1.修一よく喋ります。夾竹桃に主役取られてたストレスの発散かもしれません。
2.今回の話は16話『一番いい終わらせ方』を読んでいただいた後だとより楽しんでもらえると思います。
3.セーラの心情はあえてあまり書いてません。…あえてです!
以上です!
「26話のあらすじ」
夾竹桃が、好きになりました
「ジャンヌ、この前は本当に悪かった!」
俺は少しゴチャゴチャしている部屋でジャンヌに頭を下げる。色々と謝り方を理子と考えていたが、素直に謝るというのが俺たちの答えだ。謝って許してくれるとは思っていないが…それでも、伝えたいと思っていたから。…でも
「………。」
ジャンヌは何も言わない。…頭を下げてるためジャンヌの顔が見えないが…やはり怒った顔しているのだろうか…。ただ、俺からは何も言えない。ただ黙って頭を下げ続けた。
「岡崎、顔を上げろ」
「は、はい!」
ジャンヌは俺に顔を上げるように言う。思わず敬語になってしまった。…ゆ、許してくれるのか…?
「はっきり言うが、私はお前を許す気はない。自分の計画が邪魔され、目的を達成できない原因を作った者を許容できるほど私は人間出来ていないからな。だから、貴様とはもう話すつもりは無かった」
「………。」
そりゃ、そうだろうな…俺だって自分の作戦邪魔されれば嫌になるだろうし。謝ってまた元に、祭りの時みたいに楽しくできる、なんて、自分に都合のいいことを期待してしまっていたのだが…やっぱ無理、なのか…。
やっぱ、なんか、寂しいな…
「などと最初は思っていたのだがな。私はもうお前に怒ってはいない」
「…え?」
俺は思わず顔を上げジャンヌを見てしまう。腕を組み顔をそらすジャンヌに嘘は見えなかった。
「お前がしたことより、お前にしてもらったことの方が大きいからな」
「俺、お前に何もしてなんか…」
俺がジャンヌにしたことでジャンヌの為になったことと言えば…祭り後にメールを送らせるタイミングを計ったくらいだろう。そんなんで許してくれるとは思えない…。
「私ではない、お前は『誰にも心を開かずずっと1人で生きてきていた理子』の良き理解者になってくれた。…そして『人に不幸を与えることに嫌気が指していたであろう夾竹桃』に人としての幸せを伝えることに成功している。私が長年付き合っても成しえなかったことをお前は成功させ続けたのだ。むしろ感謝したいとも思っているほどだ」
「………」
俺はジャンヌの答えをあまり理解できていなかった。だからこそ何も言葉を返せない。どうしてここで2人が出てくる?ジャンヌには迷惑しかかけてないじゃないか…。
「友人を救ってくれた者に感謝するのはそんなにおかしなことか?」
「作戦をぶち壊してしまったやつにでもか?」
「ああ。あの2人のことを理解できているはずなのに、ただ見ていることしか出来ないでいる私自身に苛立ちを覚えていたからな。それをすっきりさせてくれたお前にはもう感謝しか残っていない」
そう言うとジャンヌは俺の元へ来て手を握った。温かい手が、俺の手を包む。
「岡崎修一、本当に感謝する。あの2人を救ってくれて、ありがとう」
…。嘘偽りなく、そう言ったジャンヌの笑顔に、込み上げるなにかを必死に抑える。…彼女は、本当に…
「じゃ、じゃあ、俺とまた、友達として…接してくれる、のか?」
「ああ。……いや、一つだけ条件を加えよう」
「条件?…な、なんだよ?」
頷いたと思ったらすぐに考えるような仕草をするジャンヌ。…え、条件?か、金か?
