サイカイのやりかた【38話完結】   作:あまやけ

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「2のあらすじ」
食堂で落としたぬいぐるみは本当は修一のではなく島麒麟のものである事がバレてしまった。1人で歩く島麒麟を不良三人が取り囲む。

その様子を遠目で見る1人の男が…?


3 VSランク ③ 「違うよしゅーちゃん」

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

Kirin side 〜16時35分 食堂と第一体育館の隙間より〜

 

「・・っ!!」

 

「おっとぉ。逃がさないよ。ねえ、そのぬいぐるみの事について教えてくれない?」

 

ライカお姉様の飲み物を買い、ちょっとだけあの方を探して周辺を歩いたのがダメだった。まさか、まだこの辺りにいたなんて・・っ!

 

私は先ほど食堂で一騒動あったあの不良3人に囲まれてしまっていた。場所は食堂と第一体育館の間の狭い通路。基本誰もそんな場所は通らないから周りに人はいなかった。・・本当にマズイですの!

 

今も隙を見て逃げ出そうとしたが、男3人に敵うはずがない。壁に追いやられ、逃げ場を失う。

 

「こ、このぬいぐるみななんなんですの!?あなた達が欲しいものは入ってませんですの!」

 

「いやそんなこと聞いてるんじゃねーよ。お前は、それをいつから持ってたんだって聞いてんだよ!」

 

男の声に思わずビクッと驚く・・フリをする。正直そこまで怖くは無いのだが、余裕な表情を見せると何されるかわからない。ここは大人しく従うふりをして携帯で助けをーー

 

「おい、携帯を取れ。仲間に連絡を取られると面倒だ」

 

「・・!」

 

2人の不良の後ろでタバコを吸っている男が私の携帯を取ってしまった。・・くう、これでは・。

 

周りをチラと見てもあるのはただ食堂と第一体育館。食堂の中には人がまだ多くいるが、出入り口はこちらの真逆、第一体育館もいまは何も使われていないようで人の気配が無い。・・どうしたら。

 

「で?そのぬいぐるみ。お前が落としたものだったのか?」

 

「・・・・。」

 

「ああ!?どーなんだよ!早く言えやコラ!」

 

バンッ!と私の後ろの壁を思いっきり叩く。それには本当にビクッとしてしまったがその間になんと答えるべきか考える時間ができた。

 

もしここで「ずっと私の物ですの!」と言えば、不良3人はあの方が私を庇ったと分かり私に何かしてくるかもしれない。それはいまの状況だとかなりマズイ。

 

逆に「いえ、今日貰った物ですの!」と言えば、不良3人は間違った恥をあの方に打つけに行くかもしれない。・・そもそも信用されないかもしれないが、そこはCVRの腕の見せどころ。やるなら徹底的に信用させる。それでどうなるか。・・考えたく無い。

 

手に持ったジョナサン3号を見る。顔が汚れてしまって、ブサイクな顔をしている。・・が、今手元にあるのは・・誰のおかげ?

 

 

・・そう、ですわよね。

 

私はギュッと手に持ったジョナサンを抱きしめ、

 

「これは!正真正銘私が昔から持っている大切なお人形なんですの!あなたの足に落としたものは、私のコレでしてよ!」

 

思いっきり叫んでやった。先ほどまであったモヤモヤした気持ちが少しスッキリしたように感じた。そう、確かにこれで、あの方のやったことは全て無駄になってしまった。でも、私は、麒麟は、後悔していない。

 

あの方が、全て背負う必要なんて、全く無いんですの!!

 

「・・・そうか」

 

「く、来るなら来なさいですの。返り討ちにーーぅう!?」

 

理子お姉様に教えてもらった構えをしようとしたが、構えるより早く私は蹴られていた。痛みで思わずジョナサンを落とし、お腹を抱え座り込んでしまう。・・ほ、本当に蹴ってきたんですの・・!

 

正直殴られることは無いと思っていた。しかし外見が幼い私を殴ることな一切ためらいがない。

 

「なあ、俺マジで痛かったんだけど?なあ、どうしてくれんの?」

 

「・・・う・・うぅ・・」

 

痛みを堪えるふりをしながら次にするべきことを考える。・・い、一体どうすれば・・!!

 

「なあおい、聞かないならもう1発いくぞ??」

 

「き、聞いてます!聞いてますですの!!」

 

流石にもう1発はマズイ・・!慌てて立ち上がり、その不良と目を合わせる。やはりその男に躊躇はなさそうだ。・・くっ!

 

「な、なにをすればいいんですの・・!?」

 

「そうだなぁ・・んじゃあまず服を脱ーー」

 

「黙れ。お前らは下がってろ」

 

横の1人が何かを言おうと(内容がゲスすぎて聞きたくなかった)していたが、真ん中の男が肩を押す。

 

「明日までに5万、持ってこい。それで今回のことはチャラだ」

 

「ご、5万!?どうしてそんな大金を…!?」

 

「別に持ってこないならそれでいい。その代わりお前を庇ったあの男、本気で潰すぞ。もっと酷え内容をSNSで投稿するだけで、あいつは終わりだ」

 

「げ、ゲスなことを・・っ!」

 

「あ、須藤さん!じゃあ今日岡崎といたあの黒髪の女も襲いましょうぜ!あの子タイプなんすわ!」

 

「ああ?・・好きにしろよ」

 

「え、まじスカ!?じゃあ俺金髪の峰 理子って女ーー」

 

「はっ、理子お姉様に手を出す?無理ですわよ。お姉様はあなた方みたいな方に何かされるほど弱くなーーうっ!?」

 

またお腹に1発入れられてしまう。・・い、痛い。流石にもう、無理ですの・・っ!!

