(………分かってはいたが、こうして比較すると凄まじいな)

 

 回避率、与ダメージ、被ダメージ、攻撃効率、数値として現れるあらゆる項目が、初回のシミュレーションとは段違いだった。

 

(………だがこれでも、100%の性能を発揮した巨大兵器に勝てるかどうか、というところか)

 

 仮にこのままの伸び率でいけば、最終日の勝率は一桁前半程度だろうか。どんなに良く見積もっても、10%を越えないだろう。

 正直に言えば低い。だがエースでもない人間なら、高いと言えるだろうか?

 こうして2日目は瞬く間に過ぎて行き、5日間(月~金の平日)のインターバルの後、3日目に突入する。

 なお教導参加メンバー達は平日でゆっくりと疲れを癒した―――訳ではなかった。

 全員が、とにかく焦っていた。もしも過去に戻れるなら、過去の自分を殴り飛ばしていただろう。

 何故IS神話などを盲信していたのか、と。

 そんな彼女達が、安穏と過ごすなど有り得なかった。

 教導に使ったシミュレーション環境は外部の人間に解放されるような物ではなかった(※1)ため、各々ISで行える簡易シミュレーションに取り組んだり、巨大兵器について分析し攻略方法を見つけようとするなど、それなりに密度の濃い毎日を過ごしていた。

 

 ※1:それなりに演算能力のあるマシンを使っているので、そんな高スペックマシンを部外者に解放できるはずもない。

  (ハッキング等に悪用されると大問題)

 

 そうして訪れた3日目の夕方。シミュレーションに繰り返し挑む参加メンバー達を見ながら、晶は悩んでいた。

 

(全員伸びてはいる。伸びてはいるんだが……)

 

 これで対巨大兵器戦に出せるか、と聞かれれば、首を横に振るしかない。

 現状、最も勝率の高い者で5%程度だ。しかもオペレーター付きでかつ相手は80%のTYPE-D。単独で100%を相手にしたら、当然勝率は下がる。

 

(………どうする?)

 

 彼としては教官を引き受けた以上、一定以上戦えるようにはしてやりたい。だが後1日で劇的な向上は難しいだろう。

 

(どうすれば良い? どうすれば………)

 

 このままの実力で教導を終えれば、殆どの参加メンバーは死ぬだろう。

 撃破率一桁前半で実戦など、自殺と変わらない。そうして晶が暫く考え込んでいると、パルプルスが近づいてきた。

 

「教官。難しい顔をして、どうされたのですか?」

「何でもな――――――いや、1つ聞いてもいいかな」

 

 ここで彼は、悩んでも仕方がないと、思い切って尋ねてみることにした。

 もしも撃墜経験のある彼女が否と答えたなら、この場にいる他のメンバーにも無理だろう。何せ巨大兵器2機を同時に相手取るのが、可愛く見えるような荒療治だ。

 

「なぁパルプルスさん。巨大兵器2機を同時に相手にする以上の地獄って、想像できるか?」

「ちょっと想像出来ませんが、貴方が言うということは、“ある”んですね」

「ああ。抵抗すること自体が無意味に思えるような事がな」

「………今ひとつ想像出来ませんが、仮に貴方と戦う事と比較するなら?」

「今のお前達なら、大して変わらないレベルだな」

「………このままでは、私達は生き残れないのですね?」

 

 言葉は疑問形だが、その声には確信に近い響きがあった。

 

「ああ。このままでは生き残れないだろう」

 

 迷い無く肯定する晶。

 パルプルスの返答は早かった。

 

「なら、その地獄を見せて下さい」

「パイロットとして再起不能になっても?」

「このままでは無理なのでしょう? なら、進むだけです」

「他の奴らは何て答えると思う?」

「平日の間に全員と話しましたが、恐らく同じ答えかと」

「予想してたのか?」

「成功率一桁の作戦なんて、実戦でやったら狂人扱いですよ。どこかでテコ入れが必要だろう、とは皆で話しをしていました」

「分かった。今のシミュレーションを終了したら、一度全員を集めてくれ。次に行うものの説明をする」

「分かりました」

 

 

 

 ◇

 

 

 

 そうして10分後、集まった参加メンバー達を前にして、晶は口を開いた。

 

「さてお前達、まずは確認しておこう。――――――このままで生き残れるとは、思っていないな?」

 