おどろおどろしている俺の鼻をちょんとつついてジャンヌは言った。
「なに、そう怯えるな。『理子と夾竹桃を悲しませるようなことは絶対にするな。2人が困っていたら真っ先に助けてやれ』、それだけだ。もしあの2人を を泣かせるようなことがあったら私はもうお前を許さないからな?」
ジャンヌの言葉に口をぽかんと開けてしまった。
…なんだ、なんだよジャンヌ。
なんでも頼めるこんな時にも人の為に動くのかよ。…どれだけいい奴なんだお前。
俺は笑うジャンヌに笑って言い返してやった。
「任せろ。お前に頼まれなくてもやってやるわ!」
「ああ、ならお前ももう前のことは気にしなくていい。私とお前は友人だ」
「…本当ありがとな、ジャンヌ」
こいつの人の良さに、俺は思わず惚れそうになった。憧れとでもいうのか…こんな人に俺はなりたいと、強く思った。
ーーーーー
「それにしても、まさに男の部屋だなここは。もう少し片付けできないのか?」
話も一段落し、冷蔵庫に入っていたロールケーキを2人で食べていると、ジャンヌがごちゃごちゃとした部屋を見ながらそんなことを言う。
「いやこれは…ついさっきこうなってだな…」
訳を説明しようとしたとき、ガチャッと玄関のドアが開く音が聞こえた。おお、丁度帰ってきたか。
「…岡崎修一。ごはん、買ってきた」
「ごくろーさん」
袋片手にリビングに洒落た帽子を被ったセーラが入って来る。こいつ、袋とかそういう日常的なアイテムあんまり似合わねーなあ。
「お、おい、どうしてセーラがここにいる!?」
突然のセーラの登場に流石のジャンヌも驚き立ち上がった。…まあ確かにそうなりますよねん。もともと敵だったやつがいきなり俺の家にやって来たらね。
「あーそれはですね…」
セーラに台所に袋を置くように指示しつつ、俺は今朝の児童保護施設でのやり取りを話すことにした。
ーーーーー
〜児童保護施設にて〜
「よ、なんか好きなことを探しに来たか?」
夾竹桃の元へ行こうとする俺の前に、セーラが立っている。
なぜかセーラはじっとその睨みつけるような目でずーっと、俺をただ見ているんだが…なんだ、どうした?ムスッとした顔をしているが…
「……違う。お前の言ったことを否定しに来た」
少しの間、ただ立っていたのだが俺の近くまで歩いてくると横に座った。…おお?
「というと?」
俺もセーラの横に座る。近くで見るの初めてだけど…こいつも可愛い顔してるんだな。
「………私は、傭兵以外にもいろいろできる。
ようやく言った言葉は、少し幼い様な感覚がした。年相応とでも言うのか。廃ビルで見た大人びた感じはない。
…あーなんか根に持たれてる?俺あん時なんて言ったかな…?
「へえ、なにが得意なんだ?」
そう聞くと、セーラは自分の目を指した。
「視力は高い。…ちょー見える」
「あーなるほどなるほど、他には?」
「掃除」
「それ本当か?見た感じできなさそうだけど…」
「人を外見で判断しないで、ウザい」
「ごめんなさい」
「…まだある」
「おう、言ってみろ」
「………。……弓」
「そりゃそうだろ。てかそれがお前の今の本職だろうが」
それからしばらくセーラの得意なことについて話す。こいつ、意外と面白いやつかも。外見とは裏腹に意外と負けず嫌いらしい。俺が否定するとむきになって反論してくる。
この辺りはまだ見た目通り子供なのかと少し親近感が沸いた。
「…以上、私はいろんなことができる」
「そっか。流石だな」
セーラはだいぶいい尽くしたのか満足したのか、立ち上がり俺の前から去ろうとする。
…って言うだけ言ったら帰るのかよ。
俺はそう思いながら、廃屋でセーラの行動を見たときから考えていたことを実行に移すことにした。こいつなら、きっと…
「あー待ってくれ。最後に一つだけ」
「……?」
立ち去ろうとするセーラを呼び止めた。セーラは面倒くさそうにしながらも、俺の方へまた振り向いてくれる。
そして、俺は考えていたことを口にした。
「お前さ、俺の依頼受けてくんね?」
「…は?」
俺の提案にセーラが素で疑問を浮かべている。そして、目の色が変わった。先ほどまでのぽかんとしたような目から、キッと睨みつけるような目に。敵を見据える目というのか。そんな雰囲気が漂う。
ま、そーだよな。きっと毎回頼まれる依頼ってのは暗殺か偵察のどちらかだっただろうし。俺からの依頼=暗殺依頼って取ってもおかしくない。…言葉ミスったな。
