修一の一番いいやり方に彼の被害についての考慮は全くない。そのことに怒る理子と夾竹桃に自分の間違いを認める。
そうしてランク考査の1日が終わった。
#この章は最終章(8章)の後の話になっています。
なので第7章が終わると、VSランクの内容を少しだけ変更いたします。
とある呼び方が変わるのと、セリフが少しだけ変化するだけで、全体的な内容に変化はありません
次の日の朝。
俺はいつも通り通学路を歩くいていた。心地の良い風を浴びて登校するのは気分が安らぐ…はずなのだが。
『おい見ろよあれ』
『ああ岡崎だろ?模擬戦検査で逃げ出したっていう、マジクズだよな』
『というか、一緒のチームになった人可哀想………』
『でもあれらしいぜ、逃げ出した後すぐにあの須藤達にボコボコにされてたって』
『は、大方昼のやつのストレス発散だろうな。逃げ出すからそうなるんだ』
『あれ?でも確か須藤達運ばれてなかったっけ?あいつがやったのか?』
『そんなわけないでしょ。確か峰理子がやったって聞いたぞ』
『え?あのロリ巨乳が?すっげ、マジかよ』
ああ…散々な言われようだな。俺の噂は更に広がっていたようだ。どうやら理子も少し噂されてしまっているようだが、いい方向に噂されてるし良しとしよう。…というかロリ巨乳ってなんだよ。そんなあだ名なのあいつ。…今度胸のサイズ聞いてみるか。
うん、やめとこう。
俺は頭の中で考えをひたすら働かせ、ある程度の声をシャットダウンする。
『ザコ』『弱い』『クズ』『死ね』『バカ』
見たこともない、話したこともない、生徒が俺を見てただ暴言を吐き捨てていく。中にはペットボトルを投げつけてくる奴もいた。…はあ、これいつまで続くのかな…。三ヶ月くらいで落ち着けばいいけど。
その時
「うぉっほ、岡崎見っけ!」
「あ?」
俺に声をかけてくる奴がいた。聞いたことのない声だったので思わず振り向くと
「…何の用だよ、モブ君?」
「へへ、お前、知ってるか?今学校中お前の話で持ちきりらしいぜ」
嫌な笑い方をしながら近づいてきたのはチームが同じだった強襲科Dランクの門武だった。…ああ、そういやこの声聞いたことあったな。すっかり忘れてた。
「らしいな。つーか、今も言われてるっての」
「っとそんなことはどーでもよくてな」
「あ?」
自分からその話ふってきたくせにと思ったが面倒くさいので言わないでおこう。モブはなぜかニヤニヤしながら俺に近づく。
「お前、俺たちに貸しがあんだろ?お前のせいで俺はまだDランクなんだぜ?だからよ、ほら、俺の頼みは聞かなきゃダメってことだろうが」
…はあ、またこれか。というかあんだけ殴っと言いてまだそれ言うのかよ。…あれは俺が悪いし仕方ないのか?
「………それで?俺に何させる気だよ?」
「お前さ、峰 理子に助けられたんだろ?