 メンバー達が肯くのを見て、彼は言葉を続けた。

 

「そうだ。君達が思っている通りだ。だが今これを言う理由は、諦めろという意味ではない。残念な事に、時間が足りないだけだ。修練を怠らなければ、君達の刃は必ず届くようになる。そう思えるくらいに、君達はこの教導で成長してくれた。だからな――――――」

 

 晶は手元に仮想コンソールを呼び出して操作。壁面の大型ディスプレイに、とある巨大兵器のデータを表示させた。

 それはここではない別の世界で“アームズ(A)フォート(F)”と呼ばれ、何の因果か、この世界でもISという質を圧殺するために誕生した存在。

 ザワリと、参加メンバー達が息を飲む。

 

「もう一段上を見せておく。俺が各国に配布したレポートは、本来これクラスを相手にする事を想定したものだ」

 

 画面に表示されている推定スペックは、今まで巨大兵器と呼んでいた人型モドキ(TYPE-D)六本脚(L.L.L.)が、可愛く見えるほど馬鹿げたものだった。

 タンカー2隻を「H」型に繋いだ双胴船のような外見。船体中央には巨大なロングレンジキャノンを備え、その全高は400mに迫るほどだ。加えて全身に配置された兵器群はスタンダードな近接防御火器システム(CIWS)を皮切りに、パルスガン・多連装グレネード・ハイアクト(高機動)ミサイル・分裂ミサイル・収束型ミサイル等々の武装が施されている上に、ロングレンジキャノン後部には全長500mを超える超々長距離狙撃砲(レールガン)を装備している。これは場合によっては船体下部へ移動して電磁誘導推進装置となり、巨体に似合わぬ水上機動力をギガベースに与えていた。

 勿論、海でしか運用できないような欠陥品ではない。

 キャタピラの装備によって海から陸へ、或いはその逆と、スムーズに移動可能という万能性すら備えている。

 加えて言えば、これだけでは無い。

 巨体という圧倒的な積載量を生かして、パワードスーツ母艦としての機能まで併せ持っていた。

 推定搭載数は、約3~5個大隊(108~180機)

 その全てがギガベースとリンクし統制射撃を行う事で、たかがパワードスーツ如きが、有効な対IS戦力として生まれ変わっていた。何せたかがパワードスーツとは言え、パワーアシスト機能を使えば、生身の歩兵では扱えない各種重火器が使用可能になる。移動砲台が100門以上増え、その全てが統制射撃されるとなれば厄介さは想像できるだろう。

 

「――――――“アームズ(A)フォート(F)”ギガベース。これが恐らく、君達が最終的に相手をする事になるものだ」

 

 勝てる訳がない。

 表示された桁外れのスペックに、参加メンバー全員の思いは同じだった。

 しかし、立ち直りも早かった。

 パルプルスが口を開く。

 

「教官。貴方が予想する、ISがコレを攻略する場合の戦力比はどの程度でしょうか?」

「何度かシミュレーションをしているが、全員の腕が平均レベルだとして、攻略可能になる最低比率が7対1だ」

「確率を聞いても?」

「一週間前までのお前達のデータで、加えて強襲用追加ブースター(IS用のVOB)を使って2%だ」

「0ではないのですね?」

「ああ」

 

 IS7機を投入して、攻略率2%

 普通に考えれば絶望的な数値だ。

 だがここにいる者達は、既にとても大事な事を1つ学んでいた。

 すなわち、戦い方の工夫だ。

 戦場で弱い者は、決して強者に勝てないのか?

 教導を受ける前までの彼女達なら、Yesと答えただろう。

 ISこそが絶対であり、その他の全ては、有象無象の雑魚共だと切って捨てただろう。

 だが巨大兵器の出現により、そんな考えは通じなくなった。

 そして今後、高確率で巨大兵器と戦わなければならない教導参加メンバー達は、生き残る術を考えるようになった。

 今までの性能に頼った戦い方ではない。

 持てる力の全て、使える物は全て使って生き残る戦い方――――――ここではない別の世界で、“レイヴン”と呼ばれた者達が得意とする泥臭い戦い方だ。

 無論、まだまだ本場に比べれば大した事は無い。しかし殆どのメンバーがIS至上主義者だった事を考えれば、驚くべき変化だろう。

 そしてこの後、シミュレーションを持ち掛けた晶をして驚くような結果と影響を、参加メンバー達は残していくのだった。

 それは――――――。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 ギガベースのシミュレーションを始めた当初は、予想通りに散々な結果だった。

