サイカイと理子が仲直りしました。
サイカイが告白しました。
#今回は全て理子視点となっています
告白しようと思っていた。
ブラドとの因縁が解決したことで、もう理子の過去が修一を苦しめることはなくなった。彼が自分の事情で辛い目に合うことはなくなったのだ。
その修一自身によって解決されるなんて思ってもいなかった。しかも、理子が勝つという最高の形で。
彼は本当にどうしてサイカイなんて呼ばれているのだろう。理子にとってはむしろ最強のヒーローとして全く問題ないのだが。
《
私としては、告白は男子からが原則だ。LINE、電話での告白もタブー。それをしてきた男子は返信もせずにすぐに切った。男としてそこは面と向かって言って欲しい。
》
なんて思っていた時期もあった…が、もうどうでもいい。というかあの自分にだけは自信を絶対に持たないあのアホの告白を待つなんてキンジが女好きになるのを待つようなものだ…まず無理。
(だからこそもう理子から告白してやる!理子なりの最高のやり方で修一の心奪ってやるんだから!!)
涙を流しながら見た彼、ブラドを倒したときの彼の顔を見たときから理子は自分の気持ちを正直に伝えると決めていた。
…なのに
なんて思ってたのに…!!
「俺、お前のこと好きだわ」
なのになんで先に言っちゃうのかなぁ!?今までいろいろ考えてた理子バカみたいじゃない!?
現実とはそう上手くいくものではないらしい。考えていたプランすべてぶち壊す一言が返ってきた。
というよりいきなりの言葉にパニックになっていた。
(というか告白されるようなこと理子したことないしそもそも修一の告白は勘違いだけど断りまくってたしそれになんというかあのあれ…!!)
「…もしもーし、理子さーん?固まってるけど大丈夫か?」
「ちょっと待って。理子いま自分を落ち着かせるのに忙しいから」
「お、おう。ごめん?」
よくわからない返答をしたのは自分でも理解できるが少し待ってほしい。余裕なんてないのだから。
えーと、落ち着け。状況を整理しよう。
私は修一が好きで
その修一が理子を好きだと言ってくれた…!?
つまりそれは$%#&…!?
(う、うん落ち着くとか無理だこれ。好きな人に逆告白されて普通でいられる人なんているわけないじゃん!!
だから、もういい!せっかく修一から好きって言ってくれたんだもん!理子もちゃんと自分の気持ちを言わなきゃ!!)
もうプランとかなにもかもどうにでもよくなっていた。感情のままに彼に自分の気持ちも伝える…!!
顔を見て言うのが恥ずかしかった私は顔を伏せ、両手を胸の前でぎゅっと握って告白…
「しゅ、しゅーちゃん!じ、実は理子もしゅーちゃんのことがーー
「ま、でもお前キンジと付き合ってるもんな。悪いな、困らせて」
好………は?」
しようとしたが、時間が止まった。
は?
「修一…?今なんて言った…?」
「ん?だから『お前
「……………あぁ?」
思わず暗い声を出してしまった。
は?いまこの男なんて言った?
『私がキンジと付き合ってる』?
どうしてそんなことになっている…?無視していたときにキンジにベタベタしすぎた?確かにあの時はキンジの協力が必要だったからいろいろとしていたが…別にそこまで過激なことはしていないし…。付き合うとか誤解するような真似はしていないはず…。
もしかして無視したことまだ怒っていて、理子をいじめようとしている、とか?
いや、この顔は
…いやいや。
「俺もキンジと別れてまで付き合ってくれなんていうつもりもないからよ。お似合いで、本気で羨ましいよ」
「…ははっ…」
理子がなにも言わないのをいいことに、からからと笑いながらソファの背もたれにぐいっと体を預け喋る修一。
理子は、理子はその行き場のない目先をただ下にしたままふらりと立ち上がる。
こいつ、また変なこと言った?言ったね。
理子とキンジはお似合い?付き合ってくれなんていうつもりは、ない?ははっ、笑える。
…理子、ガチでキレそうなんだけど。腹立つんですけど?
