サイカイのやりかた【38話完結】   作:あまやけ

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27話のあらすじ

「もう、理子と関わらないで」

「機嫌悪いのかあいつ?」

#今回もあの子の過去から始まります…。


28.認めたくない事実

ーーーーー

 

「このクソ野郎がっ!床にカスこぼしやがって!」

 

「……ッ!?」

 

腹を蹴り飛ばされ、小さな牢獄の中を転がり端の壁に打つかった。突然部屋に入ってきた『アイツ』は怒り狂っている。

 

狭い壁…いや、小さな体の私にとっては大きな壁のいつもの冷たさを今は全く感じられない。蹴られた腹がの痛みが全てをかき消してしまっていた。

 

この痛みは何度味わっても慣れることはない。

 

息が苦しい。今にも吐き出しそうだ。

 

ただ、その一発で終わるわけもなく、人間より一回りも二回りも大きい足が私を何度も踏みつける。

 

「ごめんなさいッ!!ごめんなさいっっ!!…うっ!…うぅぅ…!」

 

 

何度も上から踏みつけられながら、私は必死に謝り続けた。効果などないのはわかっているが、それでも痛みに耐えられず口に出す。頭を抱え丸くなりただただ必死に謝り続けた。

 

部屋に鈍い音が響き続ける。10分ほど経ったのだろうか…大声で謝っていた私の口が閉じ始める。目が朦朧として頭を抱えていた腕が少しずつ力を失っていく。

 

「ちっ、もうグロッキーかよ。これだから人間のガキは嫌いなんだ」

 

「…ゲホッ…ゲホッ…。…オエッ…」

 

私の体からようやく『アイツ』が足を離した。喉からこみ上げる吐き気を抑えられず地面に吐き出し、小刻みに呼吸する。

 

意識はあった。

 

ただ失っていたほうが痛みを感じなくてよかったかもしれない。新しい傷の増えた身体はもう指一本ですら動かない。

 

「…ごめんなさい…ごめん…な…さい…」

 

意識が朦朧とする中、口がまた謝罪を繰り返し始める。無意識にただその単語を唱え続ける。虚ろな目がほぼ真っ暗な空間を右に左にと視線を移し、この空間から出て行こうとする『アイツ』を消す。

 

そして

 

 

「……おかあ、さん…」

 

 

思わず出た言葉。痛みが限界を超え、何も考えられなくなった頭は昔の幸せだった空間をフラッシュバックさせる。こんな私を愛してくれる…愛してくれていたあの人の顔を思い出した瞬間、

 

その単語を口にだして()()()()

 

それは『アイツ』にとって面白くない言葉なのだ。絶対に言ってはいけない…。

 

気づいたときにはもう遅い、『アイツ』は私の髪を掴み無造作に持ち上げる…

 

「イタイイタイ…!…イタイ…!!…やめ、やめて…くださっ!」

 

「まだあんなクソ女のこと覚えてやがんのか。この際だから教えてやる」

 

「グブェッ…!!…ぁぁぁああああああ!?!?」

 

私の顔を壁に叩きつけた。鼻から熱い液体が漏れ出る。痛みを堪ることなどもうできない。痛みを少しでも和らげようと無駄に声を上げてしまう。そんな私に『アイツ』は顔を近づけ

 

「峰理子リュパン四世?…違う!お前はただの『四世』だ!なにまだ人間でいようとしてやがる犬が!お前は生涯一生、俺の支配を受け過ごすんだよ!親だとか甘えた幻想まだ抱えてるんなら早めに捨てちまえ!お前を必要とするやつなんざこの世には1人として存在しないんだからよ!」

 

「…っ!…うぅぅ…うぅぅぅぅぅ…!」

 

私の希望をかき消した。

 

今日もまた、同じ1日が繰り返される…。

 

 

 

 

 

一体いつになったら…私は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

「最近理子が冷たい!」

 

「…知らないわよ」

 

桃の前でやんやんと泣く。周りからの目が集中している中、俺は机に顔を伏せ泣いた。

 