 何せ強襲用追加ブースター(IS用VOB)を装備したIS7機による、7方向からの同時侵攻作戦も、超々長距離狙撃砲(レールガン)とロングレンジキャノンの迎撃により、接敵出来たのは僅かに1機だけ。

 無事近づけた者も、人型モドキ(TYPE-D)六本脚(L.L.L.)を上回る物量の前に、成す術なく沈黙させられた。

 この結果は悪くなる事はあっても、改善する事は無かった。何度繰り返しても、ダメージすら与えられないのだ。

 そうして隔絶した戦闘力に皆が諦め始めた頃、パルプルスがポツリと呟いた。

 

「いっその事、トップアタックでも仕掛けてみましょうか」

「戦車と戦うみたいに? どうやってあの防空網を破るのよ。そもそも近づけないじゃない」

 

 答えたのはリリアナだったが、その言葉は皆の思いを代弁していた。

 これに対してパルプルスは只の思いつき故か、空を指差しながら軽い口調で返した。

 

「違う違う。もっと上よ。一度成層圏上層部まで上がって、そこから重力加速(落下速度)と強襲用ブースターの加速力を合わせて、直上からトップアタックを仕掛けるの。ついでに言うなら、使い捨てのブースターはそのまま突撃させて、質量弾として叩き込むのはどうかしら。これなら相手の迎撃行動を大分無力化出来て、かつダメージも与えやすいと思うのだけど」

 

 この思いつきは功を奏し、教導最終日にはギガベースに対して、軽微ながらも損害を与える事に成功する。が、この思いつきが及ぼした影響は、そんな小さなものではなかった。

 後にこの方法は、軌道降下戦術として教本に載る事になる――――――だけなら良かったのだが、この話には更に続きがあった。

 この軌道降下戦術がパワードスーツ部隊に転用されたのだ。

 無論降下方法など、ISと比べて色々異なる部分はある。だが基本的な考えは変わらない。

 直上からの高速強襲に加え、降下要員を一定高度まで保護する再突入殻を最終段階で分離、質量弾として叩きつけるという荒業だ。

 地上にいる者達にとって、速度のついた質量が無数に降り注いでくるというのは、想像に難くない恐怖だろう。

 加えてこの戦術は宇宙から降下するという関係上、惑星圏内なら何処にでも、例え敵国の首都であろうと、兵力の即時展開が可能になる。今までISなどの特殊な兵器にしか許されていなかった事が、通常兵力で行えるようになるメリットは大きかった。

 そして少し未来の話になるが、とある国が某テロ国家に対して、この戦術を決行。防衛線の有無に関係なく国の中枢機能を完全に破壊したあげく、突入要員は防衛線を裏側から食い破り離脱に成功する。

 この従来の戦術では不可能な結果に、先進各国は宇宙軍の創設を決定する。

 勿論、“宇宙軍”等という名前を使っては色々と反発を受けてしまうので、表向きは宇宙開発――――――当面は月面開発の為の中継基地として、衛星軌道に浮かぶ宇宙ステーションの建造と防衛という名目で行われていくのだった。

 

 閑話休題。

 

 そうして迎えた教導最終日の最後、晶はちょっとしたサプライズを用意していた。

 普段ならこんな事はしないのだが、意外と仲良くなっていた参加メンバー達を見て、「何か形のある物を残してあげた方が良いかな?」等と思いついたのだ。

 シミュレーションを繰り返したピットルームで、彼は口を開く。

 

「――――――さて、これで教導は終了だ。正直色々と足りない部分はある。だからこれ以降は、各々が研鑽を重ねていって欲しい。それを忘れなければ、いずれ巨大兵器に届くだろう。だが忘れるな。敵も常に進化している。昨日通じたものが、今日通じるとは限らない」

「分かってます。教官のシミュレーション、凶悪でしたから」

 

 参加メンバーの1人が、とても晴れやかな顔で口を挟んだ。

 

「そうそう。同じ戦闘力80%でも、毎回毎回戦闘アルゴリズムが違う。偏差射撃のタイミングが違う。挙動モーションが違って動きが読み辛い………本当、凶悪でした」

 

 更に別のメンバーが言った言葉に、全員が仲良く肯く。

 それを見た晶は頃合いかと思い、部屋の隅に隠しておいた木箱を持ってきた。

 

