サイカイのやりかた【38話完結】   作:あまやけ

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31話のあらすじ
修一と理子、お互いがお互いの想いを抱え衝突する。それぞれの決意を守るため、親友とも呼べた二人は拳を構える。

「ばいばい、しゅーちゃん」

#最終戦なのでフィールドとラスボスの設定を少し変更しております。



32.《サイカイ》の決意

グルアアアアアアアアアアァァァァァァ………!!

 

 

とある廃ビルの室内、あの鏡高組と争った広い空間に獣の叫びが爆発する。

 

体にある四つの紋章、それをアリア、キンジ、理子の同時攻撃によって撃たれた『無限罪のブラド』と呼ばれる化け物が地面に倒れた。

 

瀕死に近い三人はようやく倒れた強大な敵に、肩を撫で下ろす。

 

 

戦いは終わったのだ。

 

 

全ての元凶、ブラド。彼は理子に『キンジとアリアを倒せば自由にしてやる』などと言った狂言を吐き、それを信じた理子の精神を粉々にすることで快感を得ようとした。

 

もちろんそんなこと理子自身もわかってはいたのだ。わかってはいたが、だからと言って首を振ることもできない。

 

いや、もしかしたら本当に自由になれるかもしれない。その小さな可能性に理子はかけていた。

 

 

もちろん、可能性は簡単に崩れ去る。とある日、理子の元に現れたブラドは彼女の大切にしていた母の形見を取り上げ、決着を急がせた。

 

理子にとっては本当に最悪のタイミングだったのだ。言えば必ず首を突っ込んでくる『彼』がいるのだから。

 

 

だからこそ拒絶した。だからこそ否定した。『彼』を巻き込まないためにキンジとアリアにさえ頭を下げた。助けを望み、利用した。

 

 

その行動が正しかったのだと今、目の前の光景が物語っている。彼を巻き込まなかった。その答えが嬉しくて仕方なかった。

 

 

「どうだい理子、アルセーヌ・ルパンでも倒せなかったブラドを俺たちが倒したんだ。()()()()()()()()()()

 

HSS状態のキンジが理子に微笑みかける。理子の子孫、アルセーヌ・ルパンは天才的な才能を持った人間であり、

 

理子が何度も比較され続け、否定され続けた存在である。

 

そんなルパンが倒せなかった相手が今、目の前で血を流し倒れている。

 

つまり

 

 

「ふぅん。じゃああんた、初代ルパンを超えたってわけね」

 

「…………!!」

 

そう、ついに理子は超えたのだ。比較対象が倒すことが出来なかった相手を倒したのだから…。 そう人に言われることで理子はようやく自分で現実を認められたような気がした。傷だらけの顔がその二人の言葉に笑みをこぼす。彼女がずっと望んでいた答え、それをいま二人が言葉にしてくれた。

 

 

こうして、理子の物語は終わりを告げる。宿敵に打ち勝ち、かつ才能を見せつけた。

 

 

 

 

Happy End

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

の、はずだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーグァァァァァァアアアアアーーーーーー

 

 

 

遠吠えが、響く。

 

 

 

 

 

「…なっ…!?」

 

 

刹那、ゴスッと鈍い音が響いたその瞬間、アリアが理子の視界から姿を消した。そして左端のタンクに小さな体が鈍い音を立て激突するのを数秒遅れて確認できた。

 

 

目を見開く二人の人間、その目線の先には…

 

 

 

 

あの巨大な狼が完全な状態で立ち上がっていた。

 

 

 

 

「そんな、バカな…!確かに四つの魔臓を撃ち抜いたはず…!?」

 

キンジが驚きのあまり声を張り上げる。その答えはすぐに返ってきた。

 

「グファファファファ!!バカが教えてやる。お前らが撃ったのは魔臓じゃない。四つのただの『模様』だ!