 

「それもこれもお前がちゃんと金を払えば起こらないことなんだよ。いいから明日までに金もってこい。分かったな?」

 

・・ここは、しょうがない、ですわ。これ以上は体が持ちませんし、ここは頷くしかありませんわね。・・その後でライカお姉様と理子お姉様に助けを求めることが今できることで『一番いいやり方』ですわ。

 

 

 

そう思い、顔を上げ不良の顔を見て、気づく。しまった。これは逃げの一手だ。

 

 

 

他人に頼るだけ、それしかできない自分がそこにいた。

 

こんなことになったのは、全て私が悪いのに。

あそこの机にジョナサンを置いたのも私、不良に怯えて思わず隠れてしまったのも私、あの方が守ってくれたのになにもできなかったのも私、その後あの方になにも言えなかったのも私、ジョナサンを持ち歩いてしまったのも私だ。

 

そんな私が、誰かに助けてもらおう?都合が良すぎる。もちろんライカお姉様や理子お姉様、間宮様方はお優しいから、私が頼れば全力で助けてくれるだろう。まるで自分のことのように心配してくれるだろう。

 

でもそれは、本来関わらなくていいことなんだ。もしそれで怪我したらそれは、「麒麟と関わったからこそ付けてしまった傷」ということになってしまう。

 

実際、それであの方は酷く傷つけられてしまった。

 

ひどく後悔している。私は今日、他人に迷惑しかかけていない。どうしようもなかったと自分で励ますようなことをしてしまった私は許してもらえないかもしれない。

それをお金で解決できるなら・・。そっちのほうがいいのかもしれません、ですの。

 

他人に頼るのは、もう、辞めたい。

 

 

「わ、わかりましたわ。明日5万を持ってきーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前5万持ってんの?じゃさ、俺しゃぶしゃぶ食べたい」

 

 

ゴンッ!と音が響く。

 

言葉の途中で誰かが割り込んできた。顔を上げて見てしまった。

その方はタバコを吸っていた男の後ろ頭を鷲掴みにして私の横の壁に叩きつけた。

 

 

「あのさ、ついでに理子にパフェ奢ってやってくんね?俺マジで金持ってないのよ?」

 

そして驚く私と残りの不良2人が驚いて固まってしまっている中、空気を読まないで年下にお金を要求している方が1人。

 

私は思わず指差して叫んでしまった。

 

 

「ど、どうしてまた現れるんですの!?

 

 

岡崎、修一!!」

 

「なんでって、まあ、なんだろな、金のためかな・・理子あたりからガッポリと・・」

 

先ほどから話が全く噛み合ってないが、確かにそこにいたのは岡崎修一だった。今もまだ不良の頭を壁に擦り続けている。

 

「て、てめえ岡崎っ!須藤さんになにしてやがんだ!」

 

「いつまで人の頭持ってやがんだコラァ!!」

 

流石の不良も状況を理解したのか岡崎に殴りにかかる。岡崎は見て眼を細めるとそれを回避ーー

 

 

しなかった。

 

「・・ぐっ!」

 

顔とお腹に1発ずつ拳が突き刺さる。耐えきれなかった岡崎は後ろに倒れこんでしまった。

 

「岡崎ぃ、一体何しに来やがったんだ、あ?お前がこいつを庇ったのはもう分かってんだよ、邪魔すんじゃねえ殺すぞ?」

 

上半身を起こし、殴られた顔を摩る先輩に、須藤と呼ばれた不良が本気で怒っている。これは流石の先輩もマズイんじゃ・・

 

「あ?なんの話だよ?ぬいぐるみなら俺が趣味で持ってきてたって言ってんだろ?」

 

「もうその嘘はバレてんだっつの。あのガキが自分でやったって認めたんだからよ!」

 

「・・はぁ」

 

不良の言葉に岡崎はため息をつくと、私の方へと歩いて来て

 

ポンと頭に手を置いてきた。・・えっ?

 

「ったく。インターンのくせに変に先輩を()()ような真似してんじゃねーよバカ。早死にするぞ?」

 

大きな声でそう言いそのあと不良の方へ振り返る。

 

「だーから!このざーさんは元々俺のなんだって言ってんだろうが!インターンの生徒に騙されるとか馬鹿かお前らあっはは!情けねえなぁ!それでも不良気取りの馬鹿どもなのかよ!?」

 

中指を突き立てて不良を馬鹿にしだす岡崎。これには不良3人も黙っちゃいない。

 

「ああ??お前、死ぬ覚悟出来てんだろうな?」

 

「お前らごときに負ける気がしねーな。あ、その前にー」

 

またこちらを向く先輩

 

「お前さ、邪魔だから帰ってくんない?あいつらが〜負けそーになった時に人質とかになられても迷惑だからよ」

 

そう言い、私の肩を強く押す先輩。その強さに少し驚いたが

 

