「あなたが私のマスターですか?」
俺はいきなり現れた少女に驚きを隠せなかった。その美しさに、だがそことなく感じる少女の儚さに、少しばかり見惚れてしまっていた。
「あの…ちゃんと返答してくれないと困るといいますか…恥ずかしいといいますか…」
「あ…ごめんね、多分俺が君のマスターだよ」
「はい、ここに契約は成立しました。まずは手始めにあの木偶人形を斬り伏せてご覧に入れましょう」
そう言うとセイバーは襲ってきた人形の攻撃を避け、カウンターとなる形で突きを放った。 すると先程俺が苦戦していたのが嘘のように簡単に敵は崩れ去ってしまった。
「ふう…片付きましたね、マスター。 これからもよろしくお願いしますね」
その瞬間、力が一気に抜けたのかわからないが倒れこんでしまった。
……セイバーが。
あるぇ?セイバーが?
「すみませんマスター…私、体力には自信がなくて…先程の戦闘で魔力をかなり使ってしまいました…ゴフッ!」
先程までの凛々しい姿が嘘のようにグッタリとしている。 ツンツンしても起き上がる様子がない。 これは本格的にまずいようだ。
仕方がないのでセイバーを背負ってそのまま保健室に向かうとするか。 保健室なら寝かせることもできるだろうし落ち着いて話をすることもできるだろう。
「こんにちは、新しいマスターさんですか?」
すると保健室には薄い紫色の髪をした少女がいた。
新しいマスター…ということは彼女はNPCか何かだろうか、とりあえず挨拶をされたので挨拶を返すことにする。
「こんにちは、俺は岸波白野だよ」
「岸波白野…ですか…。 えーと、よろしくお願いしますね。先輩!」
うん、可愛い。
なんか名前を覚えるのをいい感じにスルーされたような気がするけどまあいいや。
「サーヴァントが倒れた…ですか…そして先輩が運んできたんですね…」
「うん。そうだよ」
「ふふふ、面白いですね先輩は。サーヴァントを保健室に連れてくるマスターなんて初めて見ました」
や、やっぱり?俺もおかしいと思ったんだ。普通は逆なんじゃないの?って思ってたんだよ。
「そういえば名前は何ていうんだ?」
「あ、すみません 自分が名乗っていませんでしたね、私の名前は桜です。間桐桜といいます」
「よろしくね、桜」
「う〜ん…ハッ!?マスター!」
あ、セイバーもやっと目覚めたみたいだ。気がつくと大分話し込んでいたしセイバーに聖杯戦争のことを聞かなくては。
「あ、個人的な話ならマイルームでした方がいいですよ?」
「マイルーム?」
「はい、マスターとサーヴァント専用のルームがあるので重要な話ならそこかと…」
そんな部屋があるのか。
たしかにいろんな話をしたいと思っていたし落ち着いて話すならマイルームがいいかもしれない。
一言桜にお礼を言って保健室を後にする。
〜〜〜〜
「ここか…たしかにここなら話を聞かれなさそうだ」
マイルームと言っても特に何もなく本当に話し合いをする時などにしか使えなさそうだ、いろいろ置けばまた違うと思うが、まあ今はそんなことはどうでもいい。
セイバーに今の状況について聞かなければ。
「すみませんマスター…先程は見苦しいところをお見せしました」
「大丈夫だよ、それでセイバー 今の状況を教えてくれるかな?」
「今の状況?もしかして…もしかしてですがマスター。 聖杯戦争を知らないんですか!?」
その通りだ。
俺には聖杯戦争どころか昔の自分のことすら覚えていない。ここに来るまでの自分はどんな人物だったのか、何故ここに来たのか、全く覚えていない。
「そうですか…仕方ありません。この私が聖杯戦争について教えましょう!といっても私も深くは知りませんが」
〜〜〜
「ありがとう、セイバー」
聖杯戦争の仕組みは分かった。 ところで...
「君は何者なんだ?」
「あ、いってませんでしたね私のクラス名はセイバー、真名は...」
セイバーが沈黙する。一体どうしたんだろう?