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

俺様は自分の弱点を()()克服したと言ったはずだぞ遠山侍!」

 

悠々と近づいてくる大狼。先ほどの「ワラキアの魔笛」によりHSSが解けてしまったキンジはただただその残酷な現実を認めることが出来ず呆然と立ちつくしてしまう。

 

そしてその体がまるでバッドでボールを打つかのような動作で吹き飛ばされる。

 

残ったのは…昔馴染みの二人。

 

 

皮肉な笑みと絶望の眼差し。双方の表情は真逆。

 

 

 

「…ぁぁ…あ…ああ…」

 

その現状をただただ目を見開いて見ていることしかできず、体すら動かせない理子。必死になって戦った、アリアとキンジに励まされ、なんとか打ち勝ったと思っていた相手は全く傷一つついていない。

 

 

絶望

 

 

 

「よく焼き付けておけよ四世!!これがお前にとって最後の外の世界だ…ガハハハハ!!」

 

後ろからの大きな声に、理子は耳を塞ぐことすら出来なかった。全身に受けた傷の痛みが、この事実が、理子の体を動かさない。

 

その大きな手で持ち上げられ窓に強く体を押し付けられる。普段なら綺麗と呼べるはずの風景が、目も悪くないのにぼやけてしまう。髪留めの取れた長い髪が風に揺れ、切れた唇から血が溢れる。下唇を強く噛み締める。

 

「理子は…理子は自由になって普通の生活を送りたかった…だけなのに…っ」

 

現状に心がボロボロになっていく…。どうしようもない現実に目を背けようとしても後ろから響く声がそれを許さない。

 

「あぁ…?お前が自由だと?普通の生活だ?才能がろくに遺伝していない無能が何を図々しい!!

それは才能のある極少数が望んでいい対価だ!貴様のような無能が望んでいいことじない…!

諦めて檻へ戻れよ雌犬。お前は無能だが優良種には違いねぇ。交配次第では品種改良された五世が作れるだろうよ!グファファファファ!」

 

「ぅぅ…ぅぅうう!!」

 

完全に今の自分を否定される理子。目からこぼれ落ちそうになる涙を必死に堪えながらもズタズタになった心がそれすらも許そうとしない。

 

アリアもキンジもダメージが蓄積され過ぎたのだろう、なんとか立ち上がろうとしているが体が言うことをきかない。

 

 

完全な敗北、もう希望はない。

 

 

そんな中でついに理子は…

 

 

 

(……助けて……しゅーちゃん…)

 

 

 

精神が壊れ、

 

 

涙を流し、

 

 

()に助けを望んでしまっていた。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。散々自分を気にかけてくれたのに、殴られても散々否定されても助けると言ってくれたのに、それを否定したのは自分だ。そう頭では理解できるが最後に思い出すのは彼の顔で、いつも笑って自分を気にかけてくれる最愛の人で…。

 

 

 

 

しかし、その望んでいる彼はここにはいない。

 

 

 

 

なにせ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

唇を強く噛みしめる。唇が切れ血が流れてもそれでも強く歯を立てる。

 

【彼が執拗に聞いて来るから否定したのに、彼が確実に来ないと分かると助けを望む。】

 

 

そんな自己中な考えをしてしまう自分が、理子は大嫌いだった。

 

 

(結局は私、自分のことばっかり考える人間だったんだ…。彼のために自分を捨てる覚悟を決めた…なんてカッコつけて、いざこうなったら助けてって言っちゃうんだもん…。なにがごめんねだよ理子…本当、嫌い…)

 

 

 

声ならない笑いが理子から漏れる。彼に対する感情が、結局彼を傷つけてしまったと気づいた瞬間だった。

 

 

しかし、もう遅い。

 

 

この後ろの怪物の言う通り、自分にとって最後の外の世界になるのだろう。

 

 

 

もう彼と会えない。

 

 

 

そう思うたびにまた、彼の名前を心の中で呼んでしまう。

 

 

 

そんな自分が大嫌いで…

 

 

 

「………しゅーぢゃん………たすけ、で…しゅー…ちゃん…」

 

 

 