時刻は昼休み。小さい弁当なのにちまちま食べる桃の前で本気で涙を流す俺。どうしたどうしたと騒めく桃のクラスメイト達。状況はカオスだった。

 

「そんなこと言うなって!やばいんですけど!もうメンタルボロボロなんですけど!?なんで!?どして!?」

 

「一番やばいのはそれを一年の教室に来てまで話す先輩だと思うけど」

 

そう、俺が泣いていた場所は一年クラスの教室だった。まあアホである。

 

東京武偵高校は他の高校よりも上下関係にはかなり敏感であり、上級生が一年生の教室に1人現れただけで教室内の生徒は起立し姿勢を正すのが原則。そんな先輩である俺が、下級生の中で1人の女の席でわんわん泣きだすなんてありえない。

 

が、今回は事情が事情なんだ。許せ。

 

「はぁ…で?具体的になにされたの?」

 

「実は今日久しぶりに理子が登校してきたんだけどさ…」

 

俺は今日の朝の出来事を話し始めることにする…。こんな状態でも一応聞いてくれる桃は本気で天使だと思う。

 

 

 

-----

 

「うわー理子ちゃんそれ可愛いー」

 

「えへへ~新作アイテムなのだ♪」

 

あのハイジャックから来てなかったくせに、突然当たり前みたいに登校してきたんだよあいつ。そんで、なんか新アイテムとか言って赤いランドセル見せつけて…なんでランドセルなのか全くわからんが。ふつーに理子だったんだよな。…だから

 

「よう理子、おはよ」

 

「………はよ」

 

「あ、あり?」

 

普通に声をかけたんだが…理子は俺の隣を通る際にちらっとこっち見て挨拶するだけでそのまま自分の席についたんだ。…いつもならよくもまあそんだけ話すものがあるもんだと逆に感心するくらい話かけて来るのに…。

 

ーーーーー

 

「んだけど、そん時はただ機嫌悪いだけかなって思ってたんだよ…」

 

「そうかもしれないわね。…それで?」

 

「…さっき昼休み入った時…」

 

ーーーーー

 

前に理子と飯食べる約束してたんだ。机くっつけて食べよってな。だからまああいつの機嫌が悪い理由とか聞くいい機会だから、声かけたわけ。

 

「おーい理子、俺と飯一緒に食べ…」

 

「……あ、キーくん学食なの?りこりんも行く〜」

 

「うお、おま、ついてくんなっ!」

 

「やーだもん。あ、アリアも早くぅ!」

 

「はぁ…しょうがないわね」

 

「……あ、あり?」

 

なのに声かけた瞬間だぞ、あいつ俺のことなんて見向きもしないでキンジのとこ走り込んで行ったんだ。そんまま、アリアも加えて学食行ったよ。

 

ーーーーーー

 

「俺が、なにしたってのよー!?」

 

「へえ…あの理子がね」

 

全部話し終え顔を伏せ泣く俺を無視して外を見る桃。

 

そう、俺はなぜか理子から無視され始めたのだ。なんで!?どして!?

 

「無視されているならそれ相応のことをあんたがしたってことよ。理子が無視するなんて相当やらかしたわね」

 

「…やっぱ、そーなんかなぁ…そーなんかなぁ!?」

 

「鼻水垂らしてこっちを見ないでくれる…?気持ち悪いわ」

 

そうだ、俺も考えは一応ついてたんだ。多分俺が、俺の知らない内に何かしたんだろうと。…いつの間にか余計なことをしていたんじゃないかって。

 

罵倒しながらもティッシュをくれる桃に感謝しつつ鼻をかむ。

 

「とりあえず理子にしたことを最初から思い返してみなさい。それで可能性のあるやつから謝っていけばいいのよ」

 

「…わかった」

 

それから俺はあーだこーだ理子にしたことについて考え、桃は無視して弁当を食べ始める。周囲の反応も時間と共に慣れてしまったのかもう俺たちのことを気にしなくなっていた。慣れってすごいな。

 

 

「…話変わるけど、お前の卵焼き美味そうだな。自分で作ったんか?」

 

「ええ、そうだけど。あげないわよ」

 

「………」

 

「無言で見つめてもダメ」

 

結局、いくら考えてみても俺がしたことで理子を怒らせたようなことを考えきれなかった。…そもそも理子が俺になんか不満あればすぐ目の前で言ってくるし。それだけ怒ってるってことなのだろうか…?