ってことは顔くらいは覚えてもらってるわけだし、俺のこと峰に紹介してもおかしくないよな?俺まじでタイプなんだよ!あ、あとお前と仲良い一年の黒髪の美人もな。いい感じで『俺は門武敗過に1発KOされてしまった、門武は最強だ』みたいな感じでやれ」
こいつ、クズだな。あ、モブか。…それはいいとして、恋愛事を貸し借りの中にいれんのかよ。というか、よりにもよってあの2人か…見る目はあるが、多分無理だぞ…結構一緒にいる俺ですら脈なしなんだし…。
「嫌だ」
「はあ?ふざけんなよ!お前が断る権利があると思ってんのか!?」
俺が断ると胸ぐらを掴んで脅してきた。…ああ、面倒だ。ここは『今度理子たちにあったら伝えとくよ』とでも言っといて、そんまま、放置するか。
「わかったわかった。なら今度会った時ーー」
「おい〜っす、しゅーちゃーん!」
その時聞こえた、聞き馴染みのある声。…というか、俺のことそのあだ名で呼ぶ奴に心当たりは一つしかないわけで。俺はこめかみを押さえた。
…なんつータイミングで出て気やがんだこの金髪ロリ巨乳。
「おほ。み、峰、理子…」
モブは俺の胸ぐらから手を離し、鼻の下を伸ばして、こちらに走ってくる理子を見ている。そしてすぐに俺の方を向いた。
「い、いいか!?できる限り俺のことをいい感じで言えよ!出来れば理子が好きになる感じで!」
なぜ俺がそんなことをしないといけないのかと強く思うが、まあそれくらいであいつが落ちるとは到底思わないので知り合いとして紹介くらいはしとくか。…というか、さっき峰って呼んでたのにもう下の名かよ。
…ちっ。
「おいーっす、しゅーちゃん!あのねあのね、昨日『ワンピースの頂上決戦篇』見たんだけどさー!あれちょー感動したの!知ってる??」
「お、そこか。俺も見たことあるぞ。あれガープの親心がすげー響くんだよなぁ」
「あ!しゅーちゃんはそこがいいんだー!理子はね理子はねーー」
俺はいつも通りのハイテンションで
近くに咲いている草がさぁっと風に吹かれるのを見た。
「ーーでね、ルフィが言うの『仲間がいるよ!』って!もーあそこ巻き戻して二回見たよ〜!ワンピサイコー!!」
「ああ、そういやそこって3D2Yって名前でもう一つ話があったような」
「え、そうなの!?じゃあさじゃあさ今日借りよ!で、しゅーちゃん家で鑑賞会!」
「いいけど、10時には帰れよ。明日早いんだし」
「くふ、今夜は寝かさないぜ、しゅーちゃん!」
「やっべ、ワクワクがとまんねーわー」
「しゅーちゃん、エロエロだからねー!理子何されるんだろ、イヤン!」
「…というか、実際泊まったことないだろうが」
「理子はお泊まりしたいんだよ!しゅーちゃんが泊めてくれないんじゃん!」
「付き合ってもない男女が一つ屋根の下なんてダメです。俺の理性が持たん」
「は、童貞が何言ってんだか。どーせそんな空気になってもしゅーちゃん理子のベッドにも上がれないって」
「ああ!?お前俺舐めすぎね。というかそもそも俺はお前にエロいことなんて期待してねーし、興味もないね!」
「…理子実は、結構可愛い下着はいてーー」
「その話詳しく!!」
「おい、おい岡崎…!」
理子とワンピの話から脱線しつつも盛り上がってる中、後ろから肩を叩かれる。なんだと思って見てみると、モブがいた。…ああ忘れてた。そういや紹介しないといけないんだったか。話が面白すぎて存在すら覚えてなかったわ。
「あー理子」
「なあに?」
「その、紹介したい奴がいるんだが…」
俺はこくんと首をかしげる(こいつ、ここであざとさを出さんでいーだろうが可愛いわこのやろ)理子の前で体を反らし、後ろにいたモブを見せる。
「も、門武敗過、です!えっと強襲科2年のDラン…Cランクです!趣味は読書、勉強はかなりできる方です!よ、よろしく!」
モブは顔を真っ赤にしてよろしく!と言いながらなぜか手を差し出し頭を下げた。…これ、はたから見たら告白しているようにしか見えないんだが。
理子の方を見る。っておい、なんで俺をジッと見てやがる。しかもさっきまでと同じでニコニコしてるはずなのに、どーしてそんなちょっと怖いの?なに、なになに?
「しゅーちゃん?」
「…。」
何故か疑問系で俺を呼んでくるが、俺は面倒だったので握手してやれと合図を送る。こいつも一応、純粋にお前のこと想ってるんだから、興味なくても友達くらいにはなってやれって。
「へー、門武敗過君だね!私峰 理子!強襲科Cランクなんだー!凄いねー!あのさ、今までで一番活躍した話とかない?理子聞きたいなー!!」
と
急にあのハイテンションな理子に戻ってモブの手を握った。
………。
理子は興味津々といった感じでモブに話しかける。
流石ビッチ。純粋な僕にはびっくりのコミュニケーション能力だこと。…流石ビッチ、男子に慣れてるなあ。
その対応にものすんごい笑顔になって顔を上げるモブ。
俺はなんとなくその光景から目を離し外の方へと目を向ける。しかし、それにより周りの生徒は携帯をいじるでも友人と話すでもなくこちらを見ていることに気づいてしまった。う、うええ・・こ、こんな見られんの俺嫌なんだけど…。
「あ、おう!一番活躍した…。あ、そうだ!俺、こいつに昨日1発KOしてやったんですよ!」
「へー、そーなんだ!しゅーちゃんを1発KOしたんだ!すごーい!」
理子は目を見開いて口元に手を当て驚く。おい、なんだそのあざとい仕草、俺のときは何もしてくれませんでしたよね?え、なに、マジでこいつ狙ってんの?