何度も否定しても何度もまた名前を呼んでしまう彼に、結局声に出して助けを求めてしまう…。精神が安定しない、思ったことが次々と口から漏れ始める。

もう何も考えることができない。

崩壊した精神が、彼を望む。

 

 

 

 

 

そしてーー

 

 

 

 

 

 

「愛と元気の使者、魔剣デュランダル参上だクソ野郎」

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな彼女の耳に、聞き慣れた声が響いた。

 

 

 

彼女にとってのHEROは弱いくせに助けを求めれば来てくれるのだ。

 

 

 

すっとんきょな声と共にブラドと理子の間に飛び込んできた影は眼球に銃口を突きつけ、躊躇なく撃ち抜いた。それと同時に手に持つ大剣をブラドの口の中へ思い切り突き刺す。

 

一瞬の出来事にブラドは防御も取ることが出来ず、大量の血を吹き出しながら崩れ落ちた。空中で上手く体を調整できず頭から地面に落ちる影が一つ。

 

それは

 

 

「…お、理子さんの下着姿初観戦…でもなかったか。まあいいやほれ、上着」

 

「……しゅ、しゅーいち……?」

 

かっこ悪くのそりと起き上がった影、岡崎修一が上着を脱いで着せる中、理子は呆然と見ていた。その目はまるで幽霊を初めて見たようにただただぽかんとしている。

 

その様子を見た修一は理子の方を向きデコピンを1発。わりと本気で。

 

「痛っ…!?」

 

「ハロー、暴力女。俺以上にボロボロじゃないの、俺をこんなにした罰だザマミロ…あーでもすぐ出てこれなかったのはスマヌ、色々と準備しててさ」

 

「…ほ、ほんとに修一なの…?ゆ、夢じゃ、ない…?」

 

弾かれたおでこをさすりながら修一を上から下まで見る。もうそこには以前のように固く意思のある理子はいない。

 

ただただ現実を受け入れることしかできない小さな理子だった。

 

「夢じゃねーっての、桃やジャンヌも一緒だ。ここにはいないけどな」

 

「………夾竹桃………」

 

「ったくお前、声変えてまで桃に連絡するなら最初からボコボコにしなきゃいいのに」

 

呆れたようにため息をつく。理子はあの後土砂降りの中放置することもできず、夾竹桃に車を頼んでおいたのだ。

 

この意地っ張りはどこまでもバカなんだと再認識していた。

 

「んでま、拾ってもらったついでにここまで連れていてもらったわけよ。…まあ流石にあんなやつが相手だとは思いもしなかったけど」

 

腰のほこりをパンパンと落とし、たははと笑う修一。理子はその普通すぎる修一に驚きながらもまた自分を隠す。

 

「…………で、でも、もう無理だよ。あの四つの模様がブラドの唯一の弱点だったんだ…。それが克服されたら…どうしようもない。修一一人加わったって…」

 

「んなことわかんねぇだろ?三本の矢的感覚で俺はいるだけで変わるかもよ?…ほら俺お前にボコボコにされてボロボロだから折れやすいしさ」

 

目から舌から血を流す化け物を見て引きつった笑みを見せる修一。理子はその顔を見るとびくっと全身を震わせる。

 

「………ご、ごめ…痛ッ!?」

 

「だーかーらー謝るのはもうやめようぜってば。いつもみたくキレ返してこい」

 

怯え謝ろうとした理子の額にまたデコピンを食らわせ顔を近づける。

 

「ったくブラドさんがいると途端に気弱くなりやがって…どんだけ嫌いなのよ?」

 

「…当たり前だよ。お前はあいつの強さを知らないからそんな風に言えるんだ……ブラドの力は底知れない…。修一が今まで戦ってきたどんな敵よりも強い…」

 

「んなの見た目で丸わかりだわ。どこのどいつがあんな化け物見て戦い挑むのかっての」

 

倒れている巨大な化け物を見ながら頬をかく。修一にとってもあの大きさは想定外だったようだが、

 

 

逃げる気は無いらしい。

 