これは、仲間を呼んでこいということだろうか。近くにはライカお姉様が学食に、理子お姉様もまだ遠くへ行っていないはず。皆さんを呼んでこいと、そういうことですのね。

 

つまりそれは、今の麒麟では使い物にならないと、そういうことだ。

 

 

また、守られてる。そう思うが、だからと言って今私がいても先輩の言う通りになるかもしれない。・・私に出来ることは。

 

「分かりましたわ・・・」

 

自分の弱さに歯噛みしながら、私は走り出した。

 

 

目的の食堂はすぐそこだ。

 

ーーーーーーーー

 

 

『・・よっしゃ、やろっか』

 

『てめえクズのくせに俺たちに勝てると本気で思ってんのか?あ?』

 

『・・・。勝てるからここにいんだろうが。あ、そういやお前らさ、さっきなんか夾竹桃と理子のこと好きにするとか言ってたよな?』

 

『ああ?それがどうしーーがはっ!?』

 

 

 

『ふざけんな』

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

kirin side 2

 

 

 

 

 

「ダメよ。ここは通せないわ」

 

「な、なんでまたお前が邪魔するんだ!退けよ!」

 

ライカお姉様が目の前の「敵」に怒鳴る。そこは食堂から出てすぐ、先輩が「今も殴られ続けている先輩が見える」場所だった。

 

すぐさまライカお姉様に助けを頼み、裏まで走り出したその間約5分。その間になぜか私たちの敵が立っていた。

 

「ど、どうして邪魔するんですの!私達は岡崎先輩を助けたいんですのよ!?貴方仲間なのでしょう、夾竹桃!!」

 

そう、目の前で腕を組み壁に背中を預け、私たちが先輩の元へ行くのを遮っていたのは、あの方の仲間であるはずの夾竹桃だった。ど、どうして・・

 

「私もこんな立ち回りばかりで嫌なんだけど、しょうがないじゃない。これが『岡崎にとって一番いい方法』なんだから。手伝えって言われたらやるわよ」

 

「・・・は?何言ってんだよ?『一番いい方法』なら私たち3人が岡崎先輩に助太刀して不良どもをぶっ飛ばしてしまえばいいだろうが!」

 

私もお姉様も、夾竹桃の言っている意味が理解できなかった。夾竹桃の言い方はあの方の味方そのもの。なのに、ならどうしてそれを助けようとするのを止めるのか。・・わからない。

 

今もあの方は先の道で殴られ続けている。何発かは反撃できているようだが、それでも人数差が不利に働き、かなり押されてしまっている。

 

早く夾竹桃を退かして助太刀に行かないと、負けてしまうだろう。

 

「・・まだ分かってないの?今貴方たちが飛び込んで行って、あのバカどもをぶっ飛ばしても、岡崎は喜ばないわよ」

 

「なんでだよ!さっきから意味わかんねえことばっかり!あんなにボコボコにされてんだぞ!助けない方が喜ぶわけないだろ!」

 

「・・岡崎が今日貴方たちにしたことをもう一度振り返ってみなさい。そしてその意味も。そうしたらきっと気づけるはずよ」

 

振り返る・・?

夾竹桃の言葉に疑問しか残っていない私たちは先輩の行動を振り返った。先輩は、夾竹桃との対決で私を眠らせ、ライカお姉様に暴力を振るった。今日は食堂で私が落としてしまったことで起きた揉め事を自分のせいにして被害なく終わらせた。そして今、私に仲間を呼びに行かせる間の時間稼ぎで攻防を繰り広げ・・?

 

あれ?と疑問が湧いた。

 

「・・ライカお姉様を1人で倒せるのなら、あんな不良達なんて・・」

 

「そう、岡崎なら簡単でしょうね。でもしない、むしろ相手の拳を()()()()()()()()。どういうことかしらね?」

 

「・・昼にあたしがあいつらに挑もうとしたら止められた。・・先輩は私たちに敵意が来させないようにしていた・・?」

 

先ほどより落ち着いたライカお姉様が、私と同じ考えにたどり着く。そして

 

「そう、岡崎の『一番いい方法』ってのは『自分1人に敵意を集めて、周りに被害を与えないこと』。

今岡崎があの不良達を倒したのを誰かが見たりでもしたら()()()()()()()()()()()と流れてしまう。もしそうなったら彼らはどうすると思う?」

 

 

 

『別に持ってこないならそれでいい。その代わりお前を庇ったあの男、本気で潰すぞ。もっと酷え内容をSNSで投稿するだけで、あいつは終わりだ』

 

 

 

 

先ほど私を脅していたときのことを思いだす。彼らは本人に直接何かするよりも、その友人や恩のある人間に被害を与えようとする。それをそのまま考えれば・・・

 

「つ、つまり今、先輩は・・」

 

「私達を護ってる・・!?」

 

 

完全に護られている。私を邪魔だと言って逃がしたのもライカお姉様を呼ばせるためじゃなく、私に敵意を向けさせないため・・。麒麟は、岡崎修一という最下位で、最も嫌っていた相手に護られていた。

 

 

「そう、だから行かせられないの。行ったって彼らの敵意が貴方達に分散するだけ。それを彼は望んでいないわ」

 

夾竹桃の言い分は理解できた。

 

「でも、お前はそれでいいのか!?お前にとって先輩はそんな簡単に割り切れる奴なのかよ!?殴られ続ける奴を、そうやってただ見てるなんて、心痛まねえのかよ!」

 

納得できないライカお姉様が夾竹桃に怒鳴る。確かに夾竹桃の言い分をまとめれば『あの方がしたいのならあの方自身が傷ついてもいい』ということだ。それはあまりにも酷い話ではないだろうか。

 

そう思う・・思う、けど

 

「・・別に。貴方達忘れてるかもしれないけど、私は元『イ・ウー』のメンバーよ。知り合いが傷つくくらいで何も動じるわけないでしょ?」

 

本当に、それは彼女の本心?そう、思わずにいられない。何かが引っかかる。・・なんだ?

