桜セイバー in Fate/EXTRA   作:日向辰巳

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二十五話

俺たちはアリーナに来ていた。目的はもちろんセイバーのレベルアップである。

ふと、電子手帳にメールが届いた

 

「どうかしましたか?マスター」

 

「言峰からメールが届いたんだ」

 

そしてエネミーがいなくなったことを確認してメール画面を開く、送られてきたのはハンティングゲームの報酬

次の対戦相手の戦闘データ、モニターに映っていたのは...ユリウスだった

ユリウスの戦闘データを見てみると、決闘が決まった次の瞬間、対戦相手が崩れ落ちている、勝負を決めているのはすべて…一撃

 

「一体何が起こっているんだ?ここに見えない一手があるはず…セイバー、サーヴァントが実体化せずに攻撃することは可能なのか?」

 

「私の知っている限りでは不可能です、少なくとも攻撃する前に一瞬殺気などが漏れてしまうはずですが…何かカラクリがあると見ました」

 

なるほど、やはり並のサーヴァントではないということか、それにあの男の性格ならば対戦日までに必ず奇襲を仕掛けてくるだろう

…その時に何か掴むしかない

 

「マスター、話があります

…あのユリウスさんが相手なら宝具を使わなければ勝利できない場面もあるでしょう

…宝具を開帳するという事は私の真名を知るということ…マスターは私の真名を知りたいですか?」

 

…そうか

セイバーは怖いんだ、俺に拒絶されることが、距離を作られるのが…

真名を明かすということは過去の自分がしたことを全て知られるということだ、もちろん良い事も…悪事も

 

「セイバー...俺は」

 

「…すみません、お話は後にしましょう」

 

そしてセイバーが構えた先には...ユリウスがいた

 

「…いっぱしの目をするようになったな、随分と腕を上げたようだ

…これだからわからんな、魔術師というものは

だがそれもここで終わる、決戦日まで待つ事はない、お前はここで消えろ」

 

ここでやる気か、だが何かおかしい、サーヴァントも連れずにアリーナに来るなんて自殺行為だ...一体何を考えているんだ?

 

「サーヴァントも連れずに散歩ですか?こんな所を一人で散歩でもないでしょう、いや、まさか!」

 

「推察お見事、だが些か遅いな」

 

「うっ!あがっ…」

 

セイバーがいきなり崩れ落ちる、一瞬だがセイバーの背後に凄まじい重圧を感じた

 

「(そんな…認識する事すら出来ないなんて…すみませんマスター...逃げて...下さい...)」

 

「セイバー!なんだよ…なんだよこれ!治療のコードキャストが効かない!」

 

これは普通の傷じゃないということだ、あのサーヴァントに何かされたんだ

「…ふん?」

 

「どうしたアサシン、やはり首でも削ぎとっておくか?」

 

「いや、それには及ばん、たしかに心穴を衝いた、衝いたのだが…

…まあ良しとするか、抜かりはない、いずれ死に至ろう」

 

「…セイバー、俺はまだ君と話したいことがたくさんあるんだ」

 

いつか俺の体が見つかったら、俺の記憶を取り戻したら、君に伝えたいことがたくさんあるはずなんだ…

 

「待てユリウス...まだセイバーを救う方法を教えてもらってないぞ...」

 

倒さなくては、こいつを

セイバーを救う方法を聞き出さなくては

そして俺はユリウスに突っ込んでいく、だが片っ端から傷をつけられていく

 

「うう...があっ...」

 

「いくら魔術の腕が立つマスターといえどサーヴァントの庇護なしで勝てるはずがない」

 

「そこまでだユリウス・ベルキスク、それ以上やるってんなら俺たちが相手になってやる」

 

そう言って現れたのは獅子劫さんだった、だがあの人が俺達を助ける理由はないはず、なんで俺達を助けてくれるんだ...

 

「お前には借りがあるからな、それにお前さんのサーヴァントはまだ死んでない、今は命を無駄にして特攻するよりそいつを救う方が先決だと思うが?」

 

確かにまだセイバーは消えていない、消えてないということはセイバーは生きているということだ、ならばここから離脱するしかない

 

「ありがとうございます、獅子劫さん」

 

「おう、あと礼なら凛の奴にも言っとけよ、お前が危ないって助けを求めてきたのはあいつだからな」

 

そうだったのか、そういえば凛とは電子手帳などの機能を共有したのだった、攻撃された際に電子手帳が壊れてしまったのでその異常に気付いてくれたのだろう

 

「…貴様はレジスタンスのリーダーの獅子劫界離か、邪魔をするというのなら貴様もここで排除する」

 

「急げよ岸波白野、俺もこんなとこで殺られたくねえからな…」

 

セイバーを抱えて走りだす、元来た道へと急いで引き返しその場を後にする、そして凛とラニがいるであろう保健室へと直行する

 

〜〜〜〜

 

「まずいわ…新手のウイルス?ううん、意志を持ったエネルギーというか…まるで毒血ね」

 

「…そんなにひどいのか」

 

「これは...魔術回路が乱されていますね、これではマスターからの魔力供給が受けられません、今セイバーは自分の魔力で体を保っている状態です、このまま魔力供給しなければ明日には体を維持できなくなるでしょう」

 

明日までの命...そんな...