そんな修一に理子は不安を募らせる。

 

「ねえ、修一…あいつは私を狙ってるんだよ?修一はまだこの地獄から抜け出すことが出来るんだよ…?今ならまだ逃げれる…だから…痛ッ…なにすん痛ッ…もうデコピンやめ痛ッ!?ちょ、いい加減にしろ修一さっきから痛い!!」

そんな理子に何度も何度もデコピンしていると本気でキレてくる理子。修一の手を払いのける。

 

「馬鹿みたいにへこたれた顔してるからだバカビッチギャル。黙って俺の言うこと聞きゃいいのにグダグダといいやがってからに!」

 

「う、うるさいんだよアホ!お前だって理子の言うこと全く聞かないくせに!!来るなって何度言っても来やがってこのクソ童貞!!!」

 

「あぁ!?またお前は男子に言ってはダメなセリフNO1を言いやがって!!舐めんなよ!お前が処女卒業する前に俺が卒業してやる!」

 

「なっ…!?」

 

空気が…凍りついた。

 

「どーせお前のことだからエロい感じで攻めれてはいても本番になると緊張してカチカチになるタイプだろ。んなお前が体験してるわけがないわ。つーか経験ありなの?嘘でしょ?まじなの?」

 

「こ、このっ、変態バカァ!!」

 

顔を真っ赤にした理子が本気で修一をぶっ飛ばす。これは修一が悪い。

 

「ない!ないから!変な勘違いしないで!!」

 

上着をぎゅっと握りしめ必死に否定する理子に、大の字になって倒れる修一は思わず笑みをこぼす。こんな風に噛みつき合ったのは久しぶりだったのだ。

 

「はは…そうそう。お前はこんな感じで俺とバカみたいに喧嘩するのが一番お似合いだっての。変に落ち込んだり抱え込んだりするのはお前の悪い癖だぞ…っと」

 

「………っ………」

 

修一は体を起こし制服を抱きしめるように着ている理子の目の前まで歩く。そしてその小さな頭に手を乗せた。

 

「つーわけで、お疲れさん。あとは全部任せろてくれや。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「…っ…!」

 

理子の心の中で、またあの下山の時のような、ふわっとした感覚が襲う。

 

 

 

 

 

何度否定しても食らいついて、何度殴っても立ち上がって

 

 

 

 

 

何度助けを求めても、ちゃんと来てくれる。

 

 

 

 

 

心から信頼してもよくて、一緒にいて安心する。

 

 

 

そんな人がいることが、今の理子にとってどれだけ救われることか…。

 

 

 

 

 

 

しかし、彼に甘えたらまた彼が傷ついてしまうかもしれない。彼は人を助けるために全力で行動する男だと彼女は知っていた。だからこそ、本当なら助けを頼むのは自分の考えと矛盾しているはずなのだ。

 

 

 

 

 

だけど、しかし……

 

 

 

 

「修一…」

 

「なんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「任せた…」

 

「お任せあれ」

 

 

 

 

だけど彼を本当に信頼するという意味で、彼女はただ一言告げるのだった。

 

 

ーーーーー

 

理子を担ぎブラドがまだ動くことが出来ていないのを確認しつつキンジの元へ歩き出す。あの巨大な腕で殴り飛ばされたとはいえキンジも武偵だ。安否を確認しに向かうと、きちんと生きていた。

 

「おいキンジ、アリアも無事か??」

 

「俺は肋骨が数本折れちまったがなんとかな。…ただ」

 

「…っ」

 

たまたま同じ方向へ飛ばされていたアリアを見ると、足を抑え痛みを堪えている。おそらくは…

 

「重度の骨折だな。これじゃ歩けようもない」

 

「大丈夫よ…これくらい…!」

 

「バカ言え。移動さえマトモにできない奴が使い物になるかよ」

 

アリアの右足は変な方向にねじ曲がっている。青黒く変色し、抑える手が震えている。おそらく尋常じゃない痛みだろう。

 