 

「ちっ、やっぱお前を好きにはなれなさそうだぜ!」

 

「奇遇ね。私もよ」

 

その時、その引っかかっていた部分に気づく。そうか、これか。

 

夾竹桃の腕。胸元で組まれた腕から見える手。

 

その手が

 

 

ギュッ

 

と強く自分の腕を強く握っていたのだ。

 

それはかなり強く、しわができてしまっているほどに。

 

そこがわかると次々と異変に気付く。

 

無表情な顔の奥で奥歯を噛み締めていたり、ライカお姉様が睨んで怒鳴っているのに、チラチラと奥を気にしていたり、奥で倒れてしまった先輩を気にして少しだけ口が開いてしまっていたり。

 

つまり夾竹桃も、心配で心配で仕方がないんだ。口では彼の気持ちを優先するなんて言いながら、気になって仕方がないといった感じに見える。

 

 

そう考えると、夾竹桃の気持ちも少しずつ理解できてきた。夾竹桃も飛び込んであの方を救いたいんだろう。でもそれは望まれていないこと。だから自分に出来ること、考えに気づいていない私達を邪魔する。

 

・・・。

 

「もういい!麒麟、こいつ退かして岡崎先輩を助けに行くぞ!」

 

ライカお姉様は手元からトンファーを取り出した。夾竹桃との考え方とは逆に考えたようだ。

 

・・・・。・・・。

 

「分からず屋。・・いいわ、少しだけ相手にーー」

 

「お姉様。ここは落ち着きましょうですの」

 

今にも飛び出しそうなお姉様の裾を持ち、動きを止めた。それにはお姉様だけでなく夾竹桃も驚いている。

 

「・・なっ!?なんでだよ麒麟!お前もあいつと同じ考えなのか!?」

 

お姉様は裏切られたとでも思ったのか少しだけ涙目になっている。私からその言葉がでるとは思っていなかったのだろう。でも・・

 

「違いますわ。でも、麒麟達だけで夾竹桃を倒せるとは思えませんですの」

 

そもそもこの話は夾竹桃が止めると言った以上、その時点で止まることしかできないのだ。私達2人と、夾竹桃では戦力が違いすぎる・・。いくらライカお姉様でも夾竹桃に勝つには至難の技だろう。それに

 

「あの方の気持ちを優先するなら、貴方も戦う気はないのでしょう?『私達が傷つくことがあの方が一番望まないこと』なのですから」

 

「・・・そうね」

 

「だからって!!」

 

私たちがここで争ってもそれはあの方にとって全く望んでいないこと。もちろんお姉様の言い分もわかる。だからと言ってこのままでいいわけじゃない。・・じゃないが。

 

だからって

 

 

「麒麟たちには・・・どうすることもできないんですの」

 

「「・・・」」

 

私の言葉に2人とも黙ってしまう。お姉様も頭の中では理解していたみたいだ。このまま飛び込んでいってもあの方を困らせるだけ。今私達があの方にできる一番の方法は『ただ黙って殴られ続けるあの方を見る』。それだけだった。

 

やはり私たちは弱くて、無力だ。あの方の力を借りないと、こんなことも解決できない。

 

 

 

その時、

 

 

 

()()()()()()()()が、私たちの横を通り過ぎた。

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

「ぐっ、・・・はぁ・・はぁ・・うっ!」

 

腹を蹴られ思わず蹲る俺の顔に、さらにもう1発蹴りが入る。耐えられなかった俺は地面に倒れこんでしまう。

 

 

「おいおい、さっきの元気はどーしたよぉ?俺たちを殺すんじゃ無かったのか?」

 

もちろんニヤニヤと笑う不良共は俺を倒れたままにしておくわけがなく、髪を掴まれ持ち上げられると、鳩尾に拳を突き立てる。

肺から全ての酸素が漏れ、唾が飛ぶ。その瞬間、横から更に拳が俺の顔を殴り飛ばす。

受け身を取れなかった俺は顔から地面に倒れた。目がチカチカして、目の動きがおかしくなる。流石に限界に近い。

だが、それでも不良達は殴ることをやめない。怒りに満ちた顔でまた迫ってくる。

 

右、左、前、鳩尾、腕、足、顔面、右・・・

 

次から次へと襲いかかる暴力に、体が言うことをきかなくなり始めた。最後に後ろ頭を掴まれ、壁に叩きつけられる。

 

「・・・っ!」

 

鼻血の赤がまるで筆で書かれたように引かれている。ああ痛いな・・痛い。そろそろ、そろそろいいだろうか。もう体も限界だし、

 

 

あいつも逃げ切ったようだし、この辺りで終わらせたい。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「おい、まだまだ続くんだからヘコタレんなよ?」