 

時間いっぱい考えるものの考えがまとまることはなかった。

 

「最悪本人に無理やりにでも聞いてみたら?それで解決できるかもしれないし」

 

「そうかもな…帰る」

 

「はいはい」

 

グチをある程度聞いてもらって満足した俺は帰ることにした。…はぁ、どうしたらいいんだろう?

 

 

 

 

余談だが

 

『お、おい…あの鈴木が男子と話してるぞ』

 

『嘘だろ!?俺なんて業務連絡だけでも嫌だって言われて女子と交代させられたんだぞ!?』

 

『あの先輩、どーやって仲良くなったんだ?羨ましすぎる…!』

 

『玉子焼きいいな…なんなんだよあの男』

 

『ねえ、鈴木さんがあんなに話すの見たことある?』

 

『ないない!あかりちゃんと少し話してたくらい!』

 

なんかクラスメイトがざわざわしてたぞ…。お前、クラス内でどんな風に振舞ってんの…?

 

 

ーーーーー

 

日曜日

 

『みるみるマジカル魔女っ子ミラクル!あなたのハートにドッキュンハート♡』

 

「なんで俺こんなとこにいるんかね…」

 

理子から無視されて初めての休日。大きなディスプレイの中で小さな女の子キャラがキラキラと星を振りまきながらウインクしているというアニメに耐性のない人が見たらキツイかもしれない映像を堂々と流すこの場所、秋葉原に俺はいた。

 

右を見れば美少女キャラのポスター、左を見れば美少女キャラのフィギュアがある…別にアニメは嫌いじゃないが、ここまではまだ俺には早かったようで少し居心地の悪さを感じる。それに今の心境的にこんなとこに来るのは憂鬱なのだが…

 

だって、あいつと何度も来た場所だぞ?

 

「どうせ暇なんでしょう?なら荷物持ちくらいにはなりなさい」

 

そんな場所にわざわざ来た理由はこの年下わがままお嬢様の荷物持ちだった。桃の朝の電話を要約すると『一年の教室でグチなんて目立って仕方なかったのに聞いてやったんだから私の命令を聞け』だ。

 

「でもよぉ電話でも言ったけど俺今そんな気分じゃないんですけど…」

 

しょうがないとは思うが、今日はもう1日寝て過ごそうと思っていたほどになにせ身体がダルい。理子が学校に来だしてからずっと無視され続けることがここまで辛いとは思わなかった。元々一年の時にはクラスメイト全員から無視されていたのだが、それの十倍以上辛い。

毎日がつまらない。なんなんだよあいつ、早く元に戻ればいいのに…。

 

「だからこそよ。家にいたってしょうがないでしょ?買いたいものたくさんあるの、手伝いなさい」

 

「…へーへー」

 

まあ、こいつもこいつなりに俺のこと心配して連れ出してくれたんだろうし。悪い気もしないか。俺はスタスタと歩いていく桃の後を追った。

 

それから桃の行きたい場所へと着いて行き、買っては渡され買っては渡されを繰り返し、2時間ほどたった頃にはもう前が見えない状態にまでなっていた。…こいつ、目に付いたものなんでも買いやがって…金持ちはこれだから…。

 

などと思いながらも口には出さず、流石にキツイと訴えなんとか歩道の端に座らせてもらった。重い荷物を横にどかっと置き大きく息をはく。

 

「もうギブなの?まだ半分ほどしか周ってないわ」

 

「知ってるよ。理子とだったらこれでも半分もいってなかったしな」

 

「………。わかった。そこに座って待ってなさい。次の店は私1人でいいわ」

 

結局体力のない俺の話に折れた桃は1人で買い物の続きへと向かっていった。まだ昼になったばかりの休日の秋葉原の歩道は人が途絶えることがない。俺は歩道の端に座って水を飲む。

 

「そーいや、理子と何度も来たっけか。無駄にアニメの知識植え込まれたっけ」

 

理子とは何度かここを訪れたことがある。目的もなくただブラブラと周っては俺の好みのキャラクターを選ばせるんだ。…毎回毎回なんで選ばせてくるのか全くわからなかったが、普通に和風美人系の子を指差したら蹴り飛ばされたっけ。…あれ本当なんでなんだ?本気でわかんね。

 

金髪ギャルとの思い出についふっと笑いながらきれいな空を見る。

 

 

なんであいつ、怒ってんのかな…?

