二人がお互いの気持ちを理解しました。
あれから一週間が経った。俺は怪我を治療に専念するために(今度は絶対に外には出さないと医者に言われ)ずっと入院していたがようやく学校に登校できる事になった。
時間は12時15分、昼休みの時間だ。この学校では遅れて学校に来る生徒は少なくないから目立つことはないというか、まあ何も言われない。…が俺の場合は違う。俺みたいなEランクが授業より優先する依頼なんぞやっているわけがないのだから。
クラスの後ろのドアをガラガラと開け、少しだけ集中する視線にどぎまぎしながらも自分の席に向かう。
ほんと、なんで教室のドアって音がなるんだろ…変に目立っちまうじゃねーか…。
俺はクラスメイトの目線を気にしないようにわざと視線を窓の外に移そうとしてーー止まった。
俺の席より前に金髪のツインテールが見えたからだ。
「うわ~!理子ちゃんのお弁当可愛い~!!」
「えへへ~いま花嫁修業中なの!」
理子の机を中心に4、5人集まって楽しそうに弁当を食べている。何を話しているのかは聞き取れないが俺には気づいてないようだ。
…いや、声かけないよ?いやかけれないよあんなカースト上位枠に紛れ込めるかっての。カーストサイカイなめんな。
(さてと…俺は俺で飯食べるかね)
実はまだ俺も昼飯を食べていない。病院から帰って来てそのままコンビニで軽く買ってきただけだ。ということで自分の席に座りコンビニの袋を机の上へと乗せる。
しかし…あいつ凄いよな…どーやったらあんないろんな人に好かれることができるのかね?
…と
(あ、目が合った)
その時、たまたま後ろを向いた理子と目が合った。俺は思わず目を逸らしてしまう。この前色々あったとはいえ、俺はカースト最下位であっちは最上位。目があったからといってなにもしてはいけない。
「ちょっと、しゅーちゃん?目が合ったのに無視はひどくない??」
そう思っていたのは、俺だけだったらしい…。
なぜか、目の前に理子がいた。自分の弁当を持って。
さらに前の席をこちらの席にくっつけ座った。
「っておいおい。なんで机をくっつけようとする?」
「なんでって、しゅーちゃんとお弁当食べる約束したじゃん?」
「いや、したけどお前…」
俺は理子に隠れて見えなかった理子の席を確認する。理子のいなくなった後の席に1人が座り楽しそうに談笑を続けている様子が見えた。こっちをチラチラと皆が見ながら話しているし、まあ十中八九俺たちの話だろうな。
変に目立ちやがってからに…。
「それにこの頃しゅーちゃんとあまり話せてなかったし…」
「そ、そうか」
心の中で悪態ついていたが、目を逸らしてそういう理子にちょっと嬉しくなってしまった。変に目立っちまったがまあいいか。
「それより聞いてよしゅーちゃん!理子さ〜しばらくアニメ見れなかったじゃん?だから昨日徹夜で今季のアニメ全部見たの~♬」
「おお、そうなん?んで、面白かったのある?」
「くふ、教えてしんぜよう!理子が最も面白かったアニメ!ガヴリール…」
「お、おい、岡崎ぃ!」
理子が楽しそうに話し始めたその瞬間、後ろから声をかけられた。正直二人の空間を感じて浮かれていた気分が思いっきり落とされたようだ。…誰だよ?
少しイラッとしながら振り向くとそこには、バスケの時俺を転ばせた三人の武偵がいた。…おかしい、普段なら影でこそこそ言うだけでわざわざ言いには来ないのに。
「…えっと、なに?」
「お前なに峰と話してんだぁ!?無視されまくってたよな!?」
「なんでお前なんかが話してんだよ!ふざけんな!!」
「けるなー!けるなー!」
どうやら理子とご飯を食べると言うことに口出ししてきたようだ。
…正直お前らに関係ないだろと言いたかったが…。
気づいた。クラスのほぼ全員がこちらを見ている。どうやらこいつらは代表で俺の元に来たようで全員気になっていたみたいだ。…いや,まあ一週間前の俺を無視しまくる理子を見てたら気にはなるよな。
「…いや、その、えっとな…?」
…やべ、そう思ったら上手く話せなくなっちまった。
…くそ、コミュ障はこれだからダメって言われるのはわかってるんだが…
こんな全員の前で言えるならそもそもコミュ障になってないんだよ!