 

・・くっそ。流石にこれ以上やられると体がやばい・・。

ここはまた土下座でもして、許してもらうしかないか・・。

 

 

 

そう感じた瞬間だった。

 

 

 

 

「とーう。理子ちゃんキーック!」

 

 

 

 

 

「ぐはぁっ!?」

 

突然須藤と呼ばれた男が先の方へ飛んでいった。そしてその場所には代わりに1人の女子生徒が。というより、見知った顔だった。

 

「ほい、ほいっと!・・やっほ、しゅーちゃん!うっわー痛そー」

 

「・・り、理子?」

 

そう、そこにいたのは『一番いいやり方』で絶対に傷ついてはいけない人の1人、峰理子だった。理子は両隣にいた不良に蹴りを入れて吹っ飛ばすと俺の傷を見る。

 

俺は驚いて目を見開き、理子を見た。こいつは、俺の考えをわかってると思ったんだが・・!

 

「お前、なんで出てきたんだ・・!これじゃあ・・」

 

こいつまで、不良たちの標的に・・っ!

 

「ねぇ、しゅーちゃん。理子、怒ってるんだよ?」

 

「・・え?」

 

理子は俺の言葉に返すことなく、そう言ってきた。

 

「『修一が傷つくようなやり方をしてほしくない』って何度も言ったはずだよ。キンジの時だって、ジャンヌの時だって。なのにまたそんなことしてさ」

 

そうだ。そういえば前に理子に泣きつかれたことがあったか。俺が自分で骨を折った時。あの時どうして泣いているのかよくわからなかったが、今やっとわかった。・・でも、だからってなんで・・

 

「しゅーちゃん。理子はね・・」

 

「くっそ誰だ・・」

 

理子は話を続けようとしたが、右に1人だけ飛ばされた不良が起き上がろうとしているのを見て立ち上がった。

 

「後でお説教続けるからね。今は寝てて」

 

「ちっ。お前峰理子だな!てめえ俺たちが誰だかーー」

 

「うるせーんだよクソが!修一をこんなにしたお前らが生きて帰れると思うんじゃねーぞ!」

 

「・・おーい素が出てるよ理子さん」

 

顔に似合わない言葉に不良さん達がビビってしまっている。確かにこの可愛らしい顔でそれ言われたらビビりますわな。

 

「お前ら3人くらいあたし1人で余裕なんだよ。早く来い、理子今ちょーぷんぷんがおーなんだから。死んでもしらないよ!」

 

確かに。理子なら楽勝だろうが、本当に殺すなよ・・!?冗談だよな?な?

 

「ちっ、調子にのるんじゃねーよ!お前なんか須藤さんが1発でーー」

 

 

 

 

「その須藤ってのはこいつのことかしら?」

 

 

 

 

 

「・・ぅえ・・ぅええ・・」

 

「きょ、夾竹桃!?お前までなんで・・!!」

 

不良が指差した先にいたのは。倒れてピクピクしている残念須藤さんとやれやれと言った顔をした夾竹桃だった。・・おいおい、なんでお前まで出てくるんだよ・・!!

 

それを見た理子がニヤッと笑う。

 

「あれ?大人しく見てるだけじゃなかったの?」

 

「見てるつもりだったわよ。でもあなたが飛び出したら見てる意味ないじゃない。ああ岡崎安心して、あの子達はちゃんとお留守番してるから」

 

「・・いや、でもよ・・」

 

俺が何か言う前に、もう1人の不良が立ち上がり須藤を見る。

 

「お、お前ら須藤さんを・・なんてことしやがんだこの野郎!」

 

「それはこっちのセリフだよ。よくもまあ無抵抗な修一にここまでしてくれたよね」

 

「あなた達、とりあえず3日は苦しんでもらうから」

 

「ちっ、ふざけんなああああ!!」

 

 

 

 

 

それから約3分でピクピク人間が三体完成した。・・いや、強すぎるわお二人さん。

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

「さってと、はいしゅーちゃん正座」

 

「・・嘘だろ」

 

日も暮れてしまい、暗くなった食堂で俺は正座を指示されていた。そこにはなぜか火野ライカと島麒麟もいる。いや待って待って・・

 

「俺なにも悪いことは・・」

 

「したよ」

 

キッパリと言い放つ理子。俺は思わず「すんません」と謝ってしまった。だが、

 

「あのさーしゅーちゃん。理子が何に怒ってるかちゃんとわかってる?」

 

「正直サッパリだ。俺はお前に何もした覚えはー」

 

「そう、そこだよしゅーちゃん」

 

「・・なにがだよ?」

 

リコの言いたいことが全く理解できていない。なにが言いたいんだ??

 

「しゅーちゃんはさ、自分の事よくわかってないんだよ。自分のことと、相手が自分にどう感じているかも。みんなしゅーちゃんが思ってる以上にあなたを、大切に思ってる。アリアなんて今日受験生ほぼ全員にキレちゃったんだから」

 

「・・は?」

 

ーーーーーーーー

 

 

13時10分 第一体育館

 

『黙りなさい!』

 

未だ笑いの絶えない体育館に1発の銃声が唸る。そして喜んでいた門武と呼ばれた生徒が吹き飛んだ。なにが起こったのかわからない生徒達はただ、その音がなった方を見る。そこは試験フィールド内、中央からだった。

 

そこにいるのは、ピンク髪のSランク武偵。

 

『あんたたちに、修一のなにがわかんのよ!あんたたちは笑えるほど修一の努力を知ってるの!?唯一あたしに何度も挑んでくるような武偵なのよ!それを、あんたちみたいな人をバカにするだけの生徒が笑ってもいいって本気で思ってるの!?ダメに決まってるでしょ!