 

今は、その楽しかった思い出が全て逆の意味で帰ってきてしまう。あのなんだかんだ言いながら楽しそうに笑っていた理子にはもう会えないのだろうか…?

 

ああもう、今はあいつのこと考えるのは辞めだ!鬱になるわ。

 

頭から二文字を吹っ飛ばそうと周りを無駄に見渡す。

 

 

 

 

「…キンジ?」

 

 

フィギュアショップとメイド喫茶の間、その中へと入っていく男が目に入った。

 

あの高身長、チラッと見えた横顔はキンジで間違いない。

…けどおかしいな。あいつはこんなとこに来るようなやつじゃないはず…??

 

声、かけてみるか。

 

 

 

「よおキンジ、お前がこんなとこにいるなんて珍しいな」

 

誰かを待っているようなキンジに俺は後ろから声をかけた。

あのジャンヌの一件以降あまり会話がなかったのだが、一応あの時のゴタゴタは解決している。

…というか、あんな軽い衝突など武偵高では珍しいことではない。いちいち怒る方がおかしいとさえ思うような感覚だ。

 

だからこそ俺も普段通りに声をかけ、キンジも俺の方へ普通に振り向くといつも通りの声で返答してくる。

 

 

のだが…

 

 

 

「おお、修一か。

 

 

 

()()()()()()()()()()()()?」

 

 

「…は?」

 

 

今まで考えていたあいつの名前に、思わず眉が上がった。

 

 

どうして今、理子の名前が出るんだ…?

 

まばたきすることしかしない俺にキンジは首を傾げた。

 

「違うのか?俺はてっきりまた手伝いを頼まれ…」

 

 

prrrr

 

なにか言おうとした時、彼の携帯が鳴った。

 

キンジは携帯を取り出し名前を確認したところでため息をつくと、俺に断りを入れて携帯を耳に当てる。

 

「はいはいキンジで…は?なんでもうメイド喫茶に入ってるんだよ?下で待ち合わせじゃ…あーはいはい!わかった、すぐに行く!…はぁ、つーことで悪いな岡崎、もう行かないと」

 

「あ、ああ。気にすんなよキンジ。俺も…その、荷物放ったらかしだからさ。えっと、んじゃな」

 

キンジは謝るとすぐに隣のビルへと入っていった。…どうやら理子とはそこで待ち合わせらしい。

 

…キンジと理子、一緒にアキバ来てたのか…?ま、まああいつなら別に色んな男と遊んでてもおかしくないし、男子連れて2人っきりで休日遊んでても全然、おかしくないもんな。うん。俺なんかを誘ってくるようなやつだし、基本男なら誰でもいいんだろうし…うん。ピッチだな〜あいつ。

 

頭の中でなぜか早い口調で言い訳をし始めてしまう俺。頭を振って頬を二回ペチンと叩くと荷物の元へと戻る。

 

 

 

 

キンジの方へなせか尾を引かれるような感覚があった。あいつら2人でなにするんだろう…?てかどーして2人で遊んでるんだ…?俺だって、その、暇だったのに…。

 

 

ーーーーー

 

 

その答えはすぐにわかった。

 

 

二、三日が過ぎた大雨の降るとある平日。次の授業は科学だ。

 

武偵高校の科学は日頃使い慣れている教室ではなく広い教室の方へ移動するようになっている。横長の机が階段のように後ろに下がるごとに高くなっているまるで大学の教室のような場所だ。

 