「そーなんすよ!こいつぜんっぜん動かないから一瞬で迫って顔面に蹴りいれてやったんだよ!そしたらこいつそれで気絶してやんの!爆笑もんでしょ!」
理子の反応に上機嫌になったモブは俺の溝に肘を入れつつさらに話を盛り上げる。…はあ、俺もう行っていいかな。ここに俺いらないと思うんだけど。
そして理子もそれに笑う。楽しそうだなこいつ。俺の弱いよ話ってそんな面白いかね。
「へー!そーなんだねー!じゃ、もう行こっか」
「おほ、おう!」
理子も俺と同じことを考えていたようだ。時間的に立ち止まって話すほど時間に余裕はない。…が、こいつらの話を聞くのは無性にイライラするので俺が少し遅れて歩くかーー
「いや、お前じゃなくてしゅーちゃんに言ってるんだっつの。ほら、なんで遅く歩こうとかしてるのしゅーちゃん?」
「「…え?」」
俺が距離を離そうとした瞬間、裏理子の声を聞いた。
俺とモブが理子の言葉を理解するのにしばらく時間が必要だった。
未だにニコニコ笑顔の理子は、一歩モブに近づく
「あのねー理子、しゅーちゃんと楽しくお話ししたいの。邪魔だからどっか行ってくれない?」
「…え、あ、あの、理子ーー」
「お前に下の名前で呼ばれたくない」
「え!?あ、はい、峰、さん…」
ニコニコのくせに何故か低い声で素の理子口調。…え、な、なにこれ凄ぇ怖いんですけど?? 夾竹桃とどっこいどっこいだぞ!?
「さ、行こ、しゅーちゃん!話続けよ!」
初めて見る理子の姿にモブは口をぽかんと開けて突っ立っている。理子はそんなこと気にせず俺の袖を持ち歩き始めた。
「ワンピの話に戻るけどさ、やっぱ理子もガープ好きだな〜!『なんでワシの言うことを聞かなんだ!』ってセリフ、いいよねー!」
そして何事もなかったかのようにワンピの話を続ける理子。俺は思わずモブを見る。と、モブは俺たちの前に走り込み
「ちょ、ちょっと待てよ!なんで!?なんで俺じゃなくてそいつの方なんだよ!そいつは俺に1発KOで負けるくらいのザコなんだぞ!?そんな奴に理…峰さんが親しくする意味なんてーー」
「もういい加減その口閉じろよ。終いには殴るぞ」
わけがわからないといった感じでわたわたとパニクるモブに、今度は冷めた目で、本当の素でキレる理子。こ、こわっ!?ほんと怖いんですけどなんなんどしたの理子?
理子は俺の裾から手を離し、モブを見た。
「あのな、私はそんなくだらない結果で友達選んでないんだよ。というか、知り合いを悪く言う奴と仲良く出来るわけないだろ。…もーさ、本気で邪魔だからどっか行ってくんない?」
もうあざといキャラとか、学校での笑顔とか、そういうものがなにもない、ただただ怖い理子がそこにいた。…え、本当にどうしたんだ?
その理子らしくない発言に口をパクパクし始めたモブ。ついには
俺に対してキレてきた。
「お、お前岡崎!一体峰さんになにしやがったんだ!!お前がなんか弱み握ってんだろ!そうじゃなきゃ、お前なんかに…!あ、あの黒髪の一年だってそうなんだろ!きっとなにか弱みをーー」
「あら?私、弱みなんて教えてないけど?」
「ーーっ!?」
叫び始めたモブの返しは、透き通った綺麗な声だった。・・って
「…はぁ、なんでお前までここにいんだよ?お前のホテル真逆だろうが」
「理子の家でワンピース見てたのよ。理子が見たいって言うから徹夜で」
そこには確かに眠そうにしている夾竹桃が立っていた。…また面倒になるぞ。
うんざりする俺の隣まで夾竹桃は歩いてくると、モブを見る。
「これ、誰?」
「さあ?しゅーちゃんの悪口言い始めてからからあんま聞いてなーい」
「…そう。じゃあ適当にモブと呼ばせてもらうわよ。漫画の隅にいそうだし」
合ってる、それで合ってるよ夾竹桃さん。
「あのね、私や理子が弱み握られてこの男と親しくしているわけではないわ。むしろ私たちが弱みを握ってるくらい。変に勘違いして、私を困らせないでね?」
夾竹桃は怯えるモブに冷たく言い放った。…というか俺の弱み持ってんのこいつら…怖いんだけど。すごく怖いんだけど!?