あいつは私が認めた優秀な武偵なの!

笑ってる暇があるなら()()()()()()()()()()()()()()()()()!反論があるなら来なさい!相手してあげる!』

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

「・・マジかよ。あいつは・・余計なことを・・」

 

「余計なことかもしれないわね。今の岡崎が考える『一番いい終わらせ方』なら。あなたが本当にそう思うなら、私はそれでいいと思うわ」

 

そう、夾竹桃はいいって言ってくれたはずだ。俺の考えに、俺のやり方に。ただ最後はどういう意味だ?本当にそう、思うなら?俺は本当にそう思ってるだからこそー

 

「だからさ、どうしてしゅーちゃんの『一番いいやり方』の中には自分の犠牲は当たり前のように入っているのに()()()()()()ことは全く入ってないの?」

 

犠牲って・・俺は別にそんなこと考えた覚えはない。ただ、誰も傷つかないように、誰も悲しまないようにするにはって考えたらそうなるだけで・・。今回だって

 

「・・今回の場合に限ってはお前らに頼んだらあいつらお前らにまで何かしてくるかもしれねーだろ」

 

「あら。ということはあなた、私たちがあの3人に負けるくらい弱いと思っているの?」

 

「違うって。武力で解決できないこともたくさんあるだろうが。靴に画びょう入れられたり、机に落書きされたり。そんなことわざわざされる危険性があって協力してくれなんて・・」

 

「あのさーしゅーちゃん、根本的に間違ってるよね」

 

「そうね」

 

俺の言葉を遮って、理子と夾竹桃が頷く。根本的にって・・どういうことだ?

理子は俺のおでこをコツンと叩いた。

 

「あのねーしゅーちゃん、理子たちは別に

 

『修一に全部護ってもらうほど、弱くないんだよ』

 

理子だって、きょーちゃんだって、りんりんやライちゃんだってそう。みんな強いんだから。無理して全部護ってくれなくても大丈夫なんだから。まあ、優しい修一には難しいかもしれないけどね」

 

「・・・・優しくねー・・よ」

 

理子の言葉に返しながらも、俺は理子の言葉で気づいた。そうか、俺って、こいつらになにもさせないで解決するにはって無意識に考えてしまっていたのか。・・だから最終的に誰にも頼らず、俺だけを使った作戦しか立てられなかったんだ。言うならーー

 

「そろそろ、対等な関係でいいんじゃないかしら。私たちにも負担分けなさいよ」

 

そう、対等な立場。それが俺の考えにはにはいない。

 

 

・・そっか。

 

 

俺って1人で背負い込みすぎたのかな。

 

「・・なんつーか、またお前に気づかされたのが悔しいんだけど」

 

「くふ、まあしゅーちゃんのことはある程度分かってるから。・・夾竹桃もこれでいい?」

 

「ええ、問題ないわ。もう間違わないようにしてよ」

 

「ああ。・・火野も島も、その、悪かったな。変に事荒立てちまって」

 

「え、い、いやそんなことはー」

 

「・・・」

 

島はなにも言わず、ただ俺をジッと見ていた。島もなにか考えることがあるんだろう。

 

「あと、俺のこと助けようとしてくれたんだろ、サンクス」

 

「あ、・・はい・・」

 

言う事だけ言うと、俺は立ち上がって前を向く。もうなにをすればあいか決まっていた。

 

「さってと、最後に一つ、やることやってくるわ」

 

「手伝うことは?」

 

「ないな。これは完全に俺が悪いし」

 

「・・そう、じゃあしょうがないわね」

 

「おう、お前らも暗くなってるんだから早く帰れよ。あ、理子と夾竹桃は見ててくれ」

 

「うん♬」

 

「わかったわ」

 

俺は教えてくれた恩人2人と、未だ何か考え込んでる2人を見て、食堂を出た。・・多分まだいてくれるはずだ。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

『・・・ライカお姉様、佐々木様から『あかりちゃんのDランク昇進祝いのパーティをやりませんか』とメールが来てますの』

 

『・・なあ、麒麟』

 

『なんですの?』

 

『そのパーティでさ、あいつらにお願いしたいことがあるんだけど』

 

『・・私、そのお願いがなんなのか、わかる気がしますの』

 

『ほ、本当に!?』

 

『ええ恐らくーー』

 

ーーーーーーーーーー

 

 

〜実技試験会場01〜

 

「てめえ岡崎、このクソが!お前が、お前が逃げ出したりしなければ、試験に合格できたかもしれねーのによ!」

 

「・・すまん、急に怖くなっーー」

 

「お前マジでふざけんなよ!!俺は実技試験でお前に1発KOできたからCランク安全圏内だったんだぞ!?それをお前、Dランクのまんまじゃねーか!!」

 

「・・悪い」

 

俺は怒る2人にただただ頭を下げた。俺がここに戻ってきたときにはすでに試験は終わっており、少し傷が付いているメンバーが座っていた。もちろん結果は負け。人数の少なくなったこちらはかなり不利だっただろう。・・全て、俺のせい。完全に俺が悪い。