ただ前にも言ったがこの武偵高校は一般校と比べて授業出席には寛容だ。成績も主に武偵としての技術の方で判別されることも多く、午前の通常授業にはほとんど出なくても進級できるなんて奴もいる。

 

まあ、なにが言いたいかっていうと授業に出るやつの大半は暇なやつか単位がやばいやつ、もしくは俺みたいに武偵技術がないやつが受けることが多く、生徒数はかなり少ないのだ。

 

 

…ま、普通の授業ならだけど。

 

この科学だけは違う。講義が他と比べてとても面白いなんて理由でもない。…理由は

 

「キャー!小夜鳴センセー♡」

「やっぱかっこいーー!!!」

「もう惚れた!既成事実既成事実っ!!」

 

「あ、あはは…。みなさんお座りください。テスト始めますよ」

 

もう文書でもお分かりいただけただろう。イケメン先生による直接授業なんだここの科学は…!

銀髪、イケメン、高身長、性格良し、おまけに先生。アニメの王子様かっての。俺もあんだけイケメンだったらこの才能なし男でも人気者になれたのかね。

 

この授業は自由席とあって女子どもは皆最前列もしくは二列目に座っている。よって俺とかのバカ男達は自然と後ろに集まるのだ。まあ後ろの方がなんかいいし。最高だ。

 

『くふ、キーくん!』

 

『おい、なんでお前が…』

 

『理子だって探偵科だもん。テストくらい受けるよ』

 

…目の前で変にイチャイチャしている馬鹿どもさえいなければもっと最高だったんだけどな…。

 

理子とキンジは俺の前の席で楽しそう話している。もちろん俺はガン無視だ。

 

本当、なんで俺理子に無視られてんだろ?

 

俺の数少ない友達であるアリアに聞こうとしても「ご主人様ご用件はなんですか?ご主人様ご用件はなんですか?ご用件は…」なんてずっと唱えてて俺のこと気付かなかったしな…。なんだご主人様って…。

 

本気でちょっと鬱になってきたぞ理子さん。いい加減教えてくれよ、俺何したの?

 

そう思っていた時、ブツッと教室の電気が消えた。巨大なディスプレイの光のみが眩しく映る。今回のテストはこれを聞いて記入するだけか…簡単だぜ。

 

『くふふ、キーくん、キーくん』

 

『なんだ、テスト中に話しかけるなよ』

 

『えー?りこりん全部終わって暇なの』

 

…テストは、簡単で、いいけどよ…。

 

なんなの前の2人、クソ気になるんですけど…?

 

なんかこの頃理子さ、キンジと結構一緒にいること多くない?

なんか前より仲よさそうなんですけど…楽しそうなんですけど。

 

なんだ、この変な感覚。若干イラってするんですけど。

 

てかいつもは俺のとこ来てくれたじゃん理子さん?あれ地味に嬉しかった分今すごく辛いんですけど?

 

くそっ!ほんとなんなのよ!

 

ーーーーー

 

…結局、前の2人が気になってろくなテストできなかった…。ついでに終わってすぐ理子と話ししようと考えてたんだけど、俺の方見向きもせずにとっとと行っちゃうし…。本当俺なにしたんだ?

 

大粒の雨を傘で遮りながら帰り道を歩く。今日はなんかなんもかんもめんどくさいし、家に帰ってセーラとダラダラ過ごすか…。

 

「キーくんと相合傘嬉しーな!も〜っと雨降ればいいのにぃ♡」

 

曲がり角の先、校門の近くでまたあの2人を見つけた。2人で一つの傘に入ってる。色や柄的に理子のものだろう。2人の顔はこちらから覗き見ることは出来ないが楽しそうだ。

 

…無性にイラっとした。

 

なぜだかは全くわからないがキンジに激しく怒りを覚えた。…もういい、桃の言ってたようにあの2人の前に行って理子に俺がなにしたか聞いてやる!