モブも可哀想だな。狙っていた2人からこんな仕打ちされたら俺だったら泣くね。泣いて学校来なくなるね。男として同情してしまった俺はーー
「い、言い過ぎだぞ夾竹桃。こいつ、お前のことタイプだって言ってたんだから、少しは優しくしてやれよ…」
「………。私、男女の関係に全く興味ないの。…まあ仮にあってもモブとは無理よ。絶対」
「理子も無理ー!こんな器の小さい男範囲外だよー!」
フォローするつもりがむしろアタックフォローをしてしまったようだ。しかもダブル。
夾竹桃は返答する前になぜかこっちをジロッと見てきたのが怖かったし、理子は理子でバッサリだ。
やばい、この2人怒らせたら死人でるぞマジで。だって見てよ、もうモブ涙目、鼻水ダラダラだ。…ああ本気で可哀想になってきたな。周りの目線であまり話せないというか話したくないが…。
「お、おい、お前らそこまでにー」
「く、くっそ!なら2人に教えてやるよ!こいつの残虐な部分をよぉ!!」
2人を落ち着かせようとしたら、パニックになったモブはスマホを取り出し、Twitterのとあるつぶやきを見せてきた。
『2年 強襲科 Eランク 岡崎修一は1年の女子生徒を暴行するような鬼畜なクズだった!?女子生徒は病院で治療を受けており、全身に打撲痕が見られーー』
ああ、火野と対決したときの話だなこれ。女子生徒の方は名前が伏せられているが間違いない。うわ、文章で書かれると俺本当酷いことしたって分かるんだな。…確かにこれ俺酷いわ。
「いいか!これは事実なんだよ!そこにいるクズは、女子生徒に暴行するような鬼畜なクズで、しかも最下位なんだぞ!!」
「「………それで?」」
「はぁ!?」
モブが指差しながら俺のクズさをアピールしてくれるが、言ってること間違ってないんだよなコレ。確かにこれ見て仲良くしようなんて思わないわな。
と思う俺に対して2人はこてんと首を傾げるだけ。その反応に驚くモブ。うん、これはモブが正しい。
「理子たちそれ知ってるし〜」
「…別に、解決したなら今の岡崎には関係ないと思うけど」
フラットな感じで返す2人にもう、モブはもう限界そうだ。
や、やばい、この2人強すぎるよ…これからこいつらがキレたら一番に謝ろうそうしよう。
「…く、くぅ、お、お前らはその女子生徒の気持ちを知らないからそんなことが言えるんだよ!!この女子は俺の知り合いなんだよ!CVRの1年で、桃色の髪でちっちゃくて可愛くて、おとなしい子なんだぞ!その子がいきなりそいつに暴力振るわれて、病室にいる時も『痛い…痛いよ』って泣いてたんだ!!そ、その気持ちが分からないのかよ!!」
うん、これ、完全にウソだね。周りの目線が気になって返答できないけど。まあ2人も知ってるし問題ないか。というかモブすごいな、よくもまあこんな話をすぐに言えるもんだ。知らずに聞いてたら泣いてたかも。
「…ねえ理子、あれ」
「ん?…ありゃりゃ」
夾竹桃が何かに気づいて左のほうを指差した。理子も見てあははと笑っている。あんまり周りを見たくないのだが、ちらっとだけ見るとー
「ちわっす。理子先輩、岡崎先輩。…あと、夾竹桃も」
「おはようございます、ですの!皆様方!」
2人を見てあちゃーっと理子と同じ表情になった。そこにいたのは金髪のお二人様。…つまり
「で、モブ。あなたが見せたTwitterの話の女子生徒が来たけど、知り合いなのよね?」
「へ?お、お前…!火野ライカ!?」
そう、女子生徒=火野ライカ本人と、島麒麟だった。うわうわ。怖い怖い怖い…。
「ああ、聞いてました。こいつのクソ話ですよね。あたし、CVRじゃなくて強襲科Bランクなんですけどね」