「教官、それは?」

 

 パルプルスの言葉に、彼はニヤリと笑った。

 

「なに、ちょっとしたサプライズだ」

 

 そう言いながら開いた木箱の中身は、年月日と名前、そして数字(ナンバー)が刻印された簡素なリングだった。形としては指輪だが、ネックレスにも出来るようにチェーンがついている。

 

「えっと、これは?」

 

 メンバーの1人が首を捻る。

 状況的には贈り物と分かるが、この鬼教官から贈り物というのが、脳内で結びつかないようだ。

 

「初めは考えてなかったんだが、この教導で色々とわだかまりが解けたようでもあるし、同じ苦楽を共にした仲間がいる事の証明、というところかな。あとついでに言えば、数字(ナンバー)は成績証明だ。第1・第2アリーナの分は含んでいない。純粋に対巨大兵器戦の成績でつけている」

 

 後にこの数字持ちはリングナンバーズと呼ばれ、別の意味を持つようになる。

 その意味とは、しぶとさの代名詞だった。

 決して、絶対の強者という訳ではない。公式戦で負ける事もあれば、実戦で敗退する事もある。

 しかし誰もが諦めるような状況下ですら驚異的な粘りを見せるその姿は、敵にしてみれば厄介な事この上なく、味方にしてみれば頼もしい事この上ない存在となっていくのだった。

 こうして晶は無事依頼を終えたのだが――――――後日、別の問題で頭を抱えることになる。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 とある日の放課後、晶は織斑先生から面談室に呼び出されていた。

 

「何の用事でしょうか? 先生に呼び出されるような厄介事は、最近は無かったはずですが?」

「厄介事というのは、お前が避けても向こうからやってくるようだな。――――――読んでみろ」

 

 そう言いながら無造作に渡されたFAXの内容は、教導第2回目の開催依頼だった。

 無論彼に行う気は無い。これっぽっちもない。

 だが一応文章を読み進めていくと、開催目的が少々違っていた。

 そして晶は、思わずFAXを握りつぶしそうになる。

 織斑先生がニヤニヤと笑いながら口を開いた。

 

「大変だな。人気者は」

「………ふざけるな。こんな事まで面倒みれるか!!」

 

 第2回開催依頼の目的。それはパイロットに協調性を学ばせて欲しいというものだった。

 この依頼がされた原因は、祖国に戻ったパイロット達の言動だ。

 極端な言い方をしてしまえば第1回に参加したパイロット達は、(全員ではないが)IS至上主義者で女尊男卑を当然のものと思っている者達だった。挙句、ISという単体でほぼ完結した超兵器を扱っているせいか、仲間への気遣いもあまり無い。言ってしまえば、腕は良いがチームプレイには向かない人材だ。

 それが教導から戻ってきたらどうだ?

 プライドの高い部分はあれど、自分を支える仲間達への気遣いが、拙いながらも出来るようになっているではないか。

 今までプライドの高さや独断専行に散々手を焼いていた上官達にしてみれば、これだけでも教導に行かせた価値があったというものだ。

 すると人の心理として、当然こう思う。

 

あそこ(晶の教導)に送り込めば、実力ついて、人格も矯正されて、一石二鳥じゃね?」

 

 その結果が、第2回目の開催依頼だった。

 受ける気の無い彼は勿論断るのだが、リングナンバーズのいる部隊といない部隊で、稼働効率やら作戦成功率やらで差が出てくると、「次こそはウチの国のパイロットを!!」と多くの国が国際IS委員会を通じて(突き上げて)、開催依頼を出すようになってきた。

 また加えて言うなら、リングナンバーズが対巨大兵器戦で撃破出来ないまでも生き残る度に、国際IS委員会からしつこくしつこくしつこくしつこくしつこくしつこくしつこくしつこくしつこくしつこくしつこくしつこくしつこくしつこくしつこくしつこく、開催依頼が送られてくるようになるのだった。

 

 

 

 第101話に続く

 

 

 




よーやく教導編が終わりました。
予定ではサラッと終わらせるはずだったのに、長かったです………。
そしてヒロインズが出てこなかったので退屈された読者様もいたかと思いますが、次からは出てきますのでご容赦のほどをお願いします。

………誰に焦点当てようかな。(全く考えてない作者です)

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