サイカイのやりかた【38話完結】   作:あまやけ

51 / 59
1のあらすじ

銀髪妹枠 黒髪和風美人枠 金髪メイド枠…金髪彼女枠?

…増えたなぁ

#お待たせしました!


2.岡崎 修一はただ理子に好かれたい

『生徒は誘われる側と誘う側に分かれている』と修一は思っている。

 

もちろん上位は誘われる側だ。誘うわれるということはつまり一緒に居たいと思われていることであり、好意があることをアピールしてくれていると取っていいだろう。女子からの誘いたらば尚更自分に気があるのだと判断してよし。

 

誘われることは全くなかったからこその修一の持論である。一年生から今まで『誘われる、話しかけられる、好意的に接してもらう』などのリア充要素皆無であった修一だからこそ悟った論理だ。

 

 

 

 

そんな彼だからこそ…

 

 

 

 

「しゅーちゃん、放課後どうする?商店街にでも遊びに行こうか♫」

 

 

この何気ない会話が死ぬほど嬉しかった。終わりの挨拶をして理子を見ていたらこちらにくるりと振り返ってくれたのが堪らなく嬉しかった。

 

「…ありがとうございます」

 

「え、なにが??…てか何で敬語?」

 

「いや、なんでもね」

 

「あー、行くか商店街。俺買いたいゲームあるわ」

 

「おーじゃあ付き合うよ。理子も借りたいCDあるから付き合ってね♫」

 

「うい」

 

放課後。教師のまとめも終わりそれぞれが専門科へと移動し始める中、理子は自然な動作で修一の元へやって来た。

その動作はごくごく自然な動きで、するっと人ごみを抜けて一目散にやって来るその様子に修一は思わず涙ぐみそうになってしまっていた。

 

数人の男子生徒が理子を追うように目線を動かし、その行き先が彼であることに「はぁ…」と落胆している。前まで修一にちょっかいを出していた連中もその様子に歯ぎしりしていた。

 

修一自身それをチラと見てまた嬉しくなってしまっていたのだが、その喜びが目の前でニコニコと笑ってくれる彼女のおかげだと再認識していた。

 

(全部こいつのおかげ…だもんな。やっぱり理子に嫌われないようにしないと…!)

 

そう心に改めて決意していた。彼女から見放されないために、彼女が自分のこと好きになってくれたあの時の自分に戻るために。

 

「じゃ、行こっか」

 

「うい」

 

修一が準備を終えるのを見て理子もぴょんと机から飛び降りる。未だ教室に残る生徒が二人の並んでいる姿に違和感や嫉妬を覚えつつ見送っていたがのだが当の本人たちは気づいていない。

 

 

 

そんなことを気にする余裕などないのだ。

 

 

 

((…もう放課後になっちゃったけど…))

 

 

二人並んで廊下を歩く。それぞれが目を合わせないように気をつけつつお互いの顔をチラチラ見ながら、心の中で決意していた。

 

(絶対にしゅーちゃんに理子の魅力を再確認させてやる!どれだけいい女捕まえたかってことを理解しろよ修一!)

 

(今日中に理子に頼り切らない昔の俺に戻ってやるんだ。…そしたら理子がまた俺を頼ってくれるはず…!理子に好かれる男になれ修一!)

 

 

それぞれの思惑は正反対であったが、とにかく放課後デートがスタートしたのだった。

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

それぞれ一度家に帰った後、集合ということになった。

 

 

 

(メイクよし、服装完璧、身だしなみ…オッケー♫)

 

先に着いた理子は手鏡を取り出しよしと頷いた。

 

 化粧は完璧、制服だった服装も外行き用に変えて、昔最も修一がいい反応をした白いシャツに黒いブレザー、赤いチェックのスカートにしてある。そのオシャレな格好は元々の顔立ちも整っているのもあり、道行く男子の視線をチラと向かせていた。近くを歩くカップルが喧嘩を始めてしまうほどに今日の理子の気合はバッチリである。

 

 しかし本人は視線など気にもしていなかった。彼女の脳内ではこれから来る彼氏のことで一杯である。

 

(今日でしゅーちゃんがどれだけいい人と付き合ってるかってのを分からせてやるんだから…!覚悟しろよしゅーちゃん!…あ!!)

 

拳をぐっと握った彼女の前に見慣れた彼が見えた。理子はさっそくとばかりに笑顔で彼に手を振った。

 

「あ!しゅーちゃ〜ん!こっちこーー」

 

「ん!?あ、おぉぉぉぉぉぉい!!理子さん待たせたなぁ!!」

 

「へ!?」

 

手を挙げたまま、理子は固まってしまった。

待ちに待った彼氏がやって来てくれた。…のだが、

 

「ようやく会えた!30分ぶりだなぁ!俺は早く会いたくて会いたくて仕方なかったゼェ!!」

 

「え、う、うん。まぁ、理子も、会いたかった、けど…?」

 

 

何か様子がおかしい。

 

同居人の銀髪に言われて着たであろうオシャレな服装をした彼は、なぜか遠くからハイテンションでやって来た。

 

もちろんこんなことするタイプの男ではない。いつもなら「おー」などとテキトーに返事してその後のデートもなんとなくで終わらせるような基本ダメ男なのだ。

 

「いやー!そっかそっか!!んじゃあ楽しいデートに行きますかぁ!!」

 

「え、あ、うん…?」

 

自分の意気込みよりも激しい行動に思わずたじろぐ理子。修一がここまでよくわからない行動をするのは久々だった。

 

(え…何これなになにこれなに!?しゅーちゃんどうしたの!?…え、えぇ??)