 

「このクソ崎が!お前はやっぱりクズだ!」

 

ゴッ!と俺の顔に鈍い音が響く。殴られ、地面に倒れる俺にさらにのしかかり拳を振るう。

 

「お前が、逃げ出したり、しなければ、勝てた、かも、しれない、のに!!」

 

「・・ぐっ・・す、すまん、本当に悪かーーっゲホッゲホッ!?」

 

九済は謝り続ける俺の腹を殴り言葉を出させないようにする。そして髪を持ち上げ目と目を合わせてきた。

 

「いいか、お前はクズだ。他人にまで迷惑をかける完全なクズだ。お前のせいで負けたんだ。身をもって償え」

 

「ああ・・・わかってる・・がっ!?」

 

 

それからしばらくの間、俺は殴られ続けた。中空知が何度か必死に止めようとしてくれていたが、2人の怒りが収まるのは、それから1時間が経過したあとになった。

 

 

ーーーーーーーー

 

「だ、だだだ大丈夫ですか!?す、すぐに救急箱を持ってきますから、そこで待ってて!!」

 

流石に殴り疲れた2人はどこかへと去っていき、中空知もどこかへ行ってしまった。・・俺は会場の壁にもたれかかり、息をする。・・ようやく息ができた事に嬉しく感じる。なんとか体は動くが、痛みはもちろんある。俺は顔についた血をハンカチで拭き、頭に乗せた。

 

殴られたが、心は少しスッキリしていた。してしまったことを謝る。大事なことだと知っている。

 

 

「おっ疲れ様、しゅーちゃん!!」

 

「お疲れ、岡崎。・・あら、さっきよりイケメンになったわ」

 

「・・はは、まじか、なら、殴られたのもプラスに解釈できるね」

 

そこにずっと隠れて見ていた2人が顔を出す。無駄にテンションが高いのは俺を励まそうとでもしてくれいるのか。こいつらは本当に・・

それに今度はちゃんと見るだけで終わらせてくれる。

 

「サンクスな2人とも。ちゃんと見ててくれて」

 

「少しは抵抗しなさいよ。確かに抜け出したことはあなたが悪いけど、ここまでされるほどでもないわ」

 

「そーだよね。理子もう出る寸前だったよ〜・・というか顔覚えたぞい♬」

 

「やめろ、なんもすんな。あいつらに罪はないって」

 

「そっか。しゅーちゃんがいいなら理子もいーや!さって帰ろっか!」

 

「そうね。少し眠いわ」

 

もう2人はいつもの2人だった。1人がうるさくて1人は静かすぎて。

 

でも、

 

 

やっぱこの空間、大好きだわ

 

 

「じゃーさ!パフェ食べに行かね?」

 

「おお!それはしゅーちゃんの奢りですかな!?」

 

「んなわけねーだろ、自腹で払え。俺はいつも金がねーの」

 

「えーケチんぼ〜〜!理子、今日結構しゅーちゃんにしてあげたとおもうけどなー!」

 

「私もしたわよ?」

 

「・・それは、あれだ、理子は折り紙、夾竹桃は原稿手伝いで手を打とう」

 

「ええ、いいわよ」

 

「理子はよくなーい!なんで理子は折り紙なのー!?」

 

「なんか家にあったのよ。折り紙。あれで鶴折ってやるからさ」

 

「・・男子からの贈り物でここまでいらないものはないね」

 

「じゃあなんもやらね」

 

「えー!?あ!じゃーさー、ジャンケンで負けた人が3人分のパフェ奢るでどうかな!これならしゅーちゃんタダでパフェ食べれるよ!」

 

「乗った」

 

「よっし、チョロリンゲッツ!夾ちゃんもいい?」

 

「ええ、ご馳走様」

 

「よっし、そうなると近くのファミレスだね!レッツゴー!!」

 

「お、おい引っ張るな!」

 

 

先ほどまで殴られてたとは思えないほど、俺は楽しかった。こいつらといると俺はまだ強くなれるってそう思えた。

 

 

 

ーーーーーーーー

〜とある女子寮のベランダ〜

 

 

『お、見ろよ麒麟、あれ』

 

『・・・あら。また怪我が増えてますの』

 

『まああの先輩だし、しょうがないだろ』

 

『そうですわね。それにしても、間宮様達もご理解いただけたようで本当よかったですね、お姉様」

 

『そうだな。まあ、もともとあかりもそこまで嫌ってはいなかったらしいからな。あたしが許すならってさ』

 

『間宮様もちゃんとわかってたみたいですわね。ジョナサン3号も嬉しそうでしたの』

 

『・・先輩には、借りを作ってばかりだな』

 

『何か困ったことがあればお力になりたいですの』

 

『へえ、男嫌いの麒麟にしては珍しいな』

 

『麒麟はギブアンドテイクの精神を大事にしてますの。借りを返さないなんてもってのほか、ですの』

 

『そうか、ならその時はあたしにも言えよな。あたしも手伝いたいし・・麒麟みろよ。理子先輩と手を繋いでるぞ』

 

『・・なっ!?また理子お姉様とおお・・うう、きょ、今日は特別ですの』

 