「拒否する。私は敵に寝返るなんてことはしない」
「…義理堅いのな、お前」
これだけ話してまだ敵なのね俺達…。元々敵だった者として、裏切りとも呼べる行為はやらない…か。そこは流石傭兵、だな。
「まあでも青林は捕まってるし、それで契約解除なんじゃねーのか?あいつが出てくるまで待つなんて訳でもねーだろ?」
「…………。」
セーラは唇を尖らせたまま、ジト目で俺をジ~っと見る。…何考えてるんだ?よくわからん。
「………依頼内容は?それによって考える」
お、一応聞いてくれるらしい。よかった。これをこいつにどうしても言いたかったんだ。
「俺からの依頼は
「……なに、それ?」
先ほどのキッとした目が一瞬で解けたようだ。セーラは目をぱちくりとさせ、俺の方へ歩いてくる。
まあこんな変な依頼普通しないよな。でも、どうしてもこいつには普通の生活ってやつを知って欲しいと思った。
どんな無理矢理でもいい。救いたいとか、助けたいとかそんな上からな物言いじゃなくていい。ただ、知って欲しい。それだけの俺のワガママだ。
「ちょー楽しいぞこの依頼。
自分が傷つく心配もなく、自分の自由に過ごすことができる。まあ部屋の掃除とか風呂の掃除とかはしないとダメだけどな。でもそれも色々と道具工夫すりゃ楽しくなるってもんよ!俺色々知ってるから教えてやるよ!
学校にだって通いたけりゃ通っていいし、給食とか、授業とか、テストとか、お前したことないだろ?面倒くさいけど友達とやればそれも楽しいぞ!
んで、金は小遣い制な。お金の使い方を迷ったりすんのも普通の生活だ。んで、思わぬ消費で凹んだりすんの…あれ買わなきゃこれ買えたのに〜みたいな。
あとはな、んーと…あ!そうだそうそう!なんか近くの遊園地がいま盛り上がってるらしいぞ!一緒に行くか?」
「………私が、遊園地…??」
「そそ!メリーゴーランドとかジェットコースターとかさ!乗りたいもん乗ればいいし、食べたいもん食べろ!どーだ、ワクワクするだろ?」
「………。……馬鹿馬鹿しい………私が…なんて…」
口では否定しながら体が揺れてますよセーラさん。こいつ思ったよりわかりやすいんじゃないか?実は結構行きたいんじゃないの?
セーラはそれからしばらく体をぶらぶらとすると、曇天の空を見ながら…
「…ブロッコリー」
ぽつりと呟いた。
「は?」
「ブロッコリーが毎日ないと、やだ」
それはつまりあれか。ブロッコリーさえ用意しとけば依頼を受けてくれると…
「好きなん?ブロッコリー」
「ん」
コクンと頷くセーラ。素直だなと思いつつ、俺はうれしくて思わず立ち上がってしまった。
「まっかせろ!よーし、んじゃ契約成立だな!」
俺はバンザイして空を見た。相変わらずの曇天だが、少しだけ光が差し込んでいる。…そろそろ晴れそうだな。
「…あと武装は解除しない。これは大切な弓だから、これだけは持っている。それでいいなら…岡崎修一、お前の依頼引き受ける………遊園地、行ってやってもいい」
「弓全然いいぜ!大切にしてるものまで取る気はないしな!使わないんなら何の問題もないって!」
俺はセーラの手を強く握った。よし、これで、
こいつにも、大切にしたい何かってのが見つかるかもしれない。
夾竹桃のように、大切な何かを見つけることができれば…傭兵なんて仕事やらなくなってくれるだろう。
俺はそう、信じることにした。
「でも、普通の生活ってなに?どうすればいいの?」
「どうすればいいって…んー、そうだな…。
…あ、しまった夾竹桃のとこにも行かなきゃダメだった。…んー、じゃあ先に俺ん家で休んでろ。好きにしてていいぞ、すぐ帰ってくるから」
「…わかった」
ーーーーー
「という感じで、こーなったわけ。…何が掃除得意だってんだよ」
「お前は本当にお節介というかバカというか…」
一通りのことをジャンヌに話すと、呆れられてしまった。あーやっぱり?セーラに普通を知ってもらおうなんて、流石にお節介過ぎただろうか…。
「…ダメか?」
「いや、むしろ私もその案には賛成だ。彼らを見ていると胸が締め付けられる思いがしていたからな」
こちらに来るセーラをまるで母親のような目で見るジャンヌ。もしかしたらジャンヌも『イ・ウー』の時にセーラのような傭兵と共闘、または戦ったことがあるのかもしれない。そのときの人をセーラと被せてたりするのかな?