しかしそれでも戦うと言うアリアは、俺の正論に何も言えずただ唇を噛む。ま、足が折れててまだ戦おうという根性はキライじゃないがこればっかりはどうしようもないわけで…。

 

 

戦意を失った理子、依然と違って迫力のない(俺の感覚でだが)キンジ、そして足の折れたアリア。

 

 

普段なら俺が敵いっこない三人の姿をじっと見る。強者だと言われる三人がここまでボロボロにされた相手…か。

 

 

 

さてさて、どーすっかね。正直計算違いもいいとこだぞ。本来の目的的にはキンジ、アリア、俺の三人で『あの役』をする予定だったんだがな…。

 

 

頭をかきながら最悪の事態に唾を飛ばす。

 

 

 

 

はぁ…。

 

 

「………ま、しょうがない…よな」

 

 

 

 

俺は抱えていた理子をキンジの側に降ろし、その心配そうにこちらを見つめる彼女の顔を見る。

 

 

ま、しょうがない。そう、しょうがないよな。

 

 

 

だってこいつが俺なんかに「任せて」くれたんだもんな。

 

 

やってみるだけ、やってみる…しかないか。

 

 

気を引き締めた俺は、これからのことを考え歯噛みしているキンジに目を合わせた。

 

 

 

「キンジ、お前に一生のお願いがある」

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

「グルァァ!このクソが!!どこのどいつだ八つ裂きにして(はらわた)抉りだして骨まで喰ってやる!」

 

ビル内部に怒声が響く。怒りに満ちたその目は一体誰を探しているのか、舌に刺さった大剣を投げ捨て辺りを見渡す。投げ捨てられた大剣がスロットマシンの一つに突き刺さる。響く轟音に反応はなし。一時の後、静けさが包む。

 

 

 

誰を探しているのか…か。

 

 

 

……。

 

 

 

「ここだよここ。ったく、骨まで食うのかよ…俺そんなカルシウム取ってないぞ…?」

 

 

 

いやま、俺なんですけどね。

 

 

スロットマシンから大剣を引き抜き背中に背負いながら巨大な化け物の前に立つ。正直帰りたい。先ほどまでの勢いなど等になくなっている。足が震え立っているのがやっとだが、意地でなんとか立っている状況だ。目の前にいる二足歩行の獣怪獣をこれから相手取る…?冗談もほどほどにしてほしいもんだ。

 

 

「貴様ァ…!覚悟できてんだろな…!?この俺様を怒らせた以上生きて帰れるとは思うなよ!お前だけじゃない!遠山もホームズ家の娘も全て引き裂いてーー」

 

 

 

「あーそりゃ()()()()()()()()()()()()()()()()無理ね」

 

 

 

「…アァ?」

 

巨大な腕を膨張させ更に戦闘形態に変化するブラドに俺は口を震わしながらも言葉を返す。

 

一瞬俺の言葉の意味を理解できないでいた狼は不信がりながらも周りを見渡し

 

 

 

 

本当に俺一人であるということに気づいた。

 

 

 

 

「…どこに消えた……?何かまたくだらない策でも考えているのか…??」

 

 

そう。この階の広い空間には俺とこいつしかいない。後は瓦礫の山々のみ。今まで戦っていたあいつらの影は一人としていない。

 

そして俺はこのオオカミが考えもしなかったであろうことを口にしてやった。

 

「有給だよ有給。お前キンジとアリアに二人ともかなりの時間働かせてたくせに休みやらなかったんだって?くそブラック企業も青ざめるぞ全く。ってことで、

 

 

 

()()()()()()()()()()

 

 

ーーーーー

【数分前…】

 

『あんた正気!?バカ言わないで、私たち三人でやっとだった相手よ!?修一1人なんて自殺行為なんだから!』

 

『そ、そうだよ修一!理子そんなの聞いてない!!』

 

俺のバカげた発言に女子二人が突っかかってくる。まあそれもそうか。俺が言ったのは全く理解できない、アホみたいな話だもんな。

 

だが…

 