「というより、CVRにそんな生徒いないんですの。夢の見過ぎですのよ」
「う、嘘だ!そ、そっちの小っちゃいのが女子生徒なんだろ!?それを岡崎がーー」
「だから違いますって。あたしですよあたし。私火野ライカがその女子生徒なんですってば。証人は麒麟…は寝てたから、あいつらで」
火野指差した方向を見ると、間宮と佐々木がいた。2人もこちらに近づいてきて頷いている。
「そうだよ!ライカがこのEランクの岡崎先輩に負けたんだよ!!」
「ですです!あかりちゃんの言う通りです!」
これで、火野の言葉が正しいとなった。言いすぎた間宮が頬を引っ張られているが。これで岡崎修一は火野ライカに勝ったと信用されたかな。…いや、あれは勝ったとわけじゃないと思うんだけど。接近戦だったし。
『まじ、あの女子生徒って火野なの!?』
『え、どゆこと??岡崎が火野を倒したってこと!?ありえねえ、俺まえ火野にボコボコにされたぞ!?』
『でも本人がそう言ってるし…』
『というか、あいつ作り話を大声で言ったってこと?うわー恥ずかしww』
『CVRの知り合いとかいないくせによwww』
『はいTwitter投稿〜!』
周りがザワザワし始め、モブが一歩下がる。
「まだ言いたいことがあるなら言ってもいいわよ?聞いてあげるわ」
「えー!?きょーちゃんやっさしー!理子もうヤダ、面白くな〜い」
「なんだったらあたしが殴り飛ばしましょうか?結構飛びそうだし」
「いえ、ライカお姉様の手を煩わせるわけには、ここは麒麟がこの綺麗になったジョナサン3号でーー」
「えー、じゃあ理子も昨日ぶりの格闘を見せてあげよっか〜!?」
「そんなことしたらまた問題になるわよ、ここは私に任せて。毒は周りに気付かれにくいことが良点なんだから」
「ひっ、ひいいいいいいいいいい!?!?」
「ちょいちょい、落ち着けお前ら!怖いから、本気で怖いから!」
敵意を出しモブに近づき始めた4人を、俺は間宮たちと慌てて止めに入る。
さ、流石武偵高校の生徒、一瞬で戦いに発展するとこだった…!というか相手は1人だぞ!?お前らは大人気ないわ!!
なんとか落ち着かせることに成功し、モブの方を見ると、もう顔面ぐしゃぐしゃに泣き崩れていた。…怖かったんだね、わかる、わかるよ。俺もそっち側だったらそんな感じになってると思う。何度も言うけど怖いよこの4人…!
そして、モブはもう泣きじゃくった顔を見られたくなかったのか
「も、もうなんなんだよお前ぇ、こんな、こんな、美人共に守られてぇ…うわ、うわああああああああああん!!!!」
と捨て台詞を吐いて逃げていった。
というか美人共って、まあ確かにこいつら顔はいいけどさ、内容が嫌だよ。…お前男子に対して女に守られてるとかいうなし。事実だから余計に泣けてくるわ。
近くにいるそれぞれの顔を見る。
そもそも、なんで目立っていた俺の元に来たんだ。しかもわざわざ目立ちに来るような感じで…。
「お前ら、助かったけど、なんでこんなことしたんだお前らまでなんか言われるかもしれないんだぞ?」
「別にいいっすよ。なんと言われても」
ニカっと笑い火野がそう言いながら歩き出す。
…おいおいまさかこれって…
「気にしなくていいと思いますよ。皆、それぞれがやりたいことをしただけですし」
「そーそー!私もライカも、みんなね!」
俺の後ろにいた佐々木と間宮がそう言ってライカの後を追っていく。…あれ、何気に佐々木と話したのって初めてじゃない?間宮もなんか普通に話してくれてるし。あれ、これはわからんぞ?