「これ、ここでいい?」
「おーさんきゅな、ジャンヌ、今日はカレーするんだけどお前もどーだ?」
「ああ、いただこう」
セーラが台所のテーブルに袋を置いた。俺は感謝しつつその中身を確認する…
「おっしゃ、んじゃあ早速……あれ?」
俺はその袋をバッと開ける。…が、その袋に違和感を感じた。
あれ?なんか、長方形の形したカレールーの箱が見当たりませんが…?そして、なんか普通のスーパーじゃ無さそうな綺麗な包装をされた肉さんがありますが…?
「……おいセーラさん?」
「なに?」
「俺は確か肉とカレーのルー買ってきてくれって言ったよな…?」
「うん、買ってきた」
セーラはなぜかドンッ!とでも効果音がつくような立ち方をする。…いやいやなぜよ?
「肉しかないんですが?…しかもこれ高級肉じゃ…」
入っているのは豪華そうに葉っぱのような入れ物に入ったお肉さん。それはまるでキラキラと輝いているような錯覚を覚えるほどに綺麗でした。
「行きつけ。ここの、美味しい」
「そうか…で、これ150gでいくら?」
「6500円」
「嘘だろ!?」
俺は驚きすぎるお値段に飛び上がってしまう。昔の漫画なら目が飛び出していることだろう。なんなら髪も飛んでる。それほどに俺の驚き度は桁違いだった。…だが、俺の驚きにセーラは「?」と首を曲げる。
「ルーは買えなかった。…お金足りない」
「千円札無かったからって1万渡したろ!?そんでお釣りは返してくれって言ったよなあ!?」
「うん。はい」
チャリンと音を立て俺の手のひらの上で踊るは私たちのよく見る500円玉とスルッと地面に落ちていく三枚の1000円札の皆さん…。
「………。」
「最初の予算が少なすぎる。少なくても二万は欲しい」
「セエエエエエエエエエエラアアアアアアアアアアア!!」
プチリと、俺の中で何かが切れた。
叫ぶ、いや、これはもう怒ると言ってもいいだろう。
俺の顔は般若へと変貌し、体から気のようなドス黒いなにかを放出する。まるで何か薬品を投与された狂剣士のように目を見開いてセーラに牙を剥いた。
力差が歴然であるはずのセーラを一歩後退らせることにも成功させるほどに威圧感を出す俺。…いやしかし、これはない。これはないわアアア!