 

そう思い走り出そうとした…その時

 

「っ!?誰だお前っ!」

 

「キンちゃん!」

 

俺があの2人の前に走り出すより早く、白雪が般若のような顔で2人の前に立つ。…そういや、白雪はキンジのこと好きなんだっけか。

 

「キンちゃんと相合傘なんて羨ま…じゃない!ハレンチな!キンちゃんが嫌がってるのわからないんですか!?」

よし、白雪に加勢してやるか。ま、理子は俺のこと怒ってるみたいだから無視されるかもしれんが、これを機にもしかしたら聞き出せるかもしれんし。

 

もし本当に悪いことしてたら謝ってやらんでもないしな。

 

 

 

 

 

 

 

ただ、次の言葉だけは、聞かなきゃよかったのかも、しれない。

 

 

 

 

 

 

 

「なんで〜?キーくんとりこりんは

 

()()()()』なんだよ〜?

 

相合傘くらいあったりまえジャーン??」

 

 

 

 

理子は傘を楽しそうに回しながら白雪に言い放つ。

 

 

傘が、落ちた。

 

 

 

「………………………………………………………………は。」

 

 

 

ああ

 

 

 

 

 

なるほどねなるほど、ね

 

 

 

 

なんかこのごろあの2人の仲いいなと思ってたけど

 

 

 

 

そっか

 

 

 

 

そっかそっか。

 

 

 

 

 

 

キンジと理子…()()()()()()()()…。

 

 

 

 

なるほどなるほど、あーすっきりしたわ。今までの理子のおかしな行動が全部理解できるねこれ。

 

 

 

 

俺に『もう関わらないで』と言ったこと

 

 

 

 

 

挨拶したのに軽い返事だけだったこと

 

 

 

 

 

無視されたこと

 

 

 

キンジと付き合ってるんだし、ほかの男子とはあまり仲良くしちゃ、ダメだよな。

 

しかも俺なんかと、キンジを仮にも裏切った奴ですからね。はいはい納得納得うん。

 

 

いやーよかったよかった、白雪が先にあの2人の前に来てて。

 

 

危うくあの2人の邪魔を俺がするとこだったよ。いやー男としてね、それはダメだようん。紳士ですから俺は。カレカノの間に割って入っちゃダメですダメです…。

 

 

いいね、自分と仲のいい2人が付き合う。おめでたいじゃないか素晴らしいじゃないですか。もう嬉しくて嬉しくて…

 

 

よかった…よかった。

 

 

 

 

 

 

……。

 

 

 

 

 

 

「…………………『理子は味方』……じゃなかったのかよ、クソッ」

 

 

 

それから白雪がブチ切れて理子となにかやっていたが…よく覚えていない。

 

 

 

ザアザアと大きな音を立て流れる雨が、俺の舌打ちをかき消した。

 

 

ーーーーー

 

〜武偵高校廊下〜

 

『…まったく見てらんないわね。理子も理子で何考えてるのやら…』

 

『ああ、見つけた。鈴木さんお時間よろしいですか?』

 

『…はい?えっと確か、小夜鳴先生?』

 

『はい、突然すみません。実はお願いがありまして…』

 

『お願いですか?』

 

『はい、明後日の身体測定なんですが、鈴木さんは明日の二年生の再検査と合同してもらうことってできないでしょうか?』

 

『身体測定?別に問題ないですけど…どうして私ですか?』

 

『いやーこれがなんというか、転校生だからというあいまいな理由でして…これといって理由はないといいますか…あはは』

 

『…まあ、別にいいですけど』

 

『本当ですか!?ありがとうございます!それでは明日よろしくお願いしますね!では』

 

 

 

 

 

 

 

 

『変なテンションの人。……ん、獣の臭い?…犬でも飼ってるのかしらあの人』

 

 




投稿遅くなりすみません。次はようやくバトルが起こりそうです。

アニメではキンジとアリアがメイド喫茶で理子の依頼を受け屋敷に潜入する準備をしているところですね。
身体検査の前ですのでまだ潜入はしていません。…それにしても理子さん、メイド服可愛すぎじゃないですかね!エロ可愛い!最高!

個人的には最後の髪ほどいた理子がお気に入りです。…いいなキンジ…。

話逸れましたが、次回も宜しくお願いします!ではでは!

ps 主人公が脇役キャラになりつつある…?そんな馬鹿な。

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