『珍しい、理子先輩に男が近づいたらダメなんだろ』

 

『そう、なのですが、今日は・・特別、ですの。あの方は・・少しだけ、特別に、ちょっとくらいなら理子お姉様と仲良くするのを許しますの』

 

『・・もしかして麒麟、岡崎先輩のこと』

 

『それはありえないですの!麒麟はライカお姉様一筋ですの〜!』

 

『おわ、ちょ、離れろ!!』

 

『良いではありませんの〜♬私のために色々やってくださいましたでしょ?麒麟はとても感謝してますの!』

 

『ったく、それを言うのは私じゃないだろ』

 

『・・・うう、ライカお姉様にはお話ししますけど、男性の方にこういうこと言うのって初めてで・・』

 

『ったく変なところで小心者だよな。じゃあ聞こえなくても伝えるだけはしようか。あたしも一緒に言うからさ』

 

『・・やっ、やってみますの。あの方はいまどこに・・あ』

 

『・・んじゃ、言うか・・・』

 

『あら?もしかしてライカお姉様も照れー』

 

『て、照れてない照れてないから!ほら、せーので言うぞ』

 

『はいですの!せーの!!』

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

〜とある男子寮のベランダ〜

 

『お、あそこで楽しそうに歩いてるのって』

 

『理子に夾竹桃、それと修一ね』

 

『あいつら仲よかったんだな。まあ何度か一緒に帰ってるとこ見たことあったけど』

 

『あんなに楽しそうな理子初めて見たかも。修一のおかげかしら』

 

『岡崎か。・・・あいつには、なんだかんだで助けられてんだよな』

 

『そうね。なにをって聞かれるとよくわかんないけど・・修一には言いたい事がたくさんあるわ』

 

『奇遇だなアリア。俺もある。いつか言いたいことが一つ。あんまり恥ずかしくて言えるもんじゃないが』

 

『じゃあここで気持ちだけ伝えときましょ、あいつに目の前で言ったってお金請求されるだけよ』

 

『・・かもな』

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

Riko side

 

 

「しゅーちゃん」

 

「岡崎」

 

私達は修一の元へ行く前に決めていた。修一にはちゃんと伝えるって。

 

 

 

みんなそれぞれがたくさんのことを思っていて、それを一つ一つ言うのは恥ずかしいから

 

 

 

一つの言葉にまとめる魔法の言葉

 

 

恥ずかしいからほとんど言えないけど、

 

 

私の、みんなの気持ちを全て込めて伝えたい。

 

 

みんな、修一のこと、結構大事に思ってるんだよ?

 

 

敵だろうと助けにいったり、全力で1人の人を手伝うことができる修一

 

 

友達が少ないからって言い訳するけど、一人一人を大切にする修一

 

 

そんなあなただから、みんながあなたにこう、思ってるんだ。

 

それを私たちが代表で伝える。

 

 

岡崎 修一

 

 

 

 

 

 

『『『ありがとう』』』

 

 

 

 

 

 

 

「おう、気にすんな」

 

 

 

にっこり笑った傷だらけの顔は、私の、本当に好きな顔と同じだった。

 

 

 

 

ps

「そういや俺甘いの苦手ですわ」

 

「しゅーちゃん、ジャンケン負けた後にそれ言ってもね」

 

「ダサいわ」

 

「・・・わーったよ!食え食え俺の1日分の食費分食え!」

 

「「・・・。」」

 

 

2人の目は、本気で冷たかった。・・寂しくなった。

 

ps2

「あ、あれ!?おか、岡崎さん!?どこに行っちゃったんですかーー!?!?」

 

あ、中空知のこと忘れてた。

 

 

まあ後で謝りに行っとこう。うん。

 




ここからは私の感想ですので、軽い気持ちで読んでもらえればうれしく思います。さらに最後に少しお願いを書きましたのでそちらもよろしくお願いします。


さて、物語の話に入りますが、理子と夾竹桃は6章で修一が信頼できる仲間として同じ立場にいましたね。理子と夾竹桃、どちらもほとんど同じ感情で修一を大切に(夾竹桃は恋愛ではないが)想っているように注意して書いていました。

ですが今回はそれぞれがそれぞれの解釈で修一のために動きました。
もちろん二人とも簡単にまとめると「修一ために動いた」になります。

しかし少しだけ二人の考えは違うんです。理子は理子らしく、夾竹桃は夾竹桃らしくそれぞれの考えで動いています。

その点をうまく伝えられたかどうかかなり心配なのですが、できる限り頑張ってみました。それぞれの違いは伏せておきますので想像してみていただければ嬉しく思います。


前話の最後のセリフが誰なのか、感想欄に書いてくださった方ありがとうございます!
読んでも分かりにくかったかもしれませんが夾竹桃でした。はい、もちろん答えなんて出ませんよね・・。すみません。
これは問題ではなく、ただどんな感じに受け取ってくれるかなと私個人の質問でした。しかしカワラダさんの考え方大好きです。もしもあのセリフがアリアだったら・・みなさんもよかったら読んでみてください。

それと、実は・・まだこの章終わってないんですね(ビックリ!)あとエピローグがあります。
あ、こちらももうすぐ出来上がります。明日の夕方4時に投稿予定になっています。面白いですよ~(ハードル上げていくスタイル!)個人的に好きな内容になってます。

では、エピローグで!!




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