「普通の家庭は一回の飯で二万なんて使わねーんだよ!夜飯一回に6500円だあ!?ふざっけんな、なんだその豪邸の飯みたいな値段!そんなの3日で終わるっつーんだよ!一人暮らし学生なめんなよ!!俺はお金だけは大事にしてんの!一銭も無駄にしない生活送ってんのよ!毎週たった30円安いだけの卵を買いにチャリンコで1キロ走ってんだぞ!朝から夕方までの学校で体力限界の中、バカみたいに走ってババアどもの渦と格闘しながらも手にしてるんだぞ!?たった30円?…されど30円だ!!チラシ見て格闘する毎日だ!!今の俺の家計は火の車なんだつーんだよ!…というより年がら年中火ついとるわ!それをお前はアアアア!!なんなのよもぅ!傭兵ってこんなんばっか食ってんのぉ!?いいなあ!俺も傭兵なろっかなあ!なあセーラさんやい!?」
「お、落ち着け岡崎!セーラがちょっと泣いてしまっているぞ!!」
俺の魂からの叫びのフルコンボについにジャンヌが止めに入る。
セーラは後退りながら目に涙をためてこっちを見ていた。小刻みに体を震わせる彼女に、もう傭兵としての威厳なんてもんは無く、ただのおしゃれな1少女だった。
それを見てふーっ、ふーっと息を吐きながらもなんとか怒りを抑え込む。
「…決めた、買い出しもお小遣い制にしたる。余った金はそのままお小遣いにしていいから、考えて物を買いなさい」
「………わ、わかった」
セーラはこくんこくんと何度も頷いていた。俺はそれに満足するともう一度6500円の変貌した姿を見る。筋の通った綺麗な肉がそこにある…うむう。
「ジャンヌ喜べ。普通のカレーが一瞬にして高級焼肉に早変わりだ…美味いもん食わせることができてワタシハトテモウレシイヨ……!」
「岡崎…お前も大変だな」
ジャンヌの本気で同情する顔が、ついに俺の涙腺を崩壊させた。
ーーーーー
結局豪華すぎる肉料理におどおどしながらもなんとか作り上げた料理で2人をおもてなし。頭の中で響く6500円という声に上手く肉が喉に通らず、せっかくの豪華料理もすぐに胃の中へと消えていった。
まあ、消えてしまったものは仕方ないよな。などと自分を励ましジャンヌが帰った後お皿を洗っていた。
今はセーラと2人きりだ。…本来なら、付き合ってもいない男女が一つ屋根の下なんてダメだと思うが、別の場所に住むにも金がいるわけで…そんな金俺が持っているわけもなくセーラは特別ということにしておく。…まあセーラなら大丈夫だろ。間違いが起こるとも思えないし。
「岡崎修一、お風呂、入っていい?」
「あいよー、お湯はもう溜めてるからあったまってこい」
ところで、こいつとの会話で一つ気になることがある。
「…岡崎修一、タオル、どこ?」
「ああ、ここだここ」
ひょこっとリビングに現れたセーラにタオルの場所を教える。…うんやはり気になる。
「岡崎修一、お湯どう出すの?」
「…なあお前さ、これから俺のことフルネームで呼び続けんのか?」
「……確かに面倒になってきた」
うむ。まあこれから同居(なんかこう書くとあれだな、変な感じだ)するわけだし、お互いに呼び方を固めといたほうがいいか。
《
「そう、わかった。これからもよろしく、『先輩』」
》
呼び方と言えば…桃の時に呼んでほしい呼び方考えてたんだよな。
先輩って呼ばれた時無茶苦茶嬉しかったっけ。
…実は、もう一つだけ呼ばれてみたいのがあったりする。
…うむむ。試してみようか
「じゃーさ、じゃーさ!俺のこと…
『
「………。」
「……しゅうにい?」
「ぐふぁ!!」
俺は頭から壁に激突する。…ああ、やばい!やっぱやばいなこの呼び方!理子から借りたアニメでそう呼ばれてて可愛いと思っていた俺なんだけど…生はやばいわ!まじやばい!流石だな理子!俺を完全にアニオタにするとは…!
その俺の反応にセーラは本気で引きつつ、そのジトッとした目でこっちを見る。
「…馬鹿馬鹿しい。普通に修一でいいと思う」
「えええ!?嘘だろお!?」
「…キモい」
くねくねと身体を動かしていやいやアピールをする俺。…あ、確かにキモいかも…。でもここまで言った以上引き下がれるか!
「お前今日の肉忘れたわけじゃねーよな?あのお肉、高かったなあ…」
「…う」
顔をそらすセーラ。なんだ、こいつ意外と気にしてやがったのか。
まあ実際スーパーの肉買ってこいとは言ってなかった俺のミスでもあるし、普通に傭兵時代にあれを普通に買うような生活してたんなら分からない話でもないし、実はもう気にしてないんだけども…。
ま、使えるなら使いましょう。俺の楽しみのために!