俺がなにも言わないのを良いことに三人がかりで様々な暴言を吐き始める。しまいには…
「お前峰の弱みでも握ってんだろ?クズがやることはクズなことに決まってる!」
「ダセェンだよお前!」
「だせぇ!だせぇ!」
…いやまあ俺がクズなのは認めるし、ほかのクラスメイトが今までの俺と理子を見ていて今気になっているのも理解できるが…。
なんで今言うんだよこいつら…。
いやあのね、俺が何言われても俺自身は全然いいんだよ?言われ慣れてるし、別に言われても仕方ないような成績だし…と思うが…
「………くふっ」
ここに、俺のことを他人事と受け止めない人がいるんです目の前にっ。
「ね~しゅうちゃん?」
「は、はい…」
彼女の一言一言が重い。ニコニコと笑いながらこちらを見る理子が怖い。その笑顔は先ほどと変わらないのになぜだろう、超怖い。
冷や汗かきながら理子と微笑み合って数秒、理子はふぅと一息つくと
「…でね、そのアニメが今すっごくおもしろくってさ!いま四話まで録画してるから今日理子の部屋で見ない?いや、見ようよ!」
理子は今までの雰囲気をころっと変えて先ほどの話を続けた。まるで俺が今声をかけられたこと自体をなかったことにしたように。
てっきりキレるかと思ったが…まあこいつもクラスの立ち位置ってのもあるんだろうし。俺のためにキレたらクラスでの立ち位置悪くなるからやめたのだろう。
理子が無視するならと俺も理子へ向き直って話を進めることにした。
「おう。俺も今日は空いてるから別にいいぞ。…ってお前んとこ?お前女子寮だろうが、行けるかッ」
「えー?んーじゃあ、DVDに移してくるからしゅーちゃんの家で見る」
「まあ、それならいい――」
「おい峰!お前脅されてるからってそんなことわざわざ言わなくていいんだぜ?別にこいつが何してもお前になら問題な――」
「よっし決まりねしゅーちゃん!じゃーあ、放課後商店街でデートしてから行こうよ!理子パフェ食べたーい!」
「…!?お、おい岡崎!テメェ峰の弱み握ってないでとっとと消えーー」
「パフェか。食べるのはいいが俺は食べないからな」
「――っ!!おい峰!!無視すん――」
「ねぇ、いい加減にして?理子今すっごく我慢してるの。察してよ」
「……え?」
あちゃ…。そろそろどっか行くかなと思ったその手前でついに理子の我慢が限界に来たらしい…。こいつら火に油を注ぎすぎたなこれ。
「しゅーちゃんがこういうことで喧嘩するの嫌いって知ってるから無視してたのに、いい加減しつこい。しゅーちゃんごめん、理子我慢できなかった」
「え、お、おう」
「「「………。」」」
ぽかんとする三人。そりゃそうだ、本人たちは理子本人のためを思っていろいろしていたんだ。それでキレられるってのはビックリするだろう。
もちろん俺もびっくりしていた。こいつ、自分の立場考えておとなしくしていると思ってたのに俺のためとか…どんだけいいやつなんだお前。
「理子、言ってくれてサンキュな。でも大丈夫だから気にすんな」
「しゅーちゃんは優しいからまたそうやって…。というか理子のため?お前ら理子のためになりたかったらむしろこの空間に割って入らないでよ」
「理子、我慢」
「…しゅーちゃんがそう言うなら」
片目を閉じながら本音を言いだす理子にもう一度警告するとしぶしぶと引き下がった。こいつは本当にいい奴だか、それで理子自身が嫌われるのは俺が嫌だし。
「…あー。ってことだからお前ら、俺の悪口は他所でやってくれるか?」
「「「ちっ…」」」
三人は理子の態度が気に入らなかったのか舌打ちしてぶつぶつと文句をいい始めた。その態度にまた理子がむっとしてしまう。
「あと言っておくけどしゅーちゃんに脅されてるとかありえないから。というか、理子がむしろしゅーちゃんを脅せる立場にあるからそこまちがえないでよね」
「は?それは初聞きだぞ。お前が俺をどーやって脅せるってんだ?テキトーなこと言ってんじゃねえ」
「この前しゅーちゃんの自室で見つけました。机の上から三番目の引き出しの中にある『ドラえもん』と書かれたDVD。実は中身はドラえもんじゃなくてなんとエーー」
「おいお前ら!!俺が理子様の下僕だ、脅せるわけがないだろうが!!むしろ世界で一番尊敬している最高のお人だっ!理子様バンザイ、万歳!」
俺は片膝ついて理子様のお手を取りました。…くそ、なんで知ってんだこいつ…!!リサでさえ知らないことなのに…!!