「あ、いえ…ですよね。 真名を教えることはマスターを信頼している証。 それを基盤として作戦を考えるので普通教えるのでしょう。 ですが今回は特別なケースです。 なのでまだ秘密ではダメでしょうか?」
うーん。
確かに自分はまだ聖杯戦争というものがはっきりわかってない、もし真名を知ってうっかり自分がバラしてしまったら相手に対策をしてくださいと言っているようなものだろう。
「うん、わかったよ」
「ありがとうございますマスター。それではあと一つだけ。…非常にいい難いのですが…」
「なに?」
「あ、あの…何と申しますか…えっと…」
何か言いたそうな顔をしているが何やら気まずそうだ。こんな時は気分を変えに何処かへいくのがいいだろう。
「取り敢えずご飯でも食べに行こうか?」
「は、はい! ですよね、まずは腹ごしらえです! 食堂行きましょうか、マスター」
すごい慌てようだ。 何か焦っているようだし食事をしながら緩やかに教えてもらうとしようかな。
〜〜〜〜
なんだこれは…とてつもなく赤い…というか紅い。いや朱い!でも何故か体が!本能が!これを食べろと叫んでいる……!
「この激辛麻婆豆腐というのをください」
「マスター、本当に食べるんですかコレ?やめておいた方が…」
たしかに赤すぎる、そして体から汗が噴き出してくる。
何だこれは…この病み付きになる感じ…いいネ!
「いや、意外と美味しいよコレ」
興味本位で買ってみたのだが案外美味しかった。量も少ないしこれなら3杯はいける……!!!
「ほ、本当ですか?」
セイバーは興味津々という顔でこちらを見ている、少し辛いがまあこれくらいなら大丈夫だろう。セイバーにも食べさせてあげよう。
「セイバーも食べてみる?」
「い、いいんですか?では一口ほど…」
「いいよ、はい、あーん」
「白野!まさか君が予選を生き残ってるなんてね!」
「うひゃっ!?」
「シンジ!」
あ、シンジだ。 久しぶりにシンジにあった気がする。そして恥ずかしかったのかわからないがセイバーは可愛い声を上げたあと霊体化してしまった。
「まさかお前が生き残るなんてな!でも聖杯は僕のものだぜ?何せ僕のライダーの無敵艦隊は最高に強いからね!」
「あら、そんなに大きな声でサーヴァントの情報を晒すなんて余程の自信があるのね?マトウシンジくん」
現れたのは黒髪のツインテールで赤を基準とした服を着ている少女だった。その堂々とした佇まいには幾つかの修羅場をくぐってきたかのような風格が滲み出ていた。
「と…遠坂…お前も来てたのか…くそ、そのくらいばれたってそんなに変わらないだろ!」
「そうね、私にできることといえば砲撃などに耐え切れるシールドを複数枚用意しておくくらいかしら?無敵艦隊を持ってるらしいマトウシンジくん?」
「くそ…なめやがって…来い!ライダー!」
「ちょっと挑発しすぎたかしら…まあいいわ来なさい!アーチャー!」
「シンジ…アタシは海賊だからねぇ…予定外の仕事は高くつくよ?」
「やれやれ…リン、私は体力は温存しておきたかったのだがね」
「うっさいわね!戦いになっちゃったんだからしょーがないでしょ!
あなたの強さも見たかったしここであんなサーヴァントボコボコにしてやりなさい!」
止めずに見ていたがこのままでは二人のサーヴァント戦が始まるのだろう、だがこれはいい機会だ。
俺はまだ戦いというものを知らない、サーヴァント同士の本当の戦いをというものを見せてもらうとしよう。
…これは聖杯戦争だ。あの二人のどちらかが敵とも限らない。
よく観察していた方がいいだろう。
(はあ…言うしかないのでしょうか…)
リンのサーヴァントをアーチャーにしてみました、あと白野くんの一人称が定まっていませんが俺と自分どちらも使うということで解釈おねがいします