 

爆破事件を起こしても警察に捕まることのなく逃げ切れるほどの知力のある彼女でもこのたった一人の男の考えていることが理解できない。

 

修一はそんな理子の様子も全く見ず、高笑いしながら理子の肩に手を回した。

 

「え!?修、ちょ、かた、肩に!?」

 

「さぁ行こうか理子!ラブラブな様子をみんなに見せつけつつ街を闊歩しようぜ!さぁさぁ!」

 

「え、あ、ん…。…うん」

 

(明らかにおかしい…明らかにおかしい…けど、これはちょっと嬉しいかも…)

 

日頃全く男らしくない彼がまるで殻から出てきた様に男らしくなった。ガシッと掴まれた肩が熱くなっている。いつも自分からくっついていただけにカウンターはかなり効いたようだ。

 

 

そんな好感度が激上がりしている彼女の横で…

 

 

(うん、こんな感じ…だよな?理子とデートなんて昔じゃ考えられないし…テンションバカ上がりするよな。…間違ってないよね?)

 

 

本人は内心頭を抱えていたのだった。

 

 

ーーーーー

 

 

「今109学割で10%引きだって!」

 

「よし、二枚巻け」

 

「くふ、そんなのズルだからダメ〜♩」

 

 二人がやって来たのは渋谷にある109だ。中には化粧品や服などを販売するオシャレな店がかなりの数存在する。そのほとんどが女子向けの物が多く、休みの今日、行き交う人の大半は若い女子だった。

 

 入り口の前に立っている女性が理子の腕に紙を巻いた。これを店の店員に見せることで商品が割引される仕組みになっていた。

 

「場違い感半端ねぇ…」

 

「そう?彼氏彼女ばっかりじゃん」

 

「お?…おお!そーだったな!堂々としていいんだ俺は!!」

 

中に入ると放課後の時間とあって混雑する店内のほとんどが学生だった。化粧水や服、時計など男女ともに楽しめるこの場所はデートするのにも適しているらしい。その学生のほとんどが男女二人グループだった。

 

「くふ、見て見て!理子可愛いでしょ〜!」

 

一回奥にある化粧品コーナー。ここには様々な香りやメーカーの香水が100種類以上も存在している。もちろん香水だけでなく女の子が好みそうなアクセサリーなども展示してあった。

 

理子はそのアクセサリーの中から一つを取り出すと、首につけ修一のほうにクルリと向いた。

 

(ふふん、ちゃんと理子に一番似合う物選んできたんだもんね!…ま、これくらいじゃ「おー似合う似合う、買えば?」なんて簡単に返されちゃうだろうけど…)

 

「おう!可愛い!世界一だ!」

 

「え!?」

 

内心苦笑いしていた理子だったが修一は再び変なテンションで理子へと近づく。思わず辺な声が出てしまい少し恥ずかしくなりながらも理子は確認するように修一の言葉を反復する。

 

「え、え、理子…かわいい?ほんと?」

 

「ほんとほんと!いやぁいーねいーね最高だ!こんな可愛い子が俺の彼女なんて俺幸せだわ〜!」

 

「そ、そう…?えへへ…」

 

修一の行動にいろいろ思うところがあったが、その真っ直ぐな言葉に思わずにやけてしまう理子。ちょろいな自分と理解しながらもどうしても口元が緩んでしまう。

 

(なんか理子別になにもしなくても良くない?修一ってば理子のこと超好きじゃん!)

 

などと考え始める、そんな中…

 

「よし理子!俺がそれ買ってやろう!!」

 

「…へ?」

 

修一が突然ありえないことを言い出した。

 

 

彼は最もお金を愛するセコ男であり、彼が奢るなんて考えられない。今まで最も近くにいた彼女だからこそ確信できるだけに驚いてしまった。

 

「しゅ、しゅーちゃん…どうしたの?奢るってそんな、別に買ってもらう気は全然ーー」

 

「あとそれも欲しいって言ってたな買ってやる!あとそれとそれだな!……お金大丈夫かな?……いや買ってやる!!!」

 

「い、いや本当にいいから!え、なに、なんでそんなこと突然ーー」

 

「いいんだ何も気にするな!俺からの気持ちだ!ほら、他になんかあったら言え!買ってやるから!!」

 

「あ…」

 

断りを入れる理子だったが、修一はそんなことも聞かず「あ、あれもいいよな!」と、よくわからないであろう化粧品コーナーへと走り出して行ってしまった。ザワザワと騒がしい人混み、伸ばした手が空を切る中理子は…

 

 

(あぁ…そーだった。)

 

先ほどの高揚した感情が、落ち着きを取り戻していた。

 

(今の修一ってなんかおかしいんだった。…理子のことを好きだとか可愛いとか普通言わないもんね…。どうしたんだろ?…理子がなにかしちゃったのかなぁ…?)

 

今まで言われた嬉しかった言葉も、本心なのかわからなくなってしまった理子は、下唇を噛んだ。

 

彼が無理しているのがあからさまに分かってしまう。

 

そんなに無理をしている理由が理子には全くわからない。

 

(…なんか、楽しくないなぁ…)

 

 

彼氏が何を考えているのかわからない。

 

 

それがたまらなく怖くて、嫌で、寂しかった。

 

 

お金が足りなかったのか泣きながら商品を返す修一を見ながら、理子は、はぁと溜息をついた。

 

 

 




遅くなりました!本当はこれで終わりにする予定だったのですが、長くなったので二つに分割しました。

ps.主人公のランクが低い理由についてたくさんのメールや感想をいただきました。設定として弱すぎたかなと自分でも少し思っていたので少しだけ変更しました。『外伝 1 VSランク ① [試験前の夜は徹夜だよな』にセリフを付け足しましたので読んでいただけると嬉しいです。

https://novel.syosetu.org/77854/

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。