「…じゃあなに?しゅーちゃんは理子がキンジと付き合ってお似合いだと思ってたわけ?理子が他の男子とお似合いだって言いたいの?」
「そりゃお似合いだろ。キンジはイケメンだし性格いいし、もとSランク武偵のエリート。そんでお前は美人で強くてAランク。釣り合いとれてんじゃん。
それにキンジってお前のためにブラドに立ち向かっていったり理子のためにキレることができてたりお前のこと一番に考えれてる。身長差もいい感じだし、お前の武偵殺しの方の性格も理解してるわけだ…これを相性がいいと言わずしてなんと…あり?どしたの理子さん??」
修一は私の気持ちには本気で気づいていないようで今の状況も理解できていないようだ。少し首をかしげながら返してきた。
(こ、この鈍感男…!!)
私と違う男のいいところを語る最愛の人…。なんてカオスな状況だこれはとツッコミつつ。
すぅと一息…そして
「ランク以外、全部お前とも当てはまってるじゃねーか!!」
「んぼぁ!?」
思いっきり修一の腹を殴る。これは修一が悪い。誰がなんと言おうと修一が悪い。
お腹を抑えてなぜなぜと繰り返す修一に続けて怒鳴ってやった。
「理子完全にキレてるからねしゅーちゃん。ガチギレだから!」
「だからなんでだよ!?お似合いだって言っただけだろ!?」
「それが問題だったってんだろーが!!」
「…はぁ??」
修一は本気でわからないといった風に首を傾げる。この男は本当に…!!アニメなどの鈍感系主人公に恋するヒロインの気持ちがいま本当の本当の本当に理解できた。
こんなやつ相手に恋愛する方がおかしい!!
…している理子もおかしいけど!!
「しゅーちゃんは理子と付き合いたくないの!?」
「付き合いたいに決まってんだろ、好きなんだから!!」
「---っ!だ、だったらなんで理子がほかの男子と付き合っててお似合いとか言うわけ!?」
「そりゃ俺なんかよりもキンジのほうがお似合いに決まってんだろ!さっきも言ったけどあいつの方がスペック高いんだってば!!俺は学園のサイカイ武偵だってお前も知ってんだろ!!」
「…………………はぁ………なるほどね」
修一の言っている意味が少しずつ理解できてきた。つまりこの男はいままでスペックでカースト下位になったり虐げられたことから、スペックが低い=好かれないとかいう公式を組み立ててしまっていると。
それでAランクの私とは釣り合わないってことか…はぁ、バカだなぁ。そんなことで好きにならないなんてことないのに。でもなんか、今までの修一を見ていたら納得してしまった。
私はここまで鈍感なアホ相手にようやく落ち着きを取り戻してきた。
このままそんなことないって口論しても解決しないのは確かだ。…ならば
「っ!…こう、なったら!!」
私がいくら自分の本当の気持ちを伝えても効果は薄いだろう。
だったら、実力行使だ。
修一が理子のことを好きならーー
もっと確実に、気持ちを伝えるには…!!
もう、こうするしかない!!
「えいッ!!」
「お、おい!?」
私は修一に思いっきり抱きつき、驚く修一を押し倒す。何も身構えていなかった修一は簡単に馬乗りにされる。
そして
「んッ!?」
「………っ!!」
その驚く顔に、自分の顔を近づけ
唇を合わせた。
「「……………………………………………………………………ん」」
最初は驚いて暴れていた修一が次第におとなしくなる。二人だけの空間に時計の音だけが響く。
口元に感じる温かさが、いましていることを現実化させる。呼吸が早くなり、体が上手く動かせない。それでもお互いに離そうとはしなかった。
初めてかなり長く感じられるらしいと聞いたがその通りだった。ものの数分だったのかもしれないが、耐え切れずに唇を離す。
先ほどまで熱かった唇を指でなぞりながら、流石に顔を見れなかった私は右に逸らしつつ、相手の言葉を待った。
「お、お前…」
「…これが理子の気持ち。わかった?」
修一も流石に理解できただろう。ここまでしたのだ。
これで、本当に理解してーー
「お前、彼氏いながら他の男とキスとか本気でビッチなの?」
「殺す!!」
タァン!修一の顔のすぐ横のソファに穴が開く。修一が「しぇー!?」と変なポーズをとる中、理子は今度こそ狙い撃とうと構える。
もう知らんこんな男!鈍感にもほどがあるッ!!
「っ!?ちょ、おま!?人の顔向けて銃撃つやつがあるか!?頭に当たったらどうすーー」
「知らないッ、バカッ!アホッ!!超鈍感野郎!!」
銃を捨て、素手で何度も修一を殴る。わからずやにもうこれ以上何も言われないように。
そして…
「付き合ってない!!」
理子はもう、変にわかってもらおうなんて考えを捨てた。もうこの男にそういうのを求めてもしょうがないのだから。
「理子はキンジと付き合ってなんてない!誰とも付き合ったことない!