「今回は特別に、許して差し上げますの!特別ですのよ!」
「え、なに、なにが?」
また疑問が増えた。島がよくわかんないことを言って俺の方へ指差すと、行ってしまう。え、特別?
「なあ、もしかしてこれって…」
「さーてね」
「どうかしら」
俺は両隣に残っている2人にあいつらなりの『あれ』なのかと聞くが知らないと…嘘つけ。
「まーしゅーちゃんがそう思うならそれでいいんじゃないかな!みんなもそう思ってもらえたら嬉しいだろうし」
「………そっか」
「まあ、これからあなたはあの子達と普通に話してもいいってことよ。良かったじゃない」
「…それは、嬉しいな」
まだ聞こえるヒソヒソ声が聞き取れてしまうほど外に集中してるはずなのに、高鳴る心臓の音がはっきり自分で聞き取れた。
「そんなことより、学校行こ?しゅーちゃん!」
「ちょっと走らないと遅れるわね」
「うああ、やっば!夾ちゃん、ダッシュ!」
「え、ちょ、おいてくなよ!」
さっきまですぐ近くにいたのに2人が走り出してしまった。俺も慌てて追いかけていく。
「くふ、しゅーちゃんはやくー!本当に置いてっちゃうよ〜!」
「え、お前ら速っ!?」
俺はとりあえず2人を追って走り出す。その2人の背中を見るだけで、俺は嬉しくなる。
楽しいな、なんか。
最高に気持ちが良い。それだけは理解していた。
そしてその感情は、思い出したように走り出した一年組と前を走る二人が感じさせてくれたのだと。
思わずにやけてしまう。一年前だったら人にこんな風に思う事なんてなかっただろう。
「………ありがと」
誰にも聞こえないくらいの声で、思わず出た言葉は、俺の心からの感謝の言葉だった。
授業には遅れた、俺だけ。あいつら本当に置いて行きやがって…やっぱあいつら性格悪いわ!
【外伝 「VSランク」 終】
楽しそうだなあ修一。うらやましいなあ。はい感想以上です(笑)!
内容についての質問返答です!どうぞ
*少し省略している場合がありますがご了承ください。
(質問1)
Q 御月さんより
戦闘狂なのに上がり症?それっておかしくないでしょうか。人の目が気になって戦えないんじゃあ、戦闘狂ではないですよね。興奮してると視界が狭まって戦うやつ以外目に入らなくなるとかですか?
A 戦闘狂の話ですが、苦手だけど好きというということよくあると思います。
例えば人前で歌うのが苦手だけど歌を歌うことは好きな人など、沢山いると思います。今回の修一の場合ですと『人前で対決するのは苦手だけど自分の腕は磨きたい戦いたい』という性格になります。興奮して〜などではないのでご安心を。
ただ確かにこの修一を戦闘狂と言うのは少しおかしな気はしますね。
ではそこは感想欄での『興奮している状態の修一の総称』ということでお願いします。
(質問2)
Q 御月さんより
戦闘狂、上がり症、たらし、馬鹿、機械音痴、自己犠牲。多分まだありますよね。
Eランクは徹底するんですね。だから無理矢理ねじ込んだ感じですか?んー、でもこうなるのが分かってるんだから、普通試験受けないんじゃないですか?毎回こうなら、ちょっとやそっとじゃ治らないでしょ?
A
試験の話ですが、今回は二年生で初めての試験になります。つまり『アリアに励まされて初めての試験』です。
始業式前までは辞める寸前まで悩んだ自分が、理子や夾竹桃などの助けもありつつではありますが強敵達と渡り合ってきました。
そこで『あれ?もしかして俺強いんじゃない?』と思ってもしょうがないと思いませんか?
もちろん本人もあがり症のことは分かっていますが、もしかしたら成長してるかもなという気持ちがあり試験を受けたと思ってもらえれば問題ないと思います。
(質問3)
Q とぅいんとぅいん さんより
麒麟のもってるぬいぐるみの名前が少しづつ変わってるのには何か理由があるのでしょうか?
推論までは持てても確証が持てれないので、理由を是非教えていただきたいです。
A
確かにあれは意図的に変えています。ただ深い意味はないんです。修一がその場その場で適当に考えてつけているので、前に言った言葉を覚えていないというだけなんです。アホなので。
以上になります。どしどし応募していますのでよろしくお願いしますね!!