「あーあ!修兄と呼んでくれれば6500円なんてはした金、むしろ安かったとさえ思うのにぃ~」
「……。」
顔を下げているが、眉がピクピクと動いている。…お、効果あり?…もう一押し!
「ああ俺の6500円…6500円よ、あなたはいまどこにいるのでしょう?今ならロミジュリの気持ちがよく分かり申します…!あなたが私にくれるはずだった沢山の栄養が、今日この日、一瞬にして失ってしまいました…!ああ、神よ…なんかこんな可哀想な私に、どうか、どうか嬉しいことの一つでもください…さもなければ私は、絶望で死んでしまいそうです…(チラッ)」
「…わ、わかった。そう呼ぶ、修兄って呼ぶから、そのエセ演技ウザいから止めて」
「あざまーす!!」
「呼ばれ方一つで…馬鹿馬鹿しい」
俺はまるで劇場の主役のような名演技でセーラを落とすことに成功した。…俺もしかしてこっちの才能あったりする?
「でも2人きりの時だけ…他は修一って呼ぶから」
「ふぅん、まあ、いいだろう」
他の人がいるところでは呼ばないのか…んー少し残念な気もするが…いや、待て、それはそれで…!
「馬鹿馬鹿しい。お風呂入るから出てって…修兄」
「…お前、意外とその呼び方気に入って…」
「うるさい黙れ!」
顔を紅くしてムキになるセーラは少しかわいいと思ってしまった。い、いかんいかんいかん!
…今度理子に頼んでセーラを女子寮に移そうかな。
ーーーーー
〜病院内食堂にて〜
『あ、いたいたきょーちゃん』
『先に食べてて悪いわね』
『いーよ別に!理子の頼んだラーメン少しかかるみたいだか…ってきょーちゃんそれなに食べてるの?』
『何って…オムライスよ?』
『いやそれはわかってるんだけど、どーしてケチャップじゃなくてソースかけてるの?』
『やっぱ変よねこれ。味音痴のオススメは期待できないわ。ただしょっぱくなっただけでオムライス食べてる感覚しないし。…慣れていくしかないわね』
『慣れないとダメなの?』
『そうね、先輩が美味しいって言うなら…一緒に食べたいじゃない』
『先輩?』
『岡崎先輩よ』
『へー岡崎先ぱ…え?それってしゅーちゃんのこと!?ど、どうしてしゅーちゃんの好み知ってるの!?』
『先輩が自分からそう言ってきたのよ。「俺はソースしかかけんわっ!」て。彼、かなりの味音痴みたいね』
『ちょ、ちょっとまってよ!ど、どーしてきょーちゃんがしゅーちゃんの好みに合わせようとしてんのさ!それに先輩って…』
『あら?別に私がどう食べようと勝手でしょ?それに私が先輩のことをそう呼んで理子が困ることある?』
『……別に、ない、けど…。……!……クソ、あのフラグ乱立男…!』
『ラーメン、そろそろできたんじゃない?』
『…キャンセルする。理子もオムライス食べるし』
『無理してソースにしなくていいのよ?』
『…理子しょっぱいの好きだからそうするだけだから!あと理子もそれ知ってたもん!』
『くす、はいはい。早くしないとラーメン、出来ちゃうわよ?』
『くうう…!…修一のドアホ!たらし!この童貞ー!!』
『………童貞なのね…先輩』
『 第6章 VS愛 終』
はい、ということで、あとがきです。16話の伏線(?)回収は最後の理子と夾竹桃の話ですね。はい、それだけです。
よーやく終わりました6章。みなさんいかがでしたでしょうか?…オリキャラ出しすぎたかなと少し心配してる銀pです。これからは出る予定はありませんのでご容赦を…あ、次の話には1人だけでるかもですが、一瞬ですけどね。
えー、次はとうとう最終章!…と言いたいのですが、また外伝です。
1話完結(予定)のものですのでご容赦を!バトルものではなくほのぼのとしたものなので一万字以内には終わらせたいなと思っています。
実は今回も3,000字予定だったんですけどね…どーしてこうなるのか笑
ではまた、宜しくお願い致します!
最後にひとこと
えっと、セーラはヒロインじゃないんですよ?