「ってことで、しゅーちゃんは理子のだから。理子、自分の物傷つけられるの一番嫌いなんだよね。バスケの時のこと、しゅーちゃんは許しても理子は許さないから」
「「「………。」」」
理子の本気の威圧に3人共固まってしまった。
「さってと、はいしゅーちゃん理子の卵焼き一つ上げる、あ~ん♡」
「いや流石に恥ずかしいからやめろ」
「食べないと、『ドラえもん』今日中にはなくなってるから」
「早く箸を近づけたまえ」
…はぁ、こいつには本気で敵いっこないなと改めて思ったのだった。
ーーーーー
「くふ、あーすっきりした!バスケの時しゅーちゃん転ばしてからイライラしてたんだよね♪」
「…お前な、やりすぎなんだっての。あんな大勢の前でやるこたないだろ」
俺たちは放課後、男子寮側にあるベンチまで来ていた。ここは俺がへこんだ時などに来る場所であり、俺がジャンヌ達を裏切ってしまったときに理子になぐさめられた場所である。
「ま、でも、サンクス」
「うむ♫」
まるで自分のことのようにニヤニヤしている理子の隣に座り、ぽんと頭に手を乗せた。
まあ実際、スカッとしたののも事実だしな。あの三人の間抜け顔見れたし今回のことはこの辺で終わらせておくことにしよう。
俺に撫でられたのが嬉しかったのか、微笑む理子の顔を見ながらこれ以上迷惑をかけられないとも感じていた。
こいつの重荷にならないように、俺も強くならなきゃな。
「ま、そんなことより。久々に会ってこんな人気の少ないとこに連れていくなんてしゅーちゃん…だいたんだね♡」
「うっせ。ここなら話しやすいと思って連れてきたんだろうが」
そうなるために、まずは理解しようとしたのだ。
人気のないこの場所に連れてきたのは理由がある。俺はまだ、こいつに肝心なことを聞いていないのだから。
「話すよ、理子の過去。全部」
理子も俺の聞きたいことはすでにわかっていたらしい。彼女の方から話を始めてくれた。
そう、理子の過去。今まで一度も踏み込もうとしなかった場所。
聞かなければならない、聞かないと前には進めないのだ。
「長くなるよ、いい?」
「おう、話してくれ」
そうして、理子はゆっくりと自分の過去を話し始めた。最初はごく普通の家庭だったこと、それが突然壊れたこと、それから長い間監禁されたこと、そして、そのときの虐待も全て話してくれた。
「…ま、こんな感じかな。んーこんなに自分のこと話したの初めてだよ」
「……。」
理子はひと段落話し終え、うーんと背筋を伸ばした。
彼女の過去は、俺には想像もできない、簡単に同情する事は出来ない話でそんな人生をもし俺自身が過ごしたとしたら…。
そんな、そんな絶望の中を理子はその小さな体で生きてきたのだ。
『理子は何もしていない、俺と同じ生活をただ過ごしていただけのはず』
俺にとってその事実が一番重くのしかかった。
「あ、重く受け止めすぎないでね。今はもう全部解決してるからさ、しゅーちゃんのおかげで♪」
「…おう、そっか」
「うん♪」
しかしそんな俺に微笑む理子の顔を見て、俺の中で重くのしかかっていたのがスッと消えた。彼女の中ではもう解決したというと。本人が前に進もうとしているのに周りが立ち止まってどうする。
理子の話を聞き終わった俺は、暗くなり始める空を見上げ、先ほどの理子の話を頭の中えもう一度繰り返した。
俺が普通の生活をしていた時のこと、理子が残酷な生活していたときのこと、それを交互に繰り返しながら考える。そして今まで出会った裏の世界をしる人を思いだしていく。彼女たちが過ごした時間、場所、そして苦悩を繰り返し考え、考えた。
そして、
そのすべてが、俺に一つの決意をさせたのだった。
「なぁ、理子」
「ん?」
「俺さ、将来の夢決めたわ」
「将来の…夢?――ってそれって理子としゅーちゃんのけっけけけっ!?」
「は?…あ、ああ。そゆことか…」