理子は…理子も…っ!
理子もしゅーちゃんのことが好きなの!
キンジとか他の男子より何倍も!何百倍も大好きなの!!付き合ってないもん!付き合うわけないもん!!
しゅーちゃんにあの山降りてたときに恋したって気づいた時から、
理子にはしゅーちゃんしかいないの!!だから…だから…他の人と理子がお似合いだなんて言わないでよぉ…!!」
言った。言ってやった。自分の気持ち全部。…これで誤解するならもう無理。理子の精神も限界。泣いて出てってやる。というかもう泣く寸前だ。
と思っていたが…
「え、じゃあ、なんだ…?俺が勝手にそう思ってただけって話で…お前本当にキンジと付き合ってない、のか?」
「うん。そうだよ」
今度は、ちゃんと理解してくれたみたい。
修一は、信じられないと言いたげな目で私を見つつ確認するように言い始める。
「え…でも、その、いいのか?俺、なんかで…?俺は、弾もろくに当てられないサイカイの武偵で…」
「そんなこと関係ない、しゅーちゃんが好き」
「…ッ。俺は、さ、クラスでも嫌われ者だし、その、人気者のお前にとってメリットなんてないし…むしろお前が嫌われる原因になるかもしれないし…」
「しゅーちゃんと仲良くしたからって理由で嫌いになる人なんて理子から切ってやるんだから、大丈夫」
「……ッ。じゃあ…俺がこれから先、どんな生き方をしたとしても…お前は変わらず『俺の味方』でいてくれるのか?」
「言ったじゃん、理子はずっとしゅーちゃんの味方だよ?しゅーちゃんの隣が理子の特等席じゃないと、許さないから」
「そっか…はは、じゃあ、何の問題もないな」
「うん、ないね」
そしてついに、ついに修一は私の気持ちを理解してくれた。ソファの上で参ったと言わんばかりに肩を揺らす。
ようやく、修一も理解してくれたのだ。
理子がどれだけの気持ちを持っているのか
どれだけあなたが好きかってことを…。
それが、たまらなく嬉しかったのだ。
「くふ♪しゅーちゃん好きッ!!」
「おわッ!?おいだから俺重症だから抱き着くなって!!」
「好きなんだからしょうがないんだもーん!くふ、しゅーちゃん顔赤いよ?」
「…うっせ。お前も赤いわ」
「うん、理子今幸せだからねっ!」
「……あっそ」
彼の胸の上に顔をうずめて、パタパタと足を動かす。
ここまで長かったけど、でも、それでもここまで来たんだ。
これから先、修一がどんなに落ち込んでも傍にいよう。修一が楽しそうに笑っていたらその隣で一緒に笑ってあげよう。泣きたいときは胸を貸すし、どんな時でも修一の味方でいてあげられるような存在になりたい。
そう、心の中で固く決意する。まだ言葉にするのは恥ずかしいから言わないけどね。
「……つーか、さっきのキス、歯が当たって痛かったんですけど」
「…リベンジ?」
「リベンジ」
私たちはまだ、始まったばかりだ。
ーーーーー
〜女子寮 屋上にて〜
『…いいの?』
『なにが?』
『…お前、修兄のこと好きだったんじゃないの?』
『……。あなたも人ごとではないと思うけれど?』
「彼は依頼者、それだけ。でもあなたは違う』
『…そうね。でも今回の見たでしょ?最初は自分の才能の無さに失望して、武偵という道から逃げ出そうとした彼がバカみたいに見栄張って、たった一人であの強敵に立ち向かった。その理由知ってたら誰も入り込む余地なんてないじゃない。わかっていたことよ』
『………。』
『それに、思ってた以上に悪い気もしてないわ。収まるべき場所に収まっただけ。むしろスッキリした気分よ』
『…そう、じゃあ、いい』
『ただ、そうね…オムライスはあの人の味に合わせても文句はいわせないから』
『…めんどくさい女』
『あなたもいつか分かるようになるわ』
やっと…結ばれた…!!やっと、やっとです!去年の2月から初めてここまで…長かった…!!
次の投稿は3月4日(土)を予定しておりますが、5日(月)になる場合がありそうです。
その場合は早めに活動報告にてご報告いたします。
残り2話(仮)もよろしくお願いします!
ではでは~
PS.最後の二人は夾竹桃とセーラです。