 

「白野くん、少し時間をちょうだい

対策を考えるから…」

 

〜〜〜〜

 

俺は...無力だ...セイバーが苦しんでいるというのに何も出来ないなんて

どうすればセイバーを救える?

あのサーヴァントをどうすれば倒せる?

考えろ...考えろ...

 

「おう、ここにいたか、元気そうで何より

お主一人か?サーヴァントはどうした?」

 

こいつ...セイバーをあんな目に遭わせておいてよくもぬけぬけと...

 

「呵々、そう身構えるな!今は仕事の外、私用で気ままにブラついているだけよ」

 

「なっ…俺を殺しに来たわけじゃないのか?」

 

「そう驚くことか?まあ儂も確かにユリウスと同類だがなあ、出会った人間全てを殺してはメシを食うにも困ろうさ」

 

問答無用で相手を殺す、という訳ではないらしい

 

「儂は一戦一殺を心がけておる、一度の戦いではひとりしか殺さぬし、ひとりは必ず死んでもらう

…しかしお主のサーヴァントもなかなかやりおるわい、一瞬だが儂の拳をずらしおった

ふむ、あれだな、殺すには惜しい相手という奴か」

 

「殺すには惜しい…?ならセイバーを救えないのか?」

 

「それは聞けぬ相談だ、この拳は壊すことしかできんのだ、いや余人を生かしたことなど数えるほどもなし儂など武人を謳うには程遠い殺人鬼よ!

…故にお主のサーヴァントは自分で治せ、儂とて敵は万全でなければ愉しくない

お主とサーヴァントがもう一度立ち上がる時を待っておるぞ」

 

〜〜〜〜

 

「マスター…私はどのくらい眠っていましたか?」

 

「半日...もうすぐ夜明けだよ」

 

「あはは...あまり状況は良くなさそうですね...」

 

マスターから魔力が届かない、あの人にマスターとの繋がりを断ち切られましたか...

これじゃあ夜明けまで体を保てるかわかりませんね...ん?なんか手が温かい...?

 

「マスター、もしかしてずっと手を握っていたのですか?」

 

「…セイバーを救う方法がまだ見つからないんだ、ごめん、俺にはこんなことしかできない、本当にごめん…」

 

「大丈夫ですよ、マスター…ですがこの手を離さないで下さいね…」

 

〜〜〜〜

 

「もうすぐ夜明けね、時間がない」

 

「白野さんと連絡はとれましたか?」

 

「さっきから連絡しているのに返信がないわ、まさかもう…岸波くん!セイバー!」

 

「と…遠坂?どうしたんだそんなに慌てて…」

 

「...お、お邪魔だったかしら...オホホホ...」

 

ピシャ

そして凛は扉を一瞬で閉めた

おそらく俺とセイバーが手を握っていたから何か勘違いしていたのだろう、今度はラニも一緒に保健室に入ってくる

 

「セイバーを治す方法が見つかった?」

 

「はい、まず私の占星術を使い星詠みの波長にあわせて遠坂凛が乱された回路を見つけ修復する、上手くいけばセイバーと白野さんのリンクを取り戻せるかもしれません、サーヴァントを詠むのは初めてなので保証はできませんが...」

 

充分だ、それでもセイバーを治せる可能性があるのなら俺はそれにすがりたい

 

「頼む、ラニ、凛」

 

「任せときなさい、絶対セイバーを救ってみせるわ」

 

そうだ、俺も一応魔術師の端くれだ、何か手伝えることがあるんじゃないだろうか?

 

「え?...ない!こないで変態!白野くんは外で待機!」

 

えぇ!なんでだろう、俺はただ...

 

「絶対…中を覗いたら駄目よ...ノゾイタラコロス」

 

「はーい!絶対覗きませーん!」

 

あはは、何を言っているんだ遠坂は、この俺がそんな奴にみえるだろうか?元から何を言われても覗く気なんてこれっぽっちもないし?

まったく、俺も甘く見られたもんだな...

でもこれはあれなんじゃないか?押すなよ押すなよ的なノリなんじゃないか?それなら俺は覗かないと逆に失礼というものだ、だけど小声で殺すまで言うなんて遠坂のボケはわかりにくいなあ...でも本当に殺される可能性も無いにしもあらずなわけで...

 

「ふう、あいつが馬鹿で助かったわ」

 

「白野さんは何をしているのですか?」

 

「さあ?念仏みたいにずっと独り言を唱えてるわ」

 

「...よろしくお願いします…凛さん、ラニさん」

 

「あのね、セイバー、少しでも成功率を高めるために肌を重ねる必要があるのよ、か、重ねるだけよ

...だからお願い、大人しくしといてね?」

 

「…では、術を始めます」

 

〜〜〜〜

 

いや待てよ、よくよく考えたら俺はセイバーのマスターじゃないか、なら様子を見に行くくらい構わないんじゃないか?

 

「何してるんですか?マスター?」

 

「セイバー…?よかった戻ったのか!」

 

「はい!ただいま戻りました!マスター!」

 

セイバーが帰ってきた、ただそれだけのことなのに涙がでてきた

 

「長い1日になりましたね、マスター、今はマスターの魔力、ちゃんと感じられますよ」

 

さあ、セイバーも回復したことだしユリウス・ベルキスク、長きにわたる奴との因縁に決着をつけよう!

 


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