勝手に自爆しプシュー…と紅くなる自他称ギャル様。本当、ピュアだよなこいつ…。というか今のは俺も少し恥ずかしかったぞ。
「まあ、その、それも夢っちゃ夢なんだけどよ…今考えてんのは仕事の話」
「し、仕事…?」
落ちつこうと胸の前に手を当て深呼吸しながら聞いてくる理子に俺は真正面から言葉をつないだ。
「俺さ、傭兵に関する仕事がしたいんだ」
「傭兵??」
首を傾げる理子に俺は夢を語る。
「お前や夾竹桃、セーラと出会って、一年生の時には想像もできない人生を送って、知ったことがある。
世の中には理子みたいになんもしてないのに理不尽な生活送らされているやつもいて、助けを求めたくても求めることができない奴がいるって知った。
桃…夾竹桃みたいに、過去に犯した罪を感じて平和な世界に居場所がないなんて勝手に思っている奴がいるって知った。
セーラのように傭兵なんていうただ人を殺す道具として扱われる仕事しか知らず、ただ生きるために殺すなんていう奴もいるって知った。
お前らと出会って俺は知ったんだ、世界は想像以上に理不尽で、残酷で、バカみたいに人を殺さないと生きていけないやつを作るってことを」
俺はこの数か月で様々な人と出会い、そして気づかされた。この世界には平和と地獄が存在し、地獄の世界に生きる人間には自分の意思を持つことが出来ないということを。
しかし、知ったのはそれだけではない。
俺は…自分を知ったのだ。
「あとな、こんな俺でも力になれるってことも知れたんだ」
そう、自分の立ち位置を知ったのだ。俺には才能はなく、自分の感情に簡単に負ける雑魚である。
一年生の時の俺のままだったら、その事実に自信を無くして自分を塞ぎこんでいただろう。武偵という向いていない仕事なんか捨てて普通の一般企業に就職し、普通の生活を送り、死ぬという選択を選んでいただろう。
しかし、そんな俺にでもできることはあると知れたんだ。弱くても、ダメな俺でも、そんな俺を必要と言ってくれるやつもいるということを知った。
それは、様々なところで実感できたんだ。
《
『その…あれだ。
今日は、楽しかったか?』
『………。
うん 今までで一番、楽しかった』
》
「セーラ・フッドは、こっちの生き方を知らないからわざわざ傭兵なんていう職についたのだから、平和を生きていた俺が手を引いてやればいい」
遊園地に行った帰りにみたセーラの笑顔。彼女はただ知らなったのだ。平和な世界の生き方を。それくらいなら俺にだって教えることができる。
そしてもう一人…
《
『…いいの?………私が、散々人に不幸を与えて、苦しめた私が、『幸福な世界』に、生きてもいいの?』
『だからそれが難しく考えてるんだってのに…』
》
「夾竹桃だって自分で抱え込みすぎてたのが原因だったんだ。俺みたいなサイカイでも話を聞くくらいは出来るし、力になれる」
あいつも初めて触れた平和の世界に戸惑っていた。平和な世界に生きていた俺なら、手を引くことくらいはできる。
「…そうだね。理子も、しゅーちゃんがしつこいくらいに理子を心配してくれたおかげでここにいるからね。
それに、『理子が必要だ』って言ってくれたのが一番うれしかったもん」
《
『…理子が、必要、なの?』
『ま、必要だな。金の次に』
『ふん!!』
》
理子を武偵殺しだと認めさせた時、彼女から聞かれた言葉だ。その言葉一つをかけることも俺には出来ていた。
「まあそうだな…恩着せがましくいうつもりじゃないが、俺でもお前の重荷を軽くするくらいはできた。
俺はお前らと出会って、傭兵という理不尽な社会を知って、俺にもできることがあると分かって思ったんだ。
世界の『サイカイと呼ばれている仲間』に広い世界を知って欲しいって。
生きるために傭兵として戦うなんてクソだ、血を流すなんてクソだ、小さい子供が今日を生きるために死の直前で戦うなんてクソッタレだ!なんて正義ぶったセリフにはなっちまうが、本心からそう思う。