『でもこれが今できる「一番いいやり方」なんだ。アリアも理子もいまのままじゃただの邪魔だし、キンジは先の戦闘で負傷してる。一番生き残る確率を見比べたら俺だろ』

 

『だからって…!』

 

『理子待て』

 

なおも食い下がる理子。それを止めたのは、キンジだった。キンジはただまっすぐに俺の目を見ている。

 

『なあ、岡崎』

 

『なんだ?』

 

キンジは俺を見て、その後に理子を見た。キンジは俺と理子の協力関係を知っている。キンジは理子の彼氏だし、もしかしたらこの頃の俺の行動も知っているのかもしれない。そんなキンジはしばらく考える素振りを見せた後…

 

 

『勝算はあるのか?』

 

 

たった一言確認の言葉だけを返してきた。アリアと理子がその言葉に驚き反論の言葉を早々と言う中、

 

キンジの問いに簡単に一言で答えた。

 

 

 

 

『一応な。ま、あの天才ならやってくれんだろ』

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

真っ暗な空の下、今にも崩れそうな高層ビルの中、粉塵の舞うガラクタの山の中にいるは一人と一匹。

 

一匹は牙をむき出しにしその土管のように大きな腕を前に突き出し戦闘態勢を取りー

 

 

もう一人はふぅと軽く息を吐き重心を下げる。

 

 

「お前一人で俺様を倒せるとでも思ってるのか…グファファファファ!!命知らずにもほどがある!!どの血筋の一族なのか興味が沸いた!!」

 

ガスン!!と音を立て近くの電柱のように長く太い鉄の棒を軽々く持ち上げるブラド。修一は後ろ頭をかきながらはぁとため息をつく。

 

「あぁ、血筋?んなの知るかっての。俺は普通の家庭に生まれて普通の生活をしてきたただの高校生。しょーじきこんな目に合うのはゴメンだっての」

 

 

肩に乗せていいデュランダルを担ぎ直しながら、懐から木刀を取り出す。そんな修一にブラドは笑いを堪えることが出来ず大声で笑い始めた。

 

 

「今まで幾多の英雄共の子孫が俺を獲りにきたことがあったが、何の血縁もないやつが正面切って挑んでくるなど馬鹿げているとは思わんのか!?グファファファファ!!身の程知らずが、一瞬で塵も残さず殺してやるよ!!」

 

 

ブラドは笑いながらもその巨大な手で近くのスロットマシーンを軽々く持ち上げ、勢いよく投げ飛ばす。人間にとっては巨大なものも、ブラドからしたら石ころを投げるようなものだ。物量をも無視した速度で修一に迫る物体。

 

修一はその物体に対して二つの武器を重ね、遠心力を利用して弾き飛ばす。

 

避けることはしない。

 

粉塵が舞う中、ただ目の前の敵に言い残したことを伝えるため敵の目だけを見つめる。

 

 

 

 

「お前に先に言っておく、お前は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

イ・ウーNO2だかなんだか知らねーが、覚悟しろよ?」

 

 

 

 

 

 

 

『サイカイ』の最後の戦いが今、始まるーー。

 

 




ブラドの設定変更内容は簡単に言うとヒルダ要素つけたしと言う感じです。魔臓を体の中の自分も知らない場所に移しているというものです。舌には残っていたようですが…。

さて、前投稿から一ヶ月…大変お待たせしました。

遅れた理由はリアルが忙しかったとか、事故が起きたとかではありません。ただ

ソードアートのゲームに熱中しておりました。

ps4のソードアートが楽しすぎて休みあればゲームをする毎日。正直原稿制作意欲が全て持っていかれていました。あれは闇のゲームであり、楽しすぎるのは罪だなと感じております。いえ、ゲームに罪はありませんね、問題は私の意欲不足ですね、申し訳有りません!

次回はちゃんと一週間以内に投稿出来るように頑張りますのでこれからもよろしくお願いします。
ではでは!

psシリカ派が少ないのです。…やはり正妻は強い、か。

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