だから、俺はそいつらを…助けるなんて上から目線じゃなくていい、
そいつの人生を、そいつが笑って死ねるような人生に変えてやれるような仕事がしたい。
それが
…その、反論は聞かねぇぞ?」
長ったらしく、熱く語っちまったのが少し恥ずかしくなった俺は語尾を濁した。叶わないと馬鹿にされ笑われてもしょうがない夢である。
理子はその俺の言葉を最後まで聞いてくれた。長ったらしい、恥ずかしい話を聞いてくれた理子。
彼女の返答は…
「そっか…そっか。しゅーちゃんの夢素敵だと思うよ。
でもさ、それを実現するための予算とかあるの?」
「え?」
現実を突きつけてきた。
「その夢、実現させるには相当な額の資金が必要だよ?…聞くまでもないけど、そんなお金あるの?」
「…ない、です」
「それに、傭兵全員って、一人で?世界には何万、何十万っていう傭兵がいるんだよ?それを一人で探し出していくつもりなの?」
「……そ、それに関しては何年かかっても…」
「無理だよ。パソコンも使えないしゅーちゃんがどーやって情報を集めるの?仮に見つかったとしてもその場所までどうやっていくの?」
「じ、自力で…」
「傭兵って世界各国にいるんだよ?世界中旅することになるってこと、意味わかる?」
「………はい」
「まだあるよ、それを仕事にするならお金はどこで稼ぐの?まさか傭兵助けたらお金頂戴なんていうつもりじゃないよね?」
「それは…その、ほかで働いてだな…」
「それってアルバイトとか?…フリーターだよねそれ」
「…っ」
「はぁ…全く、夢かなえるって言うだけで中身は何も考えてないんだねしゅーちゃん。それじゃ叶うものも叶わなくなっちゃうよ?」
「…はい、テキトーなこと言ってすみませんでした…」
やばい…理子の言っていること全てが正論で反論できない…。
急に恥ずかしくなってきた。
実は心の奥底で理子なら俺の夢に簡単に頷いてくれるなんて思っていたりもしたのだ。…やっべ超恥ずかしい死にたいいいいい!!
頭を抱えうずくまる。もういい、俺もういいもん。将来はあれだ、普通のサラリーマンになってやる。夢はしょせん夢なのさハハッ。
「…はぁ、本当に無計画なんだから。しょうないなぁもう…ほら、理子が手伝ってあげるからめそめそしない」
「…え?」
頭を抱えていた俺の肩に、理子は優しく手を乗せてくれた。
「お前、俺の夢に反対なんじゃないの?」
「反対なんて一言も言ってないじゃん。というかしゅーちゃんの夢を理子が否定するなんてありえないから」
「……で、でも無計画だってお前今…」
「実現させるんだから考えないとダメでしょ。予算とかは理子が立て替えれるし、データも理子が集めれる。資金運用とかいろいろと問題は山積みだけど何とかしてあげるから、簡単に夢を諦めないのッ!」
「は、はい!」
ドンと背中を叩かれる俺。結局こいつは俺の夢を全力でかなえようとしてくれていたらしい。俺はその事実に心から感謝していた。
「これから大変になるだろうけど。頑張ろうねしゅーちゃん!しゅーちゃんの…いや、『二人の夢』を絶対に実現させてやるんだから!」
「…!!お、おう!」
そうして、俺たちは夕焼けのオレンジに染まる世界で笑い合いながら夢を決めた。
やってやる…!俺の人生すべてをかけて、世界中の理不尽を消してやるんだ…!
俺はぐっと拳を握り、空に掲げたのだった。
「あ、でも仕事云々の前に、しゅーちゃんはまず高校卒業しないとね。あと一年留年することはもう決定しちゃってるわけだから」
「…あ、忘れてた…」
…まずは謝罪を。遅くなって大変申し訳ございません。投稿日時に誤りがあり、気づくのが遅れてしまいました。ご報告が遅れて申訳ありません。
次回は最終回です。投稿予定は3月20日です。よろしくお願いします。
ではでは~